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社内摩擦を超えて新規事業の立ち上げを成功させる秘訣とは?

投稿日:2019/04/23更新日:2020/08/19

ビジネス環境が大きく変化するVUCA時代において、新規事業の立ち上げは多くの企業にとって避けて通れないものになっています。ですが、既存事業とどう折り合いをつけるか、誰をアサインするか等、様々な壁にぶつかり難航している方も多いことでしょう。そこで、新規事業を進めていく上でのヒントについて、コンサルタントとして様々な企業の新規事業立ち上げに携わり、グロービス学び放題の「オムニチャネルを成功させる」にも出演するネクトラス株式会社の中島郁氏に話を伺いました。

会社の大きさにかかわらず組織が抱えがちな軋轢

老舗からベンチャーまで様々な企業の新規事業にかかわってきた中島氏によると、事業を立ち上げる際にまずぶつかる壁が「社内の軋轢」だといいます。

「一般的に、基幹事業に長くかかわってきた人ほど既存事業部門の中にいる元上司、先輩などに気を遣い、新規事業に取り組みにくいと思います。私が過去いた組織でも、表立って言うか言わないかは別にして、既存組織の人たちから『なんで余計なことやるんだ!』という反発が多くありました」

多くの場合、企業内の新規事業は、既存組織に全く無関連なものではなく、また、始めてもすぐに利益が出るわけではないため、既存組織との共存は不可欠です。しかし、既存事業に携わる人にとっては自分たちがやってきたことを否定されているように感じ、反発したり不安になったりすることもあるでしょう。この軋轢は、どう解決すればよいのでしょうか。

新規事業で考えなくてはならない「何を」「どう」やるか

中島氏は、既存事業で実績を持っていた人材に、新規事業を担当してもらうことが重要だと言います。

「たとえば、新規事業としてECを立ち上げる場合、人事担当者に任せると、なぜか理系出身者や趣味的にWebに関わった人を配属させるケースが多い。ですが、そういう人材ではなく、実際に商品を販売していた人やMD担当者、物流をやっていた人など、既存事業の基幹業務で実績を持っている人の方がありがたいんです。

新規事業は、『余計な』ことをして既存事業部門の人たちの負荷を増やしたり、言い方は悪いですが迷惑をかけることになります。その際、既存事業に関する理解が乏しかったり、既存事業で実績のない人がそのような業務を依頼しても、やってもらうのは難しいでしょう。逆に実績、信頼のある人が頭を下げてくれば、『あいつが言うのであれば』と、言うことを聞いてくれる確率は高くなります。

さらに、ECサイトとはいえ、顧客に対し何を伝えて、何を見せるのかの重要な部分は変わりません。それゆえに、既存事業経験のある人の方が向いているのです。

商品や顧客に関する知識や販売の仕方などは、長いことやっていないと身につかないものです。そして、小売でやっていたような商品の販売手法や感覚はEC事業でも応用できます。EC自体歴史の浅いビジネスですので、最初は頓珍漢でわからなくても、数か月しっかりやっていると割と業界の平均レベルの知識、スキルが身についてきます。逆にネットやITから来た人は、サイトや仕組みはよくわかっていて運用の即戦力にはなりますが、なかなか販売や商品に関する感覚が身につかない。そういう意味で、今までの業務をやっていた人をネットに持って来る方が最終的には早いんです」

さらに、ECビジネスを担当する部署の位置づけについても、一考する余地があると中島氏は言います。

「会社にもよりますが、もし私が小売企業で新規ビジネスのECをやるならば、早く立上げたいだけなら意思決定が早く、ノウハウ、リソースを集約しやすい独立した事業部などにしてもらいます。ですが、早く大きく成長させたいなら、あえて既存事業の営業本部などに置いてもらうことを検討します。新規のことをやると一番彼らに嫌がられるのですが、既存事業の媒体としての店舗、商品調達、その他既存リソースを利用しない限り、新規ビジネスは大きく成長しないからです」

「やるべきこと」は、顧客にとって本当に必要なことの追求

また、新規事業を進める場合は、関連するテクノロジーやビジネスの世代について考慮することも必要だと中島氏は言います。

「たとえば、スマートフォンが登場した時、携帯電話に通話機能しか付いていなかったアメリカでは、パソコンのようなことができると人々は喜び、すぐに取り入れ始めました。しかし、日本ではすでにiモードなどが導入されていて携帯電話でいろんなことができていたため、スマートフォンの登場で何かがすぐに変わることはありませんでした。

また、電子決済についても、現金システムの信頼性が不十分な中国では電子マネーが存在しないなどの理由から、スマホ決済が爆発的に広まりましたが、日本ではそもそも現金の信用が高いことや、すでにSuicaやEdyのような電子マネーが広がっているため、それほど進んでいません。

このように、新しい世代のテクノロジーが登場したとしても、隣接する世代ではその利便性や革新性がそれほどでもなく、急速に乗り換えるニーズが低く導入が遅れるパターンは多く見られます。アメリカのスマートフォンや中国のスマホ決済などのように、一世代とび越えるような新しいサービスの方が、普及が早いということです。本当にそのテクノロジーを顧客が望むか検討したうえで、普及への時間軸を新規ビジネスの成長計画に考慮することが必要です」

日本では、電子決済をはじめとした最新テクノロジー導入の遅れが悲観的に見られがちですが、新しいテクノロジーの台頭に動揺することなく、起こっている技術革新の本質を正確に把握し、普及、ビジネスの成長に合わせ導入していくことが大切ということでしょう。

「また、次元は違いますが、ECであれば顧客が一番求めるのは、商品とその情報です。それが十分に提供できていない段階で、新しいテクノロジーや、はやりのツールに飛びつくのではなく、顧客が一番欲していることを実現する基本的な業務基盤やプロセスなどの運用を整備することが重要です。

つまり、ベースとなる部分を最初に確立したうえで、新しいものに振り回されるのではなく、自分たちの事業がもともと何を目的としているのかをしっかりと意識しながら、限られたリソースのなかで優先順位に合わせて顧客に提供していくことが必要なのです」

新規事業の中でも、特にECをはじめとしたサービス業での戦略、立上げのプロフェッショナルでもある中島氏が講師を務めるコース「オムニチャネルを成功させる」。新規事業を任された方は、本コースからヒントを得てみてはいかがでしょうか。

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