「目標を達成し成功する人」に共通する特性や行動は何だろうか――
本書はその問いに対して1つの解を導き出した書籍だ。米国陸軍士官学校の過酷な訓練において、それを乗り越えた人、脱落した人それぞれの比較分析から本書は始まる。成功するのに大切なことは「学力」か「体力」か、それとも生来の「才能」なのか。
著者であるアンジェラ・ダックワースの研究によると、それらはいずれも決定的な要因にならないという。それよりも、「情熱」や「粘り強さ」に裏打ちされる、ものごとを「やり抜く力」が重要であるという。言わば、当たり前とも捉えられるこの結論から、我々は何を学べばよいのだろうか。自分自身を振り返って、あるいは職場の部下やメンバーを見て「やり抜く力がないから困っているのだ」との声が聞こえてきそうだ。
実は、自分自身や部下・メンバーのやり抜く力が高いかどうかは、書籍内にあるGRITスケールを活用し、相対的な状態を把握することができる。そこで「やり抜く力」が高いと分かれば安心だが、低いとわかった場合はどうすればよいのだろうか。
著者によると、「やり抜く力」は自ら高めることができる。そのためには、「興味」「練習」「目的」「希望」が必要だ。「興味」を持てることに取り組み、「練習」を繰り返し、「目的」を持ち、あらゆる局面で「希望」を持ち続ける。当たり前のようで実現するとなると難しいそれぞれの要素について、職場や日常生活の中でどのように身につけ、高めていけばよいか、詳しく書かれていることも本書のポイントだ。
例えば「興味」を持てない仕事に就いた大多数の人は「やり抜く力」を高めることをあきらめるべきかというと、そうではない。まず「気楽に始める」「外との交流を大切にし自身が興味を持てることは何か考え続ける」「上手くいかない場合は取り消す」ことを通じて、本当に興味を持てることは何かを見つけ、その後掘り下げるプロセスを踏むことが大切と言う。すなわち、一度に見つけるのではなく、思考錯誤の中で見つけることが大切なのである。
さらに、上司や先輩、はたまた親としてあなたが誰かの人生に関わり、「やり抜く力」を高めるために何をしてあげることが有効か、示唆を得ることもできる。「優しい育て方が良いのか」「厳しい育て方が良いのか」「効果的なフィードバックはどのようなものか」など、育成に困っている方にはとても有益な内容が詰まっている。
最後に、本書はチクセント・ミハイの「フロー理論」
確実に仕事で成果を出したい方、部下や後輩の育成、あるいは子供の教育に悩む方にとって、様々なヒントが得られるはずだ。
『やり抜く力 GRIT』
アンジェラ・ダックワース (著)
ダイヤモンド社
1600円(税込1728円)