アシックスのグローバル戦略[2]
堀義人氏(以下、敬称略):(ここまで)わくわくするお話だった。ゼロからスタートした会社が今は世界を舞台に巨人と言われるナイキやアディダスと戦っている。売上規模としてはナイキが3兆円を狙っていて、アディダスが2兆3000億円ほど。で、3位グループにプーマとアシックスさんがいて、ともに4000億前後ということだろうか。
尾山:ユーロ換算で大変難しいのだけれども、プーマは5000億台になっている。当社は日本での売上がおよそ30%で、円で変わらなくて今は4000億ぐらい。
堀:現在のアシックスさんは世界3位を狙っているとのお話を聞いたこともある。今後の戦略としてお考えになっているものがあればぜひ教えていただきたい。
尾山:実はコマツの坂根正弘相談役は大学の先輩だ。それで著書も読んで講演会も5回ほど拝聴しているけれど、私も同様のことを考えている。差別化、そしてジャンルごとにグローバルで勝つことが大事だと思う。実は、レディースのランニングシューズではドイツですでにNo.1だし、「ランニング・シューズ・フォー・ランナー」というカテゴリではアメリカでもナイキに続いて2位だ。また、レスリングはアメリカでNo.1。バレーボールもヨーロッパではアディダスとうちぐらい。そこにミズノさんが少し出てきている感じだ。あと、国ごとに見るとオーストラリアでは我々が売上高No.1になっている。それらをすべて集合させた数字が決算には載るが、そうしたセカンドまたはサード・ラインで彼らに勝つようにしてはどうかと考えている。プライドにもなるので。たとえば我々はスプリングボクスに加えてワラビーズ(ラグビーオーストラリア代表)とも契約した。ラグビーではアディダスしか相手がいないから、少し売上をあげればそこで2位になる。テニスシューズも今年はフランスとスペインでシェアNo.1になっている。
堀:カテゴリまたは国ごとに入り込んで、各個撃破しながら優位な状態をつくっていくためには地道な交渉やマーケティングが鍵になるというお話だと思う。
尾山:そう。ナイキやアディダスが入ってくればかなりきついけれど、ナイキは6つのカテゴリに集中している。特に今はレディースを強化していて…、まあそれはどこでも同じと思うけれど、アパレルと併せてレディースを強化してきた点はすごい。ただ、ゴルフは入ってきたけれどもラグビーには入っていない。我々はそういうところを見ながら得意な領域で攻めていく。ラグビーとテニスはまさにそれだと思う。
堀:スポーツ用品のなかで靴に絞るどれほどの差になるのだろう。
尾山:全体のおよそ86%がシューズだから、ボリューム的にはやはりナイキとアディダスが大きい。ただ、そこでどのドメインを狙うのか。当社はアスレティックが強く、アスリートのあいだではかなりシェアが高いと思う。しかし、カジュアルやストリートというか、街履きや旅行用ではかなりシェアが低い。
堀:最先端のシューズで圧倒的シェアを獲得しているということは、コアな人々に支持されているのだと思う。そうした人々に憧れる層にも入り込めるように感じる。(04:36)
尾山:また車の話になるけれども、最近のレクサスは恐らくアウディやBMWのシェアを獲りにいっていると思う。で、そのためには、まず「これが欲しい」という気持ちを持ってもらって、さらに購入後はそれ以上の使用感で満足してもらう必要がある。これはほとんど心理学の話になると思うけれど、そうするとファンになってもらえるのだと思う。メーカーとしてはそれを続けて出していかなければいけないというプレッシャーがある。で、もちろん技術に関しては毎年進化させていくべきだけれど、体と足に覚えこんでしまうとなかなか浮気できないということが特に靴のビジネスではある。従って、まずはシェアを広げるため、「これが欲しい」となるほどのイメージを心に描いてもらわなければいけない。ただ、やはりこの分野では日本発のイメージが低く、アメリカやヨーロッパのイメージは日本の倍ぐらい高いと思う。
堀:圧倒的な技術優位性をベースに一般ユーザーへ訴求していけば、伸びていく可能性は相当高いように思う。
尾山:そう信じている。ただし、カジュアルのイメージに迎合してしまったスポーツブランドはほとんど落ちていってしまったということもある。
堀:現在の海外売上比率は7割とのお話だった。製造のほうはどうだろう。
尾山:靴に関しては山陰のほうに工場があって、250名ほどの従業員がいるだけ。従って、ほとんど海外だ。ざくっと言えば100%近くが海外と言っていいと思う。で、アパレルのほうは日本と上海に自社工場があるけれど、割合としては国内が10%前後。「それで良いのか」という議論は今もしているけれども。
堀:国内はマーケティングと研究開発、そして本社機能のみ?
尾山:そういう形になる。
堀:日本人以外の社員の方は何割ほどいらっしゃるのだろう。
尾山:冒頭で従業員数はおよそ6500人と申し上げたけれど、これはヨーロッパにあるショップの人間も入っている。大まかに数えると半々ぐらいだ。ただ、日本の固定費というか人件費は高いので、海外従業員の比率はもっと高めるべきではないかと思っている。今は50%以下の状態なので。
堀:ナイキやアディダスは著名スポーツ選手との契約に相当な資源を集中させている印象がある。これ、ブランディングとしてはかなり有効なのだろうか。
尾山:そう思う。錦織君に関しても当社で検討したことはあったけれど、その頃はまだランキングも85位以下で契約しなかった。「獲っておけば良かったな」と(会場笑)。スポーツ選手との契約には大変なプレミアムがつくから、グローバルな活躍とレピュテーションを考えたうえで、支払うお金が妥当かどうか、よく考える必要がある。錦織君のスポンサーになったところは大変な先物買いをしたと思う。彼も大変な努力家だから、あのレベルまでいくと今後はほぼ獲れない。獲るとしたらスポーツ用品ではナイキかアディダス、それ以外ではトヨタとか、そういう世界の話になってしまう。プロの世界だからゼロの人もいればミリオンの人もいる。我々としてはそこで最適な選択をしているつもりだけれども、実際のところ、錦織君のレベルまでいくと誰もがファンになると思う。それがスポーツのすごいところだ。
堀:リテールに関してはどうだろう。今後は小売店を増やす方向なのか、ネットを活用していくのか、あるいは他の販売店に供給してくのか…。
尾山:ヨーロッパにいた頃、アディダスの方に言われてはっとしたことがある。彼らはホテルで展示会をやらない。「天井にシャンデリア、足元にカーペット。これは俺たちの世界じゃない。だから国内に20のショールームをつくり、そこへお客さまを呼んで商品を売るんだ」と。直営店ではデコレーションやライティングが自分たちで行えるから魅せたいように魅せることが可能だ。一般コンシューマの方であっても小売の方であっても、そこに来ていただければ自分たちの世界を見せることができる。これが小売店のいいところだと思う。あと、ネットに関して言うとアメリカではすでにベスト5のうち、1位と5位はネットだ。日本でも急速に伸びていくと思う。そこで、当社は来年1月1日に組織を変える際、本部にEコマース部隊をつくる。将来はそこが他の販売部隊と競争になる筈だから本当は独立のほうがいいけれど、まだまだ小さいので。
堀:Eコマースは直接販売の強化になるのだろうか。
尾山:二つある。アメリカであればアマゾンとか、日本であればゾゾタウンといったところへの卸が今は先行している。それに加えて、自前の直営店と同様に自前のEコマースサイトも強化していく。
堀:最近は靴にセンサーを付けて距離や踏み込みの圧力を測り、科学的に解析するようなアプリも増えているという。そうした方向についてはどうお考えだろう。
尾山:間違いなくその方向に進んでいる。当社も「My ASICS」というサービスを全世界に広げているところだ。利用者がなかなか増えないのでいろいろ考えているところだけれども。あと、ウェアラブルも増える。簡単に入力できていろいろな結果が分かるようなサービスをつくりたい。ランニングのガイダンスをするソフトはすでにできているから、心拍を含めていろいろなことが日常的にチェックできる、使い勝手の良いウェアラブルなものをつくりたい。それをBluetoothで飛ばしてモバイル端末等で見ることができるといったサービスは常識になると思う。ただ、最初にそうした事業をはじめたナイキは、どうも自前だけでなくどこかとアライアンスを組んでやるようだ。どこまで自前でITに投資するかといった経営上の問題はある。
堀:ナイキは撤退するといった話も聞いたが。
尾山:そう、それ。だから自前でやるものからは撤退するようだけれど、同様のサービスが広がる流れ自体は特にアメリカで大変強い。だから改めてどこかとアライアンスを組んで、ソフトは協働でやるという感じではないか。自前でIT投資をしたり在庫を持ったりするぐらいなら、別のところにリソースを使いたいという考えだと思う。
堀:東京オリンピック・パラリンピックについても伺いたい。早くもあと6年。東京開催が決まったブエノスアイレスでのIOC総会にはいらしたのだろうか。
尾山:いた。記者発表のとき、新浪(剛史氏:サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)さんや僕は偉い方々と離れた場所にいたが、NHKに映っていたようだ。新浪さんはきちんと座っていたけれど、僕は近くの方と喋ってばかりで(笑)。
堀:僕はあのとき仲間と中継を観ていて、東京に決まった瞬間は「やったー!」となった。五輪にかけるアシックスさんの思いや戦略も伺いたい。
尾山:1960年のローマオリンピック以降、創業者は毎回参加していた。だから純粋なオリンピック信奉があったと思う。ただ、現在はオリンピックもひとつのマーケティングツールと考えるべきだ。オリンピックのインカムは約8000億円にのぼる。このうち、最も大きな放映権と2番目に大きなドメスティックのスポンサーシップで5600億円。全収入の2/3前後を占める。あとはチケッティングが1200億円。現在は8000億にまで伸びてきているとのことで、東京ではおよそ1兆円になる可能性もあると思う。
ただ、放映権収入はアメリカが圧倒的に大きいので、すべてアメリカのゴールデンタイムに当てられてくると思う。マラソンやアメリカが強い女子サッカーやバスケットに関しても、アメリカのゴールデンタイムに基づいて時間組みがされるのではないかと想像している。彼らが寝ている最中はリアルタイムで一番人気のある、たとえばゴルフだとか…、ゴルフは仕方ないけれども、照明の調整ができるところであれば、それに合わせて大変難しい作業になると思う。ヨーロッパとアメリカ東海岸ならまだしも、日本とアメリカは大変離れているので、どういう風になるのかなと思う。
あと、スポンサーに関しては、最高位のスポンサーとなる「ワールドワイドパートナー」が11社。なぜ、「サムスンとパナソニックがそのなかに?」と思われるかもしれないが、パナソニックは放送機器で、サムスンはモバイルというカテゴリだ。そのカテゴリを切り売りすることでかなり広がってくるし、ここはIOCに直結で入る。で、その下位スポンサーのお金はローカルな国内オリンピック委員会に入る。トヨタさんか日産さんがそこに入るか、または「ワールドワイドパートナー」にすごい金を出すか、どちらかだと思う。まだ決まっていないが、1月までにはなんらかのインディケーションが出ると思う。ルール上は来年1月1日から全スポンサーがこの枠組みで動き始めるので。
あと、数字もいくつか紹介したい。雇用も大変増えるし、大和総研は総額150兆円の投資になるのではないかと言っている。そのうち95兆円が国土強靭策ということでインフラ、55兆円が観光を中心とするソフトウェアへの投資だ。トータルで150兆円が2020年のオリンピック・パラリンピックが終わるまでに投資されるのではないか、と。これが一番大きな数字になる。
堀:前回のロンドンではアディダスがスポンサーに入っていた。アシックスさんは東京に関してその意欲をお持ちだろうか。なかなか言えないと思うが(笑)。
尾山:2016年のリオはナイキで決まっている。まだ何も情報が出てこない状態だけれど、日本で開催されるわけだし可能ならやりたいという気持ちはある。ただ、たとえばマンチェスターユナイテッドとアディダスとの契約は1000億…でしたっけ?(※ 10年で1300億)、それほどのものなので、まあ、どうなるか…。
堀:アジア開催ではアシックスさんになると嬉しいというか、やはりローカルスポンサーに日本企業が数多く入ると日本人としては嬉しい。いつ頃決まるのだろう。
尾山:ルール上というか、書面では12月末までに決まっていなければいけない。来年1月1日以降はそのメンバーしか宣伝できないことになるので。
堀:その選考プロセスはもう始まっている? もう11月なので…。
尾山:いろいろな作業がかなり遅れているとは聞いている。場合によっては1月中にズレ込む可能性もあると思う。
堀:ちなみに、私は創業者の方とお会いしたことがある。
尾山:あ、そうですか!
堀:本当にびっくりするほど元気な方だった。僕がお会いしたときは80代でいらしたと思うけれど、声の張りや気力というか、メッセージの出し方が素晴らしい。
尾山:その通りだ。マイクを必要としない人だった。カラオケで喉を鍛えている僕も、あんな風にしたら喉がガラガラになると思う。
堀:創業者の方からはどういった学びがあっただろうか。
尾山:創業者は地元の第一中学のようなところを出ているのだけれど、見かけはどちらかというと「とっぽい」というか。で、実行力があってディシジョンメイキングについてはっきりとものを言う。「どう受け取れば?」ということにならない。あと、世界連盟の会長を2期務めていたけれども英語は一切喋れなかった。ところが、通じる。当時、僕が通訳を一度間違えたとき、「彼は絶対にそういうことを言わない。これまではこういう論旨でこういう論法で来ていた。でも、お前が訳したのはこうだ。それはない」と言われたことがある。相手の人物像なりデータが頭に入っていたのだと思う。
堀:ああいう方が会長を務めていたら皆の敬意を集めると思う。
尾山:レジェンドのような存在だった。創業者ということもあったし。堀先生もそうだけれど、やはり創業者は何か違う。起業自体は簡単だけれど、それをずっと続けていくのは並大抵のことじゃない。あと、創業者は幸運も自分のものにしてしまうし、相手をクリアに説得していく。だから最近はTEDに興味がある。「社内で開催しようかな」と。従業員のコミュニケーションスキルを上げるために、日本語でもいいから。
堀:ここで、トップセミナーへいらっしゃる登壇者さまへいつも投げかけている3つの質問をさせていただきたい。まず、尾山社長が尊敬しているリーダーあるいは歴史上の人物はどなたかいらっしゃるだろうか。
尾山:尊敬する方は周囲にもたくさんいるけれど、歴史上で好きなのは信長だ。たとえば今は海外売上比率が70%で、実際のところ、80%にも届くと思う。そういう状況にある僕の今の気持ちは、桶狭間へ行くときに熱田神社へ馬で駆け出した信長みたいなものだ。「あとから誰かついて来るだろう」という気持ちでやっている。その新規性も含めて、歴史的の人物では信長が面白いと思う。
堀:では二つ目。日々の習慣で何かしていらっしゃることはあるだろうか。
尾山:僕は日商岩井に入社したのち、新人で初めて為替ディーリングの部署に配属された。で、仲間と呑んでいたせいもあるのだけれど、寮で朝起きたときにあまり顔色が良くないときがあった。そこで、小さな器にウィスキーをちょっと入れて出たことがある。あと、僕はアメリカに赴任した当初、口を横に広げる笑い方ができなかった。それで鏡を見ながら一生懸命口を広げて笑顔の練習をしていた。要は、朝出るときに自分の顔のコンディションをきちんと整えるというのが習慣だと思う。あと、モテるためというのもあるけれど、身奇麗にする。不潔にせず、華美になる必要はないけれども服装をきちんとする。で、自分の顔を見て、これから一日を…、戦いに行くわけじゃないけれど、一日を過ごすにあたって「ちゃんとした顔してるか? 汚い服装じゃないか? 爪はきれいか?」と。最近は靴にもなるべくワックスを塗ってきれいにしている。新入社員の頃からそういうことをしていたから、それが継続している感じだ。
堀:それでは三つ目。座右の銘は何かあるだろうか。(27:34)
尾山:「照于一隅」。たとえば、この会場を掃除する方がいますよね。海外に行くと分かりやすいけれど、遅くまで仕事をしていると夜9時頃に掃除をする人が入ってくる。そういう方々に、僕はちらっとでも視線や意識を配ることにしている。「天が上がったとき、いろいろなところを隅々まで照らすよ」という風に私は受け取っているけれど、細かなところにも目を配り、できれば声もかける。あるいは無視をせずに、「あ、いるな」という意識を持つ。すると相手にもその意識がなんだか伝わるんじゃないかな、と。そんな思いもあって、若い頃からこの言葉がいいと思っていた。
それと、何もかも順調にずっと来ている人は絶対にいない。皆、嫌な上司がいたり、取り返しのない大きな失敗をしたりている。私は日商岩井に入った年に大金を送り間違えたことがある。‘Bank of Tokyo’に送らなければいけないものを‘Bank of America’に送ってしまった(笑)。80万ドルだったかな? 銀行間だったから結局は助けてもらえたけれど、個人に入れていたら絶対に戻ってこなかった。で、その日の帰りにとぼとぼと駅に向かって歩いていら、とある先輩にたまたま会った。で、「どうした?」と言うから、「いや、こういうことがあって」と言うと、「たいしたことないよ」と。その先輩はよほど大きな失敗をしていたみたいだけれども(会場笑)。
堀:最後に会場へのメッセージをいただきたい。大阪・名古屋・仙台・福岡にも多くの人が集まった。彼らに対して、たとえば「こういうリーダーになって欲しい」「こういうことをしたらいいよ」といったメッセージを一言いただいて終わりにしたい。
尾山:いろいろな経験が必要だし、いろいろな方の意見を聞いていくべきだと思う。ただ、意思決定をするのなら自分自身の中に明確なイメージを持っていなければいけない。そのイメージを基にするからこそ、さまざまな条件を見たうえで明確に意思決定ができるのだと思う。紙に書いた事業プランだけでなく、頭のなかに夢のような3Dのような、「こんな会社にしたい」というイメージを持つべきだ。たとえば我々は本社をすべてリノベートしている。1984年から一切手をかけていないので。そこで、たとえばライティングをLEDにすれば、明るくなるな、と。「それで人の心が変わるだろう」と。目を閉じて、「この事務所はどうなるか」とイメージする。ピンクにするのでもいいし汚かったらきれいにするというのでもいい。とにかく具体的なイメージを頭の中に持つべきだ。決して文章は先に来ないと思う。それを文書化することで伝達ができる。そうしたイメージを持たないまま、文章やチャートで「これをやるべきだ」と言っても、なにかこう、そこに魂がないような気がする。でも、“画”があればブレない。頭の中の話だからファジーではあるけれど、そうしたイメージをきちんと持っていれば突き進んでいけるのではないかなと思う。
あと、当然ながら何か問題があればそれを調整する必要もある。リーダーには突撃力だけでなく、コンプロマイズというか調整力も必要だ。ときには撤収も大事。アシックスでも以前、たとえば200~300万程度の売上しかないアイテムに関して、「なぜ永遠にやらなければいけないのか」という話になった。だから、そうしたアイテムはすべて潰した。これ、理論的なバックには坂根コマツ相談役の考えがある。世界で2~3位以内に入れないものは、基本的には潰すというものだ。たとえば医療機器等は別だと思うけれど、それならその辺の理由をクリアに持っていれば、「なぜ5位なのに続けているの?」となったとき、理由が出てくる筈だ。その辺をいい加減にしておくのはリーダーとして良くないと思う。別にそれを口に出す必要はない。すべての言葉とすべての姿で示せばいいことで、自分のイメージをいちいち事細かに言う必要はない。それは自分がブレないために持つわけだから。
堀:アシックスさんがさらなる飛躍を実現し、そのなかで多くの人々が健全な精神と身体を手に入れることができるよう祈念して本セミナーを終わりたい。尾山社長、本当にありがとうございました。皆さん盛大な拍手をお願いします(会場拍手)。