日本からユニコーンを生み出すのは、Day1からグローバルで戦う視座

政府によってスタートアップ創出元年と位置付けられた2022年が終わろうとしている。取り組みの中で政府は大幅なスタートアップ支援策の拡充を発表したが、そもそも現在日本のスタートアップはどんな環境に置かれ、どういった課題を抱えているのだろうか。

次世代のイノベーターを育成してきた「始動」をはじめ、数々のスタートアップ支援プログラムの創設に携わる経済産業省の石井芳明氏をお招きしてのインタビュー。後編は、ユニコーンに成長し産業構造を変えていけるような企業・経営者のロールモデルを日本でうみだす方法について語る。(前後編、後編)(前編はこちら

スタートアップを取り巻く環境は、変わりつつある

田村:シード期のアクセラレータープログラムであるG-STARTUPでは、若手の起業家、起業を志す学生の方と話す機会があります。会話をしていると、若年層にとって起業する、あるいはスタートアップで働くということへのイメージはここ数年で大きく変わり、当たり前の選択肢になってきていると感じます

石井:日本のスタートアップを取り巻く環境はいま、変わりつつあります。最近は政府においても、以前はスタートアップとの関わりが薄かった省庁から「スタートアップ向けの支援策を強化したい」と僕ら新規事業創造推進室にお声がけを頂くことが増えてきました。

田村:世間一般としても、スタートアップが随分と身近な存在になってきた様に感じますね。

石井:2022年は『ユニコーンに乗って』というドラマが放送されていました。スタートアップの女性CEOが経営に奮闘する物語ですが、学生ビジネスコンテストを経ての起業やエンジニアの争奪戦、元金融機関の年上部下とのコミュニケーション、またEXITがM&Aだった点なども、リアルなスタートアップらしい題材が盛り込まれていましたね。これが地上波放送のTVドラマで話題になったというのは、今までにないことだと思います。

田村:私自身はいわゆる大企業のオープンイノベーションの取り組みの一環で社内起業家育成プロジェクトやアクセラレータープログラム・コーポレートベンチャーキャピタルの運営を通じ、会社を変えたり、ないところに立ち上げたりしてきました。アクセラという言葉が一部でしか知られていなかった2014年頃から取り組んできた身からすると、ここまで市場としても拡大して、認知度も増してきているのが嬉しい一方、信じられないような気持ちです(笑)

とはいえ、まだまだ解決すべき課題はあるかと思います。石井さんご自身としては、どういった点を注視されていますか。

石井:エコシステムの文脈で言えば、経団連のスタートアップ委員会がとても活発に活動していることが印象的です。大企業においてもこうした流れが来ているからこそ、リスクを取らないで安定的にやることばかりを重視する姿勢が残っている組織があるのならば、変えていってほしいと思います。始動のアルムナイをはじめ、尖ったチャレンジを実行する人材が大企業においても増えてきましたが、メインストリームになるのはこれから。頑張っていても苦労は多いであろう彼ら彼女らを、もっと所属する組織の方から後押ししてもらいたい。リスクを取らないこと自体が、今やリスクになりうるのですから。そこの理解が広まれば、より流れは大きくなっていくのではないかと思っています。

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