無印、楽天、@cosmeのマーケティング戦略から学ぶ!ファンや共感を生みだす「コミュニティ」の作り方

本記事は、G1経営者会議2018「コミュニティによるゲームチェンジ~顧客を宣伝マンに転換するマーケティング~」の内容を書き起こしたものです。(全2回 前編)

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佐渡島庸平氏(以下、敬称略):最近は「コミュニティ」という言葉があちこちで聞かれるようになってきました。ただ、この言葉は使う人によって定義が大きく変わるので、何を指しているかが人によって違うということも多々あるように思うんですね。壇上御三方の企業もそれぞれコミュニティをお持ちですが、その性質はずいぶん違っていたりします。ですから、まずは自身が手掛けているコミュニティはどういったものなのか、プラットフォームとはどう違うのかというところから教えていただきたいと思います。

熱狂しない方が「コミュニティ」は長続きする

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吉松徹郎氏(以下、敬称略):アイスタイルの吉松です。僕は@cosmeという化粧品の口コミサイトをやっています。この@cosmeというのは化粧品のコミュニティと言われていますが、実はプラットフォームとしての要素も非常に大きいのです。

両者で何が一番違うのかというと、ステークホルダーの数だと思っています。僕たちとユーザーで1つのコミュニティだと思うんですが、ブランド(メーカー)もたくさんいるので、ブランドにとってはユーザーのかたまりという面もあります。一方で、ユーザーからすると自分の知りたい化粧品のかたまりでもあります。そんな風にステークホルダーが多いので、単純な化粧品のコミュニティというよりはプラットフォームという意識のほうが強いです。

ですから、そのために必要なコミュニティづくりとは何かということをすごく考えています。よく言うんですが、僕にとってのコミュニティ、あるいは@cosmeにおけるコミュニティの特徴は「熱狂しないこと」。熱は低いほうがコミュニティは長続きするという(考え方で運営されている)のが@cosmeの特徴です。なので、なるべくそこに熱を入れないよう努力をしていたりするのが、@cosmeというコミュニティであり、プラットフォームだと思っています。

佐渡島:ありがとうございます。では、続いて楽天はどんなコミュニティでしょうか。

仲山進也氏(以下、敬称略):僕は楽天が社員20人ぐらいのときに入りまして、以来ずっと、楽天市場に出店してネットショップを運営している人と「一緒に遊ぶ係」というのをやっています。そのなかで出店者コミュニティというものについてずっと考えながらやってきているので、まずはそれが僕にとっての第一義的なコミュニティになります。

そのうえで、ネットショップで商売をしている人たちが「どんな風にして自分のお店のファンやコミュニティをつくり、商売を安定的に、消耗戦に陥らないようにできるか」と。そういう視点で出店している方々とおしゃべりをしてきました。僕にとって、コミュニティにはそういう意味合いがあります。

佐渡島:ありがとうございます。では、続いて川名さん。「無印のコミュニティ」と言われても、ちょっとピンと来ない人は多いかなと思います。でも、実はデジタルも含めて、そうした戦略をかなり長期間にわたってとり続けていらっしゃると思うので、そのあたりから教えていただいていいですか?

川名常海氏(以下、敬称略):良品計画の川名です。僕はWeb事業部ということでWebマーケティングやEコマースをやっています。私たちとしては、無印良品が提案するライフスタイルに共感する人の集まりが、大きな意味で無印にとってのコミュニティという風に捉えています。

一方、プラットフォームというと、Eコマースやファンコミュニティのデジタルプラットフォームといった狭義の意味合いもあると思いますが、無印にとっては店舗がプラットフォームということになります。たぶん皆さんのなかでも、僕たちのEコマースサイトやWebサイトに来たことのある人より、実際のお店に来たことのある人のほうが圧倒的に多いと思うんですね。そのリアルな場がプラットフォームという定義でやっています。

佐渡島:多くの人にとって宣伝の狙いというのは熱狂やバズを生み出すことであり、コミュニティをきっかけにすれば、それを生み出しやすいんじゃないかと期待している人が多いのかなと僕は思っていたんですね。ただ、先ほど控室で打ち合わせをしていたときは御三方とも違う考えだったように感じました。御三方は熱狂やバズというものについて、どのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

吉松:特に@cosmeは口コミを扱っていますけれども、口コミには2つあると思っています。バズとレビュー。この2つはまったく違うんですよね。バズは拡散で、レビューは集合知。で、@cosme1はバズを起こすプラットフォームとしては一切機能していないんです。

それと熱狂の捉え方についてですが、先ほど川名さんがおっしゃったように、ファンや共感というのは熱をつくっていく。「ファンコミュニティ」って言うじゃないですか。でも、実は@cosmeって、@cosmeのファンのために何かしているということは一切ありません。YouTubeもそうじゃないですか。YouTubeがファンのために何かしているということはありませんよね。ユーチューバーがファンのために何かしているというのはあっても。

@cosmeはコミュニティでもありプラットフォームでもあると言っていますけれども、大事にしているのは信頼や安定なんです。信頼や安定は、急に盛り上がったり下がったりすることがないんですよね。信頼は積み上げていくものだし、安定はそれを裏切らないこと。それは、嫌いなことが少ない状態ということなんだと思います。

熱すれば冷めるというのは皆同じじゃないですか。でも、僕はこうやってコミュニティのお話をさせていただくとき、いつも「噛み合わないな」と思うときがあるんですね。皆、お客さまと恋愛させたがるんです(笑)。熱したがる。でも、僕は結婚させたいんですよ。大事なのはサステナビリティであって、「嫌いじゃないほうが続きますよ」と(会場笑)。好きじゃなくても辞めないんです。常にそんな感じで@cosmeの設計はしています。

「コミュニティ作り」とは糠床(ぬかどこ)をかき回すようなイメージ

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佐渡島:結婚と恋愛という例えはすごく分かりやすいですね。楽天が信頼や安定を生み出すために何かしている工夫というのはありますか?

仲山:楽天の出店者さん…、僕は「店舗さん」と呼んでいますけれども、店舗さんのコミュニティみたいなものがはじまるきっかけって、そもそもなんだったのか。まず、1997年に多くの店舗さんがネットショップをはじめたわけですね。ただ、当時はネットショップなんて誰もやったことがなかったから、店舗さんは皆、孤独だったんです。

それで、当時は楽天スタッフと店舗さんが参加できるクローズドの掲示板があったんですけれども、そこが盛り上がりはじめていたんですね。で、そのなかで熱狂的な盛り上がりをする人が出たり、仲が良い人が出はじめたりしていくうち、「みんなで集まりたいね」みたいな感じになっていったんです。

その流れを我々のほうで見ていて、「じゃあ、オフ会がてらカンファレンスをやります?」と言って、1回やってみた。そこで、実際に出店して結構売上を出している人が自分の体験を話したり、そのあと懇親会をやったりしたんですが、それがやたらと盛り上がったんです。皆、口々に「自分と同じ悩みを持っている人が世の中にこれほどいたなんて」と、元気になって帰っていきました。かつ、そこで仲良くなった人たちはその後もメールでやりとりが続くなんていうことになりました。

それからまもなくして楽天大学を立ち上げたんですが、そこでも3日間ぐらいの合宿をやって同期になっていくと、やっぱりつながりが強くなるんです。その3日間は、皆、すごく熱量が高いんですよ。「これ、どうやってんの?」なんていう話で夜も寝ずに語り合ったりして、そこで仲良くなる。で、そのあとは熱もだんだん落ち着いていきますけれども、冷めるというよりは自然に落ち着いていく、という感じでした。

そんな風に、1度ぎゅっと熱狂的にチーム感がある状態になった人たちって、チーム感が解けていったあとも心理的なつながりが残っていたりする。それが信頼関係ということだと思うのですね。それで、何かあったときに誰かが…、その頃はメーリングリストでしたけれども、誰かが「こんなことがあって困っている」なんて話になれば皆で応援するとか、そういうことが普通に起きます。

そんな感じで、ぎゅっと集まって熱量が高まる場をつくり、それが解散したらまた別のメンバーで集合・解散、その後もさらに別のメンバーで集合・解散するような場を、僕らとしてはなるべくたくさんつくっていこう、と。すると、そういう信頼関係でつながったような人たちがだんだん増えていくので。

それでしばらく経つと、今度は売上に関する話ではなく「人が増えてチームづくりで悩んでいる」みたいな話をする人が増えたりするんですが、そこでまたチームビルディングのテーマで集めるわけです。そうすると、1期の人たち、2期の人たち…、20期ぐらいまであるんですが、それぞれのなかからチームづくりについて問題意識を持っている人がまた新たに集まって、そこでまたぎゅっと同期になる。

そういったことを通して、人のつながりが、緩やかではありますが、どんどん複雑になっていくんですよね。僕はそれについて、糠床(ぬかどこ)をかき回すようなイメージを持っているんですけれども(会場笑)。とにかく、それをずっとやっていると、いつの間にか信頼関係で結ばれたネットワークができていくというイメージになります。

佐渡島:楽天、特に学長の場合は、どちらかというと一般のお客さんというより店舗さんに対してそういうことを行う、と。そのときはちょっとした熱狂みたいなものも、瞬間的には生まれているわけですね。

仲山:そうですね。でも、テンションとモチベーションって違いますよね。テンションというのはロープを引っ張ること。パワーがいるからずっと張り続けているわけにはいかなくて、どこかで休憩しなきゃいけない。緊張には弛緩が必要なんですよね。だからテンション頼りでコミュニティを盛り上げることが大事だと思っていると、長続きしにくいんじゃないかなと思っています。

佐渡島:テンションとモチベーションを分けて考えるというのは鍵かもしれないですね。

仲山:そうです。「なんのために、このネットワークのなかにいたいか」というのがモチベーションということだと思うので。

コミュニティを長く維持するコツは「恋愛」ではなく「結婚」のような関係

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佐渡島:無印はどうでしょう。たぶん、それこそ「何十年もMUJIを使い続けています」なんていう人も世の中にはたくさんいるかなと思うんですが、ファンとの関係値を強力にしていくための工夫というのは何かあるんですか?

川名:無印良品のブランドができたのは1980年です。なので壇上では一番のお兄さんみたいになりますけれども、無印良品ができた当時は、どちらかというとまだまだ大量生産・大量廃棄という世の中だったんですね。でも「それじゃいけないよね」と。「自分でしっかりと吟味したものを使った、シンプルなライフスタイルを送る」ということに共感する人たちが増えることで、世の中はよりシンプルで豊かな生活になる、と。そういうことを目指していました。

先ほど、「無印の価値観に共感する人の集まりがコミュニティで、その人たちが集まる店舗がプラットフォーム」と言いました。MUJIの店舗を思い浮かべていただくと分かると思うんですが、過度なPOPもありません。また、店員さんがサッと寄ってきて接客をして、なんとかして今日買わせようというような「今日口説く」というような接客もあまりやりません。

それも、先ほどお話ししたアンチテーゼの1つなんですね。世の中にはいろいろなマーケティングが横行しています。たとえば、価格をアップダウンさせて興奮させながら「今だとこの額ですよ」と言って買わせてしまったり。それで購入するんですが、家に帰ってから「あれ?これって本当に必要だったかな」と感じたりするという。そんな風にして箪笥の肥やしになっているものが、皆さんの家にも1つや2つ、あるんじゃないかと思います。

モノや生活に限った話ではなくて、そうしたマーケティングに対してもアンチテーゼがあるんです。「そういうの、嫌だよね。気持ち良くないよね」と。そういうことではじまったブランドがMUJIなんですね。

僕たちのプラットフォームである店舗は、そんな目線で見ていただくと分かりやすいと思います。空間はベージュで統一されていて、どちらかというと体育会系というよりは文系の店員さんがいて、「聞かれましたら商品の成り立ちや“ワケ”はきちんとご説明します」というスタンスですね。

1つひとつの商品を見ていただいても、その辺は伝わるかと思います。価格がどーんと書いてあるようなデザインでなく、商品の生い立ち、つまり「なぜこれがMUJIなのか」ということが商品のタグに(タグが大事なデザインなんですが)、タグの文章にまとめられています。また、BGMもあまり激しい調子のものでなく民族音楽のような曲がかかっています。

なぜ、そういう空間をつくっているのか。お客さんには何かに煽られることなく、自身の価値観に合った商品を買ってもらいたいからです。商品知識を高めていただいたうえで、納得購買してもらいたいからです。そうしたことを考えて、商品や店舗、あるいはオペレーションをこれまで組み上げてきました。

そう考えると、「今日どうしても“落としたい”」というような、一夜の恋ではないですけれども、そういう売り方では意味がないと思うんですね。もしかしたらその日に買ってもらえなくても良くて、よくよく考えたうえで後日もう1回お店に来てもらったり、Eコマースで買ったりしてもらいたい。そういうことができる関係を、長期的な視点でつくっていきたいと思っています。

その意味では僕たちも、恋愛というより結婚と言えるような関係をちゃんとつくっていくというのが、コミュニティを長く維持するコツかなと思います。

コミュニティが育つまでは「我慢」するしかない

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佐渡島:御三方とも「ゆるやかなつながり」を大切にしていると感じます。ただ、ビジネスを立ち上げる際にゆるやかなつながりの人しかいないと「いつまで経っても大きくならないじゃん」という見方が一方ではあるように思うんですね。たとえば@cosmeでも、初期の段階では「バズらないと口コミも集まらないのでは?」なんていう不安はなかったのかな、と。そうした熱をつくらずに人が集まるような状況をつくるために、どんな工夫をしているんですか?

吉松:まず、今のご質問に対する答えとしては「我慢」です(会場笑)。ちゃんとコミュニティが育つまで。とにかく、促成栽培したものはどこかで必ずガタが出るんですよね。そこは野菜だって子どもだって皆同じで、育つ過程できちんと我慢できるかどうかが一番の肝だと思っています。

「@cosmeっていつのタイミングで大きくなったんですか?」ってよく聞かれるんですが、実際、データを見てもこれまでの成長ペースは一次曲線なんですよ。僕自身は今までのことを振り返って「ああ、俺、秀逸だったなぁ」と思うポイントがいくつかあるんですけれども(笑)、その1つに、事業計画はすべて(売上等の)数字でなくユーザーの伸びで書いていたというのがあります。「ユーザーが何人になったらこういうアクションを取る。それまでは1年でも2年でも待つ」と、明確に書いていました。結局、そこの時間を待てるかどうかが肝なのかなと、僕は思います。

店舗を「メディア」として捉えたことでコミュニティが急成長した

佐渡島:MUJIはブランドが元気をなくしていた一時期、ファンと一緒に商品を共創するようなコミュニティ戦略で再び成長していったことがあると、僕は感じていました。今のように大きくなっていった段階では、どんなことを考えていたんでしょうか。

川名:創業期のところも少しお話ししていいですか?先ほどは「MUJIというコミュニティをどうやってつくってきたか」というお話をしました。それで今は国内に400店舗以上、海外を含めると800店舗以上を展開していて、プラットフォームという意味では、まだまだではありますけれども、ある程度の下地はできてきたという感じです。

ただ、僕も入社する前、1980年の創業時は、まだ西友の1コーナーだったんですね。商品数も40アイテムぐらい。そこから商品が少し増えてきた1983年、青学前に1号店、今は「Found MUJI 青山」という名前になっていますけれども、1号店を出しました。30坪ぐらいのお店だったんですが、おそらくはこれがMUJIを広げたポイントになったと思います

当時、堤清二さんやデザイナーの田中一光さんは、今でいうところのプラットフォームや顧客接点といったものの1つひとつを、メディアとして捉えようとしていた。著書を読むと、そういうことをしていたんだなと思います。

P/Lで広告費と家賃を考えてみると、たとえばニトリさんは今でこそ都心にも出てきましたが、どちらかというと郊外に店舗があって、そのぶん家賃も安いと思うんですね。だから、商材的にそれほど買い替え頻度があるものでもないですし、広告費をたくさんかけるわけです。

それに対してMUJIはどうか。皆さんもMUJIのマス広告ってあまり見たことがないと思うんですね。そのぶん、どちらかというと家賃にお金をかけます。つまり店舗もメディアという考え方ですね。人が集まる好立地に出店できたら、そのぶん広告がいらなくなるという捉え方です。

そんなわけで、当時西友でやっているときはジワジワ広がっていく感じでしたが、一気にコミュニティが弾けたのは、やっぱり青山の、あの家賃がすごく高いところにお店をつくったときでした。そこで売っていたのもたとえば紙コップ等の日雑品だったりしたわけですが、それを高級ブティックが並ぶ30坪の店舗で売っていった。

あちらにもいろいろな人はいますけれども、特に日本のなかでも感度の高い、あるいはクリエイティビティの高い人たちが多いところに1つのメディアをつくったわけです。それが一気に“跳ねた”という形でした。最近「リアルも含めてメディアだ」といったお話はよく聞きますけれども、当時からそれをやっていたというのは「ああ、そこまで考えてたのか」と思います。

で、MUJIがちょっと悪くなった時期というのは2000年頃ですね。当時、経営の基調はどちらかというと「もっと拡大しよう」という戦略でした。どんどんお店を大きくして、どんどん出店していこう、と。でも、そうするとやっぱり中身が伴わないわけですね。それで、お客さんからすると「え、MUJIがこんな商品を出しちゃうんだ」というものも増えてきました。それで、いろいろなお客さんのなかでも特にコアの人たちがどんどん離れちゃっていました。

そのとき、現会長の金井(政明氏:同社代表取締役会長)が「もう1度(MUJI本来の)ものづくりやデザインに立ち返ろう」ということで、より戻しを行いました。たとえば当時はMUJIをつくったアドバイザリーボードが少し希薄化していたりしたんですね。そこで、アドバイザリーボードを再度社内にがっちり組み込んで、彼らとのコミュニケーションをやり直したりしていきました。

あるいはデザインについても深澤直人さんとか、ジャスパー・モリソンさんとか、コンスタンチン・グルチッチさんとか、そうした国内外のデザイナーの方々とともに「もう1度MUJIをつくり直そう」と。そうして、どちらかというと全体向けというよりはコアの、真ん中のファンに向けて、お話をつくり直していったことで業績も戻ってきたということがあると思います。(後編に続く)

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