「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」(グロービス経営大学院、フライヤー共同開催)の結果が、2022年2月15日に発表されました。今回は過去最多のエントリー数となる126冊から「有益だった」 「実用的だった」と思うビジネス書を一般投票で決定(全6部門/グランプリ候補に分けての投票)。総合ランキングのトップ10冊からは、何が見えてくるのでしょうか。グロービス経営大学院教員の難波美帆に聞きました。
コロナ禍の中で、人々が日々のふるまいのよすがを求めた10冊
世界中の人間が、これまでの「ふるまい」を失った2年間だった。自宅を一歩出れば必ずマスクをつけ、人と会ったら手を洗う。口角泡を飛ばし、肩を組み、杯を酌み交わすことは憚られる。移動する、店に入るたびに消毒を求められ、他人と2メートル以内に近寄らないようにする。こんな生活の中で、自らと他人のふるまいに不安を感じない人はいるまい。我々は新しい生活様式=ふるまいを求められている。何が正しいのかは完全にはわからない。この生活がいつまで続くのかもわからない。
今年選ばれた10冊は、そんなビジネスパーソンが、日々のふるまいのよすがを求めた結果だったように読める。
もう一つ、グランプリ作品の本の作りから感じたのは、(私も含め)もうみんな長い本は読めなくなっているのではないかということだ。細切れに読める、どこからでも面白そうなところから読める、イラストで内容理解を助けるなどの工夫が施されている本が多く選ばれている。
10冊を3つのジャンルに分けてご紹介しよう。
■ふるまい系
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
各界の先導者たちのインタビューを掲載する雑誌『致知』から365人分。一日1人約1200字が抜粋(要約)されている。どの方も「一つ話すならこれ」と言う話だ。月刊誌『致知』の1万本以上に及ぶインタビューの中から「仕事の教科書」として選ばれるように厳選された方々だから、仕事術がすごいのは当たり前かもしれない。しかし本書には、仕事や自身の専門の話に限らず、本人の人生を通して最も印象深い逸話が書かれており、
『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』
成した後の結果ではなく、ふるまい(プロセス)自体が動画コンテンツとしてネットで消費される時代。ふるまいへの敬愛の気持ち、真似したい、技を盗みたいなど、消費者たちの動機は様々だが、人のふるまいを見たい人たちがいる。今この時を共有できる喜びかもしれない。
一方でアウトプットではなくプロセスを売るというのは、
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『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』
「偉大で永続的な企業になる」
『稲盛和夫一日一言』
こちらは、京セラの設立者、稲盛和夫さんの語録から「一日一言」。本書のシリーズには、「論語」や「万葉集」、「釈迦」が並ぶ。本の紙カバーをはいで驚いた。表紙がビニールカバーになっている。つまり手帳のように肌身離さず持ち歩いて、金言を折に触れ紐解くようにデザインされているのだ。
『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』
著者である精神科医・樺沢紫苑さんに届いた1万件以上の日常生活の未病や相談の中から、ピックアップされた50個のテーマについて解決方法を紹介している。著者はYouTubeで6年間、毎日動画を配信しており、そこに来る相談メールの9割が重複した質問だと言う。これだけの量的エビデンスをもってすれば、我々ビジネスパーソンの悩みはこの本ですべて解決されるのではな
本の構成が、目次、イラスト、エビデンスと3パートに分かれていて、電子書籍版なら、目次から知りたいテーマにタッチでイラストページに飛び、一目で理解できる。著者が抜群に頭が良く、大量の事例を端的に整理する力をお持ちであることが、本の作りに現れている。悩みがあるときは頭の中がとっ散らかっていることが多いだろう。まずはこの本の作りを眺めて気持ちを整理するだけでも「最適化」に近づけそうだ。
『認知症世界の歩き方』
我々のふるまい方は歳をとると変わる。本書では旅行記形式のストーリーとイラストで、認知機能の衰えによって生じる日常行動の変化を認知しやすく整理し、優しい色合いと木訥としたイラストで学べる。いつか自分にも訪れるその日が来たときに勇気を持って旅ができるよう、また、今その旅の途中の方を支援できる大変心強いガイドブック。
■発想法系
『マイノリティデザイン-弱さを生かせる社会をつくろう』
1秒を惜しんで、大きく、強くなることがそんなにいいことか。この本が問いかけているのはそんな現代資本主義社会へのアンチテーゼだ。著者の人生におけるパラダイムシフトが書かれている。花形CMプランナーの著者が、自分の才能の使い道をスライドさせ、自分の弱みを発想の起点にし、マスではなく1人のため、自分のためにクリエイティビティを使うプロセス、方法が書かれている。この本を福祉のデザインの本だと思って、「興味がない」と手に取らないのはもったいない。自分のクリエイティビティが秒単位の暇つぶしとして消費されてしまうことに悩んでいる人に。
『進化思考--生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
著者は「創造とは、いったい何をすることなのか」
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「進化思考」- 生物の進化から学ぶ、激動の時代を切り拓く創造的発想法~NOSIGNER太刀川英輔
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■傾聴系
『超ファシリテーション力』
『ABEMA Prime(アベプラ)』で進行役を務めるアナウンサー、平石直之氏が、2時間の生放送番組をどう進行し、
『LISTEN--知性豊かで創造力がある人になれる』
皆が流行に乗り遅れまいと盛り上がり、
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変わる組織における「聴く力」の重要性 篠田真貴子氏インタビュー前編
相手の本音を聴くには、コミュニケーション環境を耕すー篠田真貴子氏インタビュー後編
『LISTEN』――「聴く」は人と人との付き合いの本質を知る道しるべ
■総合ランキングトップ10
1位 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2位『超ファシリテーション力』
3位 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』
4位 『認知症世界の歩き方』
5位 『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』
6位 『ビジョナリー・カンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』
7位 『稲盛和夫一日一言』
8位 『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全 ベストタイムにベストルーティンで常に「最高の1日」を作り出す』
9位 『マイノリティデザインー弱さを生かせる社会をつくろう』
10位 『進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」』
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