男性育休取得中の過ごし方~仕事と同じレベル感で家庭にフルコミット

法改正により、2022年から企業は育休取得対象となる男性社員に対して個別周知が義務づけられることになりました。では、どのように育休中を過ごせばいいのでしょうか。グロービス経営大学院の卒業生であり、6ヵ月間の育休を経験した中村直敬さんに聞きました。(聞き手=グロービス経営大学院 齋藤麻理子)(全2回、前編)

合理的な選択としての育休取得

齋藤:グロービスに通う方々は男女問わず、家庭とキャリアを両立させている方が多いのですが、意外にその存在は知られていません。そこで仕事で活躍されながらも育休を取得された方々のお話を伺っています。まず、現在のお仕事と育休を取得された時期を教えてください。

中村:アクセンチュア株式会社で働いています。育休取得の数ヵ月前から小売業界のお客様企業向けのプロジェクトに参画し、復職後も引き続き同じプロジェクトでデータ分析や、会計・予算管理のシステム構築支援を行っています。育休の取得は子どもが生まれた直後の2019年6月から12月までの6ヵ月間です。

居住している自治体の保育園の選考基準を踏まえると、夫婦どちらかが育休を継続する必要があったのですが、妻と相談し第1子では私が先に復職することにしました。

齋藤:6ヵ月も取ったのは素晴らしいですね。どのような流れで取得できたのですか?

中村: 弊社のようなコンサルティング企業では、プロジェクト単位で仕事をします。私の場合は現在参画しているプロジェクトのアサイン面談時点で、プロジェクトに従事している間に育休に入ることがあらかじめわかっていたので、育休取得予定月を事前に伝えました。あとはプロジェクトをスケジュール通りに進めつつ、育休取得に向けての準備も並行して行いました。プロジェクト上お客様企業のオフィスに常駐しており、そのためお客様企業の社員の方との接点も多かったのですが、属人化を避け業務への支障を最小限に抑えました。

実はプロジェクトに入って2ヵ月目に男性メンバーの一人が育休に入り、彼が担当していた業務を私が引き継ぎました。約3ヵ月後に彼が育休から復帰し、1ヵ月間程度で私の業務を今度は彼に引き継ぎ私が育休に入りました。育休リレーですね(笑)。

齋藤:ご勤務先は育休の取得者が多いのですか?

中村:弊社は男女共に育休取得がしやすい環境が整っていると思います。管理職のトレーニングや取得者へのフォローもありますし、また育休中に昇進する人もいます。プロジェクトベースで働くスタイルのため業務の属人化が少なく、一般企業に比べると男性が育休を取得することへのハードルは低いと思います。一般社員、管理職を問わず取得する男性社員は多く、上司からも「取得する必要はないか?」などと言った声がけもあり、後押しもあります。

男性で育休を取得した人たちが特殊な家庭事情や、特別育児に熱意があるというわけではなく、ワークライフバランスの文脈で、合理的な選択肢として判断している印象です。プロフェッショナルとして、本人の価値観や判断を大切にする文化が、こういうところにも浸透しているのだなぁ、と感じます。

現在の役員が20~30年ほど前に男性の育児休暇を取得したフロントランナーだったという事実もあり、個人的には育休を取得することよりも、取得しないことの方にハードルを感じていました(笑)。社内でも、女性の管理職も多いですし、業務上で男性・女性の区別を感じることはありません。

育休は、家族との関係をつくるための時間

齋藤:中村さんが育休を取得しようと考え始めたのはいつ頃だったんですか?

中村:実は結婚を考えたときから視野に入れていました。私と同じように仕事やキャリア形成に熱意ある女性とともに、価値観を尊重し合いながら豊かな家庭を築きたいと考えていました。そのためにも、お互いに同じレベルで家事・育児をやっていこう、と。

妻が妊娠してからは、育休取得は必須だと思うようになりました。産後のフォローに加え、自分自身に必要な育児・家事スキルの獲得と、妻や子どもとの関係を築くにあたってまとまった期間が必要だと考えたからです。里帰りなど互いの両親を頼る方法もあると思いますが、私たちの場合は両親が高齢ということもあり、まずは自分たちでやることにしたこともあると思います。

齋藤:仕事面以外で、中村さんが育休取得にあたって準備したことはどんなことですか?

中村:家庭内では、家事は出産前から全て一人で回せるようにしていました。育児は両親学級や育児書、動画配信サイトを通じて学びました。私が参加した両親学級では、2時間程度かけて、主に沐浴と調理実習を行いました。

また、『2人は同時に親になる』(猿江商會)という書籍からの学びが多かったです。この書籍は、産後の妻の身体的ダメージ、メンタル、また新生児育児の負担などのファクトを踏まえたうえで、どうやって夫婦2人で協力して乗り越えていくのか、話し合うための本です。2人とも復職した後の1日をイメージし、そのためにどんな生活を作り上げるか、夫婦一緒に考えることで、より良いスタートが 2人で切れたと思っています。

齋藤:育休期間中はどんなふうに過ごしていましたか?

中村: 妻の退院後は、昔からの「床上げ3週間」の言葉にもある通り、最初の1ヵ月は妻が授乳以外の家事育児をすることが無いよう、基本的に家事は全て私がやっていました。バックアップとして、2ヵ月間だけ家事代行を依頼し、週2時間食事を作り置きしてもらっていました。おかげでその時間はゆっくりできました(笑)。

思っていたより大変だったのは、妻のケアです。産後の女性はメンタルが不安定になりやすいので、話を聞いたり、気分転換に連れ出したりといったことを、自分も体力的に疲れている中で行うのはしんどく、正直衝突もありました。

一方で、息子のケアはあまり苦にならなかったです。生まれたばかりの息子の成長を、日々間近で見守ることができたのは、今振り返ってみても幸せなことだと思います。

息子は母乳・ミルクの混合育児だったので、夜の対応も行っていました。夜の12時、4時、7時とだいたい3時間置きの授乳タイミングに合わせて、ミルク対応や妻のサポートをしていましたね。夜勤対応は私がメインの日が多かったです。

齋藤:「夜勤」というワードがさらりと出てくるあたりに当事者意識と共感を感じます(笑)。新生児は3時間起きの授乳が必要なので、真夜中の授乳やオムツ替え対応をSNSなどでは「夜勤」と称して励まし合ったりする“ママ仲間”が多いですが、しっかり中村さんも対応されていたんですね。母乳とミルクの混合育児だと、哺乳瓶を洗ったり消毒したりといった負担もあるので、それを一緒にやってくれるパートナーがいるのはすごく心強いと思います。

中村:夜勤明けに仮眠して日勤、を休日関係なく毎日続けるなんて、普通の会社では考えられないハードワークですよね(笑)。夜に2回くらい起きるのが4ヵ月近くまで続いていたので、朝までぐっすり寝てくれるようになったのは5カ月を過ぎてからです。

後編に続く

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