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QC2QC時代にエンジニアとビジネスリーダーが紡ぐ「品質文化」とは#2

投稿日:2022/08/19

#1では、組織の品質を決定する「品質文化」を紹介した。VUCA時代の品質は、ビジネスとテクノロジーの双方の理解が不可欠だ。エンジニアがビジネスナレッジを身に着け、ビジネスリーダーがテクノロジーに目を向けることで、自分たちが追い求める品質を備えたプロダクトを提供できるようになる。(全2回、後編)(前編は、こちら

※本記事は、GLOBIS Insightsに掲載した記事を翻訳し再編集しています。

文化は戦略をあっさり台無しにする

文化と戦略は不可分であり、お互いを補い合っている。そのため、ほとんどの企業では戦略を実現するための土台となる文化の醸成に取り組んでいる。

大企業のソフトウェア開発案件を継続的に受託している典型的な下請けのベンダー企業を考えてみよう。そのベンダー企業がエンジニアを雇用するときにもっとも重視するのは、依頼企業の指示をきっちりこなせるプログラミングなどのソフトウェア開発スキルで、自分の頭で柔軟に物事を考えたり意見を呈したりするマインドは評価されにくい。後者は、場合によっては「素直ではない」「扱いにくい」と判断されるケースもある。これはもったいない。せっかく従業員として雇用したエンジニアの持つ可能性を狭めているからだ。だが、ベンダー企業の戦略を実践するにはそれなりに意味のある文化醸成をしているとも捉えられる。

他方で、スマートな組織戦略を持つ企業で優先されるのは会社のゴールやミッションとの整合性であり、この難しい問題に取り組む粘り強い思考力を持つ人材が採用される。このような従業員で構成されたチームは、どのような業界であっても、安定した組織文化を生み出す力を持つ。

『マネジメント』などの著書で知られるピーター・F・ドラッカーの有名な言葉に「文化は戦略をあっさり台無しにする(Culture eats strategy for breakfast.)」というものがある。マネジメントに携わると、つい戦略にばかり気を取られ文化を忘れてしまいやすい。ドラッカーはこの言葉で、文化醸成を疎かにしたら戦略など砂上の楼閣に過ぎないのだと喝破している。

エンジニア 品質文化

品質文化の輪郭

品質文化と組織戦略との関連性を無視することはできない。これを踏まえて、リーダーが留意すべきことが3つある。

1.       組織文化は品質文化を包含し、影響を与える。

前述したように、品質文化は組織文化に従い、組織文化のあり方は品質文化に影響する。

2.       組織戦略が品質文化の限界を決める。

意欲的なQAエンジニアがよく苦労するポイントである。品質文化をより良いものにしていこうとチャレンジを重ねても、組織戦略に品質が入っていなければ、ことごとく空振りしてしまう。プロダクト品質に貢献する1人目のQAエンジニア(多くはQAマネージャーのポジション)を雇用してもなかなか成果が出ない場合、この組織戦略と品質文化の構造に課題があるかもしれない。品質文化を醸成するためには、組織戦略をよく理解することが欠かせない。

3.       品質戦略の立案ができるエンジニアが変革の鍵を握る。

適切に立案された品質戦略は組織戦略をより良いものへと進化させる可能性がある。したがって、品質戦略を策定し計画・主導できるエンジニアは、組織改革の大きな力となる可能性がある。そのようなエンジニアになるにはMBAでの学びなどの適切なトレーニングを通じて、戦略の構築プロセスやリーダーとして組織をドライブしていくためのスキルを身につける必要がある。

QC2QC時代のエンジニアとリーダーシップ

現代のビジネスは非常に複雑化しているが、だからこそ、エンジニアの貢献が活きる余地は広く、特に品質という領域ではビジネスの成否に直結するほどの影響力がある。ただ、単にエンジニアを雇用すればよいという程度の簡単な話ではない。

エンジニアはビジネスを大局的に考慮できるようになる必要がある。特に品質文化を醸成するには組織文化や組織戦略を理解しないと、貢献する対象であるはずの組織が大きな障壁として立ち塞がってしまう。MBAをはじめとする社会人教育は、視座を高め、組織全体を俯瞰するうえで非常に有効であり、今後経営大学院で学ぶエンジニアが増えていくだろう。時代の要請に合った、自然な潮流であると考える。

リーダーシップを担うエグゼクティブやマネジャーにとって大切なことは、品質というものがもはやエンジニアだけが考えればよいものではなくなっていると認識することだ。エンジニアがビジネスを学ぶ必要があるのと同様に、ビジネスリーダーもテクノロジーを学ぶことで品質に対するマインドセットを醸成するべきだ。

いずれにせよ、技術分野を担うエンジニアとリーダーシップを担うビジネスリーダーは、お互いの領域の知見を学ぶべきだ。リーダーが最初から品質を従属させ管理しようとするのは悪手である。むしろ、組織戦略と組織文化に適した品質文化をエンジニアとともに紡ぎあげていかなければならない。そうすることによってのみ、従業員と顧客の要求を満たす、自分たちの組織ならではの品質を備えたプロダクトを提供でき、ビジネスを前へと押し進めることができるのである。

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