シリアルアントレプレナーだからこそたどり着いた、組織と事業の強さ――スマートバンク堀井氏インタビュー(後編)

「家計簿プリカ」B/43(ビーヨンサン)を提供する、スマートバンクCEO:堀井翔太氏へのインタビュー。後編ではプロダクト開発や事業経営、組織構築において意識することを伺うと共に、GCP高宮・深川による投資サイドの目線からもスマートバンクという企業/堀井氏という経営者・シリアルアントレプレナーの魅力を堀り下げていく。そして堀井氏自身がこれからのスマートバンクに思うことや、いま必要とする組織・人材とは。(前後編、後編)(前編はこちら

使われる・欲しがられるサービスにこだわりながら、勝つ

――:過去のインタビューや、スマートバンクのバリューを拝見しますと、「N1インタビュー」へのこだわりが垣間見えます。なぜこれを重視されているのでしょうか。

堀井:特定の1人を深く分析し示唆を得るN1インタビューは、顧客視点重視の一環として取り入れています。
実は最初の創業前から、今まで続く共同創業者の3人でサービスをいくつかリリースしていたんです。ただ、多くは海外で流行っていたサービスを真似たもので、どれもほぼ使われませんでした。
半年以上をかけてつくってリリースしても誰にも使われないと、構想した自分も、デザイナーとエンジニアという作り手の他2人も落胆してしまって。だからこそ「目の前のユーザーの声を聞き、使われるものをつくろう」と思ったんです。この姿勢が1社目の成長に繋がったと思い、今に続いています。

深川:サービスは、取り組む課題が実際の市場やユーザーがどんな状況にあるとき生まれるのかを突き詰めてつくるべきです。それらを捉えて事業の構想を描いていくために、N1インタビューはとても有効な手段なのだなと堀井さんとご一緒していて感じています。

堀井:確かに課題の発生状況を具体的に突き詰めて伺う場面で、大きな成果を得られることが多いように思います。加えて言えば、そこで何をどう使って代替していたかが分かると、よりよい方法を発明すればいいだけになるので更にいい。現実ではみなさんペインをなんとかしようと、多少非効率な方法を取っているんですよね。 

――:そうしてサービスを磨いた上で、事業をどう大きくするか?のお考えも伺えればと思います。フリルもかなりの規模に成長しましたが、ご経験から今に活きる気づきはありますか。

堀井:事業のスケールには、テーマや市場余地の見極めが重要です。ただ、どれだけそれらに即しサービス・プロダクトをつくり込んだとしても、コンシューマー向けの製品は最終的にはコモディティ化すると最初の創業で学びました。フリルはフリマアプリとして最初にバーニングニーズを捉え、スケール余地もあったのに、最後はメルカリに勝てなかった。2つの使い勝手はそこまで差がありませんでしたが、認知や規模で差があったんです。

もちろんプロダクトにはこだわるべきですが、最後はプロダクトではない部分でも差がつく。これを念頭に置いて会社づくりができているのは、今回の創業で大きいですね。

――:プロダクトではない部分というと組織づくりや資金投入のタイミングなどありますが、中でも特に意識されていることがあれば教えてください。

堀井:権限移譲して自らは事業を俯瞰する側になる、ということを意識しています。フリルでは創業チームがEXIT直前まで手を動かしていたんです。その分、事業の全体と数字を見ながら「ここで踏み込む」という判断には力が割けていなかったんですよね。

なぜ権限移譲できなかったかというと、理由は2つあります。まず、任せられる人がいないと思い込んでいた。任せたらできる人もいたかもしれませんし、多少無理にでも渡してみるべきだった。今はそもそも、権限移譲できる組織構造に改善できていない創業チーム側に問題があると考えています。

もう1つは採用です。業務を渡せる人が周りにいなければ、外部からできる人を採用することに時間を割くべきだったなと。

――:特に初めての創業では、権限委譲に悩む経営者は多そうです。その点を踏まえ、今のスマートバンクはどんなフェーズですか。

堀井:権限移譲はもちろんタイミングも重要で、PMFが見えるまでは創業者が手を動かしたほうがいいと思います。この段階まではおそらく創業者が最もインサイトに詳しいからです。
スマートバンクは今、そこを少し超えたタイミングです。なのでPL、キャッシュフローなどの数字管理や、重要な機能実装におけるプロダクトオーナーをやったり、仕様に口を出したり……といった自分の役割は、専任担当を挟みながら動かしていく体制に移行しています。前回課題でもあった、権限移譲を進めるために、組織の階層化とマネジメントレイヤーの設置を早期に意識し、更に最近は採用にも力を入れており、組織も順調に拡大出来ていると感じています。

スマートバンクメンバーのみなさん

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