オバマ大統領はあらゆる面で厳しいチャレンジに向き合っている
喫緊の課題は、議会で現在も議論されている巨大な景気刺激策だろう。オバマ大統領は民主党の支持を受け法案を通すだろうが、取り引きや背後での駆け引きなどは避けられず、時間を費やし、プロセスをさらに複雑にすることも間違いない。結局、経済を促進させるためには、各州や各都市での道路の維持管理、学校、医療、設備、政府のプログラムなどに、およそ8000億ドルから1兆ドルが注ぎ込まれなければならない。いくつかの減税策も一案として浮上してくることだろう。
しかしながら、経済効果はそれほどはっきりとは現れないかもしれない。住宅価格と株価の下落が続き、米国人は想像以上に貧困に悩み、消費者がすぐに再び消費行動に走るような兆しは見られない。シティバンクやバンク・オブ・アメリカなどの大手金融機関による損失が続く中、米国の金融システムはかつてないほど脆弱になっているように見える。現時点では、大型の景気刺激策が功を奏するかどうか、断言することはできない。様々な指標を継続的にウォッチしていく必要がある。
政府が抱える債務超過もオバマ大統領にとって問題になるだろう。遅かれ早かれ、アメリカ経済の救済策として、ためらうことなく新たな債務を累積させるはずだ。他国(特に中国と日本)がアメリカ国債を買い続けるかどうかというポイントが、米経済が実質的に機能し続けられるかどうかの鍵になる。米国債の市場が衰えるようなことになれば、金利上昇によってあらゆる初期的な経済回復も破綻するに違いない。
国内問題同様に、国際問題もチャレンジに満ちたものになる。彼は今のところ、2010年までにイラクから米軍駐留部隊を引き上げることを約束している。大統領就任演説では、「アフガニスタンでの平和を勝ち取るために邁進する」と述べている。来月予定されているイスラエルでの国内選挙に伴い、パレスチナ人との長期に渡る紛争問題を抱えるイスラエル新政府とも仲介を果たすことになるかもしれない。オバマ大統領が最初に取りかかった仕事の一つとして命じたキューバのグアンタナモ収容所の閉鎖も問題を抱えている。このように、ブッシュ政権の政策に反対する政策にはインパクトがあり、影響も大きい。これら外交政策の転換に関して、オバマ大統領の決意は、非常に固そうだ。
米国民は事態の決着を付けるまでの時間と余裕を、オバマ大統領に与えることを望んでいる面もある。オバマ大統領は現在アメリカ人の10人のうち7人に支持されている。その支持率は、記憶する限り、就任直後の支持率としては歴代大統領の誰よりも高いものだ。しかしながら、これからの政策の結果によって支持率が保たれるかどうかが決定される。有権者たちは、2010年11月に予定されている中間選挙によって、間接的に彼のパフォーマンスをふるいにかける次の機会が与えられる。これから始まる道程は、長いように見えるが、明らかに、そのときまでに確かな実績を達成できるよう、オバマ大統領は願っていることだろう。