対アマゾン時代の小売業のあり方とは?~無印・楽天・@cosmeの「リアル店舗」「EC」での愛され続けるコミュニティ作り 

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本記事は、G1経営者会議2018「コミュニティによるゲームチェンジ~顧客を宣伝マンに転換するマーケティング~」の内容を書き起こしたものです。(全2回 後編)

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佐渡島庸平氏(以下、敬称略):吉松さんは今、かなりリアル店舗をつくっていますよね。@cosmeの場合、たとえばマツモトキヨシさんでむちゃくちゃ安く売っているようなものを定価で置いていて、しかもそれがしっかり売れているという不思議な現象が起きているようにも思うんですが、リアル店舗はどんな考え方で運営していらっしゃるんでしょうか。

「リアル店舗」でお客さんと接点を持つことは、むちゃくちゃ重要

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吉松徹郎氏(以下、敬称略):@cosmeでリアル店舗をはじめたのは2007年です。@cosmestoreルミネエスト新宿店が1号店で、今年で11年目になります。おかげさまで今は国内で25店舗、海外でも10店舗ぐらいになってきて、リアルの規模もだいぶ大きくなってきました。実は日本の化粧品専門店で1番の売上をあげているのは僕らのルミネエスト新宿店で、2番も僕らの@cosmestore上野マルイ店なんですね。化粧品店舗として今は売上もすごくあがってきています。

なぜ、リアル店舗をやっているのか。僕がリアル店舗をはじめた2006~2007年頃はミクシィが上場する前後だったこともあって、株主からはむちゃくちゃ反対されました。ネットワーク外部性を働かせて、ネットワークのなかでローコストに、つまりアセットを小さくするのがネットビジネスの肝なのに「なんでわざわざ大きなアセットで、しかも在庫を生みそうなものをやろうとするんだ」と。

その根っこには「お客さまの声が実はメーカーに届いていない」というのがあったんですね。コミュニティを見ていたからこそ、それを死ぬほど感じていました。たとえばFacebookで「いいね」が100万ある商品と1万の商品、あるいはTwitterでフォロワーが100万あるブランドと1万しかないブランドがあったとします。それなら、むちゃくちゃ人気がある前者は店舗でもむちゃくちゃ売れると思うところですが、実はぜんぜん売れないんですよ。日本の化粧品コマースの、化粧品全体における売上比率はまだ5%。95%はリアルで売れています。「いいね」が100対1でも実際の発売データは1対1なんです。

これって面白いんですけれども、メーカーさんは「コンシューマ」と「カスタマー」という2つの言葉を使うんです。化粧品メーカーさんにとってのコンシューマは一般消費者ですけれども、カスタマーはマツキヨさんをはじめとした小売店さん。で、もし僕が資生堂の営業マンになったら、売りに行くのは一般消費者であるお客さまところではなくマツキヨさんになるわけです。

逆に考えると、先ほどお話しした2つの商品をリテーラーさんは何対何の割合で入れるかとなれば、彼らはネットのデータを見ていないので1対1になるんです。もしくは営業マンがセールスする商品や販促費の多い商品を入れていくんですね。実際の小売店のデータを見てみると、販促費をメーカーさんからもらうことで店舗の売上はあがっていますから。ということは、@cosmeでどれほど人気になってもユーザーが支持している商品は(店頭に)並ばない。

メーカーさんはCRMにめちゃくちゃお金をかけて、お客さまのデータを仕入れて良い商品をつくるということはやっています。でも、良い商品を届けるということを誰もやっていないんですね。だから「それをやらなきゃいけないね」ということでスタートしたのが@cosmestoreでした。

MUJIさんはネットもリアルも両方持っているブランドじゃないですか。でも、ものづくりをしている会社さんの圧倒的大多数は自分の直チャネルを持っていないんですよね。特にリアルになればなるほど。だから、リアルでお客さんとの接点を持つというのは、実はむちゃくちゃ重要になると思っています。

対アマゾンの時代でも「つくる人たち」と「使う人たち」をきちんとつないでいく

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佐渡島:では、川名さんに。実店舗で売ることについてどのように捉えているのか、そしてECで売ることとリアル実店舗で売ることの差をMUJIはどう捉えているかを伺っていいですか?

川名常海氏(以下、敬称略):たとえば最近は新聞でも「アマゾンエフェクト」なんていうことがよく書かれたりしていて、僕たち小売業はそういうものを読んで、「え、アマゾンが来ちゃったらどうするの?」と。「小売業って、お店って、どうなっていくの?」なんていうことが、小売の世界ではよく議論されたりしています。ただ、MUJIとしては、そこでどんどん利便性だけを突き詰めていくような形にしようと思っているわけではないんですね。

会長の金井は最近、小売業の課題について話すとき、「世の中が分断されている」ということをよく言います。たとえば、小売の店舗はサプライヤとお客さまのあいだ、つまりサンドイッチ構造の真ん中にあるわけですけれども、僕らは最近野菜を取り扱ったりしているんですね。それで、今年は大阪の堺北花田というところに1700坪という世界最大の無印良品店舗をオープンしました。これは東京で最大となる1000坪の有楽町店に、さらに700坪の無印良品スーパーを加えた規模になります。

なぜ、そういうお店をはじめたのか。たとえば野菜をつくっている人たちは、既存の流通ルートということであれば農協に納めて、そこである程度買い取ってもらったあとは、誰がどう食べているのか、もしかしたら気にしていないかもしれない。それで食べる人たちも、「このお野菜とかお肉とかお魚って、どこからどうやってここに来て売り場に並んでいるのかな」というのが分からないわけです。まあ、それで子どもは「切り身のまま泳いでいる」と思ってるなんていう笑い話もあったりするわけです。「そこが分断されているよね」と。「それをちゃんとつなぐのが小売業の役割なんだ」ということを、最近、金井はすごく言っています。

無印良品スーパーのほかにも今は新しい業態ということで、たとえば千葉の鴨川には「みんなみの里」という、道の駅のような施設でMUJIの商品やお野菜を扱う店舗ができました。こちらの近辺でも笑い話のような話があります。千葉の近辺で収穫したお野菜が、一度は都内大田区の市場に入って、そこからまた千葉に戻ってくるなんていう風になっているんですね。

どうしてそんなおかしな話になっちゃっているのか。これは結局、生活者ひいては人間そのもの、僕たちそのものの課題なんです。八百屋さんに対しても「毎日絶対に同じ野菜を並べておいてね。形はこれぐらいにして、いびつなものは置かないでね」と今は言っているわけです。お魚についても同じ。それなら、一度大田区の市場に入れて流通ルートに乗せるのが最適な仕組みになります。

でも、シンプルに考えると、食べ物は取れたところで、あまり移動させず、新鮮なまま食べるほうが安いしおいしいわけじゃないですか。今はそれが伝わっていない。そこで、先ほどお話しした我々のような「サンドイッチの真ん中」が、つくる人たちと使う人たちをきちんとつないでいく。そういうことをしっかりやっていくのが小売業だろう、と考えています。

それで、まさに原点回帰というような話ですけれども、対アマゾンというような風潮になっている今の世の中で、僕たちの会社は多くの時間をそういう話に割いています。そこで「店舗ってどうあるべきなのか」といったことを今は議論している感じですね。

ファンが増えて「コミュニティ」ができることで、売り場は気にならなくなる

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佐渡島:川名さんからアマゾンの話が出てきましたけれども、アマゾンやヤフー、あるいはC2Cでメルカリのようなところも出てきて、今は消費者がさまざまな形でモノを手に入れることができるようになっています。それを危機的な状況だと考える人もいれば、大丈夫だと考える人もいると思うんですけれども、そこで楽天はどういったあり方を目指しているのか。コミュニティの観点から教えていただいていいですか?

仲山進也氏(以下、敬称略):楽天の場合、当初出店していたのはほぼ100%、中小企業だったんです。しかも全国各地の田舎で実店舗をやっているけれど、お店の前の人通りはどんどん減っていて「もうやばいな」ということで、ネットに活路を見出そうとしてはじめた人が多かったという気がします。

リアル店舗だと地域1番店であればお客さんは来てくれますけれども、地域で1番となるためには、地域の人たちがたくさん買ってくれそうなものを並べる必要がある。逆に言うと、あまりトガっているものを並べても、半径何キロという商圏のなかで0.01~0.0数%の人に響くぐらいなら、地方ではお客さんの絶対数が足りないから生活が成り立ちません。だから皆が買いそうなものを並べているんだと思うのですね。

でも、ネットショップをやりはじめると、皆がすぐに「あ、これって全国大会なんだな」ということに気づくわけですよ。沖縄のお店と北海道のお店を一瞬で比べることができるわけで。そう考えると、「自分の強みってなんだろう」ということに思いが至りやすい。そこから考えはじめて、それこそ熱を持って扱ったり語ったりすることができるような商品・サービスを見つけることができた人のところに、お客さんが集まりやすくなる。そうするとコミュニティみたいなものもできやすい、というのが1つの方向性として確実にあると思っています。

で、最初は仕入れて売るというだけの人が多いんですけれども、ファンの数が増えて一定のところを超えるとメーカーになれるんですね。工場に注文するときの「ロットの壁」というものを超えることのできるファンができた瞬間、そのお店は仕入れるだけの店舗じゃなくてメーカーに変身できる。で、そこまで行けた人は「アマゾンさんはあまり気にならない」と言って、商売を楽しそうにしているんですよね。だから、今は「そういう道がありますよ」というのを広めているのが僕の係みたいな感じになります。

コミュニティ作りのお手本は「出会い系アプリ」

佐渡島:では、そろそろ全体討議の時間が近づいてきたので最後に吉松さんに。@cosmeでは、熱を上げないようにしながらも、でも確実に、ある種の強いコミュニティをつくっているわけですよね。一方、今は化粧品に関するメディアみたいなものも数多く立ち上がってきて、そうしたメディア経由で売ろうとか、ライブコマースで売ろうといったライバルも増えてきたと思います。ただ、たぶん吉松さんとしては「実はそれはライバルじゃない」と思っているのではないかなとも感じていました。そのあたり、吉松さんご自身からは今何が見ているのかというのを伺いたいと思っています。

吉松:たとえばライブコマースのようなものは、今日のテーマにある「顧客を宣伝マンに」という意味でも、やっぱりバズの世界なんですよね。それが昔は読モで、今はインスタグラマーになって個人がメディア化しているという話で。でも、先ほどの「恋愛か結婚か」という話で言うと、@cosmeは結婚相手を紹介するマッチングなんです。ユーザーから見たとき、「一番好きになるであろう人を紹介してくれる場所だったら、あるいはそういう人と出会える場所だったらいいな」というのが、根っこには常にあるわけです。

でも、化粧品に関連した他のサービスを見てみると、メディアとして規模を大きくしていくことを考えているように感じられて、そこが@cosmeとは大きく違うと思います。なので、これは会社でも公言していますが、僕が一番見ているサービスは何かというと、出会い系アプリです。@cosmeが一番近づくべきは出会い系アプリなんです。

皆さんは、よく「どこかにいい化粧品ないですか?」って僕に聞いてくるんですが、「どこかで聞いたことあるセリフだなぁ」と。「どこかにいい男の人いないですか?」っていうのと同じで(会場笑)。

で、そうなると結局は“タグ”を見て探すわけですよね。それで身長とか年収とか、「何が好きか」なんていうのを見る。実は化粧品も同じで、大切なのはいろいろなタグをつけて出会いを生んでいくことなんです。それで、出会ったときに「裏切られた」と感じないような出会いを@cosmeとしてたくさんつくっていけば、すごく大きな信頼になるんじゃないかな、と。そういう思いを根底に持ったうえでコミュニティづくりをしています。

佐渡島:なるほど。実は僕も社員に「出会い系アプリを触って、ファンコミュニティをつくるためのきっかけや考え方を勉強しろ」ということを言いまくっていて、そこが同じだったからびっくりしました。

吉松:いいですよね。だから、もし出会い系アプリのどこかで僕を見たとしてもテスト中だと思ってください(会場笑)。あれは結局、皆探していると思っているんですけれども、見つかる努力をしているんですよね。でも、化粧品ブランドさんやマーケティングをしている人は、自分の情報を伝えよう、誰かに話してもらおうと思っているんですが、見つけてもらおうとはしていない。その努力がすごく少ないと僕は感じているんですよ。

僕はそこが一番大事だと思っています。たぶん、それはコミュニティやマーケティングにおけるちょっとした視点の違いというか。先ほどの「メディアをつくろうとしているのか、出会い系をつくろうとしているのか」というのも、そういう視点の持ち方によって変わってくるんだと思います。

佐渡島:ほんのちょっとした視点の違いだと思うんですが、それによって答えはまったく違うものになりそうですよね。ありがとうございます。では、全体討議に移りたいと思います。ご質問がある方はいらっしゃいますか?

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質問1:MUJIはリアルでのみやっていた時代に「コミュニティ」があったのか?あった場合、どんな「コミュニティ作り」をしていたのか?

川名:リアルのときにコミュニティをどうつくっていたかという点では、まさに先ほどの青山店の話になるのかなと思います。ただ、それ以降も、ネットで何かのコミュニティを一生懸命つくっていったという感覚はあまりないんですよね。改善のアイディアや新規商品のアイディアをお客さんにもらったりしながらフィードバックしていくというのは、以前からやっていましたし。もともと無印良品というのは生活者視点が活動の源泉となるブランドですし、それは当初からよくやっていました。

当時は「声のキャッチボール」ということを掲げ、お客さんとのコミュニケーションを通して、お客さんの声を商品やサービスにフィードバックしたうえで再び提示するというループを回していました。で、2000年頃になって皆がインターネットを使い出してからは、「じゃあ、それをファンコミュニティでやっていこう」と。常に接点ができるよう、Webサイトのなかに「ものづくりコミュニティ」というものをつくって同様のループを回していきました。

CRMも活用しています。お店しか接点がなかった時代を経て、生活者がメールを使うようになったら、今度はメールマガジンでコミュニケーションをとったり。で、2008年から2009年頃にソーシャルメディアが出てきてからはTwitterやFacebook、あるいはInstagramにコミュニケーションの場を移し、さらに2010年以降はそれをアプリで行うようになっていきました。

ただ、僕もアプリをつくってはいますけれども、アプリをうまいことつくったから、それをたくさんダウンロードしてもらえてコミュニティができたという考え方ではないんですね。ただ単に、お客さんが普段の生活で使うツールの変化に合わせてコミュニケーションをとってきたという形になります。それが実店舗、メール、SNS、アプリと変わってきて、次にどうなるかは分かりませんが、とにかくお客さんがいる場に出向いてコミュニケーションをとっていくことで、少しずつコミュニティもできてきたのかなと思います。そういうことがリアルでもデジタルでも自然にできていたという感じはしています。

質問2:@cosmeを使っている人の年齢は?新しい人はどんな風に入ってきているのか?どんな工夫をしているのか?

吉松:今は月間1600万人ぐらいが使っていますけれども、年齢層は、基本的にはネットの女性ユーザー層とあまり変わりません。ただ、年齢層も含めて「ポジションによってお客さんは入れ替わっていくよね」ということを僕はよく言っています。たとえば「30歳からの化粧品」となれば、皆、30歳になってから使うということで20代のときは買いません。ファッションブランドもそうですよね。お客さんがどうなったときに使って、どうなったときに使うのを止めていくかが分かれば、すごくいいと思うんですよ。

でも、そこで今のお客さんを抱え続けようとするから疲弊が出てくる。そこで大事になるのはおそらくブランドの定義だと思うんですよ。たとえばユニクロさんみたいに「品質とコストのバランスを磨いていくんだ」ということなら、たぶんマスが狙いになると思います。そうしたブランドの最初の定義次第で、ある程度はボリュームゾーンが見えてくると思うので。そこを崩すと今のお客さんも崩れちゃうわけで、結局はそこが一番のポイントなのかな、と。@cosmeでも、化粧品ブランドさんに「卒業するお客さんというのをちゃんとイメージしたほうがいいですよ」ということをたまに話すことはあります。

質問3:コミュニティ内のユーザー同士の関係性に何か関与しているのか?また、コミュニティを拡大していく上での指標とは?

仲山:拡大しているかどうかの指標というのは、店舗さんのコミュニティに関して言えば、ないと言えばないですね。コミュニティって3つのパターンがあると思っているんですね。1つは中心に教祖様的な人がいて、そこに人が集まっているコミュニティ。もう1つはコンセプトがあって、それに共感する人が集まっているコミュニティ。で、最後の1つは人同士がつながって集まっているコミュニティです。その3つをすべて備えていると、より強いコミュニティになると思うんですね。

ただ、たぶん吉松さんにしても川名さんにしても、別にお客さん同士を一生懸命つなごうとなさってはいないですよね。それもコミュニティの形ですから、コミュニティはあまりコントロールしようとせず、「一緒にいる」みたいな、ゆるい付き合い方にしていくほうが長続きしやすいし、自然なのかなという気がします。

佐渡島:たぶん@cosmeはユーザー同士で関係性ができないように設計されていると思うんですが、その辺の設計思想を教えていただいていいですか?

吉松:まさに仲山さんがおっしゃった通りだと思います。これはすごく大切な問いだと思うんですが、コミュニティであってもコミュニケーションサイトではないので、実はアットコスメは10数年間、(ユーザー同士の)コミュニケーションを徹底的に排除していました。最近は入れるようにしていますが。

なぜかというと、人にとって一番のストレスはミスコミュニケーションだから。文字コミュニケーションがベースとなっているかぎり、たとえば他の人から何かを言われて居づらくなって、それで辞めてしまったりするようなことはなくならないんですよね。そうしたマイナスを減らすという意味で、ユーザー同士のコミュニケーションは排除しています。仲山さんが定義していた通りコミュニティにもいろいろあるので、すべてのパターンで言えることではないですけれども、@cosmeではそうしています。

一方、指標に関して言うと、僕たちは口コミの件数やアクティブユーザー数、あるいは滞在時間といったものを指標にしたことはありません。これを指標にして増やすことにすると、ユーザーになんらかのストレスをかけちゃうことになるんですよ。

ただ、相関関係はすごく見ています。自分たちと同じようなサイトとの関係を見て、「倍ぐらい差がついてきたね」なんていうことを見たりして。自分のコミュニティについて考えるときは、ほかのコミュニティとの関係性のなかで「今@cosmeはどこにいるんだっけ」と自分のサイトとは別のところを指標として見るという努力はすごくしています。

佐渡島:非常に示唆的というか、見ているのはユーザー数だけなんですか?

吉松:ユーザー数だけです。もちろんそれぞれの数は見ていますよ。口コミの件数とか。ただ、それを「これぐらいの件数にしよう」ということで目標にした瞬間、すごく苦しくなるので。他のサイトがそういった数を伸ばしていたら、その理由を考えてどんどん参照していくということはします。たとえば機能的に足りないような部分を参照するといった努力はし続けますけれども、数値目標のために頑張るということはしないようにしています。

質問4:コミュニティ内のユーザー同士に関与しない理由とは?

吉松:それは最初にお話しした熱狂、あるいはその熱狂が冷めるかどうかといったお話がポイントになると思います。たとえば浦和レッズのサポーターみたいなスポーツのコミュニティに関して言えば、コンテンツが強いし、しかもコンテンツの中身という意味では選手が入れ替わっていったりしますよね。つまりコンセプトに対してファンになっているわけで、それならユーザー同士がつながるというのは、ある意味では正解だと思っています。

でも、たとえば運動会とか文化祭はどうかというと、「お前、運動会の委員やれよ」なんて言われて頑張ってる人たちを見てると、僕なんて教室の後ろから2番目に座ってるようなやつなんで、熱いやつがいればいるほど冷めちゃうタイプという(会場笑)。大多数の人にはそういうところがあると思うんですよ。でも「誘われないと寂しい」みたいな。そういうの、ありますよね(笑)。その辺のさじ加減がうまいところは、たぶんコミュニティが続いているところなんだろうな、と。強制もなく、排除もないという。そういうダイバーシティが大事になるんだと思っています。

国にせよなんにせよ、今はもうメジャーなコミュニティって生まれ得ないと僕は思っているんですよね。昔はマイノリティの情報を伝える手段がなかったけれども、今はネットもあるから、政治でもなんでも結局はマイノリティの集団にしかなり得ない、と。で、そのマイノリティ集団がメジャー化するのではなくて、マイノリティのままプラットフォームになっていくんだと思います。

そう考えると、たとえばスポーツのチームについても、もしかしたら公認ファンクラブが1つという形ではなくて、20ぐらいファンクラブがあって、そのすべてがチーム公認なんていう不思議な世界がこれからは生まれてくるかもしれないですね。

佐渡島:マイナーなファンコミュニティがたくさん出てきて、それをぜんぶ公認にしていくっていうのは考え方ことがなかったですけれども、結構新しいかもしれないですね。MUJIというのは、たとえばMUJI好きな人たちによる自発的なコミュニティを公認していたりするようなことはありますか?

川名:吉松さんがおっしゃっていたことを同じで、強制的に何かくっつけるように促したりもしていないですね。容認して眺めているような感じです。ただ、たとえばインターネット上でファンの方々の活動なんかを見ていると、自発的にいろいろなことをなさっているんです。MUJIも商品という意味ではコンテンツがすごく強くて品数も7000点前後になるんですが、そのなかで、収納好きな人が特定の収納商品を取り上げてくれたりして。

たとえば、今はスタンドファイルボックスという書類整理の収納ケースが生産も間に合わなくなるほど売れているんですが、それも僕たちが何か促したわけじゃないんです。ファンの方々が、「台所でフライパンを立てるのに使っています」とか「子どものおもちゃの整理に使っています」とか、縦型収納として幅広く使ってくださっているんですね。

そんな風にして、7000品目のなかで「私はMUJIのこれが好き」と、商品領域ごとに細かく小さなコミュニティがたくさん生まれています。それが結果的には売上にもつながっているという形なので、あまりそこで積極的に何か関与しているということはないですね。たとえばそこでインセンティブを設けたりすると、途端に壊れてしまうんじゃないかなと思いますし。

佐渡島:強制せず長く続けていくというのは本当に難しい課題ですね。

仲山:僕はコミュニティやチームビルディングのファシリテーションって、発酵と似ているなと思っています。発酵と腐敗の違いって、人にとって良い変化なら発酵で、人の役に立たない変化なら腐敗って呼ぶらしいんですけど(会場笑)。まあ、人と人とのつながりって、そういうものだと思うんですよね。微生物同士も関係性によって出てくるものが違うわけで、安易につながりをつくれば良いことばかりというわけじゃない、と。だから僕は、ずっと一緒に糠床に入りながら「今こっちではこんな感じの変化が起こってるな」っていうことをただ感じる(会場笑)、みたいなイメージです。

佐渡島:皆さん、本日はありがとうございました(会場拍手)。

1996年東京理科大学卒業後、「アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)」入社。1999年7月アイスタイル設立。コスメ情報専門サイト「@cosme(アットコスメ)」開設にあたりアンダーセンコンサルティングを退社し、「株式会社アイスタイル」代表取締役就任。11月ニュービジネス協議会主催ニュービジネスプランコンテストにて優秀賞受賞。2002年 日経インターネットアワード2002ビジネス部門日本経済新聞社賞受賞の他、受賞歴多数。著書『crmマーケティング戦略[顧客と共に]』(共著)東洋経済新報社発行『図解でわかるくちコミマーケティング』(共著)など。

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)の編集に携わっている。

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