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「個人と組織のコミュニケーション戦略」 質疑応答

投稿日:2014/09/10更新日:2019/04/09

荒木:ではこの辺で皆さんからのご質問を受けたいと思う。(57:46)

会場A:ノンバーバルコミュニケーションのトレーニングは、どのように行っていけば良いのだろうか。(58:20)

会場B:海外のコミュニケーションスタイルで「これ、いいな」と思うものがあれば、ぜひ教えていただきたい。(58:47)

会場C:ファシリテータや交渉者として、インタラクティブなやりとりのなかでどういったことが求められるかをお伺いしたい。(59:09)

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田中:まずトレーニング方法について。メッセージが伝わる比率は、言語が35%で非言語が65%と言われている。ただ、島田さんもおっしゃっていた通り、バーバルとノンバーバルで伝わるもののあいだに不一致があると不信感につながる。従って非言語だけのトレーニングでなく、非言語と言語を一致させることを考えるべきだ。たとえば僕はクライシスマネジメントにも携わっているけれど、今はたとえば何か事故が起きると2時間以内に記者会見が開かれ、出てきたトップがいじめられる。僕はそこで記者会見開始を1時間延ばしてもいいから、もし現場が近くにあればトップに現場へ行ってもらう。そこでもし死者が出ていたら、覚悟が決まる。大事なのはトップがどれほどの覚悟を持って発信できるかだと思う。仮に現場へ行けなくても、会見までに徹底的に覚悟を決めてもらう。そのためのセッションをしている。(59:43)

なぜか。覚悟もなく報告ベースで話を聞いただけでは、会見で広報がつくったリリースや謝罪文を読んでいても、「本気で話をしていない。官僚答弁だな」と分かってしまう。それで炎上するわけだ。唯一の方法は(自身の胸を指さして)ここにある。自分自身の覚悟だ。覚悟を決めた人間の発信は言語も非言語も一致している。(01:00:59)

島田:今のお話と似ていて、私もよく「ノンバーバルとバーバルは70対30」と言っている。なぜか。たとえば私が今日のお話したことのうち、明日になっても皆さんの記憶に残っているのは10%程度だ。で、私がどんな声をしていたかが20%前後。そして残り70%は、私が「どんな風にしゃべっていた」「どんな服を着ていた」といった、ほとんど見た目に関するものになる。そうしたノンバーバルな僕の姿が、実は1番強いメッセージを皆さんに伝えている。逆に言えば、言葉で伝えていることと無意識のうちに醸しだすノンバーバルメッセージがずれると、ただの信用できない人になる。(01:01:48)

それと、インタラクティブなやりとりについてお話しすると、私が申しあげたのは事前にすべてシナリオをつくっておくということだ。情報をすべてインプットして、ビジュアライズできるところまで準備する。それは、「その相手であれば、当方がどこまで譲ることができて、どれだけ獲ることができたら儲けものか」を分析するという意味だ。交渉学で言う‘BATNA[BestAlternativetoNegotiatedAgreement]andReservationPoint’を決めるための事前準備となる。ただ、準備通りいく交渉なんてものはない。だから‘serendipity’、日本語で言う想定外のことにどう対処するか。実は想定外と言っている時点で負けだけれど、大事なのは想定外のことも想定しておくことだ。(01:02:46)

1番大事なのはそのやりとり。私は調停官やファシリテータを務めるとき、ほとんど喋らず、「応用編オウム返し」というものをやる。これは、たとえば今いただいたご質問の98%ぐらいを同じ言葉で返すというものだ。なぜ98%か。100%で返したらただのオウム返しになるけれど、残り2%に私自身が持っていきたい方向を入れる。ただ、98%は同じことを言っているのでご質問された方は私が言っていることに反対できなくなる。ご自身がおっしゃったことに私が同意したうえで、2%を入れているだけだからだ。従って、脳内麻薬じゃないけれど、感覚的には「島田さんは私の言うことを100%理解して、きちんと考えてくださっている」という、なかなか素敵なイメージになる。(01:03:32)

ただ、私自身にも考えがあるので、とにかく双方の意見を聞いたうえで、必ず、「AさんがおっしゃったこととBさんがおっしゃったこと、よくよく考えると似ているところが数多くありますよね」という風にまとめる。ただ、私からオプションを提示することは絶対にない。あくまでも当事者でつくっていただく。たとえば、とある地域で領土分割交渉に臨むとき、私はいかにもいい加減な兄ちゃんを演じる。事前調査は細かくしてあるけれど。で、ノンバーバルとバーバルの両方を使いながら、白地図に大変面倒くさそうな顔をして、実際に「面倒くさいな。だるい。うざい。早く終わらせたい」とも言う。そのうえで赤ペンを出し、面倒くさそうに「もう、こういう風に分けときなさいよ」と言って描こうとすると、その場にいる全員が私のペンに飛びつく。そして自分たちでどんどん赤い線を引いて、「こうあるべきだ」という議論をはじめる。そして、それがどこかで止まったとき、「これでいいね?」と言ってサインをさせ、地図のカラーコピーを取る。(01:04:34)

そこで私はニヤっと笑い、「いやあ、これはすごくいい分割点になりましたね。ここに川があってここに鉄工所があって何々で」と。すると、「なぜお前はそんなことを知っているんだ?そこまで調べてたら、なぜ最初からそれを提示してくれなかったんだ」となる。そこで私は、「じゃあ、最初に私が書いた紙を持ってきて」と言う。その2つの地図を合わせると、ほぼぴったり合う。ただ、最初に私がそれを提示して「こうしなさいよ」と上から言っていたら彼らはオーナーシップを持てない。でも、実際には彼らが描いた線で分割ができていたわけで、私はそれをファシリテートしただけ。彼らが決めた。そんな風に自分たちでコミットして、相談して作ったものは長期的に崩れない。(01:05:52)

一方、そこで失敗している例がパレスチナとイスラエル、そしてイラクだ。これはアメリカなどいろいろな人々から押し付けられたから。自分たちで決めていない。決めたところでうまくいっているのは、たまたま私が担当した東ティモールとコソボだ。今お話ししたのは、実はコソボの実例だ。彼らはそうやって領土と権利を分割した。彼らがセンス・オブ・オーナーシップを持って決めているかどうか。「これは自分たちがコミットした合意だ」というオーナーシップを参加者全員に持ってもらうことが、メディエーションやネゴシエーションにおいて最も大事だと言える。そこに持っていくのが、恐らくは究極のコミュニケーションだと私は思う。(01:06:38)

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田中:海外のコミュニケーションに関する質問にもお答えしておきたい。「これが日本のコミュニケーションで、これが欧米のコミュニケーションで」という話ではないと思うし、融合が必要なのだと思う。ただ、島田さんがおっしゃっていたようにオーナーシップを相手に与え、そして極端に言うと自分の考えているほうに持って来てしまうというのは、我々の業界でプロセス化している。我々がやっているメディアトレーニングの基本はブリッジングという手法だ。こちらからは言わずに相手から質問させ、その質問を料理する。で、そのトレーニングでは、「質問は答えるものじゃない」と、まず教える。質問は自分のメッセージを伝えるためのきっかけだ。そして、相手から質問を受けたとき、「あ、なるほど」と言いつつ、実は自分のメッセージにブリッジングして話す。(01:07:48)

なぜか。質問した側は「質問をして、相手から引き出してやった」というオーナーシップを持っている。ただ、実はそこで引き出されたものは、こちらが前もって自分のメッセージとして加工しているからだ。そうしたコミュニケーションのプロセス化は、日本的じゃない。どちらかというと欧米的というか、アメリカ的だ。そういうものを形にして、1つのトレーニンググラウンドにしている。ただ、実はそうしたメディアトレーニングにも限界はある。下手にそれをやってしまうと「質問に答えていないじゃないか」という話になってしまう。ただ、それでも皆さんはどんどんトレーニングを重ねたほうがいい。高い金を払ってメディアトレーニングなんて受ける必要はないし、伝えたいメッセージを決めたら日頃の会話でトレーニングしたらいい。「その質問を、自分が伝えたいことにどうつなげるか」と。はじめはぎこちないかもしれないが、少しずつうまくなる。それでプロになると、そうした質問の98%は自分のメッセージを伝えるためのきっかけということで良い質問に感じる。2%ぐらいは「どうしてもダメ」というのがあるし、これは逃げるしかない。ただ、残りの98%では100戦100勝だ。そんな風にして相手にオーナーシップを与えながら、当方が意図する方向に持っていくのは、まさに究極のコミュニケーションというか、コミュニケーションにおける本質中の本質だと思う。(01:08:55)

神原:事前打ち合わせでは、「特に国際情勢に関しては、たとえば80年代的、または90年代的コミュニケーションのトレンドがある」とおっしゃっていた。(01:10:40)

田中:たとえば現在の日中関係を見ていると、中国はひどい。わあっと日本を攻めたてる。なぜか。実は現在、中国のコミュニケーションを仕切っているのは80年代にアメリカのコミュニケーションを勉強した人々だ。アメリカがコミュニケーションのなかで日本をどのように叩き、どのように世論をつくるかを研究していた。「いずれ中国もやられる」と考え、前もって学んでいたわけだ。80年代のコミュニケーションは二元論をベースに相手を叩くことが基本で、そこから譲歩を得る手法だった。ただ、コミュニケーションのスタイルはアメリカでもその後進化して、共感型のほうにシフトしている。特にネットが広がってくると双方向のコミュニケーションが重要になった。ところが、中国は未だ80年代モデルで日本を攻めている。だから今、中国脅威論が世界中に広がっている。あのコミュニケーションは間違っているということだ。では、日本がそれにどう対応すべきか。やっぱり、「そこには乗るな」と。相手が攻めて来たらこちらも攻めるのではなく、大人の対応で別のところから発信すべきだねという話になる。(01:10:59)

島田:その辺については真っ向から対抗せず、ふわっと避けて相手にしないのも1つのやり方かなと、私も思う。あと、どのコミュニケーション手法が1番良いかというのは、あまり考えつかない。私も今ハーバードなどでコミュニケーションや交渉術を教えているけれど、「100人いれば100通りのコミュニケーション方法がある」と話している。トレンドを追うよりは自分のスタイルを確立すべきだと思う。私のようにぺちゃくちゃ喋る人間なら喋ったもん勝ちだと思うでしょ?私にとって最強コミュニケーション方法は沈黙だ。1言ぽんと発して、それで最後まで黙っていたらこれは不気味だ。だからよく喋るやつというイメージさえ植えつけておけば、私にとって最強のコミュニケーション方法の最強は沈黙になる。困ったときは黙り込めばいい。(01:12:42)

あともう1つ。私はハーバードの講義で、最初に「このなかで“自分には絶対に偏見がない”と言い切れる方は何人いますか?」と、よく質問している。皆さんはどうだろう(会場挙手なし)。…皆、偏見があると認めているわけだ。それは正しい。ところが、ハーバードで100人に同じ質問をすると82名が手を挙げた。「何を言っているんだ。偏見なんてあるわけないじゃないか」と。そこで私は、とある実験を行った。フラッシュカードのように質問を投げかけ、「良いイメージを持ったら『白人のボタン』を押してください。悪いイメージを持ったら『有色人種のボタン』を押してください」と話す。で、質問と同時に白人と有色人種の写真が現れるというものだ。それで50枚行ったところ、27秒で終わった。大変なのは、これを逆にしたときだ。良いイメージで『有色人種のボタン』、悪いイメージで『白人のボタン』を押すようにしたら…、アメリカだからできる実験だけれど、時間はどうなったか。4倍かかった。1番長いときは17倍。なぜか。自分では偏見はないと言うけれど、何かをするときは必ず偏見が入るということだ。(01:13:53)

コミュニケーションも同じ。たとえば人事が採用するときも、口ではいろいろなことを言える。「マイノリティをどんどん採用しよう」と。たとえば、今は安倍さんが女性をどんどん育成しようと言っているけれど、私はこれからお手並み拝見だと思っている。良いことだ、とても。でも、本当に採用や昇進を決めるとき、必ずそれを決める人にバイアスがかかる。有限実行がいかに難しいか。それがミュニケーションなのだと思う。それは万国共通だ。だから、ご自身のコミュニケーションスタイルを築かれるほうが、誰かの真似をするよりもはるかに強いコミュニケーションになると思う。(01:15:25)

荒木:時間となったので、そろそろ本セッションを締めたい。改めて壇上の御三方に拍手をいただきたい。ありがとうございました(会場拍手)。(01:16:12)

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