米国消費者の代打探し
世界の消費者の購買力は安定している。過去数年にわたり、そのように私たちの目には映っていた。モノやサービスを消費する人たちはそこらじゅうにいるのだと。だが、ここ数カ月で二つの事が明らかになった。購買力を支えていたのは米国の消費者であり、彼らにはこの先、消費を支えていく支払い能力がないということだ。
サブプライムローンに代表される金融派生商品の問題は、世界的な株価急暴落と経済停滞を引き起こし、米国の消費者心理はかつてなく冷え込んでいる。
当然、日本や中国のように、米国輸出により成長を維持していた国の経済は揺らぎを見せている。日本の米国への輸出は昨年度に比べ10%減少しており、中国経済は景気後退局面に向かいつつある。
かつての米国と同等の購買力を持つ国が出現しない限りは、世界経済の回復はかなり先になってしまう。果たして現在、強い購買力のある国は存在するのであろうか。「最後の消費者」として、世界経済を支えることができる可能性があるのは、一体どの国なのだろうか。
欧州、中東、インド・・・
まず欧州に目を向けてみよう。金融危機は経済を直撃しており、消費と雇用は停滞の一途をたどっている。また、人口成長率の鈍化で高齢化も進んでおり、期待を持てる状態ではない。
では、中東はどうか。石油価格の高騰が急成長をもたらしてきたものの、1バレルあたり50ドルと石油価格は下落の傾向にあり、成長の勢いは落ちている。そもそも、市場規模もそれほど大きくない。
インドにはポテンシャルは十分にあるが、消費額自体がかなり小さく、世界経済全体に影響を及ぼすのはまだまだ先の話である。アフリカ、南米経済も、同様の状況である。
残るは、米国に数多くの製品を供給し続けてきた東、東南アジアである。中国、台湾、韓国、タイはここ数十年、著しく成長しているが、やはりまだ消費規模が十分ではない。
なにせ世界経済を支えてきた米国は、毎年10兆ドル以上を消費し続けてきた。同じ規模で消費できる国は、今のところは存在しない。おそらく、複数の国をもってしても、米国並みの経済力を実現するまでに、数年はかかるだろう。
米国の代打が打席に立つまで、世界経済は消費低迷と所得減少に直面することになる。特に、これまで拡大の一途をたどってきた消費を頼りに成長してきた産業にとっては、しばらく難しい局面を迎えることは間違いない。しかしながら、明るい展望もある。数年待ち、消費が回復した暁には、もはや米国一国依存ではなく、複数の国がそれなりに世界の消費に貢献できる状態になっているはずだ。
このように複数国が世界経済を支え、現在よりも更に安定した経済システムが実現するだろう。少なくとも、また次の何かのバブルが訪れるまでは……。(英文対訳:岩田あさみ)