キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

リニア、インバウンド対応…観光客を倍増させるための秘策は?

投稿日:2015/06/02更新日:2021/11/30

関西・観光客“倍増”計画 ~2020年に向けての挑戦~[2]

星野:関空は大変重要な空港だと思う。日本で最もいい空港だ。3000mの滑走路が2本あって、その2本は距離がきちんと離れていて2機同時発着ができるたりする。さらにキャパも余っているし、成田や羽田よりも素晴らしい。ただ、僕が海外営業を通して得た感覚では、「京都に行くなら関空よりも成田のほうが便利だ」と、エージェントは思っている。「それで新幹線に乗ったほうがよほど行きやすい」と。でも、もし関空と京都がリニアでつながっていたら、これは圧倒的に便利だ。ランキングで世界一となった京都に、関空に降りたらリニアですぐに行ける。20~30分で着くかもしれない…、もっと速いか。とにかく、あっという間に到着する。日本の観光を考えたら、東京と名古屋を結ぶより関空と大阪と京都をリニアで結ぶほうが良いのではないかと思うけれども、リニアに対する市長の熱い思いをぜひ(会場笑)。

門川:日本のために大事だと思う。完全な24時間空港は関空しかない。成田も羽田も完全24時間空港じゃない。京都・大阪・関空までリニアを通すのには9000億かかるけれども、それは9000億で首都圏に24時間空港ができるということだ。東京から関空までは75分なのだから。(延伸すれば)あと15分で関空に行ける。

これをJR東海に任しておくのは無理だ。今後の日本をどうするのかという国家政策の視点で考えなければいけない。現在のコースは41年前に第2東海道新幹線として決められたもの。また、全国新幹線鉄道整備法ならびにその施工例で、「新しい線を敷く場合は経済効果等をしっかり検証しなければならない」と法令で決まっている。にも関わらず、41年前に時速250kmで想定された第2新幹線を踏襲していて、検証がなされていない。しかし、必要なのは新しい国土軸で、第2新幹線ではない。関空までつなげたら首都圏にもプラスだ。これほどの国土強靭化はないと思う。

それで、新しい空港を首都圏に一つつくるのと同じ効果がある。もちろん大阪にも京都にも、西日本全体に効果がある。また、人口が減少していくというなかで、すべての鉄道が京都駅につながる。北陸線から湖西線から、旧東海道線から近鉄から、すべてにつながる。京阪にもつながる。そういうことを言って訴えているので、どうぞよろしく(会場笑)。京都のためだけではございませんので(会場拍手)。

8550e1c64f64933a76326cde0ae75f0e

星野:京都は圧倒的なブランドだから、京都と関空を結ぶのはリニアに限らず大変重要だと思う。たとえば、世界経済フォーラムの「旅行・観光競争力レポート」ではスイスが世界一。日本では「インバウンドが多いからフランスがトップ」とよく言われるけれども、生産性を含めたさまざまな指標で評価するとスイスが一位になる。で、その理由の一つは空港と鉄道が一致しているから。チューリッヒ空港に降りると、その地下からTGVでジュネーブまで行ける。圧倒的に便利だ。関西圏でも、そうした移動のしやすさがすごく大事になると私は思っている。そのあたり、京阪さんとして「関西ではこうあるべきだ」といったお考えがあれば皆でシェアしたい。

下條:非常に難しい問題で(笑)。一般論としては、当然ながら京都と関空ができるだけ速く、大きなパイでつながるのは良いことだと思う。ただ、我々は現在、関空から京都までのリムジンバスも出している。最終目的地が京都のどこにあるかというのも大きな問題だと思うけれども、バスであれば関空からその目的地に直接行けるという便利さがある。そんな風に、選択肢はいろいろあると思うけれども、ただ、一般論として今は大変不便だということも言えると思う。

星野:関空-京都間は、今は75分ぐらいか。これも須田さんが言っていたプロモーションと関係しているが、外国の方は意外と関空の良さを知らない。知らないと関空に対する需要も増えないので便数も増えない。今はそういう悪循環になっていると感じる。空港の機能性をプロモーションすることもすごく大事だと思う。さて、ここで話題を戻して、福山さんに改めて伺いたい。福山さんとしては、ご自身の地盤でもある関西圏の観光客数倍増に向けて、どういったことが大事になるとお考えだろう。

福山:国全体で言うと、外国人観光客の方一人が5日間で落としてくださるお金は、平均13万円。一方、日本人の年間消費額が平均124万円ぐらい。ということは外国人10人が5日間滞在すると、だいたい日本人一人の年間消費金額になる。となると、1000万人が5日間滞在したら日本人100万人ぶんの年間消費額になると思って欲しい。そして今は2020年のオリンピックまでに2000万人という目標を掲げているわけで、200万人ぶんの年間消費額が落ちてくるということだ。少子高齢化のなかで、こういった消費の相乗作用があることは、一つの要素として重要だと思う。

そのうえで京都の話をしたい。たとえば別セッションで堀場(厚氏:株式会社堀場製作所代表取締役会長兼社長)さんがしていらしたお話なんて、まさに我が意を得たりだった(会場笑)。皆さまのお話を伺って今日は本当に気分がすっきりしているというか、「東京一極集中何するものか」という勇気を得た。ただ、京都は難しい。たとえば、今は祇園に行っても八坂神社の前は中国人の方と韓国人の方が大変多い。それを見て良かったと思っている京都の方もいるし、「ちょっと増えすぎちゃうの? 祇園を歩いていてもハングル語と中国語しか聞こえないよ」と言う方もいる。それで、「もういいよ。自分たちだけのコミュニティで、しっぽりと、本当に良いところでご飯を食べるんだ」という方々もいる。それで、「観光客はこっちで食べたらいいよ」といった住み分けが、なんとなく、心のなかにある。

今後京都を訪れる外国人観光客が増えていったとき、それがどんな作用をおよぼすかを考えていく必要がある。また、今日は外国人観光客の話ばかりになっているけれども、国内の観光客もいる。京都に来られた日本人観光客に、京都はどんなおもてなしを用意するのか。あるいは、すごくお金を持っている外国の方には須田さんのところでプロモーションしてもらうとして、途上国の中間層にはどういったおもてなしをご用意するか。そういったことが、京都としてはすごく大きな課題だと思う。観光客が増えるのはもちろん歓迎だけれども、その辺について市長がどう考えておられるかということも含め、京都を今後どうプロゼンテーションしていくのかという課題がある。

門川:我々は今新しい観光政策として、2020年までに191の事業をやろうとしている。それによって、たとえば外国人観光客の宿泊は過去最高で113万人だけれども、6年後には300万人にしたい。修学旅行生は110万人だから、そのおよそ3倍、外国人に京都で泊まっていただこうという明確な目標を立てた。そのためには宿泊施設や買い物環境がいる。あらゆる取り組みを、総力を挙げて進めていく。もちろん、ご指摘のような閉鎖的体質は京都にはあるし、ホスピタリティやおもてなしという面で相手の立場にきちんと立つことが大事だ。ただ、同時にお茶でも生け花でも、こちらのルールをきっちり分かってもらうというのもある。その敷居が京都の良さでもある。それを両立させていきたい。「敷居を超える方法を皆に学んでもらおう」と。

おかげさまで、これまで京都に5つ星のホテルはなかったけれども、星野さんのところにも来てもらうし、フォーシーズンズもザ・リッツ・カールトンもアマンもできる。観光振興計画で「世界に冠たる宿泊施設をつくる」と言ったら、京都の人にはだいぶ嫌がられた。でも、できた。そうしたら、ほかの施設もそれに合わせてバージョンアップする。こういう作用が今は始まっているのだと思う。それで新しく垢抜けしていくのではないかなと思うし、そうならなければいけないとも思う。

E5d90d93256aecae0de706acbbf6cc24

福山:京都で政治活動を始めたとき、すごく印象に残ったことがある。とある古いお宅に挨拶をしに入ると、もう入り口のところに立礼のお茶が用意されていた。で、そのときはご主人が出てきてくださらなくて、代わりに奥様が「ちょっとお待ちください」とおっしゃる。それで座っていたら、いきなり和菓子が出てきた。これ、お茶の作法だ。私は若干お茶を嗜んでいたので、「あ、ありがとうございます。頂戴いたします」と、まず和菓子を食べた。そうしたら今度は当然お抹茶が出てきので、一応の作法でいただいて、「結構なお味でございました。いきなりお邪魔したのに、おもてなしいただいてありがとうございます」と答えたら、おもむろに奥からご主人が出てきた。それで、「お前、若いのにそのぐらいのことはできるんやな」っておっしゃった。たぶん合格ということだったようで、そこから話が弾んだということがある。

僕はこれを若い頃に経験して、「京都は怖いところだな」と思った。そのあとも、たとえば何かのお願いをしに行くと、京都の方は必ず、「お前、あそこに挨拶に行ったか?」「お前、あそこにちゃんと仁義切ってるか? 俺より先にあそこへ行っとけ」といったことをおっしゃる。正直、面倒くさい。「またか」と思う。お茶の話も、まず誰に挨拶をするかという話も、今の世の中の効率性を求める流れ、あるいは時間を短縮するといった世界からはまったく逆。一見すると、大変うっとうしい作業だ。

でも、それをやることで、実はいざ何かするとき、いきなり時間が縮まる。あとになってから、「お前、あのとき来なかったな」と言われるより、はるかに時間も短くなるし、皆さんを巻き込んでいろいろなことが実現する。京都の良さはそこにあって、それが長く続くコツだと僕は思う。それを観光客の皆さんに押し付けるわけにはいかないが、そういったことを含めた京都なりの良さも浸透させていかないと、ほかの観光地と変わらなくなってしまう。その付加価値の伝え方って、すごく微妙だ。観光の世界でお客さんを倍増させていくためにも、無味感想な世界を、今お話ししたようなちょっと味のある世界にしていくといった考え方が重要になると思う。

星野:なかなか難しい話題だった。ただ、京都は閉鎖的なところがあるというお話があったけれども、私が全国で仕事をしていて感じるのは、閉鎖的じゃないところはないという点だ(会場笑)。タヒチやバリだって閉鎖的だ。だから、これは人間の性質なのかなと思う。一方、京都のすごいところは神社仏閣が観光戦略に対して大変積極的な点だ。神社仏閣の方々まで、たとえば「オンシーズンではなくてオフシーズンで何かプロモーションしようよ」なんて、我々と同じようなことをおっしゃるから驚く。

※開催日:2014年10月18日、19日

関西・観光客“倍増”計画 ~2020年に向けての挑戦~[1]

関西・観光客“倍増”計画 ~2020年に向けての挑戦~[3]

講演者

  • 門川 大作

    京都市長

    1950年11月23日京都市生まれ(63歳)。 立命館大学二部法学部卒。京都市教育長を経て、2008年2月より第26代京都市長に就任。2012年2月再選を果たす。徹底した「現地現場主義」をモットーに市民活動の場を駆け回り,市長就任からの訪問数は5000箇所超。市民と共に汗する「共汗」と市民の視点に立った政策の「融合」をキーワードに,全国のモデルとなる市政改革を進める。教育長時代は、「市民ぐるみ」「地域ぐるみ」の教育改革に心血を注ぎ,小中学校のコミュニティスクール化や市立高校改革,総合支援学校改革など大胆な改革を推進。教育改革の手腕を請われ,第1期安倍内閣の「教育再生会議」委員,中央教育審議会等の委員を歴任。現在,世界歴史都市連盟会長,指定都市市長会副会長,世界文化遺産地域連携会議会長,指定都市自然エネルギー協議会会長等を務める。好きな言葉は「心を込めてすべてを大切に」。趣味は「人間浴」「仕事を楽しむ」。
  • 下條 弘

    京阪電気鉄道株式会社取締役常務執行役員

    1975年京阪電気鉄道株式会社入社、2007年同社執行役員、2010年中之島高速鉄道株式会社代表取締役社長(現在)、2013年京阪電気鉄道株式会社取締役常務執行役員(現在)
  • 須田 健太郎

    株式会社フリープラス 代表取締役社長

    1985年1月8日 マレーシアクアラルンプール生まれ。幼少期をインドネシアで5年過ごす。大学を中退し、2007年に株式会社フリープラスを設立、代業取締役就任。 """"日本の観光立国を成し遂げ、日本のファンを世界に広げ、日本の元気の原動力となる""""ことを使命とし日々国内外で奮闘している。
  • 福山 哲郎

    参議院議員 参議院外交防衛委員長

    同志社大学法学部卒業、京都大学大学院法学研究科修士課程修了。1990年、松下政経塾に入塾。その後、同塾政策調査室長などを経て、98年、京都選挙区から参議院議員に初当選。2004年、2010年の選挙で当選し、現在3期目。99年、民主党に入党。党内では、過去に政調会長代理、参議院民主党政審会長、調査局長、役員室長代理、地方組織局長、地球温暖化対策本部事務総長などを務める。2009年の政権交代後、鳩山内閣で外務副大臣、菅内閣で内閣官房副長官を務める。参議院では、過去に環境委員長、予算委員会理事などを務め、現在、外交防衛委員長。2001年から京都造形芸術大学客員教授。共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』(幻冬舎新書)、『21世紀・日本の繁栄譜』(PHP研究所)、論文に『新しい政治文化の創造と公職選挙法』(月刊「都市問題」東京市政調査会)、『民主党参院政審会長の“与党”はつらいよ日記』(月刊「論座」朝日新聞社)など。

モデレーター

  • 星野 佳路

    星野リゾート 代表

    1960年、長野県軽井沢町生まれ。1983年、慶應義塾大学経済学部卒業後、 米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。 1991年、星野温泉(現在の星野リゾート)社長(現在の代表)に就任。 所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、 運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。 独創的なテーマが紡ぐ圧倒的な非日常を演出するブランド「星のや」、地域の魅力を再発見する上質な温泉旅館「界」、自然を体験するアクティビティを備えたリゾート「リゾナーレ」、都市ホテル「OMO(おも)」、若年層向けカフェホテル「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に、国内外で59施設(22年8月時点)を展開している。2013年には、日本で初めて観光に特化した 不動産投資信託(リート)を立ち上げ、星野リゾート・リートとして東京証券取引所に上場させた。 2022年、星野リゾートは創業108周年を迎え、「OMO7大阪 by 星野リゾート」「OMO5金沢片町 by 星野リゾート」「界 由布院」などを新たに開業する。

関連動画

学びを深くする

記事に関連する、一緒に学ぶべき動画学習コースをまとめました。

関連記事

合わせて読みたい

一緒に読みたい、関連するトピックをまとめました。

サブスクリプション

学ぶ習慣が、
あなたを強くする

スキマ時間を使った動画学習で、効率的に仕事スキルをアップデート。

17,800本以上の
ビジネス動画が見放題

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

利用者の97%以上から
好評価をいただきました

スマホを眺める5分
学びの時間に。

まずは7日間無料
体験してみよう!!

7日間の無料体験へ もっと詳細を見る

※ 期間内に自動更新を停止いただければ
料金は一切かかりません

新着動画

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース