藤原和博が問う!「女性」がもっと社会で活躍するためには、どんな対策が必要なのか?〜漆紫穂子×越直美×小林りん×中室牧子

本記事は、G1サミット2019「中等教育の未来〜女性リーダーを増やすために」の内容を書き起こしたものです。(全2回 後編)

藤原和博氏(以下、敬称略):ここからは「女性リーダーを増やす」ための対策をそれぞれ伺いたいと思いますが、その前にもう1つだけ。僕は最近、27歳の、その世代を代表するような価値観を持っていると思われる女性とテレビで対談したんですが、そこで大きな衝撃を受けて、かつ納得した話があります。それを3つご紹介したうえで、その3つについても、それぞれ皆さんに聞いてみたいと思います。

まず、その女性は「女子は短期決戦でキャリア形成をしたほうがいい」と言うんですね。これは漆さんが普段から言っていることかもしれないけど、「やっぱり結婚も子育てもしたいし、一旦会社から離れることになっても稼げるようになりたい」と。「それに介護だって親の状況によってはしたくなるかもしれない。つまり人生の後半に向けていろいろなことが待っているから、女子は短期決戦でキャリア形成をしたほうがいい」と言うんですね。実際、彼女はそれを見事にやっているんですよ。会社員でありながら会社をつくって活躍している。この意見について漆さんはどう思いますか?

これからの女子学生は「復職力」を磨くべき

漆紫穂子氏(以下、敬称略):その通りだと思います。たとえば私は進路指導でも「専門能力を持っていれば一旦辞めたあとも戻ることができるから、“復職力”を磨きなさい」みたいな話をしているんですね。だから大学についても名前でなく学科で決めるように指導するし、浪人するぐらいなら留学や大学院で勝負するように言っています。実際、社会人1年目の卒業生にアンケートを取ってみると、大学院や海外に行っていたり、資格系の仕事をしている子が結構多いんです。

あと、うちでいわゆる成績の良かった子がどんなところに就職しているかというと、かつては総合商社の総合職だったりしました。でも、最近はそういうところを蹴ってまでベンチャーですとか外資ですとか、安定よりやりがいを優先する選択が目立ちます。早めに自分を磨きたいと言うのです。なので、私は社外取締役の立場でも企業の方々に「女性には20代と40代後半の2回、働きどきがある」とお話ししています。「だから女性の育成トラックは分けて早めに責任ある仕事を与え、部下の1人でも持たせるようにしたら復職しやすくなるのでは」と言っているんですね。

藤原:では続いて、小林りんさん。対談した女性はこうも言っていました。「組織で自己実現するには2つの方法がある。1つは組織内で権力を持って上に行く、つまり昇進することで、もう1つは組織にいながら外のコミュニティで実力を示して人事部に認められること」後者の場合はバーゲニング・パワーを得られるから人事部と駆け引きや取引ができるようになるじゃないですか。「そういうことをしたほうが社畜にならずに済む。だから女子には後者のほうが合うんじゃないか」と、彼女ははっきり言っていました。どう思いますか?

女性は「自分が正しい」と思えることであればトコトン前に進める

小林りん氏(以下、敬称略):直接の答えになるかどうか分からないんですが、誤解を恐れずに言うと、女子は社会や両親からの期待にあまり振り回されず、自分のやりたいこととか、「これが社会の役に立つ正しいことだ」と思うようなこととか、そういうことに対してまっすぐ、何もためわらずに進むところがあると思います。

藤原:そうですよね。女子のほうが好きなことや興味がストレートに出る。男子のほうが、むしろウジウジして、下手すると40歳、50歳になってもまだ分かんない、みたいな(会場笑)。

小林:逆に言うと、そこで女子は「昇進しなきゃ」「偉くならなきゃ」という思いから解き放たれているのかもしれないです。そのうえで、社外のコミュニティで実力を示すのか、起業するのかは分からないんですが、とにかくピンでやっていくにしても「自分は正しい」と思うことであればトコトンやっていける。相対的な評価を必要としない、絶対的な価値観で生きることが得意かもしれないとは思います。

一方で、最近は若い男性もそういう傾向が強い気がするんですね。世代間で相当違うように思います。マイナビさんが出している就職に関するモチベーションのランキングなんかを見ていても、最近は男性でも「自分のやりたいことができるか」とか「ワークライフバランスを保てるか」といったことがトップにきていて、男子も相当変わってきている。

その意味では、先ほど中室さんがお話ししていた女性の性質について考えるときも、混同しないほうがいいなと思うことがあります。まず、空間把握能力が比較的低いというのは、私も含めて生まれ持ったものだと思います。でも、誰かが横にいると走るのが遅くなるというのは、もともとそういう性質なのか、それとも「横に誰かいたら早く走っちゃいけないよ」という風に教えられているからそうなっちゃったのか。そこは微妙だなと思うんです。なので、そこはもしかすると社会概念や社会通念が変化すれば変わってくるかもしれません。

藤原:一方で男子も変わってきているということですね。では、続いて中室さん。対談した女性は、そのときの結論として「女子のキャリア形成は縦型の上昇志向でなく、短期決戦で蓄積した技術に横串をがんがん刺して磨きをかける形のほうがいいんじゃないか」と言っていました。僕はすごく納得しちゃった。これ、よく考えると実は成熟社会を生きる大抵の男子にも当てはまるんだと思う。でも、多くの男子はそれを分かっていないから、組織における上昇志向を諦めきれないまま苦労しちゃう。皆上に向かって進んで、それで9割が社畜しちゃってる感じかなあ。

女性の価値観は「利他的」か?

中室牧子氏(以下、敬称略):今の小林りんさんのお話についてまずコメントすると、競争心やリスク選好がどの程度先天的に決まって、どの程度環境で決まるかについては、研究者の間でも意見が分かれています。経済学では、母系社会と父系社会の両方で実験をして、結果が変わることを証明することによって、競争心は社会環境に影響されることを示した研究者がいます。このため、私自身は、環境要因を無視することはできないと考えています。

先ほどの小林りんさんのご指摘との関連でいえば、女性のほうが「利他的」だという印象はあります。これは一度きちんと検証してみたほうがいい課題ではありますが、以前、READYFORの米良(はるか氏:同社代表取締役)さんと議論した際、「上場企業の社長には男性が多いけれども、社会起業家は女性が多い」とおっしゃっていて、非常に驚いたことがあります。

漆:これは現場でも感じることですが、うちの生徒は競争もしますし、リスクも取ります。学校にいるうちからNPO活動や起業をする子もいるんですね。彼女たちはチームで競争しています。たとえば企業とコラボして商品開発する際、個人のプランをどんどんチームに上げて進めていく。チーム同士の競争になると強いんです。あと、リスクについては「チャレンジというのは後輩への貢献なんだ」という言い方をしています。上級生が失敗したら、それは必ず下級生に対する貢献になる。やり方は違っていたというのは伝わるわけだから。そういうことを伝えていると、「考える前にまず行動ですよね」なんていう感じの子が育ってきます。だから、本当に中室さんがおっしゃる通りで、他者への貢献が絡んだときに女子の力というのはすごく大きくなるんだと思います。

藤原:では、続いて越さん。僕はあえて男子の弱みを言いますが、基本的に、男子は組織がないと動けないという特性があるような気がしています。自分に地位や権力が与えられていないと生きた心地がしないという、ややこしい存在(会場笑)。だから階層のどこに序列されるかに命を懸けたりする。平城京の昔からそうなんですよ。大宝律令なんてそのためにつくったようなもので、それがいまだに効いている。しかも、それを江戸期にすごく強化した面がある。明治だって「維新」とは言うけど‘Revolution’じゃなくて‘Restoration’。江戸時代のシステムをそのまま移行しているんですよね。

官僚制がなぜこんなに根深いかというと、そういう序列のピラミッド社会が1000年以上続いているということ。それで戦争や権力闘争がないと男は生きられないように見える。でも、これからは戦争だってサイバー空間で高度化するし、組織の意味だってネット社会になってどんどん薄れていくでしょ。だから今は男子の危機だと思うの。逆に、女子にとってのチャンスでもある。

それともう1つ。組織をつくってそのなかに自分を置くというのは、宗教も同じですね。キリストだってブッダだって、教祖はみな男じゃない。ああいう巨大な物語がないと生きられない。逆に言うと、女性は組織から解き放たれたほうがもっといきいきできるのに、今は企業の中間管理職や国会議員の女性を増やそうなんて話になっているでしょ。そういう中間の存在はAIロボット社会で消えちゃうんだから目指す必要はないんじゃないかと僕は思うの。だから、そういうダイバーシティ議論ってどうなのかと思うし、「本音は女子だってそんなのやりたくないでしょ」という気持ちがある。越さんはどう思いますか?

女性にとって「組織」の中で働くことの意味とは?

越直美氏(以下、敬称略):実際、やりたくないという女性は多いですね。市役所にも管理職試験はありますけれども、女性管理職が少ないのはその試験を受けたくないという人が多いから。もちろん、その理由となると「子育てで早く帰らなければいけないから」といった社会的要因が一番大きいので、そこは私たちのほうですべて解き放つということをしなければいけないんだと思います。ただ、じゃあ、組織のなかで上を目指している男性が幸せかというと、そこに属していないと生きられないという難しさはありますよね。

いずれにしても、管理職試験を受ける男性と受けない女性を見ていると、能力的には女性のほうが普段の評価も高い一方、男性は「自分はできる」と思っていても客観的にはそれほど評価が高くないというケースはあります。女性は自分に自信を持っていないけれども客観的評価は高いという現実がある。なので、まずは保育園を増やしたりして、社会的な面で対策を打つ必要があると思っています。そのうえで、「組織のなかにいることが必ずしも幸せというわけじゃない」と考える女性がいれば、違う生き方ができるようにしていく必要もある。たとえば大津市でも女性のビジネスプランコンテストをやっているんですが、そういうところに参加するのは社会起業家の方々が多いですね。ですから、そういう形で自分がやりたいことをやるというのも1つの生き方だと思います。

藤原:では、皆さんには残りの時間で「こういうことをすれば女性がもっと輝ける」ということを遠慮なくお話しいただきたいと思います。まず僕からも1つ。経済力がある親は、日本の教育システムから逃がしちゃえばいいと思う。それも1つの手ですよね。今はインターナショナルスクールだってあるし、たとえばマレーシアのインターナショナルスクールなら比較的安いから、そちらに入れちゃうのも1つの考えだと思います。では、今度は中室さんからいきますか。制度変更でも法律改正でも結構なので何か対策があれば。

アファーマティブアクションとして「女性の割合」を増やす必要がある?

中室:1つの方法はアファーマティブアクションでしょう。例えば、採用や管理職登用で女性の割合を〇%、などという風に数値目標を決めて、それに従うようなやり方です。ただし、このアファーマティブアクションは、必ず経済的な成果が上がるとは限りません。2000年代の前半に、ノルウェーで、上場企業の取締役の女性比率を40%以上にしなければ上場廃止になるという法律が成立したことがあります。この自然実験的な環境を利用して、女性登用が株価に与える影響を見た研究によると、この法律の成立によって、かえって企業価値が10%以上も低下したことが示されています。女性の取締役として適した人材がおらず、自分の奥さんや娘さんを取締役にしたり、経営者の経験がない人を取締役にしたりしたことが原因だといわれています。単なる数合わせに終始すると、適材適所とはとても言えないような配置になってしまいます。今の日本社会を見ていると、管理職登用〇%とか有識者会議の女性比率は〇%などのように、数字だけが独り歩きしていることが大変心配です。

藤原:以前、「候補者の数だけは男女で数を揃えよう」という話が国会に上がったことはありますよね。結局は審議できなくて廃案になっちゃったと記憶しています。それはどうですか?

中室:研究者としてはそういう制度的な変化があった時に、何が起こるのかということを検証してみたいですね。

藤原:分かりました。小林りんさんはどうですか?

小林:今日の議論におけるボトムラインとして、「女子が女子らしく生きるために女子校が必要だ」というロジックがあるとすると、それは別に女子や男子に限った話ではないと思うんですね。それより大事なのは学校の選択肢の多様性なんだと思います。男女はもちろん、たとえば発達障害の子も含めて、特異な才能があって芸術方面でぶっ飛んだ能力を発揮したりする子もいるわけで、そういう人たちにそれぞれ居場所があるべきだと思うんです。でも、それが今はかなり画一的に押し込められている。だから、政策提言という意味で私が昔から馬鹿の一つ覚えみたいに言っているのは、学習指導要領の大幅緩和または大綱化。それと教員免許のさらなる柔軟運用もマストだと考えています。

藤原:では続いて越さん。言いたいことを言っておいてください。

越:中等教育は本当に大事だと思います。たとえば市長ともなると女性比率は3%だけですし、この時点で何かを変えようとしても手遅れなんですね。でも、小学校の児童会長は男女半々。それが中学にあがると女子の生徒会長が少なくなるわけですから、やはりそこがスタートということで大事になる。で、私としては今回、中室さんの話を聞いて「やろう」と思ったことがあります。システム自体が男性向けにできているなら、たとえば選挙による中学の生徒会長選びも、小学校と同じように皆で話し合って選ぶようにしたら何か変わるんじゃないかな、と。それをちょっとやってみたいなと思いました。

小林:それ、出来たらめちゃくちゃ面白いですよね。

藤原:すごく分かりやすい。今からでもすぐできるよね。ちなみに最近はG1メンバーでも高校をつくるという人が増えていますよね。今日来ているホリエモンも「ゼロ高」をつくった。それからドワンゴのN高は皆さんも知っていますよね。1万人以上を集める勢いです。あと、亀山(敬司氏:合同会社DMM.com会長)さんも学校をつくる計画です。ほかにもAO義塾をつくった斎木陽平君という僕の知り合いは「Loohcs(ルークス)」という学校をつくるし、今そういう流れになっている。そんな風にしてフリースクールが次々できると選択肢も広がります。そうなれば1校ごとの規模は小さくても100人×100校で1万人。普通高校の枠から飛び出した1万人を本気で育成すれば学年で100人ぐらいは突出した子が出てくるでしょう。で、そのうち女子が90人ぐらいになるんじゃないかと僕は思ったりするんですが、漆さんはどうお考えですか?

漆:私もジュニアの育成が本当に大事だと思います。それでうちは女子に特化した環境で伸びているけれども、まだそういうところは少ないから、まずはロールモデルになるような子をどんどん育てようと。そうして育った子たちが次のステップを担ってくれたらいいのかなと思っています。とにかく、女子校があることが多様性だと、私は思っています。

あと、もちろんアファーマティブアクションも大事なんですが、政府の委員会などに出ていると、プロセスに目がいって目的がどこかへ行っちゃっているように感じることもあるんですね。「日本の成長戦略のためのアファーマティブアクションなんだ」ということを忘れちゃいけないのかなと思います。

藤原:では最後に何か言い残した人がいれば。

小林:私は最近まで、女性だけで集まるとか、「女性の権利を皆で主張しましょう」みたいな会とか、そういった話とは距離を置いていたんですね。自分は男とか女とかいう意識をまったく持たず、自分自身として生きてきたので。女性だからデメリットを感じたということも一切なかった。でも、そうじゃない人がたくさんいるんだということが最近よく分かりました。だから20~30代の女性に女性らしく活躍してもらうための土壌を、その上の私たち世代がつくっていくというのは1つの使命なんだなということを最近は感じています。

漆:男の子を育てている人は、ぜひ自立した男子を育てて欲しい。進学校の先生が言っていたんですけれども、たとえば中1で宿泊行事をすると男子の風呂場はパンツの山になるんですって。自己管理ができないよう過保護に育てた結果でしょう。少子化の影響は男子に強く出ていると実感します。「勉強をしっかり」と言う一方で、「自分のことはしなくてもいいから」という風に育てていると心配です。

藤原:男子は留学させたりして母親の世界観から解き放たないと絶対に成長しないよね。

漆:「大学生にもなって下宿先の掃除を親がしているような子とは絶対結婚しない。そうじゃないと私が養子をもらったみたいになっちゃうもん」って、生徒たちも言ってました(笑)。

中室:ご質問に対する回答として申し上げます。最近の研究で指摘されているのは、子供は同性の親の影響を受けやすいということです。たとえば、母親に就労経験があると、娘も就労する確率が高いというのはよく知られています。このため、「勉強はお父さんまかせ」あるいは「しつけはお母さんまかせ」のように、育児をどちらかの親に丸投げするのではなく、少なくとも自分が同性の子どもにとっての一番身近なロールモデルであるという自覚は必要ではないかと思います。

それともう1つ、最後に指摘しておきたいと思います。多くの人が「共学」がいいと信じる根拠は何か、ということです。韓国のデータを使って行われた研究によると、もともとの学力が同じ子どもをランダムに女子校・男子校または共学に割り振ると、大学進学時の偏差値は、共学よりも女子校、男子校のほうが高くなっていたということです。同じ性質や選好の生徒を集めれば、より効率的な教育ができるかもしれません。今、日本では、公立の男子校と女子高は次々に共学に統合されつつありますが、この合理的な理由は何かということをもう一度考える必要があると思います。「別学よりも共学がよい」と、根拠もなく妄信するのではなく、多様な教育の選択肢について考えていく必要があるのではないでしょうか。

藤原:それでは時間になりましたので、以上で終わりにします。皆さん、ありがとうございました。

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