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LIXIL藤森義明氏×コニカミノルタ松_正年氏×元京大アメフト監督 水野彌一氏「組織を強くするリーダーシップ」後編

投稿日:2014/01/21更新日:2021/11/29

「ある年、弱い選手をキャプテンにした。凄まじい覚悟。試合後、選手らがまず胴上げしたのは彼だった」(水野)

堀:ではこの辺で会場との質疑応答に移ろう。(45:52)

会場:目標設定と評価を通じて文化をつくり、変革を加速させていくというのは、GEをはじめとしたハイパフォーマンスなグローバル企業では一般的な手法だと思う。藤森さんはこれを日本企業に導入するにあたり、どのような苦労があるとお考えだろう。アジャストしている点も含めて伺いたい。(46:06)

藤森:基本的に、今日お話しした改革のプロセスは日本の会社でもどこの会社でも通用すると思う。GEのプロセスは世界中で通用している訳で、経営者がそのモデルを持っていれば、そして松崎さんがおっしゃった通り、それがブレなければ全員に伝わるのではないか。重要なのはそれを主導する人のなかに信念というか、自身の経験に基づいたモデルがあるかどうか。僕自身は周囲にそのモデルについて知る人を集めてきたうえで、グループで行おうとしている。(46:48)

で、今はいわゆる超ドメスティックな環境で何十年もやってきた集団をグローバルに変えていこうとしている訳だが、そこで僕が思うのは、50を少し過ぎたらもう難しいのではないかということだ。従って教育プログラムは、45から50歳を少し超えたぐらいまでで第一段、40から45歳前後までで第二段、35から40歳ぐらいまでで第三段という風に分けている。その人達が5〜10年後にどれだけの力を出せるか。50歳以上のリーダーに関して言えば、それが務まる人は必ず20%いるから、その人達を使う。そしてあとの人達は、今は集めてくるしかないと思う。そうした調整は当然必要だ。それを思い切って出来るかどうかで変革を起こせるか否かが決まる。(47:43)

会場:水野さんの「最初に飛び出した羊」というお話に関してだが、スポーツではリーダーに選手として高いスキルやパフォーマンスがないと人がついてこないようにも感じる。勇気があればそうでない選手にも意外と人はついてくるのか。考え方としては両方あると思うが。(49:07)

水野:普通、スポーツではやはり力のある選手がリーダーになる。ただ、それを突き抜けたリーダー像もあると思う。1992年にキャプテンを務めた選手がその例だ。試合に出たことはない選手だが、彼のリーダーシップがあったおかげでその年はライスボウルまで進んだ。彼は神戸大学で3年生になってから京都大学に移ってきた選手だ。当時は入学試験前に「京大に行ったら入部させてくれるか?」と聞いてくるので、「見たところ体は小さいけれども足は速いのか?」と訊くと、「遅い」と言う(会場笑)。「じゃあうちに来ても試合に出れるか分からん」と、僕は言った。「それでもいい」と言って京大に来たのだが、やはり力がないものだから試合なんて出たこともない。(49:30)

ただ、下級生の面倒を本当によく見たりしていて、「たいしたやっちゃな」と。陰日向なく縁の下の力持ちを務めることが出来る。しかもそうした行動のなかに、単に「やらないといけない」という感覚でない、何かこう…、突きあげるようなものがあった。僕はそれをずっと見ていたから、「今年のキャプテンはこいつしかない」と。ただ…、京大ではだいたいその年の4年生が相談してキャプテンを決める。で、彼らは違う選手を考えていた。しかし4年生が考えていたその候補は、その年は特に乏しかった戦力の一人だった。だから、「今年のキャプテンは潰れるに決まっている。そいつは潰れたら困る。でも、あいつは潰れてもええねん」と(会場笑)。(50:43)

そんな経緯でキャプテンになったものだから、最初は4年生に遠慮してばかり。それで冬のある日、クラブハウスから帰ろうとしたそのキャプテンとたまたま会った際、「おい、お前やっとるか」と聞いた。やっとらんのは分かっていたが。それで「いえ」と言うから理由と訊くと、「もうじき新入生が入ってくるから勧誘準備もあって…」とか、色々言う。だから、「1日に1時間もやる暇ないんか? そんなことないやろ。勝つ気がないんじゃ。それなら辞めてまえ。ただ、お前が本当にやる気になってほかの4年に遠慮しないというのなら、4年を全員クビにせい」と言った。(51:36)

で、「分かりました」と。日曜の夜中だったが、そいつはそこから4年生を電話でクラブハウスに集めて話し合いをはじめた。「俺たちは今のままじゃ駄目だ」と反省し、「とにかく勝つためにやっているという気持ちを確認するために今から練習しよう」ということになり、練習をはじめた。僕は翌朝6時頃にそれを見に行ったが、4年生は一人も欠けておらず、雨の降る2月に全員が練習を続けていた。そこから彼のリーダーシップが確立した。その後一年は彼にとってすさまじいものだ。それで最後に関学との試合に勝った際、選手が最初に胴上げしたのはそのキャプテンだ。嬉しかった。理想のリーダーだと思う。後にも先にも監督として本当に尊敬出来る選手は彼だけだ。(52:28)

会場:日本型組織では、トップが意思決定をしても現場に抵抗勢力が出ると感じる。組織に「変わりたくない」というイナーシャが働き、機関決定や実行のうえで社内にいくつかのハードルが出来るのではないだろうか。その意味で、現場の方にも変革のマインドを植え付けるための、または変革を起こし続ける組織にするためのポイントを伺いたい。(53:44)

松崎:当社にもそうした部分があるかもしれない。ただ、たとえば先週も社内の技術発表会に行ってきて、各技術者を見て廻りながら、「これはいいね」「ここはこうしたほうが良いのでは?」等、色々と声を掛けてきた。また、発表会の最後には、私が今何を考え、何をして貰いたいと思っているかも話してきた。そういうことを日本だけでなくヨーロッパや中国でもやっている。機会をつくっては直接語りかけ、ミドルあるいはその下にいる一般の人達に伝えていくというのが一つあると思う。また、会社としてやろうとしていることを理解する人にミドルリーダーを務めて貰うという工夫もある。それで100%出来ているかというと、チャレンジの最中というのが正直なところだが。(54:29)

「漫画『ワンピース』のルフィは凄い。ビジョンだけ掲げて何もしない。そういうリーダーが理想」(堀)

会場:「逆境は成長の母である」と考えているが、昨今は若手への機会提供が難しくなっていると感じている。それをどうすればつくり出せるのか。歳を重ねてからでは守るものが多くなり過ぎてしまうので出来る限り若いときに機会をあげたいと思っているものの、上のほうが詰まっていることもあってそれが出来ないケースは多い。組織内にゆらぎを起こすという考え方でも良いと思うが、そのためのポイントを教えていただきたい。(56:08)

松崎:若手に特定の課題を与え、または自主的に設定させ、そのうえである期間内に答えを出して貰うということをしている。重要なのはそれを我々トップが評価し、コメントすること。その意味でも、もっと若手をリーダーに抜擢するという課題意識が私にもある。通常の事業組織で難しければ、たとえばタスクフォースのリーダーに若手をどんどん抜擢するといった視点が必要ではないかと思う。当社も昨日、東日本実業団駅伝で2連覇を果たした(会場拍手)、…ありがとうございます(笑)。で、水野さんがおっしゃる通り、結果を出す組織には共通項がある。今は新旧の交代時期で、監督が思い切って若手をキャプテンに抜擢した。そこからチームも変わっていった訳だ。本業のほうでもどんどんそういうことをやっていく必要があると思う。(57:01)

藤森:全員がプロセスを理解する必要がある。たとえば、いわゆる優秀な人とそうでない人の定義をつくる。我々の場合、そうした出来の良さとはリーダーシップを発揮して結果を出す力だ。その力に関して、A/B/Cというランクづけを行い、Aの人にはさらに難易度の高いチャレンジを与える。逆境とは自分が考える2〜3倍の仕事を与えられることであり、どれだけの責任を会社から与えられるかが指標になる。(59:30)

従ってAの人には2倍ほどのポジションを与え、リーダーシップやパフォーマンスに欠けているBの人にもそれなりの教育を行い、そしてCの人には厳しい手を打つ。そんな風にして、先ほどお話しした5歳ぐらいごとの段階においてそれぞれ選ばれた人がリーダーシップを磨き、そこで認められた人にチャンスが与えられる。そうしたプロセスを皆が体験していくことが大変重要だと思っている。 (01:00:40)

堀:私としては、リーダー自身が何かをもしなくても上手く廻るようなリーダーシップが理想だと思っていた。何もしなくても上手く廻るよう、一生懸命色々なことをする。リーダーは何かをしなくても上手くいくということは、ミドルのリーダーが懸命に動いているということだ。そこではビジョンやミッションあるいは理念が共有されていて、当然ながら権限もアサインされている。そこでアサインされた人達がさらに多くの人を巻き込んでいく訳だ。そうした東洋的あるいは日本的リーダーシップは、欧米的なリーダーシップと違う面もあると感じるが、この点に関してはどうお考えだろう。 (01:01:48)

藤森:私出身は若いときにジャック・ウェルチに影響を受けている。だいたい35〜45歳ぐらいまでの経験がその人のリーダーシップ像に最も大きな影響を与えると思うが、その意味で言えば私のリーダーシップ像は欧米的だ。やはりリーダーの仕事は滅茶苦茶に大変で、ビジョンというものを社員に、それこそ毎日何回も、何年も言い続けないと会社は変わらないと思っている。もちろん下に任せるのは大事だ。それがデディケーションであり、下にパワーを与えるという話になる。 (01:02:52)

堀:今世界で一番売れている漫画は「ワンピース」だが、ルフィという主人公はすごいリーダーだと思う。「世界一の海賊王になるんだ」というビジョンを掲げて、あとは何もしない(笑)。そこに綺麗な人や色々な能力を持っている人が集まり、「あいつが言うなら仕方がねえな」と言いながらもついてくるという…。 (01:03:48)

藤森:最後は自分でやっつけるじゃないですか(会場笑)。 (01:04:08)

堀:(笑)。とにかくそういうこともあって、リーダーシップには色々あって良いと思っている。個人や文化によって決まるのではないかなと。そのなかから自分に最も合う方法論を考えていくのが一番良いと思っていて、それは水野さんが仰っていた「正解はない」という話にも繋がると感じる。水野さんはどうお考えだろう。 (01:04:10)

水野:藤森さんが仰っていた通り、リーダーシップはDNAの問題ではないと思う。教育の問題だ。教育という点では色々な方法論があるだろうし、色々な文化を教えるのも大事だ。ただ、リーダーシップを発揮するうえでもう一つ重要なことがある。それは、人間は心にスイッチが入ると馬鹿になるということだ。そうして損も得もなくなったやつは強い。私自身は大学時代、ある先輩と巡り会ったことでそのスイッチが入った。京大アメフト部で3年生だったある日、その先輩は練習後に皆をグラウンドに座らせ、「弱いチームで負け戦のなか、孤軍奮闘・獅子奮迅の働きをする。それが本当の男じゃ」という話をした。それが滅茶苦茶格好良いと思ってしまって(笑)、それで人生が“振れて”しまった(会場笑)。 (01:04:43)

「日本は画一的、標準的な世界から脱却しなければならない。そのとき公平と平等についての理解と意思決定を問われる」(水野)

藤森:リーダーとして究極的に重要なのは人のコミットメントを得ることで、そのためには共感を生まなくてはいけない。情熱を持って何百回あるいは何万人の人々に語りかけ、そこで最後にコミットメントを貰うのがすごいリーダーなのだと思う。(01:06:05)

松崎:私のスタイルもどちらかと言えば欧米的やり方に近いと思う。それで最初は戸惑っている社員もいた。ただ、やはり当社は売上の70%以上が海外の売上からであり、社員もすでに7割が海外の人材。すでにグローバルに展開している。そこで今、「真のグローバル企業へ」と言っている訳だ。つまり、日本人社員だけでなく海外の社員にもトップの考えに共感を持って貰おうと。そのうえで、「このスタイルでやっていこうじゃないか」という形にしないと総合力を発揮出来ないと考えている。(01:06:33)

堀:僕はどちらかと言えば東洋的スタイルが好きで、トップが何かせずとも上手く周る組織が理想だと思っている。そのためのビジョンは一生懸命伝えるが、自分が語るよりも皆に語って貰いたいし、皆にオーナーシップを持って貰いたい。その間、トップは何もせずどこかで遊んでいて、何かの際は一気にエネルギーを発揮する。それでグロービスでは「アジアNo.1の大学院を皆でつくろうよ」、G1サミットでは「皆で日本を良くしていこうよ」と言いながら進めている。すると皆さんが集まってくださって、あとは僕が何かしなくても皆さんが「一緒にやろうね」と(会場笑)。そこで「今日も来てくださってありがとうございます」と感謝するという…。いずれにせよ色々な体系があって良いと思う。では最後に御三方から締めのコメントをいただきたい。(01:07:28)

水野:リーダーであるかないかに関わらず、とにかく人間は皆違う。だから今後の日本はもう少し、画一的かつ標準的な世界から脱却しなければいけないと思う。そのためには優秀性を追求しなければいけないが、そのときは公平と平等が敵になる。その意味で、日本人は「公平・平等とは何なのか」ということを今一度考え、人間とは何なのかといったことをもう少し理解しなければいけないと感じている。(01:08:40)

松崎:欧米型のリーダーシップとは何から何までトップが指示をして、社員がそれを単に受け取るという意味ではない。藤森さんのところもそうだと思うが、現場では社員が判断している。当社でも…、特にモノを売るだけでなくサービスを組み合わせてビジネスをしていくため、最前線でお客さんに接する人達が自分たちで判断してお客さんに満足していただく視点が不可欠だ。そこで大事なのは、「組織としてこれが大事だ」という共通の価値観や基本的な考え方を徹底させることだと思う。(01:09:22)

藤森:人に影響力を与えるのがリーダーだと思う。「これをやれ」と言うリーダーに部下が付いてくる形ではない。その情熱ゆえに皆が集まり、そうしてリーダーの周囲にいる人々が動いていくことで世界を変えていく。そんな人達になって貰いたいと思う。とりわけ会場には将来を背負っている方々が多いと思う。そうした方々に今一度リーダーシップというものを見つめ直していただき、自身のリーダーシップを追求していって欲しい。リーダーの道は終わりのない旅だ。そうした旅のなかで常に自分自身を高めながら日本を大きく変えて貰いたいと思う。(01:10:21)

堀:御三方に盛大な拍手を。今日はありがとうございました(会場拍手)。(01:11:12)

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