企業文化を変えるために必要なのはトップの覚悟――H.I.S.澤田会長の再生の鉄則 

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前回に続き、「第2回G1九州inハウステンボス」より、第1部全体会「ハウステンボスのV字回復に見る地方創生の秘訣~ピンチをチャンスに~」の内容をお届します。(全3回) 動画版はこちら>>

企業文化を変える

秋山咲恵氏(以下、敬称略): 今日はきれいな成功物語だけでなく、「なぜこういうことができたのか」「ああいうことが出来るようにするため、私たちはどうすればいいのか」といったお話を伺いたいと思います。

まず、ハウステンボスは18年間赤字で苦しんでいて、社長もたびたび替わっていった末に澤田さんが社長となりました。そうなると、そこで働いている方々から見れば、「また次の社長が来た」という状態からのスタートだったと思います。そういう方々も、先ほどの映像にあったように笑顔で仕事をしていただけるよう変えていったステップやヒストリーとして、一体どんなことがあったんでしょうか。

澤田: やっぱり当時は負け癖がついていましたし、そういう企業文化を変えるのは本当に難しかった。口でいうのは簡単ですが。実際、当初は非常に苦労しました。何人も社長が替わったすえに私が入ったわけで、皆、「また2~3年でダメになってどっか行くんじゃないか?」という気持ちが半分ぐらいありましたから。「そういう気持ちを持たず、明るく元気に楽しく」と、口で言われてもなかなかやれませんし。

秋山: 澤田さんが社長となって、働いている方々としては、日々の仕事とともに新しいチャレンジも出てきたと思うんですね。それがうまくいったこともあれば、いかなかったこともある、と。そのなかで、何かどこかで歯車が噛み合って、一気に広がっていったのでしょうか。

澤田: ハウステンボスは今でもまだまだ、僕に言わせれば57~58点です。ただ、先ほどお話しした「3つのことを皆でやっていただければ黒字になります。黒字になればボーナスが出ます」という話を最初にして、それから約半年後には少し黒字になりました。それでボーナスも、少しですが出すことができた。その辺から「ひょっとしたら」という変化はあったんじゃないですかね。なんぼ口で言っても企業は結果が出ないとダメだと思いますし、その結果が出せたというのは大きな変化につながったと思います。

秋山: 特に経営面で行き詰まっているときは、お金の問題もあれば、人の問題もあれば、いろいろな問題が複雑に絡み合っているケースが多いと思います。お金の部分については債権放棄等々いろんな手立てを講じられたこともメディアの記事等で読んでいますし、その辺については、ある意味、やればやりようはあったかもしれない。

ただ、おっしゃる通り、人の問題はたしかに一筋縄ではいかないと感じます。澤田さんが社長になられた以降、ハウステンボスで働いていた方々は今もほぼ残っていらっしゃるんですか。または入れ替わったりして、だんだん変わってきたのか。あるいは澤田さんがどちらかから自分の右腕左腕になるような方を連れてきて、物事を推進していったりしたのか。どのように変えていかれたのでしょうか。

澤田: 僕は、リストラは一切しませんでした。ただ、本部長ですとか、ある程度キーになる人材については、その能力があって結果を出せる人じゃなかった場合、そこを替えたりはしていましたね。結果を出していかないと皆にも変わっていただけませんから。

秋山: いってみれば“物理的リソース”は変わらない状態で、以前とは違う結果を出していったということなんですね。どうすればそういうことが可能になるのでしょう。

澤田: 昔から言われている通り、企業というのは人次第だと思うんですよ。そのなかで、まず1番大切なのはトップ。トップ、リーダーによって会社は良くなるし成長もしますし、逆に悪くもなります。トップが「この会社を将来こういう風にしよう」という志や目標や夢を掲げて、きちんと結果を出すことが1番重要だと思います。

その次に大切なのが、たとえばハウステンボスのような千数百人規模の組織なら事業部の責任者がきちんとしていることです。ですから、そのあたりの人材は少し替えました。それほど多くはありませんが、それでH.I.S.からも2~3人に来ていただいています。

なぜ運気を大切にするのか?

秋山: そうした人の課題にも関わってくるかもしれませんが、澤田さんは他のインタビュー等で「運気」というものにたびたび触れていらっしゃいます。運気と人材の活用・登用について何か考えていらっしゃることがあれば、それもぜひ共有いただけますか。

澤田: 人間ですから、運のいいときも悪いときもあると思います。ただ、僕はできるかぎり運を大切にする。運を大切にするということは、運の良い企業、たとえば成長している企業や今元気な企業と付き合うということです。そうすれば自分の運も良くなっていくと思う。あるいは運の良い人と付き合う。元気で素晴らしい人間性で、かつ、きちんとお仕事をなさっている方と。運の悪い人と付き合うと騙されたり、下手したら刺されたりしますから(笑)。

もちろん人間には嵐に見舞われているときもあります。ですから、あえて言えば、本当に運が悪いときはもうあまり動かない。いずれ嵐は過ぎ去ります。で、過ぎ去ったときに思い切って打って出ていく。そんな風に、完全にコントロールはできませんが、それでも運を大切にしていくことで良い運を呼び寄せることはできると思います。

僕としては、全部とは言いませんが、ほとんどの企業活動は運が大きく左右していると思っているんですね。巡り会いも運。極端な言い方をすると、100万年前のお父さんとお母さんが戦いや病気があったりしたなかでも遺伝子をつなぎ続けた結果として、皆さんは今ここにいらっしゃるわけですし、今ここで巡り会っているわけです。これは奇跡的な運ですよね。だからやっぱり運は大切にするべきだという持論が僕にはあります。

秋山: 運を呼び寄せる、運気を良くする、あるいは自分がもっと運の良い人間になるには、どうしたらいいですか?

澤田: やっぱり、人を騙したり、変な人や悪い企業と付き合ったりしないとか。そのうえで人間性を高め、前向きで明るく、志を高くしていれば運は良くなるんじゃないかと思いますね。

秋山:  特に事業をやっていると、思うようにいかないことのほうが多かったりします。あるいは、外向きには明るく元気に振る舞っていても、気持ちのほうがなかなかついてこなかったりする、なんていうこともあるんじゃないかなと…、私にはあるんですけれども(笑)。

澤田: 私もしょっちゅう(会場笑)。問題のない企業はないし、失敗しない人間もいないと思います。ただ、苦しいとき、問題があるとき、うまくいかないとき、どんな風に振る舞うかが一番大切だと僕は思うんですね。そこで嘘でもいいから明るく元気にやっていれば運は早く戻る。逆に、問題があるときにどんどん暗くなったり悩み続けたりしていると運も落ちていきます。なので、トップは悪いときこそ明るく元気に。人間ですから右肩上がりで調子のいいときばかりじゃない。でも、悪いときが一番大切。そういうときはスタッフも上を見ていますから。

とにかくイベントを打ち続ける

秋山: 今日はのちほど皆でハウステンボス内を散策するスケジュールもありますが、澤田さんとして「ここを見て欲しい。ここはこんなストーリーがあるんだよ?」というところが何かあれば、ぜひご紹介いただければと思います。

澤田: 今、花の世界大会を開催しています。「ホテルヨーロッパ」で海外の著名フラワーアーティストの生花を展示していたり、パレスでも美しいガーデニングショーが開催していたりしますから、ぜひ観ていただきたいですね。あと、ユニークなものとしては「VRジェットコースター」というのがあります。VRなんですが、ジェットコースター。世界一長くて高くて早い。怖いけど楽しいアトラクションです。

あと、うちの歌劇団。宝塚歌劇団に負けないよう学校から設立していて、今は3期生か4期生ぐらいが勉強しています。夜は歌劇団のショーもありますから、ぜひご覧ください。あと、「光の王国」は11月3日がグランドオープンなんですね。ですから今はちょうどつくっている最中で少し中途半端だと思いますが、とにかく、一度と言わず二度三度お越しいただければありがたいです。で、改めていらっしゃる際は、男性の方は奥様を、女性の方は彼氏や旦那様を連れて来ていただければ、と。

秋山: そういえば今日こちらに到着してから園内を少し歩いていたんですが、一緒にいらした方の中で、「ずいぶん前に来たことがある。そのとき受けた印象と今日の印象がずいぶん違う」とおっしゃっていた方がいました。実際、澤田さんが社長になってずいぶん変わったと思いますが、園内のどんなところから手をつけていったんでしょうか。今日ご紹介いただいたようなものが生まれるまでのヒストリーも少しご紹介いただけますか。

澤田: 「やっぱりイベントをやらなきゃ」ということで、とにかく新しいイベントを続々打ち出していきました。で、たとえばチューリップは以前からありましたが、「もっときれいに見せよう」「日本一の豊富な種類を揃えよう」ということで、チューリップ1つとっても昔より良くなっていると思います。で、チューリップが終わったら次はバラ。「百万本のバラ」は本当に感動的なイベントです。そして次が「あじさい祭」で、そのあとは「ゆり祭」。そうして今はフラワーガーデンもつくったり世界的大会も開催したり。一方、冬は「蘭」です。すばらしい蘭の作品をデザインしました。ということで、まずは可能なかぎり花のイベントを続けて開催して、いついらしても花を見ていただけるという状態にしていきました。

ただ、ファミリーのマーケットやシニアのマーケット等々、マーケットにもいろいろありますから、イベントもそれに合わせて開催します。それで夏場はプールにロングスライダーをつくったり、海上プールをつくったり。季節やマーケットに合わせたイベントを行っていますね。

秋山: 冒頭で「無駄を省くために広大な敷地の1/3ぐらいをフリースペースにした」といったお話がありましたけれども、そこは今どうなっているんでしょうか。

澤田: 今でも3分の1はフリーゾーンですが、今はそこでもお店が再びオープンしています。当時はそのエリアの店舗がたくさん閉まっていたんですね。お金を払って入ったエリアで店が閉まっているのは良くないので、1/3をフリーゾーンにしたうえで、店舗のほうはすべて有料ゾーンに移し、園内はすべてオープンの状態にしました。ただ、今はおかげさまでそのフリーゾーンでも全店舗が再びオープンしています。それで今はもう園内に店を出すだけのスペースがないほどの状態で、出口のところに新しい店舗をつくっています。

スピーカー

株式会社エイチ・アイ・エス代表取締役会長ハウステンボス株式会社代表取締役社長澤田ホールディングス株式会社代表取締役社長1980年、インターナショナルツアーズ( 現:エイチ・アイ・エス) を設立。1996年、オーストラリアにThe Watermark Hotel Gold Coastをオープン。同年、スカイマークエアラインズ(現:スカイマーク)を設立、2010年、ハウステンボス株式会社の代表取締役社長に就任。

モデレーター

1987年京都大学法学部卒業。現:アクセンチュア入社。1994年株式会社サキコーポレーション創業。マシンビジョン技術を応用した産業用自動検査ロボットメーカーとして世界市場でブランド確立。
産業競争力会議民間議員(2012-14)、国家戦略特区WG(2013-)、株式会社ローソン社外取締役(2014-)

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