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澤田秀雄H.I.S.会長が語るハウステンボス再建「3つの施策」

投稿日:2017/11/27更新日:2019/04/09

九州と全国を代表するリーダーが集い、長崎県のハウステンボスで行われた「第2回G1九州inハウステンボス」。第1部全体会「ハウステンボスのV字回復に見る地方創生の秘訣~ピンチをチャンスに~」の内容をお届します。(全3回)

難しい案件にチャンレンジしたい

澤田秀雄氏(以下、敬称略): 皆さま、ハウステンボスにようこそ。私とハウステンボスの関わりは今から7年少し前、佐世保市の朝長則男市長がエイチ・アイ・エス(以下、H.I.S.)にいらして、「ぜひ再建を」ということで依頼されたのがはじまりです。「18年間ずっと赤字で、これまで何度も社長が替わっても黒字にならない」ということでいらっしゃいました。でも、当時の僕は即座に断りました。

なぜか。非常に難しい案件だったんです。まず、テーマパークをつくってはダメなところにつくってしまっていた。テーマパークをつくる条件は、まずそのエリアに大きな市場があることです。東京ディズニーランドには関東で3,000万人の市場があり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも関西で1,000万~2,000万人の市場があります。でも、佐世保は長崎市と合わせても100万人いきません。九州全体でも市場としては1000万人に届かないということで、すごくマーケットが小さいわけですね。

また、アクセスも大切です。東京ディズニーランドは東京駅から15分で(舞浜駅に)着きますが、こちらは東京から(長崎空港まで)1時間40~50分。ということで、1度は来ても2度は来ていただけない。リピーターになっていただきづらいんです。あと、あえて3つ目の理由を加えると、テーマパークは雨が降るとお客さんが3割ほど減るんですが、長崎はどうか。「あゝ 長崎は今日も雨だった」(会場笑)。それぐらい雨が多い。

ということでお断りしたんですが、市長は大変熱心な方で後日またいらっしゃいました。で、またお断りしたんですが、3回目に来られたらアウトです。僕は3回頼まれるとノーと言えない。ですから「市長からのアポイントは取らないように」と言っていたんです(会場笑)。そうしたら今度はアポイントを取らず朝1番にいらして、ばったり出くわしてしまった(笑)。それで最後は「ぜひ」ということでハウステンボスの再建を目指すことになりました。

ただ、いずれにしてもハウステンボスが閉鎖されたら九州の観光は打撃を受けますから、そういう意味で「九州の観光のお手伝いができたら」という気持ちはありました。それともう1つ、僕自身は今まで「再生請負人」ということでたくさんの会社を再生してきました。珍しいところだとモンゴルで赤字だった銀行の再生なんていう案件もありました。そこは今、モンゴルでトップの銀行になっています。あるいは芦屋のヨットハーバーや現九州産交グループ。破綻した山一證券傘下の証券会社を担当したこともあります。今はエイチ・エス証券になりましたが、9年間ずっと赤字だったその証券会社もおかげさまで黒字化いたしました。

そんな風に数々の企業を再建してきて、僕自身は「再建屋」のようなところがありましたから、ハウステンボスという大変難しい案件に1回チャレンジしてみたいという気持ちもあった。たぶんそれが1番大きかったと思います。観光のお手伝いと、難しい案件にチャレンジしたいという思い。その2つがあって担当させていただくことになったといういきさつです。

赤字企業を黒字化させる3つのポイント

では、ハウステンボスはどうして再建できたのか。普通にお話ししたら10分では説明できないですよね。簡単にまとめます(笑)。18年間続いていた赤字を黒字にするため何をしたか。企業は3つのことをやるとだいたい黒字になります。まず、今まで再建で見てきた数多くの企業に共通する特長として、発展している企業や良い企業は“クリーン”。掃除がきちんとされている。ハウステンボスは今もまだ58点ぐらいですが、とにかく良い企業はオフィスやレストランがきれいなんです。ですから「まずはきちんと掃除をしましょう」ということを最初にやっていきました。

2つ目は、皆を元気にすること。当時は皆が暗かった。18年間ずっと赤字でボーナスだって10年間1度も出ていない。給料も下がることはあっても上がることはない。そんな状況でしたから皆が暗かった。ですから「嘘でもいいから明るく元気にやってほしい」と話していました。「問題があるとき、失敗したとき、苦しいとき、嘘でもいいから明るく元気にやってください。そうすると黒字になります」と。「それで黒字になったらボーナスが出ますよ?」なんてうまいこと言いつつ(笑)、とにかく明るく元気に。「せっかくお客さんに来ていただくんだから楽しくお願いします」と話していました。

で、3つ目の施策で完全に黒字にとなります。3つ目は何か。どんな企業でも探せば無駄は必ずあります。ですから「とりあえず経費を2割下げよう」と。それで売上を2割増やしたら“上下”でだいたい4割。それで黒字にならない企業はほとんどないんです。

経費2割削減というと効率化や合理化等いろいろありますけれども、「どうしても効率化できず2割下げられない方は、ぜひ1.2倍の速度で歩いてください」と伝えました。ハウステンボスを端から端まで歩くと20~30分かかります。ですから1.2倍の速さで歩いて仕事をしていただく。1.2倍の速度ということは10時間かかる仕事が8時間でできますから、それで2割の経費削減になります。

また、ハウステンボスは東京ディズニーランドの1.6倍の広さなんですが、当時、そんな広さは必要なかった。集客は東京ディズニーランドの1/10ぐらいですから。ということで1/3をフリーゾーンにしました。そんな風に思い切ってカットしたら経費が2割超下がりました。

オンリーワンかナンバーワンになる

じゃぁ、次はお客さんを2割増やすためにどうするか。こちらは、そんなに簡単じゃないんですよね。とりあえず、まずはH.I.S.が得意とする「値段を安くする」という施策をとりました。どっと低価格にした。でも、お客さんは増えなかったですね。それでどんどん安くして、「もう夜はタダにしよう」と。でも、タダでもいらっしゃらない。「なんなんだ、ここは」と(会場笑)。

それで改めて園内をよく見て廻ってみたんですが、たとえば今「スリラーファンタジーミュージアム」というエリアになっているところへ行ってみると、怖いんですよ(会場笑)。「怖いから来ないんだ」と。夜は暗いし寒いし面白くない。それじゃあお客さんも来ないでしょうということで、「じゃぁ、イベントをやろう」と考えました。イベントをやっていかないとお客さんも増えないということで。でも、最初はそれも失敗ですよ。値段を下げても、新しいイベントをやってもお客さんは増えませんでした。

たとえば隣の有田ではGWに開催される「有田陶器市」に、たった1週間で100万人が集まります。7年前のハウステンボスには年間140万人しかいらっしゃっていなかったのに。だから、せめて有田の真似をしてですね、「陶器市をやれば20万人ぐらい、2割ぐらい増えるんじゃないか?」と。それで陶器市を開催したんですが、全然いらっしゃらなかった。

それで「なんで来ないの?」とスタッフに聞いてみると、「まぁ、当たり前じゃないですか?」と言うんです。有田の陶器市は歴史のある立派な陶器市。でもハウステンボスの陶器市はたいしたことない、と。で、そこまではまだ許せるんですけど、「入場料を払ってまでハウステンボスの陶器市は見に来ないです」と言うわけです。有田のほうは入場料がかかりませんので。そんな風に、とにかくいろいろとイベントを仕掛けていきますが、失敗します。

ただ、そこで失敗から学ぶことが非常に多かった。なぜ失敗したのか。「真似してもダメなんだな」とか、いろいろ分かってくる。じゃあ、次はどう仕掛けていったかというと、やるならナンバーワン、もしくはオンリーワンのことをやろうと考えました。最初に仕掛けたオンリーワンは何か。「旬なことをやろう」と考えていた我々は、当時『ワンピース』が最も盛りあがってきたときだったということで、同作品に登場する船をつくりました。本当に200人が乗船できる船で、これはヒットしましたね。計100万人以上が乗船しました。今は名古屋の「ラグナシア」というテーマパークに移りましたけれども。

で、その次にやったのが「光の王国」。11月にはじまるイルミネーションのイベントです。当時はイルミネーションが流行りはじめていて、これについても「やるなら日本一のイルミネーションにしようじゃないか」と考えました。それで当時は700万球…、今は1300万球になっていますけれども、日本一・東洋一のイルミネーションをつくりました。ここはナンバーワンでないとだめなんです。他がやっていないオンリーワンか、ナンバーワンのことをやればお客さんは集まるということが徐々にわかってきました。とにかく冬は寒くて暗いので、明るく暖かくなる東洋一のイルミネーションをやって、これもヒットしました。

ということで、そのあたりから続々とイベントもヒットしていくようになります。「バラ祭」というイベントも人気です。5月頃からは感動的なほどバラが咲きほこります。だまされたと思って女性の方は5月20日前後にいらしてください。以前からバラ自体はあったんですが、お客さんがいらっしゃらなかった。「ボタニカルガーデン」なんて、なにかこう…、ぼたもちみたいな名前で宣伝していて(会場笑)。「これじゃ集まらんだろう」と、イベント名を「100万本のバラ祭り」に変えました。これもヒットしました。そんな風に、とにかく感動的なこと、もしくはオンリーワン、ナンバーワンのことをやる。それでイベントもヒットするようになり、以降の7年間は2ケタ成長を続けます。

ただ、そんな風にして「いけるかな?」と思っていたとき、東日本大震災が発生しました。で、それもうまく乗り切りって、また「今度はいけるかな?」と思ったら熊本地震が発生して…、まあ、なかなかやりがいのあるビジネスです。それで「今度こそいけるかな?」と思った今は人口が減りはじめている。

ということで問題はいろいろありましたけれども、とにかく良いイベントをやること。そして、ビジネスはすべて同じだと思いますが、オンリーワンになること。自分のところでしかやっていないものなら成功の確率は高まると僕は思います。人の真似をしても利幅が少なくなるだけ。でも、オンリーワンかナンバーワンになれば利益率もぐっと変わります。そういうことを今のビジネスで感じています。ありがとうございました(会場拍手)。

第2話「企業文化を変えるために必要なのはトップの覚悟――H.I.S.澤田会長の再生の鉄則

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