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海外展開で成功するために必要な3つの視点

投稿日:2016/04/23更新日:2019/04/09

間下社長のインタビューは、海外で奮闘している多くのビジネスパーソンの共感を得られるような、あるいは日ごろの溜飲を下げるものになったのではないだろうか。ここでは、今回の3つの学びのポイントを関連付けながら、振り返ってみたい。

学び1:海外スタートアップの「小さい」「面倒」「英語」の3つの壁を克服する手段を講じないと最前線は孤立無援 

■ 一番遠い国から来た依頼。一番小さな組織から来た依頼ほど、一番先に対応せよ
このメッセージは、私が以前勤務していた企業の人事部の幹部が出していたメッセージで、間下社長のインタビューの際に思い出された言葉だ。本社に来る様々な問い合わせや依頼事項は、遠くから来たもの、小さな組織から来たものほど、早く先に対応しろということだ。遠い前線ほど支援が受けづらく、やることは山積み。人も少ない。早く的確な支援が必要だ。しかし、実態は得てして逆だ。本社ではこのぐらいの意識付けを行わないと、海外の最前線で頑張っている社員に孤立無援の戦いを強いることになる。

海外拠点で仕事をするビジネスパーソンに、「仕事をする上で何が大変か」という質問すると、現地での苦労話よりも、多くの場合は「本社が動いてくれない」という答えが帰ってくる。間下社長は、「ほっておくとそれは当たり前に起こるよね」と言い切る。本社社員にしてみれば、特に初期の海外事業は 「小さく」「面倒くさく」「しかも英語で」と三重苦なのだ。海外展開する企業のトップは常にこのギャップを意識する必要がある。トップが海外展開は我が社の重要な戦略と公言していても、足元がその戦略遂行を後押ししていないことが多い。しかし、それは必然的に起きる現象なのだ。間下社長のケースは自分が現地に来ることでギャップを解消するという、トップとしての覚悟が伺える。

学び2:海外では、たとえ大企業でもチャレンジャーの立場となる。業界特性に応じた勝ちのパターンを理解して、初めて海外展開のプロセスも描ける

■ 「業界特性」「競合環境」「発展段階」の3つの視点で戦略を選択する 
本社と海外のギャップを克服する際に、戦略論的な観点から押さえておくべきことは、競争上の地位と競争戦略の関係性に関する理解だ。ITサービスの世界では、規模と標準化、資金力で圧倒する米系企業との競争にどう勝つのかという観点から、ブイキューブは、アジアではチャレンジャーとしての戦略を遂行している。リーダー企業(米国企業)が戦いづらい市場でリーダー企業が取りづらい戦略を取り、強かに事業を展開している。

今では世界でキャタピラー社と互角の戦いをしている建設機械のコマツも、海外展開を本格化し始めた70年代、80年代は、業界で圧倒的な強さを誇っていたキャタピラーとの直接対決を避けることが可能なソ連、東欧といった共産圏や反米色の強い中近東で積極的な事業展開を行ったのは有名だ。新興マーケットを取り込みながら、徐々に世界レベルでの規模化を図り、互角に戦える状況を作って行ったのだった。当時の共産圏や中東の購買行動は一気に大量発注をする形態が多く、アメリカとの戦いを避けながら規模化を図るには都合も良かった。商社等の機能をうまく使いリスクヘッジをしながら積極展開を行ったのだった。今、中国が政策的にアフリカや新々興国に積極的に打って出ているのも、かつて、コマツなどが取ってきた戦略と同じ戦略を取っているとも見てとれる。このように成功企業では、海外における競争上の地位を捉えて、戦略を切り替えている。

その際に、大企業の場合は、国内での業界ポジションに即した意思決定の仕組みや組織運営の仕組みが既に社内に出来上がってしまっており、社員もあたかもそれが自社の仕事のやり方であると錯覚していることも多い。海外展開の際にその呪縛から抜け出せるかどうかが鍵だろう。

参考:『グロービス MBAマネジメントブック』(ダイヤモンド社)の「競争上の地位と戦略の定石」より

 学び3:長期的な視野で海外戦略を立てるには、投資家・株主から学ぶ姿勢が求められる

■お客と工場に時間を使いすぎ・・・
トップは、ステークホルダーのうち、お客と工場(社内)に時間を使い過ぎてはいまいか?誤解を恐れずに言えば、気心の知れたお客(既存顧客)との時間や、何もしなくても気を使ってくれる社内との接点ばかりでは、変革期における長期的な戦略を編み出すことはできない。株主や投資家、一般社会といった他のステークホルダーとも、もっと時間を使うべきだろう。

間下社長は、お客に使う時間と同じくらいか、むしろ株主や投資家との接点に時間を使っているそうだ。そして、その時間が経営者としての貴重な学びの時間と言い切る。アジアでの海外展開におけるヒントも多く得ていることだろう。株主や投資家は決して近視眼的ではなく、むしろ大局的に長い時間軸で物事を考えているのだ。「IRの積極活用」は大事なキーワードだ。

  • 高橋 亨

    GLOBIS Europeプレジデント/グロービス マネジング・ディレクター

    大学卒業後、丸紅株式会社に入社。イラン、ベルギーでの計8年間の駐在を含め、一貫して海外事業に携わる。この間、様々な海外プロジェクト、ファイナンスや投資案件の組成、取引先や投資先への経営支援、海外拠点の立ち上げなど、グローバルに展開する企業の海外事業支援を行う。
    その後、グロービスに転じて、企業研修部門にてクライアント企業の人材育成に携わる。日系企業のグローバル化に伴い、グロービス・チャイナの立ち上げ、グロービス・アジアパシフィック、グロービス・タイランドを設立し、自ら現地でクライアント企業の組織変革、海外拠点の人材育成支援に携わる。
    上智大学経済学部卒業。スタンフォード経営大学院SEP修了。グロービス経営大学院 専任教員、現職は、グロービス・コーポレート・エデュケーションのマネジング・ディレクターとして、グローバル案件を統括する。
    著書に、『海外で結果を出す人は、「異文化」を言い訳にしない』(英治出版)、共著に『MBAマネジメントブック2』(ダイヤモンド社)がある。

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