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スケールの大きくなるスタートアップの支援を拡大 GCP7号ファンドの狙い#1

投稿日:2023/04/26

GCP(Globis Capital Partners:グロービス・キャピタル・パートナーズ)は、新たな旗艦ファンドである7号ファンドにつき2023年3月末をもって合計727億円で募集完了した。本記事では、7号ファンド立ち上げの背景や、目指す方向性などについて、7号ファンドからジェネラルパートナーとなった福島智史と湯浅エムレ秀和の2人に聞いた。(聞き手=吉峰史佳)

優秀な人材が継続的にスタートアップに流入するように

――7号ファンドはなぜ2022年というタイミングで組成されたのでしょうか。

福島:エムレさんも私もこの仕事を始めて9年になりますが、変化という意味では、これまでスタートアップに来なかったような優秀な人が、一時的ではなく持続的にスタートアップに流入するようになってきました。その結果、大規模な資金調達が可能になり、これまででは出来なかったようなチャレンジをするスタートアップが増えています。

政府もスタートアップを日本の新しい競争力の源泉と見なすように変わっています。そういう環境の中で、従来の起業家に寄り添ったサポートを継続しながらも、世界に向けてスケールの大きいチャレンジをするスタートアップを応援できるパワーを持ちたい、と。それが7号ファンド設立の狙いです。結果として、7号ファンドは727億円と、400億円の6号ファンドと比較しても一社あたりに投資できる金額を拡大したものになりました。

湯浅:補足すると、4号(115億円)は2013年、5号(200億円)は2016年、6号は2019年というように、3年ごとにファンドレイズしながら、2022年に7号ファンドを立ち上げています。基本ポリシーとしての「3年ごと」は従来通りですが、今後はさらに大きなチャレンジをするスタートアップが現れるだろうと予想しているので、そこを応援するために、過去最大規模のファンドを立ち上げるに至ったのです。

――経営者だけではなく、従業員も優秀な人がスタートアップに集まって、より大きな事業をされようとしている。それが1つ2つではなく、業界としての方向性になっているということでしょうか?

福島:そうですね。社会に新しい価値を提供できるような、世の中全体をアップデートできるような大きなチャレンジのために自分のキャリアを投資したいと考える方が増えていますね。

湯浅:その野心や取り組みの規模も拡大しています。たとえば、メルカリは上場時に評価額4000億円、その直後に7000億円をつけて、1兆円を超えたこともありました。なおかつ日本だけではなくアメリカも攻めている。こういう会社が日本から出てくると、野心のある起業家は、同様の大きなチャレンジをしたいと考えます。

メルカリの成功を中で体験した人が、次にどこかスタートアップにジョインする時、もしくは自分で起業する時は、その成功体験からの学びを生かせます。そういう形で天井を引き上げていくような効果があると思います。

「ユニコーン超え」のスタートアップ支援を

――7号ファンドでは、どのようなスタートアップに投資したいと考えていますか。

湯浅:6号は「ユニコーンファンド」と捉えていましたが、7号は「ユニコーン超え」を応援したいと考えています。その領域は2つです。

1つは医療、建設、製造業、不動産など国内だけで十分に大きな市場がある業界。

もう1つは、国内発で海外に出ていって現地で日本の強みが生かせる領域です。後者は日本のコンテンツ産業やエンタメなど、海外でも評価されている領域です。そこをしっかり後押ししていきたいのです。

――これまでも原則として「市場規模が大きいところ」に投資をされてきたと思うのですが、何が違うのでしょうか。

福島:今までのスタートアップは、大きな産業における特定の課題解決にフォーカスしていました。たとえば、これまでのVC(ベンチャーキャピタル)やスタートアップに流れるお金の量では、工場を効率化するためのプログラムやAIの活用はできても、工場そのものはつくれませんでした。だから、ロボット技術を得意とするハードウエア会社と、ロボットにAI的な機能を搭載することが得意なソフトウエア会社は、個々に立ち上がっていました。

それが優秀な人材と、調達資金が大きくなったことで、一致団結して新しいソリューションを生み出せるようになるかもしれない。そういう違いがあります。

なので、7号ファンドからは一つの枠組みに捉われない拡張性のある事業、もしくは事業のシナリオに対してもチャレンジしていくことになるでしょう。

複数のエリアで同時にグローバル展開することが可能に

――グローバル市場も同じでしょうか。

湯浅:最近は日本でもスタートアップが1社で数百億円の調達をする事例が増えています。このような大型調達が益々可能になると、起業家も最初からグローバル市場にアクセスして攻めたいと考えるだろうし、そこから逆算して事業を起こすような事例も出てくると思います。

福島:私が担当しているAIメディカルサービス社のようなグローバルで競争力のある特定のサービスや技術の場合、いろいろな国からの引き合いが同時多発的に来ます。これまでだったら南北アメリカとヨーロッパ、そしてアジアを同時に攻めるという話があったとしても、「無茶だ」「資金はどうするんだ」とストップがかかったと思いますが、今なら、そういうケースでも十分に手当ができるのです。そういう背景から、ファンドサイズを大きくしているし、チームも増強しているのです。

ファンドサイズの拡大に伴いGCPの役割も変化

――そうしたなかでGCP(Globis Capital Partners:グロービス・キャピタル・パートナーズ)としての対応はどう変わってくるのでしょうか。

湯浅:もともとGCPは、「ハンズオン支援」を強みとしてきました。ハンズオン支援とは、投資先に資金を提供するだけではなく、社外取締役などに入って経営陣と近い関係で日々の経営課題に対して共に解決を目指すものです。その過程において、我々キャピタリストが持つネットワークによって人の採用をしたり、顧客候補や事業提携先を探したりと、アクティブに展開していきます。

投資先が多様化し、やることがより複雑に、そして野心的になっていく中では、支援する我々も変わっていく必要があります。3年ほど前から、「GCPX」という投資先支援専門チームを立ち上げ、エグゼクティブハイヤリングやミドルマネジャーの採用といった主に組織系の支援をしています。最近ではエンジニアの採用までお手伝いできるようになっています。

しかし、これだけでいいとは思っていません。今後はグローバル展開を目指すスタートアップのサポートメニューを増やしていきたい。例えば、2023年4月にはGCPのサンフランシスコ拠点を設立しました。この拠点はグロービスUSAと共同で運営しており、GCP投資先でもあるスマートニュース社と同じビル内にあります。アメリカ展開に挑戦する投資先がこの拠点を利用することで、先駆者であるスマートニュースのアドバイスも受けられますし、投資先間の情報交換も促進できると期待しています。

また、直近では海外VCとの連携も強化しています。それぞれの市場に根ざした現地VCと共同投資することで様々な知見や支援が受けられることを期待しています。我々も今後は海外に出向くことが増えるでしょう。

後編に続く

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