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覚悟を問う言葉が、今も心を動かす理由 ──『超訳 吉田松陰』に学ぶ生き方の哲学

投稿日:2025/08/18

幕末の思想家、吉田松陰をご存知だろうか。

彼が主宰した私塾・松下村塾からは、高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋といった、明治維新を牽引する多くの俊才が巣立っていった。松陰は、まさに「人を育てることで、時代を動かした人物」と言っても過言ではない。

本書はそんな松陰の残した言葉の数々を、現代の文脈で“超訳”した一冊だ。

刊行は2013年。すでに10年以上が経過しているにもかかわらず、現在もなお、書店の売上ランキング上位に名を連ね続けている。

数多ある自己啓発書の中で、なぜこの一冊が読み続けられているのだろうか。

なぜ今、“覚悟”が必要なのか──2025年の不確実性と個人の選択

刊行以降も、本書が多くの読者に支持され続けているのには理由がある。

もちろん、著名アスリートや俳優による推薦、SNSを通じた共感の波といった“きっかけ”は確かにあった。

だが、こうした一過性の波では片づけられない“時代の要請”が、松陰の言葉を呼び起こしているように思えてならない。

特に2025年。私たちは、これまで以上に“不確実性”のただ中にいる。
米中対立、震災の爪痕、止まらぬ物価上昇、加速する気候変動——。
こうした明確な未来像を描けない時代の中で、何を信じ、どこへ向かうべきか。個人の選択と責任に委ねられる局面が増えている。

もはや、「知識」や「スキル」だけでは乗り越えられない。

混迷する状況のなかで、迷わず腹をくくり、一歩を踏み出す力——まさに“覚悟”が、いま強く求められているのではないだろうか。

人生を巡る四季──松陰が遺した生と死のメッセージ

では、この“覚悟”を磨くうえで、松陰の言葉はどのような支えとなり得るのか。
本書は、松陰の言葉を「心・士・志・知・友・死」という6つのテーマに分類し、全176篇を“超訳”というかたちで編み直している。

どの一篇も、自らの覚悟を見つめ直すための、静かで力強い時間を与えてくれる。
なかでも、個人的に深く心を揺さぶられたのが「人生は四季を巡る」という篇だ。

この篇のもととなっているのは、松陰が処刑直前、獄中で記した遺書『留魂録』。死を間近にした彼は、「人の人生にも四季がある」と綴っている。

春に種をまき、夏に育て、秋に刈り取り、冬に蓄える──。

農の営みに四季があるように、人の一生にもまた、その人なりの春夏秋冬があるのだ、と。


松陰は、わずか三十歳でその生涯を終えた。
しかし彼は、人生は長短ではなく、自分の中に「巡り」があったかどうかだ、と語る。

この語りの奥にあるのは、人生とは季節の巡りと同じように、
春夏という「蒔き、育てる時間」をいかに過ごし、
秋にどのような実りを手にし、
そして迎える冬――その終わりの時間をどう静かに生きるのか、
を問うような深い死生観である。

私ごとで恐縮だが、この言葉に惹かれた個人的な理由も、少しだけ触れさせて欲しい。
それは、この数年、経営の一端を任されてからずっと、苦悩と迷いを繰り返す中にあったからだ。
嬉しいこともあったが、それ以上に失敗や葛藤に直面し、「この判断は本当に組織のためになっているのか」と、自問する夜も多かった。そんなときに出会ったのがこの言葉だった。

人生は、巡るもの。

目の前の出来事が良いか悪いかに一喜一憂するのではなく、いま経験していることを、もっと長い時間軸のなかで受けとめ、どう育てていくかが大切だ──そう教えられた気がした。
この篇をはじめ、本書は吉田松陰という人物を通じて、「覚悟とは何か」「人生の時間を何に使うか」を改めて問うきっかけを与えてくれる。

それは、読書という枠を超えた、「自分自身との対話」なのかもしれない。


松陰の言葉から何を学ぶか──行動に落とし込む“読書の技法”

本書に収められた言葉は、現代語で“超訳”したものだ。

そのため、思想的・歴史的な背景は簡略化されており、人によっては「名言集以上、哲学書未満」といった印象を受けるかもしれない。あくまで松陰の思想に触れる「入り口」として位置づけるのが適切だろう。

他方で、そうはあっても、本書と向き合った時間をより深めるために、読後、自身に問いかけて欲しいことがある。

それは、たった二つの問いである。

「どの言葉が、自分の心を動かしたか?」
「その言葉を受けて、自分は何をするのか?」

この問いは、読書を“知識”で終わらせず、“行動”へとつなげるためのものだ。

心に触れた言葉を起点に、自分なりの一歩を考え、行動すること。

その応答のなかにこそ、自分だけの“覚悟”が、磨かれていくのだと思う。




覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰
著:池田貴将 発行日:2013/5/25 価格:1650円 発行元:サンクチュアリ出版

  • 太田 昂志

    株式会社ゆめみ 最高人事責任者(CHRO)/グロービス・マネジメント・スクール 講師

    DX推進・内製化支援を行う株式会社ゆめみにて最高人事責任者(CHRO)として戦略人事全般を管掌する。同時に、公的機関や急成長スタートアップの経営・人事アドバイザーとして事業開発や組織変革等を支援する。グロービスではビジネススクールや法人研修で論理思考・人事組織系科目の教鞭を執る他、教育プログラム開発も担う。 大阪大学卒業、グロービス経営大学院修了(成績優秀者表彰)

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