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テック株下落をVC・スタートアップはどう捉え・立ち向かうべきか――VCディスカッション企画『Repeat Rhyme』#001 前編

投稿日:2022/10/25更新日:2022/10/26

『Repeat Rhyme』(リピートライム)は、アメリカのVC(ベンチャーキャピタル)事情やVC業界でトレンドになっているトピックを過去事例と照らし合わせながらディスカッションするポッドキャスト。初回は、2022年に入ってからのテック企業の株価下落の背景について読み解きます。

Repeat Rhyme誕生!

宮武:『Repeat Rhyme』は、アメリカのベンチャーキャピタル(VC)事情や、VC業界のトレンド、トピックについてディスカッションするポッドキャストです。今回は初回になりますが、DCM Venturesの原 健一郎、Globis Capital Partnersの湯浅 エムレ 秀和、そしてOff Topicの宮武 徹郎の3人でお届けしていきます。

:テック業界について数人で議論する『All-In』というアメリカの有名なPodcastがありますが、あの日本版を目指したいですね。ところで、『Repeat Rhyme』の由来は?

宮武「History doesn't repeat, it rhymes(歴史は繰り返すことないが、韻を踏む)」というマーク・トウェインの言葉があります。VC業界やテック業界もこれと同じことが言えるのではと。過去と似たような事例について、いろいろと話ができたら面白いという意味でつけました。

テック企業の株価はピークから下落へ その背景には何が?

宮武:早速本題に入ります。テック企業の株価は2021年11月頃にピークに達しましたが、そこから現在までに約50~80%下落している状況です。
その下げ幅について分類別にしてみると、エンタープライズソフトウェアは60~65%、コンシューマーインターネット系は70%、フィンテックはさらに下がって80%とみられています。(米国VC、アンドリーセン・ホロウィッツによる)

下落した理由も気になるところですが、まずは「これはまだ始まりにすぎないのか、それとも中盤に入っているのか。あるいは終わりに近いのか」について話してみたいと思います。予測しづらくはあるものの、まず原さんからお願いできますか。

:たしかに株価はピークから7割ぐらい落ちていますが、実はコロナ前の水準に戻っただけの状況ともいえます。2019年まで10年近く好景気が続いていて、「いつまで続くの?」と思っていた矢先にコロナがやってきた。ここで誰もが不景気に転ずると思いましたが、逆に世界中で金融緩和が始まって金利が下げられたため、将来の価値が見込める大きなテック企業の評価はさらに高まり、ディスカウントされにくくなった。なおかつ、各社の業績が伸びていたので、コロナ禍の約2年間はドーピングを受けたような特殊な状態だったのです。それがいまは2019年に戻ったような感覚でしょうか。どこまで落ちるのか、いつまでこの状態が続くのかは誰にもわからないというのが今の見立てです。

宮武:エムレさんはどう思いますか?

湯浅:僕もハラケン(原さん)に同感ですが、これからどうなるかについては、アメリカのインフレ状況次第かなと思っています。Fed(米国連邦準備制度)が思いっきり金利を上げる、もしくは上げる観測を出して引き締めにかかっていますが、それが功を奏してインフレが少しでも抑制されれば、市場もだいぶリラックスすると思います。

ただし怖いのは、インフレが止まらないことです。おそらく去年大量投入されたマネーがまだ滞留しているので、さらなる引き締めが行われるかもしれません。良くなる兆しがある一方で、下手したらもっと厳しくなる可能性も否定できないと思います。ウクライナ情勢もありますし。

宮武:アメリカのサプライチェーン問題もありますよね。インフレの要因って、単純に市場にお金がたくさん出回るだけではない面もあるので。

シード期とミドル・レイターのスタートアップの考え方の違い

宮武:こうした株価の変動にはやはりスタートアップ側が大きく影響を受けていると思いますが、いまはどうとらえるべき状況なのでしょうか。シード期(大枠のビジネスが決まった段階)としては不安に思うべきなのか、それともいわゆるシリーズB(ビジネスが軌道に乗り始めた段階)以降の会社が気にすればよいだけなのかというと?

:経済のサイクルは基本的には読めませんよね。DCMの投資先の約半分を占めるシード期の場合、10年はタイムラグをみる必要がありますが、2032年の景気なんて予測できません。しかし、ユーザーのペインポイントはあまり変わらない。だからシード期のベンチャーは、株価の動きよりまずはユーザーの動きにフォーカスするべき。10年前のサイクルを見ても、リーマンショック後にUberやAirbnbといった会社がシード期を超え、どんどん成長して世に出ています。
一方でシリーズB以降の上場を考えるタイミングでは、直接的に影響を受けやすい。そういう会社は要注意だと思います。

経済不況になった場合、起業家はどうするべきか?

宮武:もし今後さらにインフレが起きてしまうと、おそらくSMB(中堅・中小企業)周りもかなり苦しむことになります。そうしたとき、特にSMB向けのスタートアップの場合、どう考えるべきでしょうか。難しい質問ですが、エムレさんはどう思われますか?

湯浅:よく言われるように「あったらいいよね」程度のプロダクトはやはり切られてしまいます。でも「必須」なものであれば生き延びられます。一般的にはコスト削減に寄与するものは不況期でもしっかり伸び続けるので、SMB向けでもそういったプロダクトであれば問題なく成長できると思います。

:そうなんですよね。株価は下がっても、売上は上がっている。たとえばZoomは、2020~2021年に株価が乱高下しましたが、結局コロナ前の水準に落ち着きました。一方で、この間に業績はかなり上がっている。こうした例からも、スタートアップやテック企業の業績は今後も伸び続けると思います。

VCはどうリアクションしているのか?

宮武:業績が伸びれば、次のラウンドの調達がしやすくなります。しかしアメリカのVCは、ブログやYouTube動画で投資状況についてというリアクションを出しています。もちろんそれは既存投資先を守るためだと思いますが、同時に実際に投資するスピードがペースダウンしているVCも多いと思います。例えばFounders FundのKeith Raboisは、5カ月も新規案件を受けていないと話していますが、そんな中エムレさん、グロービスはどんな感じでしょうか。

湯浅:僕らは基本的に日本に投資しているのですが、日本にはまだ完全に今回のダウントレンドが到達しきっていないと思います。ただ、これから影響が出てくるかもしれないとは見ていますね。

:これからというと、具体的にどのくらいのタイムスパンで考えていますか?

湯浅:半年から1年はタイムラグがあると思います。これは日米の差というよりは、上場株と、そこからレイター、ミドル、アーリーに落ちてくるときのラグだと思います。また、スタートアップの場合、すぐに株価調整には入りません。次の調達のタイミングで初めてその時のバリュエーションが実は前回とフラットだったとか、ダウンラウンドになっているといったことがわかるのです。だから、次の調達までは答え合わせをしないような状態が続くでしょう。会社によっては年内の調達もあるでしょうし、来年調達をして、そこで初めて答え合わせをするケースもあると思います。だから影響が出てくるのは、半年から1年とみているのです。

投資先に対してそういうメッセージングはしていますし、次のラウンドを見据えたコントロールをしたいと思っています。ファンドは自分たちの投資先がこの難局を越えるためのサポートに時間を充てており、従来よりも新規案件に時間が充てられなくなってきている。また、ファンドのドライパウダー(投資余力)をどれだけ追加投資枠として取っておくのかを再考する必要も出てくるかもしれません。

2020年〜2022年で一番恩恵を受けたのはVC?

宮武:既存の投資先を守る必要がある場合、新規に次々に投資するのは無茶な行為かもしれません。これについてはファンドによって戦略が違いますが、日本にもアメリカにも投資しているDCMではどうでしょうか?

:1996年にファンドができたDCMは、ドットコムバブルの崩壊もリーマンショックも経験しているので、そこからの学びはたくさんあります。実はコロナ禍の2年間で最も恩恵を受けたのはVCだと思っています。スタートアップはたくさん調達できたし、何よりもファンドサイズを大きくできました。

宮武:IRR(内部収益率)を見せられたタイミングですよね。

:そうなんです。2年から3年に1回ファンドレイズしていたのが1年になり、毎回、全部のファンドが2倍3倍になった2年間でした。今後は、それが続くという前提では難しいと思います。実際、ドットコムの時には5年間ほど、ファンドレイズできないからそれまで1年で30~40投資していた会社が、4とか5とか、10とかのペースに減らしていく状況になりました。投資件数が落ちればいろいろな面で二極化する。良い投資先にはお金が集まる一方で、誰でも上手くできた2年間とは事情が変わってきます。同じようなことが起こるとすれば、やはり皆、かなり選んで投資するようになるでしょうね。

宮武:投資ジャッジがより厳しくなると。

:それと、そういった状況がだんだん下のレイヤーの企業に降りてくる厳しさもあります。先日、上場株もレイターステージも投資する海外ヘッジファンドの友人と話したのですが、「いまは上場株がこんな状況だから自分たちがゲートキーパーにならなくてはいけない。自分たちが高く投資したら、その会社は上場できなくなるからこそ厳しく見る必要がある」と言っていました。彼らが厳しく見れば、シリーズBのベンチャーに今までのような「1年半後に50億ぐらい調達できる」といった楽観的な視点がなくなる。その感覚がだんだん降りてきているのです。

後編に続く)

動画はこちら

https://youtu.be/J7L6bEP3hbw

ポッドキャスト版はこちら

https://open.spotify.com/show/0Vu1Df4CInCOSDtHkrxP89?si=61ac75f2399f4bf3

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