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奨学金プラットフォーム「ガクシ―」とは 若者支援で日本の未来を変える 後編

投稿日:2022/01/28更新日:2022/02/02

GLOBISグループのKIBOW社会投資ファンドの9番目の投資先であるSCHOL(スカラ)。同社は、奨学金に関するプラットフォーム「ガクシ―」を立ち上げ運営している。本稿では、同社CEOである松原良輔氏に奨学金を巡る課題とその解決の展望を聞いた。聞き手は、グロービス経営大学院教員で、SCHOLの社外取締役である許勢仁美。(全2回、後編)前編はこちら

奨学金の2つの課題

許勢:(前編では)起業の経緯と、日本における奨学金の現状や明るい兆しについてお話をお伺いしましたが、改めて日本の奨学金の課題はどこにあるとお考えですか?

松原:我々SCHOL(スカラ)としては主に2つ設定してまして、ひとつは情報が流通する仕組み、プラットフォームがないことです。もうひとつは奨学金を運営する側の負荷の大きさです。

許勢:私自身が高校生の時は、先生が奨学金のお知らせをされていた記憶があるのですが、今もそうなんですよね。公的な支援のスケジュール感は、高校3年生の春に学校から生徒に周知されるというのと、大学に入ってから春と秋にご案内がある。

加えて、例えば地域の進学校だったり、その地域に有力企業があったりすると、いくつかの繋がりのある学校に情報が伝わって、先生から生徒に情報がいく。これがこれまでの情報の流れでした。改めて、奨学金が必要な時に奨学金の情報に能動的にアクセスしようとすると、どうしたらいいかわからないということを思いました。

松原:残念ながら今は仕組みがないので、学生に周知しようとすると、大学・高校・専門学校など学生が集まっている学校を通すしかありません。9割9分が学校経由になります。たまたま自分の通っている学校に、企業がアプローチしてくれたらいいですが、そうでないと学生は知る術がありません。

許勢:手続きも全て紙を手渡しで処理してというので、提供側の事務的な負荷も結構高いんですよね。良い条件の奨学金があっても、手が回らずに、もしかすると情報が届いていないということもあるかもしれないですね。

松原:まさにそれが、先ほど奨学金の課題としてあげた2つ目の課題です。紙やExcelで管理されているため、現場の負荷が高い。これをIT化していきたいです。それによって、奨学金を運営する側が楽になるのはもちろん、奨学金を受け取る学生側にとっても、奨学金を受け取れるチャンスが増え、手間も少なくなります。

奨学金の課題については、「返済をしやすくしたらいい」「国の制度をもっと便利にしたらいい」「お金自体を増やしたらいい」など、いろいろありますし、どれをやっても効果はあると思います。そのなかで、我々が数十人にヒアリングをする中で日本の奨学金を変えるトリガーになるのは、「現場の負荷だ」と。これを解決できれば奨学金の情報の流れは良くなるし、出し手/受け手の双方の工数は減り、結果、奨学金をやってみようという人も増える。これが我々の事業・サービスの出発点になっています。

許勢:だからこそ、ガクシーはプラットフォームなわけですよね。

松原:SCHOLが提供しているプロダクトは大きく2つで、「ガクシー」という表側の奨学金情報サイトと、「ガクシーAgent」というという裏側の奨学金の管理システムです。この両面でプラットフォームになっているので、この連携を強化していくことで、学生が自分の情報を入力すれば、その人が申し込める奨学金が一発でドンと出てきて、さらにオンラインでまとめて応募できるような、情報の流通と工数削減を実現することができると思っています。

許勢:足元で一番変化を加速させるポイントは何だと考えていますか?

松原:裏側の奨学金管理システム「ガクシーAgent」を使っていただける財団や企業が増えることです。

「ガクシ―Agent」を使っていただけると、募集から支給管理までの業務の一連の流れの仕組みが全部IT化され、募集の負荷が軽くなります。

そうすると、学生の応募も楽になります。今は、奨学金に応募するたびに全てゼロから紙に記入しないといけないので。これが、「ガクシ―Agent」に登録している団体の奨学金なら、基本情報を登録しておけば、あとはプラス少しの入力で応募できるようになります。就職活動のリクナビさんのようなイメージです。さらに今後は、支給し続けてもらうために不可欠な「継続願い」や、卒業後の返済管理なども含めて便利な機能を追加して、奨学金のアレコレをワンストップで解決できるサービスになりたいです。

許勢:情報アクセスだけでなく、奨学金を申請して、合否が出て、毎月の支払いと返済があってという、その一連の流れや手続きの利便性が双方高まるんですね。

教育格差を解消し、誰もが学べる世界に

許勢:改めて、SCHOLで実現したい世界について教えてください。

松原:家計や親の年収で教育機会や教育レベルが左右される世界がすでに広まりつつありますが、コロナの影響も含めて、それがさらに加速していこうとしています。少し前に「親ガチャ」なんて言葉がTwitterのトレンド入りもしていましたが、まずはそんな環境に左右されずにチャレンジできる機会を増やしていきたいです。

そのために、今はまず日本にある、さらに世界も含めて、日本の若者が受け取りの対象である奨学金の情報のデータベースを完璧に作り上げること。これを目の前の最優先課題で行っています。

プラスアルファで、従来の学費/生活費サポートのためだけではなく、留学や海外への進学費用、芸術やスポーツ、数学やエンジニアリングなどの一芸に秀でた方々の支援、起業や社会貢献活動をしたい方々の資金援助など、「チャレンジ」する若者をさまざまな形でサポートできる会社でありたいと思っています。格差解消とチャレンジを応援する両方ができれば、10年後20年後の日本はもっと良い世界になると考えています。

我々も今スタートラインに立ったばかりですが、夢を仲間と語り合い、世界が良くなるかもしれないとワクワクできるのが起業の醍醐味ではないかと思います。

許勢:KIBOWでも継続して社会起業家を応援していきたいと考えています。今日はどうもありがとうございました。

(文=GLOBIS知見録編集部 吉峰史佳)

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