夏休みに読みたいおすすめ書籍5選―2021

まとまった時間がとれる夏休み。ビジネスパーソンとして一皮剥けるような本を読みませんか?グロービス経営大学院の教員が、この夏じっくり読んで欲しいおすすめ本を5冊ご紹介します! 前回のGW版はこちら

単なる成功物語ではない、生々しい起業のケーススタディ

推薦者:嶋田 毅

しばしば、「若者、よそ者、馬鹿者が世の中を変える」ということが言われる。その世界の常識に染まっておらず、ゼロベースで、あるいは極めて斬新な視点で物事を考えたりアプローチできるからというのがその趣旨だ。

本書は、証券会社社員からデイトレーダーとなり、その後、畑違いの美容院チェーンを起業した著者の一代記である。最初のころは多少場当たり的な行動もみられるが、ある時点からはしっかり物事を考えながら動いているなど、過去の失敗に学びながら成長していく姿が多くの方にとって参考になるのではないだろうか。

また、常にポジティブに考えるところ、思考と行動のバランス、人脈の作り方、やると決めたらやりきる姿勢なども非常に参考になる。単なる成功物語ではなく、信じていた人間の裏切りにあった時にどう対処したかといった点も興味深い。起業を考えている人にとっては生々しいケーススタディとして用いることもできるだろう。ただし、そこには「生存者バイアス」もあるので、その点を注意して読まれることをお勧めしたい。文体が平易なので、あっという間に読める1冊である。

著者:山下拓馬 発行日:2021/04/28 価格:1,320円 出版社:幻冬舎メディアコンサルティング

AIをどう捉え、どう受け入れるべきか不安なあなたへ

推薦者:梶井 麻未

今やAI(人工知能)は我々の日常生活において当たり前の存在となっている。しかし一方で、AIという概念は非常に幅広い場面・解釈で使われており、その有効性や可能性については評価が大きく分かれている。AIについてどのように捉え、どのように受け入れるべきか、不安に思っているビジネスパーソンも多いだろう。

本書の著者はAI分野の伝説的名著『ゲーデル、エッシャー、バッハあるいは不思議の環』(白揚社、1985年)の著者、ダグラス・ホフスタッターの愛弟子であるコンピューター科学研究者。AIが現在の第3次ブームに至るまでの経緯に始まり、現在のAI研究の主流である機械学習、深層学習について画像認識、ゲーム、自然言語といった身近なテーマを題材に基本的な技術の解説、我々の社会への影響、実現可能なこととその限界について書かれている。

一般のビジネスパーソン向け書籍とはいえ、多少専門的な記述も含まれており難易度の高い部分もあるかもしれないが、AIの可能性と限界について過大評価や過小評価ではなく客観的な理解を得る助けとなる一冊。

教養としてのAI講義 ビジネスパーソンも知っておくべき「人工知能」の基礎知識

著者:メラニー・ミッチェル 解説:松原 仁 訳者:尼丁 千津子 発行日:2021/2/11 価格:2,860円 出版社:日経BP

“経済学は経済学者に任せておくには重要すぎる”

推薦者:溜田 信

ビル・ゲイツが毎年発表している「この夏に読むべき5冊」。2021年版として発表された内の1冊である本書だが、まさに、ビル・ゲイツに同意したい。

大統領が変わっても、一向に「分裂」が収まらない米国や移民に端を発しEUを脱退した英国、そして東京2020をめぐって世論が揺れている日本。いずれの場合も、背後には、拡大する不平等感、政府に対する不信が存在しているように見える。さらに、貧困、移民、環境問題等、戦後最大ともいえる困難に直面している世界において、政治・経済として何が出来るだろうか?不幸なことに、世界中で一番信用されていない職業の第一位が政治家であり、第二位が経済学者であるという。

ところが、最近の経済学の研究成果や、いくつかの国での実験的な政策の中には、有益なものがある。ノーベル経済学賞受賞者である著者は、“エビデンスを吟味し、問題を単純化せずに根気よく取り組み、調べられることは調べ、判明した事実に誠実であること”が重要であり、“経済学は経済学者に任せておくには重要すぎる”と結んでいる。世界の困難の解決など不可能だという思い込みから逃れるためにも、まずは、本書から始めてはいかがだろうか。この世界の現状を何とかしたいと考えている全ての人に、この本を手にとって欲しいと思う。

著者:アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ 訳者:村井章子 発行日:2020/5/12 価格:2,640円 出版社:日本経済新聞出版

自然の変異と適応を創造へと活かすために

推薦者:林 浩平

事業開発や組織変革に関わる方、キャリアや成長に悩む方。そんな皆さんにお勧めしたいのが、書『進化思考』です。「自然のほうが創造がうまい」というユニークな着眼点ながら、内容は極めて質的。創造のメカニズムや技法を、以下の様な観点から丁寧に紐解いてくれています。

・時として劇的な環境変化に、どう向き合えばよいか

・自らの持ち味を、どう活かせばよいか

・どんなアプローチがあり、どう組み合わせていけばよいか

本書のキーワードは変異と適応。豊富な実例をもとに広く深く体系化されており、この思考を自分に引き寄せ身に着けるための”50の進化ワーク”まで示されています。著者と対話しながら、じっくり理解を深められる感覚です。

著者の太刀川さんは、デザインの社会実装の第一人者。100以上の国際賞歴が示す圧倒的な知見に加え、「誰もが、もっと自然に創造性を発揮できるように」という爽やかな思いが溢れており、知的な奥深さと、平易な手触り感を兼ね備えた、まさに良書と言えます。

「そもそも僕たち人間も生物。生物の進化にこそ創造性がある

 変異と適応を繰り返せば、必ず創造にたどり着く。

 どんなに険しい山に見えても、繰り返すことをあきらめさえしなければ、なだらかに上る道が存在する」

ビジネスだけでなく、個人としても、たくさんの示唆が得られます。平易な文章でいつの間にか引き込まれ、じっくり読んでしまうはず。そして、色んな場面で創造的に考え、試行錯誤することが楽しくなりますよ。

進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」

著者:太刀川 英輔 発行日:2021/04/21 価格:3,300円 出版社:海士の風

アウトプットに価値を付加する新たな手法を体感する


推薦者:許勢 仁美

なるほど、こんな稼ぎ方もあるな、と思わせる本である。

この本の主題である「プロセスエコノミー」という概念は、商品やサービスといったアウトプットに課金する従来の経済から、アウトプットよりも相対的に価値が向上してきた「それを生み出すプロセス」に課金する経済を指す。

この本自体の在り方がプロセスエコノミー的でもある。というのも、完成品としての書籍というよりも、著者自身の思考のプロセスを開示しているような、整然としていない、混沌の中から何かが生まれてきそうな、生まれてきた変化をなんとか文字にして伝えたい、その気持ちに伴走しながら読み進めていくような感覚を持つのである。従来の書籍のイメージが強い方は、違和感を持つだろう。しかし、その違和感こそが、著者の狙いかもしれない。

この本を読むと、わたしたちは買い手として、既にプロセスエコノミー的な購買行動をとっていることに気づかされる。そして、売り手として、プロセスに課金するということは、自分のアウトプットに自分のラベルを貼ること以上の意味があることにも気づかされる。模倣困難性を維持するために、自分の足跡を共有し、くっきりと残していくのだ。

あなたは人の物語を買いますか?自分の物語を売りますか?ぜひ自分に問いかけながら読んでほしい。

暑さが続く毎日、著者がいうところの、新しい風を感じてみよう。

プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる

著者:尾原和啓 発行日:2021/7/28 価格:1,650円 出版社:幻冬舎

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