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LINE・森川亮氏×三重県知事・鈴木英敬氏×コラーキャピタル・水野弘道氏「これから10年、時代はどう変わり、僕らはどう生きるべきか」

投稿日:2013/07/07更新日:2019/04/09

「政策・顔・政党を変えても政治は変わらなかった。今、変わるべきは・・・」(鈴木)

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鈴木英敬氏

鈴木英敬氏(以下、敬称略):私からは「これから10年、時代はどう変わり、僕らはどう生きるべきか」というテーマとともに、政治から見た今後の10年、そして皆さまにお願いしたいことをお伝えしたい。結論を聞くと、「そんなの、当り前やん」と思われるかもしれないが、「今はもうこれしかない」というその状況を皆さまと共有したい。(00:20)

10年前の政治を見てみると、まず自由党が民主党と合流した。で、その後の選挙では女性初の衆議院議長であった社会党の土井たか子さんが落選してしまった。自民党は小泉総理と安倍幹事長の時代だ。また、当時はマニュフェストというものもはじまった。ちなみに現在は私が38歳で最年少だが、当時の最年少知事は42歳の飯泉(嘉門:徳島県知事)さん。一方で海外を見てみると、中国と韓国で新しい国家主席および大統領が生まれた。政治以外では六本木ヒルズが出来て、阪神タイガースが優勝したと。そして東海道新幹線の品川駅が開業したほか、貴乃花と武蔵丸が引退し、朝青龍が横綱になった。また、『世界に一つだけの花』という歌も当時は流行っていた。(01:34)

では10年後がどうなるのか。野村證券さんの資料によれば中国がGDPで、そしてインドが人口で、それぞれ世界一になる。また、世界人口のおよそ1/4がイスラム教の方々になると見られている。一方で日本は高齢化率が30%を超え、すべての県で人口が減少。そして国民医療費は現在の37.5兆円から52.3兆円になるという。三重県を見てみると、人口は現在の185万人が10年後には177万人となるとされている。また、10年前におよそ20%だった高齢化率を見てみると、現在は25%、そして10年後には3割、そして20年後には1/3になるという状況だ。(02:41)

では10年前の三重で何があったか。当時はSARSが流行した。都道府県は感染症等の危機管理に右往左往させられるので、県政にとっては大変な出来事だった。また、アテネ五輪で金メダルをとった三重県出身の野口みずきさんと吉田沙保里さんへの県民栄誉賞授与、そして熊野古道の世界遺産登録もあった。熊野古道は和歌山と思うかもしれないが、伊勢から熊野まで続く熊野古道伊勢路も世界遺産だ。(03:36)

では今後10年前後はどうか。三重であれば直近の大きなイベントは国体だ。それから熊野古道が世界遺産登録20周年を迎える。経済的にはリニア。東京名古屋間が40分で繋がれば大きなインパクトを及ぼす。それともうひとつ。今、道筋がつきつつあるところだが、三重県内で南北の高速道路がやっと繋がる。それと伊勢神宮では20年に一度、式年遷宮という行事が執り行われる。(04:23)

ここでひとつ申しあげたいことがある。聞いていただいても分かる通り、行政とすれば10年スパンで物事を考えるのは普通だ。ただ、政治あるいは政治家の側はなかなかそれが出来ない。そのために政策が歪められ、前に進まないことがある。(05:21)

そのうえで今後の政治を見渡すと、当然ながら若い世代や女性にチャンスが出てくる。また、「カリスマリーダーが政治を変えるのは幻想だ」ということに皆さんは今後10年で確実に気付くと思う。そうしたなかで、政治を大きく変える可能性のある変数は3点。道州制、二院制、そして霞ヶ関だ。3点に共通する鍵は分権。中央集権から地方分権へ。欧米ではほとんどが地方に分権されている。中央が強力な権限を持つのはシンガポールや韓国、あるいは中国ぐらいだろう。我々は分権に注目すべきだし、ここを変えなければいけない。そこに皆さんにも関心を持って欲しい。(05:48)

で、今までの10年間、「政策を変えてみよう」という試みはあったと思う。つまりマニフェスト型の選挙だ。また、「顔を変えてみよう」と言って1年ごとに総理をころころと変える、あるいは「政党を変えてみよう」と言って政権交代もしてみることもあった。「政治家を変えてみよう」という部分は未着手だが、いずれにせよ、政策、顔、政党を変えてみて政治は変わったのか。恐らく皆さんにその実感はないだろう。ではどうするべきか。結局は冒頭で言った通り、自分たちが変わらなければいけないという当り前の結論に至る。政治を変えるには国民が変わらなければいけないということだ。(06:58)

単に選挙へ行くだけでは駄目だ。選挙へ行くのは当り前のこと。7月21日に選挙へ行かない人は、たとえばいくらMBAを取得しても意味がない。堀(義人:グロービス経営大学院学長)さんに尊敬すべきところはたくさんあるが、特に素晴らしいのは政治にもしっかりコミットをする点だ。経済だけでなくあらゆる分野にコミットしていく点が堀さんの素晴らしいところだと思うし、リーダーを目指す会場の方々にもぜひそうして欲しいと思う。(07:59)

参加型民主主義という言葉もあるが、皆さんには投票だけでなく政策立案過程に参加して欲しい。皆さんが住む地域、皆さんが好きな故郷、皆さんが関係している分野等々…、色々あると思う。その政策立案分野にどんどんコミットしていって欲しい。参加することでしか今後10年の政治は変えられないと思う。(08:26)

制度や環境は変えるのに時間がかかる。ただ、自らの意識を変えるのは今日からでも今からでも可能だ。これほど素晴らしい方々の前でお話をする貴重な機会をいただいたからこそ、今日はそんなお話をしたかった。政治への意識を変えていただいて、ぜひ皆さまと一緒に政治を変えていけたらと思う。(09:07)

「過去の成功モデルがどの環境にも合うとは限らない。LINEはモバイルファーストで作った」(森川)

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森川亮氏

森川亮氏(以下、敬称略):今日はLINEの沿革を簡単にご紹介しつつ、今後10年でどんなことが起こりそうかについて、自分なりに思うところもお話ししたい。LINEというのは社名でもあるが、現在はLINE以外にも検索サービス「NAVER」や「NAVERまとめ」をやっており、このほかライブドアの事業も手掛けている。(10:38)

まず、私たちはLINEを生み出すにあたり、インターネットのサービスが今後どのようになっていくかを考えた。メディアの歴史を振り返ると、技術の進歩によってさまざまな媒体が生まれたという経緯がある。その媒体に合わせて新しい事業やサービスのモデルが出てきた訳だ。ではインターネットではどうだったかというと、PCのインターネットが最も勢い良く広がったのはWindows 9595が出たときだ。そして1999年にiモード、2007年にiPhoneが出できた。で、私たちはスマートフォンやiPhoneが出たとき、恐らく新しいプラットフォームが出来るだろうと考えた。「だからそのなかで最適なコミュニケーションツールを出そう」と考え、そこでLINEを生み出した。(11:12)

LINEは無料でメッセージ、通話ができるサービスだが、この開発では当初から徹底的にスマートフォンのプラットフォームに合わせていった。変わっていくプラットフォームに対してPCやガラケーの資産を無理やり持ち込むということを、我々はしなかった訳だ。あえてスマートフォンに注力し、スマートフォンで価値が出るサービスとして立ちあげた。(12:30)

何らかの成功を経験した企業は、その資産や強みを次の環境でも出来るだけ生かそうとする。もちろんそれで機能すれば良いが、その考え方自体は消費者にとってどうでも良い話だ。たとえばスマートフォンならではという視点で考えてみると、「ブラウザよりアプリのほうが使いやすい」、「出来ればID登録をしたくない」等、色々な特徴がある。しかし成功体験を持つ企業はそこでなんとかして、たとえば自分たちのIDを登録させようといったことをしてしまう。私たちはそれをしなかった。(12:58)

LINEではネットワークのあり方もポイントだ。SNSが生まれて以来、コミュニケーションは絶えずオープンとクローズドに分かれてきた。一昔前は匿名が普通だったものの、やがて実名の時代が来て、さらにそこからLINEのようなクローズドネットワークが出てきた。結局、人は繋がりが広がれば広がるほど、逆に自分たちだけのコミュニケーションを求めるところがある。私たちはそれを機能として取り入れた。(13:47)

また、コミュニケーションの価値という点で言うと、単なる情報だけでなく気持ちや感情といったものを伝達出来る点も重要視した。現在、私たちのサービス利用者は急激に増えている。最近では毎月およそ2000万規模でユーザーが増えている状態だ。コミュニケーションの価値は普遍的なものであり、日本に限らず世界中で大きな価値があるからこそ世界中で利用者数が伸びているのだと思う。(14:25)

で、今後10年がどうなっていくかだが、正直言って分からない面もある。ただ、スマートフォンは恐らく次の主流にならないのではないかと思う。ネットワークに繋がり、かつスマートフォンを超える新しいハードウェアが出てくるのではないか。最近よく言われているのはウェアラブルコンピュータだ。普段身に付けているものがネットワークに繋がり、そこで新しいアプリやビジネスが生まれるという見方がある。(15:05)

また、恐らく10年以内にさまざまなデジタル市場がオフライン市場を超えるのではないかと思う。コンテンツ別に見るとゲームや音楽は現時点でオフラインを超えているし、今後は書籍や動画でも同じことになると思う。eコマースも同じ。さらにイノベーションが起これば医療・教育分野でもデジタルがオフラインを超えると思う。(15:42)

さらに言えば、ネットワークはどんどんモバイルになっていくと思う。いわゆる有線の世界がなくなっていくと、まずコンテンツの領域が大きく変わり、端末が変わる。そこでモバイルになっていくのではないかと思う。そのなかでIT分野は今後10年もますます伸びていくのではないかと期待している。(会場拍手)(16:24)

「10年では完成しないものを作る、ある一部を全力で担う。そんなリレーの参加者になりたい」(水野)

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水野弘道氏

水野弘道氏(以下、敬称略):現在は内閣官房で健康・医療分野における成長戦略の作成をお手伝いしている。また、山中伸弥(京都大学)教授のiPS細胞研究所でアドバイザーもさせていただいているところだ。(17:10)

今回のテーマに関しては金融の観点から話をするよう言われていたが、私自身は金融仕事をしていると意識したことがない。従って、その辺はあまり拘らずに話をしたいが、まずは10年前、世界経済で画期的な出来事が起きた。2002年、ユーロが流通をはじめた訳だ。たった10年前にあの歴史的な実験がはじまり、その後2007年にリーマンショックが起きた。当時は「今後、世界の基軸通貨はユーロになる」と言われていたが、その1年後、崩壊の危機に陥るという凹凸をユーロは味わった。(18:45)

それともう1点。私はユーロの流通開始が本格的な金融グローバリゼーションのはじまりだったと考えているが、残念ながら日本の内向き志向も同じ頃にはじまった。そしてグローバリゼーションから完全に取り残されてしまった訳だ。当時、私はよく「世界は“エックスジャパン(Ex. Japan)”の状況だ」と言っていた。これは某有名バンドに引っかけた私の造語だが(会場笑)、当時、たとえば何かの国際金融会議では、大抵、1人目の登壇者がグローバル経済の話をしていた。で、2人目がアメリカ、3人目がユーロの話をすると。そして4人目がアジアの話をするものの、プレゼン資料の端には必ず‘Ex.(Excluding) Japan’と書いてあった。(19:52)

何故ならアジア経済に日本を含めると話が変わってしまうためだ。規模はそれなりに大きいが、他のアジア諸国と比べてあまりにも成長していない点で特徴的過ぎた訳だ。だから日本は含めずに話すことが普通になっていた。で、結局は誰も日本に言及しないままカンファレンスが終了すると。そんな状況が当時は続いていた。(20:46)

それがアベノミクスで大きく変わった。今、世界の投資家は皆、朝一番に日本の株式市場をチェックしていると思う。‘Ex. Japan’から一転、今は『The Economist』の表紙をスーパーマン姿の安倍総理が飾るような状況だ。こんなことは5〜6年前、あるいは1年前ですらまったく想像出来なかった。今、日本にそれほど急速な変化が起きている。これをなんとかひとつの機会として、流れを大きく変えていかなければいけないし、誰もがそのように認識すべきだと思う。(21:08)

通常、ベンチャーやプライベートエクイティのファンドでは10年がひとつの区切りになるから、キャリアや投資について考えるときも常にそのスパンが頭にある。「5年で投資して5年で回収」と言うが、10年で終わらせるために6〜7年のスパンで物事を考える訳だ。従って、ベンチャーやプライベートエクイティの投資でお金を儲けることが出来る人は、およそ5年スパンで何が起きるかを当てた人になる。(22:11)

しかし私は山中教授、そして内閣における健康・医療戦略策定のお手伝いするようになり、健康・医療・科学の世界では5年が大変短いスパンであると知った。それらの分野では今研究されていることのほとんどが10年後も実現しそうにない。(22:52)

昨日はiPSの臨床実験で世界初の認可を得た高橋政代(神戸理化学研究所チームリーダー)先生、そして海外で角膜再生医療の実験をはじめるという西田幸二(大阪大学医学部教授)先生のチームともお会いした。どちらも大変長いスパンで取り組みをなさっている。申し訳ないが黄斑変性を現在患っている方々のなかで、今回取り組まれている再生医療の恩恵に預かることの出来る方はいらっしゃらないだろう。しかし、現在患者である方々が、「20年後の患者が助かるかもしれない」と思いながら今の患者生活を過ごすという、そのメリットが非常に大きいことも分かった。(23:20)

以前、山中教授がノーベル賞受賞スピーチで使用したスライドのなかに、大変強く記憶に残ったものがある。それは(ジョン・)ガードン先生からはじまった、いわゆる幹細胞医療における進化の歴史を折れ線グラフのように綴った図だ。図ではガードン先生を出発点としたラインが、山中教授のiPSを経由してからも伸び続け、その先でさらに枝分かれしている様子が描かれていた。(24:17)

つまりiPS細胞は健康・医療の進化において一通過点でしかないと、山中教授は訴えていた訳だ。私はそのとき、山中教授という方は大変幸運な方だと思った。iPS細胞は終点ではないから、ひょっとしたらそこから次のテクノロジーが生まれてもおかしくないからだ。そうした連続性のなかでそれぞれの科学者が全力を発揮している。それこそ、ご自身や自身のご家族には使えない技術をひたすら研究し続け、10〜20年をラボで過ごし、そしてそのバトンを引き継いでいく訳だ。(24:50)

そんなリレーの参加者に、私もなりたいし、皆さまにもなって欲しい。そんなことを思うようになった。10年でものが完成しないことは色々あると思う。ただ、そこはリレーの一区間と考え、最速で駆け抜けること。そうすればどんどん発展すると思う。(25:38)

それともうひとつ。私は科学者と付き合いはじめてから、「日本の文系の人々はなんと競争力のないことか」と感じるようにもなった。これは数学の教育によるものではない。では何が違うのか。日本の文系の人々は過去を振り返ってばかりいると感じる。リーマン・ショックの際もそうだ。当時、「そもそも成長が本当に必要なのか?」といった自問自答を繰り返していたのは日本の文系の人たちだけ。中国ですら皆が「成長なくして我々に未来はない」と考え、金融・成長政策を講じていた。(26:00)

そこで何も出来なかったのが日本だ。いつも後ろのほうで「本当に俺たちはこれで良いのか?」と言っていた。私としては、ルールには常にチャレンジして良いと思うが、プリンシプルにまであまりにも挑戦し続けるメンタリティはスピードを遅らせることに繋がると思っている。皆さんにはぜひ、前を向いていくこれからの10年にしていただきたいし、私自身もそうありたいと思う。(会場拍手)(26:47)

「地方分権により、中央も外交や防衛に専念できる。結果、トータルが底上げされる」(鈴木)

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堀義人

堀義人氏(以下、敬称略):ここからは議論とQ&Aの時間にしたい。まずは英敬さん。今後10年に向けては国民が変わらなければならないというお話があった。具体的にはどのような形で政治に関わり、これを動かしていくべきだろうか。(27:30)

鈴木:「こういう中身で、こういう風に意識を変えていく」というのは皆さんに考えていただくことだと思うが、とにかく大事なのはアクションを起こす意識だ。政治は自分たちに関係のないもので、「最低限、一票を投じるというコミットをすれば良い」ということではいけない。政治、医療、あるいは教育でも同じように、政策をつくる過程で国民の皆さまに参加して欲しい。参加しなければ政策は良くならないという思いを持って、誰か任せにするのでなく自ら変えて欲しいと思う。(28:14)

堀:分権への移行にも言及していらした。今後10年、中央にあった力が地方や国民のほうにどんどん移っていくとというご認識だろうか。(29:28)

鈴木:そういう側面もあるが、もうひとつある。国内の、たとえば生活に関わる政策等はどんどん地方に任せていけば、中央の人々や政治家にも時間が出来る。その力を外交や防衛にしっかり注いで貰い、日本の国家自体も国際的プレゼンスを高めて欲しい。トータルで強くなっていく流れだと思う。(29:44)

堀:参院選から解禁となるインターネット選挙運動で明らかに変わってきたのではないかと思うところがある。たとえばツイッターで50万人のフォロアーがいる人は50万票を持っているようなものだ。そういう方々が「この人を応援しますよ」と発信することで投票活動に影響力を及ぼすことが出来る。個人の発信する力が票に繋がっていくという動きはお感じになるだろうか。(30:29)

鈴木:強く感じる。一昔前は既得権益を持つ業界の人々が私益へ引き込むために自分が持つ票を誇示するという、そうした古い形の影響力行使があった。しかし今回は違う。堀さんはまさにそうだが、政治的発信の根幹に私益や私心がまったくない。「この国や世界のため、この人は必要なのだと」と。政党も関係ない。その人が政治で活躍すべきだという思いで発信していただいている。そんな形を可能にしたのが今回のネット選挙だと思うし、そこに大きな意義を感じる。(31:06)

堀:ネット社会では権力を行使をしようという気持ちが見えた瞬間、皆が離れていってしまう。むしろ最も重要なのは共感力、知の発信、あるいは面白さだ。私益で何かをしようと思うとフォロアーも離れ、炎上に繋がることさえある。その意味ではすごく民主主義的でフェアな意見交換が出来る社会になってきた。「この人が応援するのだから確かなんだろう」と理解され、その影響力が伝播する形に変わると思う。そうすれば民主主義のあり方も変わる。皆が政治にもっと参加出来るようになり、それが政策に影響力を及ぼす形になると思う。(32:05)

鈴木:もう1点、政治家からすると双方向性でかつ直接コミュニケーションが行えるようになったことも大きい。今までの選挙活動はとにかく大勢の前で演説をして、大勢と握手をするというもので、そこに双方向の視点はほとんどなかった。それが可能になったと。候補者への反応がどういったものかすぐ分かり、途中で修正することも出来る。声の大きい人だけでなく色々な方の声が拾えるようになった。(32:59)

堀:会場の皆さんも参院選ではぜひ、「この人を応援します」といった発言をして欲しい。発信自体が重要だし、候補者の方々もツイッター等で自分がどのように言われているか考えると思う。そうした社会的実験を色々やって欲しい。(33:35)

「企業という枠組みではなく、強い個が緩やかに連帯するネットワーク型組織が主流となる」(堀)

堀:次に森川さん。「10年後はスマホが主流でなくなる」等のお話を伺ったが、ほかにはどうだろう。10年と言わず長いスパンで考えたとき、何か大胆な予測があれば、我々がそのために準備すべきことと併せてお伺いしたい。(33:58)

森川:インターネットが何を生み出したかと考えると、ひとつにはコミュニケーションのあり方を大きく変えた。まずメールが生まれ、直接でなく間接的に何かを伝える環境で物事が早く動くようになった。で、そのやりとりがメールからSNS上に移った訳だ。そこで何が変わったか。今までは会社や学校といった何らかの形があり、そこに個人が合わせていた。しかし今後は個人が有機的に繋がるようになるのではないか。会社という形はもしかすると無くなるかもしれないし、学校や医療等、何かの壁で守られていた領域にも個人が入り込んで価値をつくるようになると期待している。(34:33)

堀:ピラミッド型であった従来の組織がネット社会で崩壊すると、私も思っていた。そこで恐らくは個が鍵になる。強い個が集まったネットワーク型の組織が生まれていくと。今は個人の発信力や情報収集能力が圧倒的に高まった時代だ。そうした環境で個人の能力がネットワークへと有機的に結合するイメージがある。そうした時代に向けて我々はどのようなことを考え、どのような能力を持つべきだろうか。(35:39)

森川:今まではお金の量や人数が重要視されていたと感じるが、今後はむしろそうしたボリュームを持たないほうが良いという時代になるのではないかと思う。そこで個人がどうあるべきかと言えば、幅広い知識を持つより1点でも良いから世界でNo.1と言えるものを何か確立する。で、そうしたNo.1の点が結びつくことで面になるようなチームをつくる。そのあたりが重要になると思う。(36:26)

堀:スペシャリストと同時に、彼らを纏めてプロデュースするアグリゲーターのような人材も重要になると感じる。一方、そこで価値を失ってしまうのがコモディティ人材なのかもしれない。両者の格差は広がるとお考えだろうか。(36:56)

森川:恐らく皆が薄々感じているし、上の世代ほど特定の強みを持たない生き方をしてきたので、その流れを止めようという動きもあると思う。ただ、ネットワーク上で誰が何をしているかがリアルタイムに見える今、ご指摘の動きは加速すると思う。(37:23)

堀:英敬さんのスライドでは「女性と若者がこれから強くなっていくだろう」という一節もあった。その動きもすでにかなり起きていると思う。福岡市長の高島宗一郎さんと市長室で以前お会いした際、壁に掛けれていた歴代市長の絵が印象的だった。昔の市長はだいたい60代以上に見えたが、高島さんの少し前は40〜50代らしい方もぽつぽついて、そして今は30代市長が出てきたと。雰囲気がまったく変わっている。一昔前は考えられないことが今は起きていると思う。(37:44)

理由は単純で、能力が明確かつフェアに測られる時代になってきたからだ。以前、ダボスで「今は若い世代のほうがIT等色々な面で上の世代より習熟度が高く、若い世代が親世代に新しい技術の使い方等を教えている」という話を聞いたことがある。能力のあり方が変わってきたのだと思うし、私自身もベンチャーキャピタルをやっていてそれを強く感じる。一昔前の起業家に感じていたのはコミュニケーション能力や人間力だったが、今は違う。むしろネットで何が起きているかが分かる能力といったようなイメージだ。コミュニケーションの方法にも能力にも明らかな違いが出てきた。また、たとえば紙や実店舗が無くなっていくような劇的変化も生まれている。私は「変化に抵抗するものは滅び、変化を創りだすものは栄える」という言葉が好きなのだが、そうした変化を先取りするためにどんなものの見方をすべきだろう。(38:42)

森川:個人的には今までの知識や経験が一番怖いと感じている。たとえば薔薇は赤いというイメージを皆持っているが、赤といっても色々な赤がある。従って、目の前にある薔薇が本当はどんな色をしているのかといったことを、自分自身で捉える能力が不可欠になると思う。ビジネスも同様だ。日頃起きていることを流れとして見るか、それとも単なる点として従来と同じように見るかで大きく変わると思う。私としては常に流れとして捉え、どんな川なのかという部分を見るようにしている。(40:56)

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「他方、グローバリゼーションが進み、金融市場も世界的に一つに統合される可能性がある」(水野)

堀:水野さんにも伺っていこう。これからの10年、金融業界で大きく変わっていくと思われるものを幾つか挙げるとするとどうだろうか。(41:42)

水野:森川さんと同様で、すべてにおいて専門化が進むことは間違いない。一方、金融市場の考え方はさほど変わらないと思う。同じようなものがトレードされ、同じようなものに価値がつけられる。ただ、その正確性が高まると思う。現在もコンマ数秒から1/100秒さらには1/1000秒でアービトラージする人々が出て来た。従って、「ものを知っているから儲けることが出来る」、「知らないから損をする」といった環境ではなくなるだろう。知識によるトレードからスピードや判断力によるトレードへの変化だ。そのなかで、恐らく世界中の市場がまったく同じ動きをするようになると思う。(41:53)

実際、そうした変化はすでに起きていて、今もほとんどすべての株式市場が毎日同じ方向に動いている。これは金融市場のグローバリゼーションだから、結果としては…、10年スパンではない気もするが、恐らく世界的に統合されたひとつの株式市場が生まれると思う。そうした統一市場および通貨に関して日本がアジアで主導的役割を果せるようになるためにも、やはり人材ノウハウが大切になると思う。(42:55)

それともう1点、専門化が進むのは間違いないが、ただ『世界に一つだけの花』という曲に関して思うがところがある。あれは「花はそれぞれ違うから幸せなんだね」という歌に聞こえるが、よく考えてみると花屋の百合やチューリップは競争を勝ち抜いている訳だ。最も高い競争力を持っているからこそ百合とチューリップは競い合わないのであって、結局、各分野でトップにならない限り美しい花屋にはならないと。そうした考え方のヒントは10年前からあった訳だが、我々は今になってそんなことを言っているのだなと思う。(43:30)

堀:では会場へマイクを移そう。続けて3〜4つほど質問を受けたい。(44:11)

会場:地方分権で発展する地域もある一方、能力や競争力の低さから寂れてしまう地域も出てくると思う。その地域格差についてはどうお考えだろうか。(44:46)

会場:日本では今後、どういった専門分野の人材が必要になるのだろう。(45:25)

会場:ネット社会で地域や故郷は我々にとってどんな存在に変わるのか。分権化が進むなかでネットが地域とどのように結びつくのかも併せて伺いたい。(45:46)

会場:今後5〜10年で一層進むであろうグローバル化にあって、地域、個人、そして企業はどうあるべきだろうか。どう勝つべきかも併せて伺いたい。(46:24)

鈴木:地域の競争力に関して言えば、逆に「能力がないから権限を渡さない」というのは甘え以外の何物でもない。組織で誰かに何らかの役割を任せる際、その人が十分な能力をつけるまで権限を渡さないということはないし、伸びしろも考える筈だ。1700ある市町村すべてが競争力を持つまで国が権限を持ち続けるのでなく、即座に分権をすべきだと思う。また、分権では失敗しない人材を選ぶことも重要になるだろう。堀さんが仰った通り、能力がフェアに評価される時代だ。そのなかで物事をきちんと動かすことの出来る人材を、皆で正しく選ぶ必要があるだろう。(46:59)

それとネットワークとの関係だが、どれほどネットワークで人々が繋がっても個人のアイデンティティは変わらない。皆、たとえば日本人で、父母がいて、自分の育った場所がある。むしろ繋がりが深くなるほど、グローバル化が進むほど、自らのアイデンティティを皆が大切せざるを得ないと思うし、そうすべきだとも思う。(48:03)

水野:グローバル化についてだが、今まではまずグローバルという観点があり、そこから皆が専門性に落とし込んでいたのだと思う。しかし今後は専門性からグローバルへという流れになるのではないか。ネット社会になって情報は大変早く流通するようになったし、たとえば自動翻訳も数年で相当なレベルに達するだろう。そうした環境では専門性を持つ人ほどグローバルに情報収集が出来るようになるし、幅広いアプローチが出来るようになる。従って特定分野に限らず皆が専門性を高める必要があると思うし、ネットを使ったグローバルなリテラシーも強化すべきだろう。(48:50)

それと金融についてだが、実は金融が最も早くネット化したビジネスだ。送金というものは何十年も前からネットで行われている。今はネットの世界から少し遅れているが、金融でも恐らくまた新しい戦いがグローバルではじまると思う。(49:37)

堀:金融で今後必要とされる専門性はどのようなものになるのだろう。(49:58)

水野:ひとつ言えるのは、日本ではファイナンスに関して最低限の知識や能力がないままOJTに入る人が多いということだ。従ってまずは金融の基礎知識を皆が身に付け、そのうえで各業務に応じて専門性を高めるべきだと思う。(50:04)

堀:たとえば投資銀行ならば人間関係を築く能力、バイアウトファームならばお金を集める営業力と投資先企業のバリューを高める能力が必要になると感じていた。つまり金融的な専門知識というより、人間関係を構築する能力や経営でバリューを生み出す能力が重要になると感じるのだが、その辺はどうだろう。(50:50)

水野:ステージ次第だと思う。ただ、これからは効率性の追求に加えて感情の表現も出来ることが鍵になると思う。金融の能力をある程度まで高めたあとは、まさに堀さんが仰った通り、エモーショナルな領域が重要になると。私も「判断は合理性に基づくが、決断は感情的なものだ」とよく言っている。合理的に判断したうえでリスクをとり、それを熱く伝えることが出来る能力を持つ人が実際には勝っているからだ。当然、トレーダーのように頭だけで勝負するというのも金融の世界にはあるが。(51:34)

「個性と均一化が重要。そして個性の部分で世界No.1であれば、どの分野でも残れる」(森川)

堀:森川さんはどうだろう。IT等で今後必要とされる専門性があれば。(52:27)

森川:難しい問いだが、必要とされる専門性というのは、逆に言えば多くの人が身に付けているという見方も出来る。従って、そこに入り込んでも必要とされない可能性が高い。その意味では人と違うことをやるのが一番重要になるのかなと思う。地方とグローバリゼーションの話にも繋がるが、結局、私たちは均一化と戦わなければいけない。個性と均一化とでバランスをとりながら、何を削ぎ落し、何を残していくのか。そぎ落としたものは均一化で良いと思うが、ひとつだけ押さえたポイントは世界No.1であること。そうすればどの領域でも生きていけると思う。(52:41)

それとネットと地域の関係についてだが、ネットでは都会も地方もそれほど関係がない。大事なのは地方にどんな個性があるか、そしてその価値が明確化されているかだ。我々は今、「LINE@」というものをやっている。地方のお店や会社や自治体が公式アカウントを取得出来るサービスだ。そこで、たとえばシャッター商店街となった店の人たちがまとまって情報発信して集客するとか、自治体首長が情報を直接発信することで地域の若者とコミュニケーションを図る等、色々な使い方がある。これは恐らく地方再生に向けたひとつのツールになると思う。つまり環境はすでにあると。あとはどんな風に“光るもの”を発信していくかが鍵になると感じる。(53:31)

堀:今日は大変面白いテーマで議論出来た。今後は個の有機的結合とともにグローバリゼーションが進んでいく。有機的結合のコストと手間が圧倒的に下がってきたなか、市場主義や民主主義的な知の発信も一層進むだろう。その意味でも鍵は個人が能力を高めることだと感じる。ポイントは三つ。まず、MBAを学ぶ人間にとってはプロデューサー的能力が不可欠になるだろう。で、二つ目はグローバリゼーションが進むなかで国家や地域のあり方も変わるという点。そして三つ目は個がそれぞれ発信をすることで多くの人が繋がり、それがバリューになる点だ。これからは地位や年齢や性別がほぼ関係のない世界になっていく。だからこそ能力のある人間が「我こそは」と…、別セッションでは「ポールを立てる」という表現もあったが、発信をすることでネットワークが生まれ、そこにアイディアやバリューが生まれる。まさに皆さんが活躍出来る時代になると思う。ぜひ、今後10年で時代をどのように変え、どのように生きていくかという能動的な視点を持ち続けて欲しい(会場拍手)。(54:41)

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