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財政再建に対する問題点とは?

投稿日:2015/07/28更新日:2019/04/09

プライマリーバランス 2020年度黒字化に向けたロードマップ[1]

Fc712139734128fd5f78fcfae5947751 浅尾慶一郎氏

竹中平蔵氏(以下、敬称略): 先ほど、「すごく重要なセッションだからしっかりやって欲しい」と、堀(義人氏:グロービス経営大学院大学学長)さんにプレッシャーをかけられた(会場笑)。しっかり議論していこう。まずはひとしきり、目下の経済状況と財政再建に向けた動きに関する認識を1人ずつお聞かせいただきたいと思う。

浅尾慶一郎氏(以下、敬称略): 日本の景気そのものは、消費税率引き上げの先送りをもって比較的安定していると思う。昨年は、消費税率引き上げで物価が上がったほどには実質所得が上がらなかった。それで国内消費が落ち込んで、去年の4-6月期が一番悪くなっていたと思う。その意味で、現状は比較的いい。特に原油価格が下がっているのは日本にとって追い風だ。それで、今後に関しては短期と中期で2つのポイントがあると思う。1つは外的ショックが起きるかどうか。昨今は世界各国が金融緩和をしているので何年かに1度大きなショックが起きているけれども、直近のリーマンショック以降は起きていない。それが来るかどうか。で、もう1つは3本目の矢がうまく飛び立つかどうかだと思う。

一方で財政再建に関して言うと、経営状況が悪くなったときに会社が行うことは恐らく4通りあるけれども、国は5枚目のカードを持っている。まず、1つは収入を増やすこと。国の場合、景気が良くなって税収が自然に増えるか、保険料収入の徴収漏れを取ってくるというカードがある。で、2つ目は価格を引き上げること。これは増税にあたる。保険であれば年収の上限を取っ払うのも1つの手立てだ。そして3つ目が歳出削減で、4つ目が資産売却。ここまでは会社でも行える。

しかし、国にはお札を刷るという5枚目のカードがある。現在のリフレ政策で2%の物価上昇をずっと続けていくのなら、名目上の税収増にはつながる。とにかく、今はこうした5つの手立てをすべて使っていない。それをどう使っていくべきかも含めて後ほどまたお話ししたいが、その5つの手立てをすべて使えば、少なくともプライマリーバランス(以下、PB)は黒字化できると私は思っている。

435b8d8d9de68c2f494ff7bd6efd913c 小黒一正氏

小黒一正氏(以下、敬称略): この問題は短期と中期で分けなければいけないと思うけれども、数字だけを見てみると「12年」というキーワードが出てくる。まず短期で見ると、明らかに日銀の異次元緩和で好循環の兆しに入ってきたと見える。それを続けることができるのか。昨年10月に黒田総裁が追加緩和を行った。これは国債をネットで80兆円以上増やすということだけれども、新しく発行する国債はざっくり言うと30兆円ほど。従って日本銀行が、様々な銀行等が持つ国債を50兆円、自分のバランスシートで増やしていくという話になる。

今は外にどれほどの国債があるかというと、およそ800兆円。で、日銀はすでに200兆円ほどの長期国債を持っているから、600兆円÷50という計算で、まあ、黒田総裁も無限に続けるとは言っていないが、すべての国債を日本銀行が持ち続けるとなると12年ほどで限界に達する。ただ、市場関係者がその辺をどう思っているかというと、いくつかのところにヒアリングしてみると、「12年ももちません」と言う。はっきり言えば、あと3~4年。早ければ2017~18年頃、今の異次元緩和は限界を迎えると考える人たちもいる。そうした時間的限界があるなかで財政再建をしなければいけない状況に、我々は今立たされているというのが現状認識になる。

では、財政のほうはどうかというと、1つの大きなポイントは社会保障費だと思う。これ、10年ほど前はおよそ84兆円だったものが、今は110兆円ほどだ。正確に言うと国と地方を合わせた「社会保障給付費」だけれども、これが単年で2.6兆円と、消費税の1%分に相当する勢いで伸びている。これをどうするのか。やはりここに切り込まないと財政問題は解決できないのではないかというのが私の認識だ。

D83ede5541bfe0645295e88856a13e93 尾崎正直氏

尾崎正直氏(以下、敬称略): まず地方の経済認識についてお話ししたい。今は「アベノミクスの効果が地方に行き渡っていない」ということが通り相場のように言われるけれども、過去の景気回復局面に比べればずいぶん力強いと思う。高知の有効求人倍率が昨年12月で0.87。これ、実は市場最高値だ。それ以前の市場最高値は平成3年5月と6月の0.76。バブルのど真ん中だった。で、そこから高知県の苦労が始まる。特に「いざなみ景気」の期間を中心とした平成12年から同22年までの有効求人倍率は、全国で1を超えるほどまで回復したにも関わらず、高知県は0.4~0.5ぐらいのままだった。それが今は0.87だから、そう考えると大変力強い。もちろん1になっていないし、とてもじゃないけれども満足できるレベルとは言えない。ただ、ベクトルは良い方向だと思う。

ただ、小黒先生が言われた通りで、この問題は短期と中長期で区別すべきだと思うし、地方にはその中長期的な要因が非常に大きな負担としてのしかかってきている。それは、端的に言えば人口減少。先ほど申し上げた平成12~22年までの間、生産年齢人口はおよそ2割減少し、それに合わせて県内商品売上高も約2割落ち込んだ。基底には、人口減少による経済縮小という問題があり続けている状態だ。税制改革や財政再建について議論するうえでも、この問題にどう対処するかを考えなければいけない。本当の意味での根治対策を抜きにして語るべきではないと思う。

84969925ff3fab6c37e1871b5b3640b6 竹中平蔵氏

で、私としてはそこで思い切ってお金をかける分野が今後も数多くあるだろうと思う。特に少子化対策は根本的・抜本的に強化する必要がある。でないと、今後を50年ぐらいのタームで見たときに、本当の意味での解決を図っていけないと感じる。もちろん、他方では社会保障改革も不可欠だ。また後ほど申し上げるけれども、高知もこれについては大変な課題をいろいろ抱えている。社会保障の歳出に手を付けないわけにはいかない。ただ、この問題については削減できる環境をつくって自然に削減する形としないと、多くの人が大変な苦しみを味わうことになる。従って、まずは「削減しても大丈夫だよ」という環境をつくるかというあたりがポイントではないかなと思う。

竹中: 最初の一回りで問題点をできるだけ出してもらおうと思っていたが、たくさん出過ぎた(会場笑)。ちなみに、私が経済財政担当大臣を務めていたときに日本政府は初めてPBという考え方を打ち出したのだけれども、知事はそのときの担当課長補佐でいらしたとのことで…、当時はありがとうございました(笑)。

→昨年安倍総理が約束した「2020年に向けた財政健全化のロードマップ」とはどんなものなのか。続きは7/29公開予定(全4回)

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