前回は、正しい問いを持つことの重要性についてお伝えしました。特に海外駐在中は、やりたいことがたくさんあるはずです。その中からすべきことを見極めるためには、「解決したいことは何か?」という問いについて延々と考えるのではなく、「解決すべき問題は何か?」について考えることが重要になります。
しかし、人はつい自分が関心のある「解決してみたい問題」に意識が向くものです。しかも、自分に見えていることが問題の全てであるように勘違いしてしまうこともあります。これでは、真に解決すべき問題にたどり着きません。そのため、ものの見方を一旦、広げて俯瞰してみることが重要になります。
そうした思考を広げるために役に立つものの1つが、経営学で使われている「フレームワーク」です。実は、身近で起きている様々な課題は、フレームワークで思考を広げて解決策を考えることが可能です。例えば「社員のパフォーマンスが低下している原因」を探るとします(多くの企業の海外現地法人では、ナショナルスタッフのパフォーマンスの向上に向けた取り組みをしており、海外拠点でよく聞くテーマの1つです)。
よくあるのは、その原因を「給与の低さ」と決めてかかったり、もしくは、「コミュニケーションの量・質の問題」「文化の違い」など手当たり次第にアイデアを挙げたりすることです。ただこれは俯瞰的なものの見方とは言えません。自分の見えている・関心のある範囲、もしくは思い込みの中ででしか問題をとらえていないからです。
ではどうしたら思考を広げて俯瞰的に考えられるのでしょうか。一例ですが、この場合、もし「社員従業員の実力発揮可能性を高めるサイクル(※)」というフレームワークを知っていたら、社員の能力を向上させるサイクルを構成する数々の要素を押さえた上で、「解決すべき(取り組むべき)課題」かどうかを考えることができます。そして、仕事のフロー設計や教育制度、権限の渡し方、評価制度の持ち方など、多様な視点で解決策を探ることができるでしょう。
フレームワークは上記で紹介したもの以外にもたくさんあります。様々なフレームワークを理解し・応用することによって、自分に都合のよい視点ではなく、俯瞰的に物事を見ることができ、かつ思考を広く持つことができるようになるでしょう。
特に、海外で活躍する多忙なビジネスパーソンにとって、フレームワークは仕事を進める上での強力なツールになりますが、ただ知っているだけ思考は広がりません。大事なのはその活用方法を身につけることで、そのためには、フレームワークを「正しく」理解し、試行錯誤しながら実際に使っていくことが必要です。
「守・破・離」という言葉あります。基本の型ができずに、自分流を貫く場合は、「型なし」、そして基本の型をしっかりマスターしたなかで応用をしていくのは「型破り」と言うそうです。「型なし」で事業をリードするのか、「型破り」な考え方で活躍するのか。ぜひ「型破り」に海外で活躍する日本人が増えてほしいと思います。
※出所: 『カスタマー・ロイヤルティの経営』(ヘスケット他著/日本経済新聞社)
【参考リンク】
グロービス アジアパシフィック/グロービス タイランド
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