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人口が減るとどうなる?人口問題のリアルな問題点

投稿日:2015/05/25更新日:2019/04/09

選択する未来 ~人口減を食い止め継続的に成長する方法とは~[1]

Aa850f386ceac8252f90430b647d528a 三村明夫氏

三村明夫氏(以下、敬称略):これほど若い人たちが、ラフな格好でいらしていると予想していなくて(会場笑)、ちょっと場違いなネクタイ姿で来てしまった。私が会頭を務めている日本商工会議所は514の会議所からなり、全日本企業のおよそ1/3を占める125万社が会員企業となっている。特徴の一つは、円安のメリットを最も受けにくい、円安弱者である点(会場笑)。また、125万社中7万7000社となる東京の企業以外は、すべて地方の企業だ。従って、地方の組織と言えるわけで、人口減と地方の疲弊を最も身近な問題として受け止めている。

一昨年だったか、甘利(明氏:衆議院議員/経済再生担当大臣)さんからお電話があった。で、「安倍さんの政策は、足元は非常に良いけれども将来をどうするかという点が少し欠けている。そこで50年後の日本を考える委員会をつくりたい。引き受けて欲しい」とのお話があった。率直に言って、明日や明後日のこともよく分からない我々が何を基準に50年後を考えたらいいのか。そういう点から頭を回転させた。

一つはっきりしているのは人口動態だ。そこで「as it isプラン」をつくり、人口減少がどれほど大きなインパクトを与えるのか考えた。で、その結果として、「ミゼラブルな日本を子孫へ残すわけにはいかない」と。「未来は選択できるんだ」ということで、「『選択する未来』委員会」という名前なら引き受けますとお話しした。すると、すんなりそういう名前になった。石黒さんもその有力メンバーだ。これまで34回におよぶ議論のうえ、昨年、報告書を仕上げた。今度、読みやすい本にして発行する予定だ。それで11月に最終報告書をつくり、今年1月に経済財政諮問会議へ最終報告を行った。

ただ、人口減の問題というのは地方の疲弊と密接に関連している。だから、人口減が日本に大きなインパクトを与えるのではないかという心配を、我々はずっと前からしていた。しかし、歴代政府は正面切ってその問題を取りあげてこなかった。この問題は対策が早ければ早いほど必要となるトータルコストも少なくて済むのだけれど、それが今回、ようやく取りあげられた形になる。

まず一番大切なのは、人口減が日本に深刻なインパクトを与えるという危機意識を皆で共有することだと考えた。そこで日本創生会議の増田(寛也氏:東京大学公共政策大学院客員教授/前岩手県知事)さんが、新しい指標を提示している。これは、子どもを産む女性の9割は20~39歳なので、その人口動態をキーにしたもので、全国1800におよぶ自治体の将来がどうなるかを示したものだ。そういう女性が現在よりも50%以上少なくなると、どれほど頑張っても人口は減少する。また、「人口が1万人以下になり、かつ女性が50%以下になった自治体は消滅する可能性がある」という指標も提示した。そんな風にして私どもの委員会と増田さんの会議で、人口問題が日本にとって大変深刻な、すぐ手を打つべき課題だということを浸透させてきた。

今日の読売新聞にも書いてあったけれども、今年4月に行われる統一地方選でも70%以上の自治体首長が人口減対策を最大の争点としている。特に人口1万人未満の地域ではその危機意識が高く、79%の首長が「人口減対策が争点になる」と言っている。残念なことに人口の多い都市では同じ回答が50%に留まったが、いずれにせよ、人口減が大変な問題だという認識はされてきている。

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まず、いくつか事実関係を見てみたい。人口減少数の将来推計を見てみよう。昨年は26万人だった年間人口減少数は、2030年頃は85万人に拡大しており、2040年以降は年間100万人前後が減っていくと予測されている。問題は、それで毎年100万人の減少が続いたのち、その後の2060年以降も減少傾向が終わらない点だ。人口が少なくなっているから減る幅は衰えるが、人口減自体は何もしなければ永久に続いていく。我々は50年後の世界を描くよう言われたわけだけれども、50年後以降も人口は減り続けるわけだ。もちろん、「今の状況が継続したら」という前提だが。

また、0歳から15歳の若年人口も減っていって、2050年には全人口のおよそ9%にまで減少してしまう。また、老年人口も深刻だ。4割が高齢者になってしまう。そうすると理の当然として、老齢者と若年を支える生産人口が50%少々にまで落ちる。要するに一人の生産力人口で若年と老年を支える形になるわけで、これはサステナブルじゃない。国としてそれ以上存続し得ない状況になってしまう。

「人口が減ってもGDPが一定ならもっと豊かな生活になるのでは?」という見方はある。我々の委員会でもそれでずいぶん議論をした。しかし、人口が減ってもGDPが一定ということはあり得ない。かつて4.6%だった日本の潜在成長率は、1.6%になって、0.8%になって、足元では0.6%にまで落ち込んでいる。これは資本蓄積、トータル生産性、そして労働人口という三つの関数で決まる。つまり、人口が減るということは成長率が下がるわけだ。そうなれば国内マーケットが縮小する。国内マーケットが縮小すると、国内に資本を投下する人がいなくなる。資本を投下することによってイノベーションが進むわけで、人口が日本の成長に与える影響は極めて大きい。

そして、生産性と出生率が今のままであれば先行きはマイナス成長であり、マイナススパイラルに陥ってしまう。従って、「人口が減ってもGDPがそのままであれば一人あたりGDPは高くなって、それで豊かになる」なんていうことは言えない。行き着く先は日本の国際的地位の相対的低下であって、マイナススパイラルに陥った日本ではイノベーションが生まれなくなるということだと考えている。

それともう一つ。東京への集中も進んでいる。当然、東京には15歳から25歳ぐらいまでの世代が今も昔も流入している。ただ、2000年までは25歳以上の人間が地方に帰っていた。地方に職があったからだ。しかし、2000年以降は製造業の海外移転が進み、国内での設備投資が相当少なくなっていることもあり、地方の職がどんどん少なくなっていった。その結果、日本全体の人口減と同時に東京集中がさらに進んでいった。特に東京へ集まっているのは若い女性だ。商工会議所の会頭として地方へ行っても、この二重の人口減がいかに地方を疲弊させているか、つくづく実感する。

いずれにせよ、そうしたことをベースに、今年1月、経済財政諮問会議へ最終報告を行った。そこで、「50年後も1億人程度の安定した人口で、GDP成長もなんとか1.5%から2%をキープしていきたい」と。これを達成するのは非常に難しい。しかし、現在はこの目標と同時に、「東京への一極集中を止めよう」というターゲットも設定した。報告書では、そこに向かって今からどのように進むのかということを示している。2020年までに各種対策を集中的にとらない限り日本の先行きはないし、このままでは極めてミゼラブルな将来しか子孫に残せない。我々の責務として、これから東京オリンピックまでにありとあらゆる対策をとることで、そういうミゼラブルな日本が来るのを防ぐのだという結論に至っている。

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そして、もう一つ大切なことがある。実は経済活動が活性化している地域では出生率も上がっている。地方の元気の良さは出生率と極めて密接な関係にあるわけだ。従って、その二つの課題には同じ対策で取り組むことができる。最終的には、どのようにして地方に魅力的な職場をつくるかがポイントになるのだと思う。

こうした目的の達成は非常に難しいが、デフレ脱却が視野に入った今こそできることだ。また、社会保障に関しても老人から若者へのシフトを猛烈に進めなければいけない。ただ、それは選挙対策として大変まずいということで、どの政権も絶対やりたくないと考えていた。だから強力な安定政権でしかこういう思い切った対策はとれない。となると、安倍政権こそ我々にとって最後の希望だ。今こそできるし、今しかできないということで最後のチャンスだと思う。ありがとうございました(会場拍手)。

→選択する未来 ~人口減を食い止め継続的に成長する方法とは~[2]は5/26公開予定

※開催日:2015年3月20日~22日

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