女性管理職育成に悩む企業
3月も終わりにさしかかり、多くの企業では年度末の締めくくりと新年度の準備に忙しいのではないでしょうか。新年度が始まって間もない6月には、多くの企業で株主総会が開かれます。そこへ向けて、女性取締役を登用する動きが広がりそうという報道がありました(日本経済新聞、2018年3月17日)。政府からも女性取締役の積極的な登用を求める要請が強まっており、企業は対応を迫られています。
一方で、「これまで女性の幹部人材育成を怠ってきた結果、多くの企業が内部昇格させられる女性人材の不足に悩んでいる」という指摘もあります(同報道より)。日本では1986年に男女雇用機会均等法が施行されましたが、その頃に幹部候補である総合職として採用された女性の多くは、様々な理由により離職してきました。また、離職をしなかったとしても、企業内キャリアを積み重ねた結果として上位ポジションに就いている女性は少なくなっているのでしょう。
とはいえ、企業内キャリアの積み重ね~すなわち昇進の有無や仕事の割り当てられ方は、そんなに経営層人材として必要な能力の獲得に影響をしているのでしょうか。そのヒントになる考え方として、古典的ではありますが、マネジャーに必要な能力を3種類に分類した「カッツ理論」があります。
カッツ理論とは
「カッツ理論」とは、マネジャーに必要な能力を「テクニカル・スキル」「ヒューマン・スキル」「コンセプチュアル・スキル」の3種類に分類し、マネジメントの階層があがるに従って、その比率が変化するとする理論です。
トップマネジメント層になるほど「コンセプチュアル・スキル」、すなわち目の前の業務にとどまらず、企業や産業、社会全体がどうなっていくのかを高い視点から考える抽象化能力が必要とされます。一方で、職場の監督者レベルには「テクニカル・スキル」、すなわち担当業務を滞りなく遂行する能力がより多く求められます。「ヒューマン・スキル」、すなわち対人関係能力はどのマネジメント層でも重要なスキルです。
未来に向けた女性人材の育成
日本の多くの企業は、異動や昇進、それに伴い与えられた(場合によってはタフな)仕事への対峙を重ねていく中で、コンセプチュアル・スキルを獲得していく過程を内包していたのではないでしょうか。現在、経営層人材適齢期にある多くの女性は何らかの理由でその過程に乗れなかった、よって多くの企業が内部昇格させられる女性人材の不足に悩む状況になったと考えられます。
同報道によれば、「急場をしのぐため、社外取締役に女性を据える企業は多く、複数の企業を兼務する女性社外取締役が目立つ」とのことです。とりあえず現在は企業外から迎えるとしても、それぞれの企業において女性経営層人材の育成は急ピッチで進められていると思われます。加えて考えなければならないのは、未来に向けて若手女性人材の育成はどうすれば良いのか。カッツ理論を眺めながら自社の人材育成プランを見直してみると、良い気付きがあるかもしれません。