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“丸裸”を恐れるプーチン大統領の思惑

投稿日:2008/04/02更新日:2019/04/09

今週、NATO首脳会議(北大西洋条約機構)が開かれる。それに先だって、デポープスヘッフェル・シェーファーNATO事務総長はロシアのプーチン大統領に対し、いたずらに対立をあおるような「反西側」的レトリックを弄(ろう)するべきではないと警告した。

ロシアは準加盟国扱いでこの首脳会議に参加するが、プーチン大統領が初めて出席することになっている。NATO加盟国とロシアの間で緊張が高まっているのは、米国がウクライナとグルジアのNATO加盟を強力に後押ししているからだ。

ロシア国内強硬派の反発を懸念

もともとNATOは第二次大戦が終わった後、1949年に結成された多国間軍事同盟である。「米国を引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」ことで西欧諸国の安全保障を達成しようとしたものだ。1991年の旧ソ連崩壊によって、NATOはいわば「仮想敵国」を失った形となったが、地域紛争の予防や危機管理に存在意義を求めた。

そして、旧ソ連崩壊後に東側諸国が自国の安全保障を求めて続々とNATOに加盟するようになった。1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランドが加盟、2004年にはブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロバキア、スロベニアが加わった。

そしてNATOにウクライナとグルジアが加わると、ロシアにとって気分がいいものではない。それでなくても、ロシアは米国が設置しようとしているMD(ミサイル防衛)に神経を尖らせている。MDがロシアを対象としたものなら、「ロシアは戦略ミサイルの照準を西欧に設定し直さなければならない」とプーチン大統領は“脅迫まがい”の言い方をしたこともある。

プーチン大統領の戦略的目標は、「強いロシアの復活」である。そのために石油や天然ガスといった資源を有効に活用しようとしている

。経済的には原油相場の値上がりの恩恵を受けて、強国としての体面を回復しつつあるとはいえ、問題は安全保障だ。

旧ソ連の衛星諸国がNATOに加盟するのをこれまで「阻止」できなかったロシアだが、旧ソ連の一部であるウクライナやグルジアがNATOに加盟するとなると、黙って認めるわけにはいくまい。プーチンにとってはそれこそ「丸裸」にされたような気分だろう。

プーチン大統領にしてみれば、ここでもしウクライナやグルジアのNATO加盟を認めてしまえば、ロシア国内の強硬派(情報部出身者を中心とする一派)の反発が強まる懸念がある。そうなると、この3月の大統領選で圧勝したばかりのメドベージェフ次期大統領の権力基盤が揺らぎかねない。

メドベージェフを後継者に選んだ

のは、旧情報部出身者などの間に後継争いが起こり、自分が首相に残らなければ内部抗争を抑えることができなかったからだとされている。その意味でロシアの安全保障が脅かされることは、何としても避けなければならないというのがプーチン大統領の立場だろう。

冷戦終結後、最も冷え込むロシアとヨーロッパ

このNATO首脳会議でプーチン大統領がどのような態度を示すか、米国のブッシュ政権とどこまで対峙しようとするか、それはロシアの今後を占う重要なポイントになるかもしれない。

ロシアは、強国ロシアを回復するために資源を最大限利用する。そのロシアに天然ガスの元栓を握られている格好の西欧諸国は、いやでもロシアと対立せざるを得ない状況になっている。冷戦終結後、最も冷え込んだとされるロシアとヨーロッパの関係。それがどう動くか、今週のNATOサミットは要注目だ。

※記事中の写真はNATOが学術機関、メディア向けに提供する素材より掲載した。

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