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リバース・イノベーションと日本企業:認知・実施の状況――今こそ、リバース・イノベーション #2

投稿日:2024/03/14更新日:2024/03/29

従来先進国で生まれるものとされてきたイノベーション。だが現在、新興国を発祥としたイノベーションを先進国に「逆輸入」し、普及させるという新しいイノベーション手法、「リバース・イノベーション」に注目が集まっている。本連載では、このリバース・イノベーションとは何か?また日本においてリバース・イノベーションを取り入れることの有効性や、取り入れるための難所について考える。

前回は、リバース・イノベーション(以下RI)の概要や事例を紹介した。
これを踏まえ本記事では、日本企業におけるRIの認知や、実施についての調査のサマリーを紹介していこう。

※本稿はグロービス経営大学院に在籍したメンバーが、小川智子講師の指導の下で進めた研究プロジェクトについて、その研究結果をまとめたものです。

※例として挙げた企業と、今回アンケートやヒアリングした日本企業に関連性はありません。今回のアンケートやヒアリングでは、匿名希望企業があるため、社名は出さず、サマリーのみ共有することにしています。

前回はこちら

日本におけるリバース・イノベーションの認知と実施状況

RIの有用性や、既にあらわれつつある実績については、前回解説した。しかし、日本においてRIはどの程度の認知があり、また実践されているのだろうか。

そこで実態を把握するために、定量アンケートを行った。

  • 回答数:有効回答46件。業種に偏りなし。所属部署は多様。
  • アンケート対象:新興国(BRICS、ほかアフリカなど)に、自社事業部がある、或いは提携・関連会社がある企業勤務者
  • 集計方法:グロービスの学生/卒業生へのメールやコミュニティでの呼びかけ

リバース・イノベーションへの認知・関心

46件の回答の内、「初めて聞いた(認知なし)」が14名(30.4%)、「聞いたことはあるが、具体的なことは分からない(認知はあるが関心なし)」が13名(28.3%)、「聞いたことがあり、興味がある(認知・関心あり)」が15名(32.6%)、「当事者として検討・提案・実施したことがある」が3名(6.5%)、「当事者として推進している」が1名(2.2%)という結果であった。

約3割がRIを初めて聞いた、すなわち新興国から逆輸入するというイノベーション手法があるのを知らない、というのは低い認知といえそうだ
一方、RIへの関心や実施に関しては、イノベーション推進担当以外も回答しており、関心や実施が少ない、とは結論付けられず、参考データとしている。

日本企業のリバース・イノベーションの取り組み

「貴社ではリバース・イノベーションに取り組んでいますか?」という所属組織に関する問いに対しては、7名(15.2%)の回答者が「取り組んでいる」と回答した。全体の15.2%とすると、実施率は高くないといえる。

自社でRIを実施していないと回答した39名のうち、現在社内でRIを取り組んでいない理由を知っていると回答したのは11名であった。取り組まなかった理由は以下の通り。

  • (世界中で同一の商品展開など)製品の特性上向かない・実施の必要がない
  • 採算性が証明できない
  • 日本の技術を新興国に適応する経営方針、縦割り組織で海外部門と連携がない組織
  • 海外のアイデアを日本で事業化できる人材の育成・新興国への配置がない

いずれも社内事情に関する意見が得られた。

上記とは別に、RIを実施していない企業勤務の回答者で、個人の見解として、あなたが推進する場合、社内障壁となりそうなことは何かを聞いたところ、実際にRIを検討し断念した企業と同じ理由「製品の特性上必要ない」「採算性の社内説明が難しい」「組織の問題」「適任者がいない」があげられた。他には、国内の既存事業中心に考える組織文化、新興国ビジネスの可能性に対する理解不足、などが挙げられた。

この回答は、実際の問題となりうるか、個人の意見なのか確認が取れていないが、「製品の特性上必要ない」「採算性の社内説明が難しい」「組織構造や文化により推進しにくい」「適任者がいない」この4点は、RIを、実施できない・しない(と感じてやらない)要因になりそうだ。

まだまだ発展途上の日本のリバース・イノベーション

日本企業において、RIの認知度や実施状況は高い水準とは言えず、また、RIが社内の組織や人材の課題で実施できない、もしくはできないと考えることが多いとわかった。
一方で、一部の企業では、新興国のイノベーションを採り入れているという事実も分かった。

そこで、さらに、実際にRIを実施した企業に対し、「採算性の社内説明が難しい」「組織構造や文化により推進しにくい」「適任者がいない」という課題はあったか、あった場合どう乗り越えたか、をヒアリングした。「製品上の特性」はRI対象外となりうるため、ヒアリング対象外としている。次回、その結果をご紹介しよう。

つづく

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