スタートアップCOOのリアル 夢を実現していく仕事 vol.1

トップの活躍には有能な経営幹部の存在が不可欠です。スタートアップ企業の場合、CEO(最高経営責任者)の活躍ぶりに脚光が当たりがちですが、COO(最高執行責任者)の役割や存在意義については、多く語られることはありませんでした。今回の対談企画ではトップを支えるスタートアップCOOにスポットを当てます。CIC TOKYOで2021年12月2日に実施された「VentureCafe」に登壇したCOOの4名が「ナンバー2」として意識していることなどについて語りました。(全2回、前編)

CEOが「可愛い」と思う瞬間

髙原:皆さんの会社の業務内容と、ご自身をご紹介いただけますか。

長井DROBEはスタイリストが選んだ洋服をお客様の自宅に届け、試着してもらい、必要なものだけ購入できるようなサービスを運営しています。私のタグラインを挙げるとすれば「スーパーゼネラリスト」です。会社のことならなんでもやる、というところかと思っています。

山下ビビッドガーデンは「食べチョク」という、産直EC/オンラインのファーマーズマーケットを運営しています。私自身のタグラインは難しいですが、マッキンゼーから来たけどそんなに怖くない、血の通った人間だよ、という認識をされていたらいいなぁと思っています。

冨田スマートラウンドは、ベンチャーキャピタルのファンド管理業務や、スタートアップのバックオフィスに向けSaaSを展開しています。SaaS大好き、と5年ほど言い続けてきました。業務を効率化するシステムが使われた先の世界を妄想すると、顔がにやけてきます。

島田:ガラパゴスは2年前に「AIR Design」というサービスを立ち上げました。様々なデザインを数値化、データ化し、AIを駆使してマーケティング活動で活用できるデザイン制作を企業に提供するサービスです。極度の人見知りです。活字中毒で、日々空気を吸うように本を読んでいます。

髙原:CEOと日々接する中で、皆さんがCEOを可愛いな、魅力的だなと感じていることを共有いただけますか??

冨田:当社の砂川(社長)と私は年齢が離れているのですが、相手が顧客だろうが学生だろうが、プロダクトの話になると火が付くところが、いつもまっすぐで「可愛いな」と思います。

山下:当社のCEOの秋元と私は、女性といっても中身は結構「おじさん」で、可愛らしいエピソードは難しいなと思っていますが(笑)。CEOは強い想いを発していくというのが非常に大切で、かつ難しい部分だと思います。意思決定までの過程で、最初から強く言うのか、メンバーの意見を聞くのか、さじ加減が難しいと思うんですけど、そういった点に気を遣いながらも、どうしてもやりたいと本人が考えている時にそのパッションが透けて見える時は、素敵だと思います。

長井:当社の山敷代表とは10年来の付き合いです。2人ともDeNAに新卒で入社し、山敷は先輩にあたります。山敷代表は非常に頭の回転が速く、ロジックをすっ飛ばして未来が見える時があったりしますね。議論の最中に一人だけ2、3歩先が見えてしまってにやにやしていることも。

島田:スタートアップのCEOって、ビジョナリーであればあるほど、まともに向き合っているとこっちが持たない、というのはどうしてもあると思います。「これがやりたい」と言って、現場が右往左往する。ある意味でピュアな面は可愛いと言えると思います。

CEOが語るビジョンをどう現実するか?

髙原:ビジョンを語るトップと現場をつなぐのがCOOの腕の見せ所だと思います。皆さんが心掛けていることは何ですか?

長井:COOは時に翻訳家となることも役割の一つかと思います。自分がトップの話を理解できても、自分以外の全員が分かっていないということがあります。当社の代表は、分析が得意な人間です。テンションがあがって高度な分析を示してくることがあります。全員が理解しきれていない際には、「あれはこういうことだから、次はこれ」と私が話をする時があります。

髙原:翻訳家としての能力をどのように獲得したのですか?

長井:様々な職種の方と働く経験があったからだと思います。DeNAではプロダクトマネージャー、エンジニア、デザイナー、人事・法務などのバックオフィス、様々なバックグラウンドのプロフェッショナルが在籍し、見えている世界も違います。そのギャップを埋めながら、スムーズなコミュニケーションを心掛けていました。

山下:コンサルでは担当する業界や企業が数カ月ごとに変わります。接する企業のなかでもマーケティングや調達では使う言葉も異なりますし、食い違った議論をしているようにみえて同じことを言っていたりするケースがあります。

言葉尻をあまり深く追求せず、同じことを言っているけれども違う言葉で表現しているのだ、というような感覚が身につきました。今も、なんとなく向かうべき方向にみんなが向かっていれば大丈夫だと考えながら、差異が生まれそうなときに、翻訳しながら進めている感じです。

島田:ビジョンを現場に実装するのがCOOの役割です。一般的にCEOは投資家や企業の経営者と接することが多いせいか、現場目線の言葉が出てこないことが時にあります。当社の中平CEOは、ビジョンに対する強い想いを持っています。そのビジョンを現場がそのまま受け止めたら、混乱を来すことが想像できる場合、私なりに別の角度からとらえたビジョンを自分の言葉で現場に語ることがあります。

髙原:社外とのコミュニケーションに関してはいかがでしょうか?

長井:IT業界の常識が相手に通じないことがあります。バズワード的なDX(デジタル・トランスフォーメーション)やOMO(オンライン・オフラインの融合)を進めるといっても、中身として全然違うことを各社考えていたりします。実店舗とEC部門など同じ会社でも部門によって言語が違うこともあるので、共通言語をつくることが求められます。

髙原:ガラパゴスも、社外のデザイナーとの接点がありますよね?

島田:デザイナーといってもビジネスパーソンなので、言葉の違いのようなものはないと思っています。デザイン自体、言葉で伝えるのが難しい媒体なので、データベースやAIなど、テクノロジーを活用し、効率的なコミュニケーションを図ろうとしています。言語より仕組みを使うという感じです。

山下:チーム単位では言葉の問題はあまりありません。例えば当社で生産者と最も関わりを持つチームは、もともと農業がすごく好きで、パッションを持って入社したメンバーがコアになっていて、言葉のギャップが生まれないように橋渡しをしてくれています。ただ生産者が何に困っていているのかといった課題に対する深い理解については、全社レベルで知識を蓄積しなければならない面があります。

冨田:言語の問題の有無より、本当に仲間という感じです。当社のメンバーには、起業家やCFO(最高財務責任者)、投資家といった、自分が関わりを持つ人のSNSのアカウントを、とりあえず500はフォローしようという話をしています。デザイナーであれエンジニアであれ、ユーザーのことが理解できない、社内の会議で交わされる固有名詞についていけない、という話を聞いたら、「とりあえず500」と言っています。

さらに土日に遊びたくなるような、好きな人と友達になれ、とも伝えています。そのためには自分からのギブが重要なので、何かその人の役に立つことをとりあえずやろうと伝えています。仕事に対してモチベーションが高い当社のユーザーからメンバーが好影響を受けられるというメリットもあります。

後編につづく

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