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熊谷俊人氏×吉田雄人氏 次世代が変革する日本

投稿日:2012/09/07更新日:2019/04/09

政治家を未来を考えるパートナーとして見てもらいたい(宮城)

宮城治男氏(以下、敬称略):おはようございます。本セッションのコーディネーターを務めさせていただきます宮城と申します。ちなみに私を含めて3名とも早稲田大学の出身で、セッション前の打ち合わせでは『早稲田祭』の話題などでも盛り上がったりしていました。

今日は会場の皆さまに、政治家の方々に対するイメージを変えたうえでお帰りいただきたい思っています。ここには、自分が当事者となって地域や社会の未来を作っていきたいと考えていらっしゃる方が多いのではないかと思います。市民と政治家という距離感というよりは、社会の未来を一緒になって考えていくパートナーとして政治家を見ていただきたいと思います。今後、皆さま自身が政治家を目指すという選択肢もあるわけです。熊谷・吉田両市長のお話を聞いていくうちにイメージが湧いてくるかもしれません。

では、まず両市長に簡単な自己紹介からお願いします。最初はパーソナルなお話を含めつつ、どういった思いで市長を目指すようになられたのか、市長になられた経緯なども併せて伺っていきましょう。では吉田市長からお願いします。

「思いがあっても、権限が無ければ変えられない」と思った市議時代(吉田)

吉田雄人氏(以下、敬称略):皆さま、おはようございます。おそらく歳の順で発言を振っていただいたのかなと思います。熊谷市長のほうが背も高いですしイケメンなのですが、年齢は私が上ですのでその点はよろしくお願い致します(会場笑)。

まずはパーソナルな話ということで、大学時代から簡単にご紹介させてください。私は大学に入った時には既に、政治家になりたいと思っていました。それで『雄弁会』という弁論クラブの門を叩き、政治家のパーティなどに行ったりして活動していたのですが、ある時期から「こんなことやっていて世の中が変わるはずがない」と思うようになりました。その後、「政治ではなく文学」という想いで芥川賞作家になりたいと考えて小説を何本か書き、雑誌『群像』をはじめとした新人の登竜門と呼ばれる賞に応募していたのです。第二次選考ぐらいまでは残ったりしたのですが、当時の選考委員の方々は私の才能に気付いてくださらなくて(笑)、普通に就職したという次第です。

就職したのはアクセンチュアという外資系のコンサルティング会社です。日本では特に官公庁マーケットで最も高いシェアを持っていたこともあって選びました。中央省庁や地方自治体のコンサルティング、私自身は特に電子化プロジェクトを担当していました。

我々は自分たちが優秀だという気持ちで働いていましたし、国や地方自治体の職員にも相当に優秀な方々がいらっしゃいました。一緒に働いていたベンダーさんもそれなりに高いパフォーマンスを見せていたと思います。それでも、なかなか前に進まないことがありました。法規制に阻まれたり、予算が取れなかったりと、そこに政治の存在があったのです。「やはり物事を変えるなら政治だな」と思いました。それで早稲田の大学院に戻り、自治行政を専攻しました。

その頃は政治家になろうとまでは思っていませんでした。宮城さんのように、NPOやパブリックセクターで活動ができないだろうかという思いを抱いていました。ところが、早稲田の同期に地方議員をやっていらっしゃる方がいて、「勉強ばかりしていても仕方がないからまずは現場でやってみろよ」と言われたのです。それで市議会議員に立候補して、当選しました。

市議会議員を務めているうちに、市長の持っている予算編成権や条例提案権が大きいなと実感するようになりました。「権限がなければ、“思い”があっても変えられない」。そんな気持ちがどんどん高まっていきました。そして3年前、市長選挙に立候補して当選しました。

宮城:吉田市長とは大学時代からの知り合いです。飲み会で会っていたイメージばかりなので、当選の際には「あの彼が市長に!」と感動した一方で、「大丈夫だろうか」とも思ったり(会場笑)。でも、本当に素晴らしいご活躍をされています。現在の話も後ほど伺っていきましょう。では熊谷市長、よろしくお願い致します。

現職市長が逮捕、「絶対、変えなきゃいかん」と出馬決意(熊谷)

熊谷俊人氏(以下、敬称略):皆さま、おはようございます。千葉市から参りました熊谷でございます。私の場合も、早稲田で『雄弁会』の門を叩いたものの、その実態を見て離れていった人間です。

私は、小学生、中学生の頃から歴史が好きで、現代までの歴史を勉強していくにつれ、「政治というのはまさに歴史なんだな」と思うようになりました。ただ、新聞やテレビは政治といっても国政のことしか伝えていませんでしたし、政治家というのは国会議員のことという程度の感覚しか持っていませんでした。

高校時代は神戸に住んでいたため、阪神大震災で被災しました。それをきっかけに、復旧・復興計画の策定、住民福祉計画の策定、市街地密集の解消をはじめとした都市計画の策定など、いろいろな問題において市役所が自分たちの生活と密接に関わっていることを実感したのです。それ以降、地方議会、地方政治、地方行政といったものを私なりにずっと見てきました。

そういった流れの中で早稲田大学に入学し、『雄弁会』に参画しようと思ったのですが、「何かが違う」と感じて止めました。当時はちょうどIT革命の時期を迎えていました。インターネットが始まったばかりで、まだISDNやモデムが「ピー…ヒョロヒョロ」とやっていた時代です。当時の私は「絶対にインターネットが社会を変える」という確信を持ち、大学の授業もあまり受けずにずっとインターネットをやり、ホームページを作ったりしていました。最近は出席が厳しいんですか? 困っちゃいますね(会場笑)。

当時はどちらかというと…、実は今でもそうなのですが、プレーヤーとして動くことよりも、プレーヤーが動きやすいフィールドを作ることが大好きだったのですね。インターネットビジネスそのものを仕事にするのではなく、その下位層つまり通信部分でイノベーションを起こす必要があるのではないかと考えました。

そう思ってNTTに入社しました。仕事は大変面白かったのですが、政治に対しても言いたいことはたくさんありました。自分が死ぬ時になって、「俺、やっぱり地方行政や地方政治をやっておけば良かったなあ」なんて後悔するのは嫌だという気持ちになっていきました。人生一度きりですし「それなら挑戦しよう」と。それで市議会議員に立候補し、当選させていただきました。

そうすると、言いたいことがたくさん出てきました。「なぜ、こうなっていないのか」という話ばかりでした。議会で一生懸命に発言しましたし、それで変わることも一部にはありましたが、やはり議席を過半数取れなければ、何も変えることはできないのです。モヤモヤしているうちに、当時の現職市長が逮捕されるという事件がありました。その時に「絶対、ここで変えなきゃいかん」と思ったのです。千葉というのは助役さんばかりが市長になっていた政治的に大変古い市だったのですが、思い切って市長選挙に出馬し、当選をさせていただいて現在に至っています。

宮城:ありがとうございます。ちなみに、私自身は学生時代に、現在の仕事を始めました。自ら事業を起こそうという方々、未来を作っていこうとしている方々のチャレンジを応援する事業をやっています。学生時代の1995年に堀さん(堀義人氏:グロービス経営大学院大学 学長)と出会いました。当時はグロービスもスタートしたばかりだったのですが、堀さんにはいろいろと喝を入れていただき、起業家のあり方を教えていただいていました。もう15年来、いろいろな形で応援をいただきながら、活動を続けてきました。

最近は、特に「社会の課題を解決しよう」とか「新しい未来を作っていこう」といったチャレンジにフォーカスを当てています。社会起業家と呼ばれることもありますね。お二人も「自分たちは社会起業家的な感覚で今の仕事をしている」と、よく話していらっしゃいますよね。それがすごく新鮮で、その点を会場の皆さまとも共有していけたらと感じております。

お二人はすごく楽しく市長のお仕事をしていらっしゃるそうですが、日々、どんな思いで、どんなことを考え、どんなことにチャレンジしていらっしゃるかについて、お聞かせください。

人口減、税収減、サービス低下の負のスパイラル(吉田)

吉田:先ほどの「なぜ市長をやろうとしたのか」というご質問への答えにも重なるのですが、今度はパーソナルではない角度からお話させてください。

まず横須賀市が人口面でどのような状態になっているかというと、多い時期は43万人前後でしたが現在は41万3000人前後。推計では平成37年に38万人前後になってしまいます。人口が減るだけなら、うまく縮小していけば良いのですが、最も大きな問題は生産年齢人口が減っていることです。社会保障費は老年人口の増加に伴ってどんどん増えていく一方で、それらを支える生産年齢人口が右肩下がりになってしまっているのです。

人口が減れば、当然、税収が落ち込みます。すると市民サービスが低下し、社会資本の整備も滞ります。その結果として街の魅力や価値が下がり、それがさらなる人口減少につながってしまう。人口減少社会ではそういった負のスパイラルが起こります。

人口減少がもたらす結果のひとつとして、財政状況の悪化があるわけです。市の収入推移を見てみると、全体としては国からもらうお金もいろいろとあるのでそれほど変わってはいません。しかし市税収入は平成13年と比べておよそ70億円の落ち込みを見せています。市税は最も自由に使うことのできる収入ということもあって、その落ち込みは大変な危機感につながっています。

横須賀市では何かあったときのために基金を貯めているのですが、近年はそれも取り崩さないと予算を組めないような状況になっています。私が市長になってからは基金にそれなりのお金を積んできているのですが、実情は土地の売却を進めているので何とか積み増せているのです。土地の売却を除くと、やはり右肩下がりになってしまいます。

さらに言えば、横須賀では官僚出身の市長さんが36年間続いてきました。“ハコモノ”をたくさん作り、借金を残してきた経緯があります。私が当選したときの借金3110億円に比べると現在は3030億円まで減ってきているのですが、まだ3000億円以上あります。一般会計、特別会計、企業会計など、会計の財布はいろいろとありますが、すべて合計すると1年間の予算は3000億円前後です。つまり市が新しい事業を何も起こさないでお金を使わなくても、借金を返せない状況にあるのです。

市が出資している外郭団体と言われる部門もやはり借金を重ねていて、今でもまだ70億円ほどあります。市民病院の累積損失も増え続けていました。この市民病院は民間に経営委託しましたので、その結果として市の職員が一気に退職しています。そのときの退職金も借金で充てたので一時的に累積損失は微増していますが、今後は目減りしていく予定です。

このほかにも、ごみ処理施設などの公共施設を更新する費用が必要です。こちらは建物の築年数や平米単価で試算して、今後20年間で2000億が必要になります。また、市の職員が将来退職するときのためにもおよそ250億円を引き当てておかなければなりません。こうした状況から生まれる危機を、官僚出身であった今までの市長さんでは到底乗り越えることができないだろうと思いました。私としてはそのような思いから市長になったという側面があります。

宮城:ありがとうございます。変革の具体的内容についてものちほど改めてお伺いします。続きまして熊谷市長にお願いします。

長年にわたって地方行政はチェックが入ってこなかった(熊谷)

熊谷:吉田市長が仰っていたこととほとんど同じなのですがそれが、横須賀市のおよそ1.5倍のスケールで起こっているというのが千葉市の現状です(笑)。千葉市でも中央官僚や市職員の市長がずっと続き、私は戦後初めての民間出身市長です。千葉も横須賀と全く同じ構図で、巨額の借金がたまっています。

経営の発想や未来に対する責任といった発想が全くない…というわけではないのですが、我々の世代からすれば信じられないようなことのオンパレードなのです。国であれば、テレビなどのメディアを介して皆さまのチェックが入ります。しかし地方行政には長年にわたってそのようなチェックが入ってこなかったので、やりたい放題だったのです。我々はそれを当り前の姿に戻したいのです。私を含めて、政治の世界に若い世代が入ってきている背景には、そうした認識があると思います。

宮城:ありがとうございます。では、現在チャレンジしていらっしゃることを伺いたいと思います。では熊谷市長からお願いします。

熊谷:ここで社会起業家というお話につながっていくと考えています。我々はいわゆる若手政治家ですから、周りの方々には「将来、国政に行くんですよね?」「将来は国政に行ってください」といったことをよく言われます。しかし、我々は明確に市政をやりたいから市政の現場にいるのです。市政というのは直接行政を担う基礎自治体であり、現場で住民の皆さまのお話を聞いて直接行動できます。決めたことに対する結果がすべて目の前に表れますから、逃げることもできません。

いわゆる地方分権というテーマが議論されるとき、どうも都道府県単位の話にばかりなっている。しかし、都道府県は間接行政体であっては国とあまり変わりません。そうではなくて住民の目と鼻の先にある現場に権限と財源を落としていくことが住民本位の政治や行政を作っていくための基本だと考えています。

ですから我々は、住民に最も近い最前線で行政の現場に立ち、政治と住民の間で頑張りたいと考えています。そのためにこの仕事をやっているわけです。市政の良いところはすべての喜怒哀楽とともに住民と一緒になって汗をかくことができることにあります。例えば、今までは国や県や市がやっていたことを市民が決められるようにする。新しい時代を作っていく制度設計も、我々の手で行えるのです。

その意味で、私としては地べたで市民とともに生きている実感を持ちながら、市長という仕事を進めていると自覚しています。市政と県政以上は決定的に違います。ほかの自治体の首長さま方も、同様の思いで誇りを持ちながら仕事に取り組んでいらっしゃると思います。

毎年4億円近い赤字を出す美術館を大胆に変える(宮城)

宮城:ありがとうございます。そういった誇り、やりがいを感じる場面として、イメージしやすい例はありますか。

吉田:先ほど「官僚出身の市長がいろいろなハコモノを作ってきた」と申しましたが、そのなかに美術館があります。「横須賀に美術館が必要か?」という議論自体は、市議会議員時代からしていました。しかし市長の権限がとても強いために、結果としてはできてしまっていたんです。建設費用はおよそ46億円で、絵を買うお金がおよそ22億円。およそ68億円を投じて毎年赤字、というか経費をかけなければならない状態となっていました。

運営には毎年4億3000万円前後が必要で、そこで発生する“上がり”は5000万円前後です。ですから4億円弱の赤字が毎年出ているのです。「それは赤字とは言わないんだ」といったご意見もあるかと存じますが、それでも我々からすれば「なぜそこまでの経費をかけなければならないのか」と思ってしまう。

実は本年度からハコモノの象徴的な存在である横須賀美術館を大きく変えていく予定です。まず、美術館で音楽をやるという企画を立てました。音制連(日本音楽制作者連盟)さんという著作権などを管理する団体と一緒になり、まずラルク・アン・シエルの企画展を開催しました。彼らは今年でちょうど結成20周年ということで、ワールドツアーで使用した楽器や衣装、ピックなどを展示し、さらに同ツアーのライブステージを館内で再現しました。足を運んだ方がラルク・アン・シエルになりきれるような企画展です。そうしたら、今までは美術館に来たこともない人たち、渋谷の街を歩いているような女の子たちもたくさん来てくださいました。

ただ、それだけですと歳上世代の方々からお叱りを受けるかもしれません。ですから年度末、また音制連さんと1960〜70年代のポップ・ミュージックを振り返るという企画展の開催を予定しています。『帰って来たヨッパライ』の加藤和彦さんですとかをお招きして。ほかにも神奈川フィルハーモニー管弦楽団に無料で美術館コンサートを開いていただいたりします。

そんなふうにして、横須賀美術館をただの教育施設ではない、集客施設に変えていき、横須賀という街のイメージアップに繋げていきたいと考えています。官僚の方々が残したハコモノですが、「経営の感覚や新しいアイデアで変えていくことができるんだ」という一つのモデル的な取り組みです。そのあたりが横須賀で現在進んでいる象徴的な事業です。

宮城:そういった新しい企画はどのような体制で考え、進めていくのですか?

吉田:美術館は教育施設なので、教育委員会が管理しています。ただ今回の企画展に関しては経済部が担当しています。横須賀市政のなかで唯一と言っていい投資部門です。もちろん教育委員会や音制連さんとも調整しつつ、なんとか開催にこぎつけたという感じですね。ほかにも京浜急行電鉄さんなど外部の会社さんにもいろいろと入っていただいています。

宮城:ありがとうございます。熊谷市長はいかがでしょうか。やりがいを感じていらっしゃるお仕事のご経験として、何かあればお伺いしたいと思っております。

蜂の巣駆除の要請に「それはやりません」(熊谷)

熊谷:はい。私の仕事は市民の皆さまとともに税金の配分を決めることだと考えています。皆さまはいかがですか? お住まいになっている市町村に納めた税金の使い方について、多少なりとも関与、もしくは意識した経験はございますでしょうか。おそらく、ほとんどないと思います。そこを見える化していくことが最も重要であると私は考えています。

先日、朝日新聞の一面に「蜂の巣論争」という記事が載りました。私はツイッターをやっているのですが、あるとき、市民の方にご要望をいただいたことがあるんです。「隣の家に蜂の巣ができてしまった。危ないから駆除するための補助を欲しい」というご要望でした。皆さまもご存知かと思いますが、千葉市の近くにある松戸市に「すぐやる課」という課があります。こちらは現在、実体として仕事の大部分が蜂の巣駆除になってしまっています。職員の方が10人いらして、年間千件ほどの処理をしています。

それに対して私はツイッターで「それはやりません」と明確に申しました。そういった個々人の問題について行政がお金や人を出していくと、行政サービスがどんどん過剰になっていきます。税金をどれだけ上げてもきりがなくなってしまいます。

市民の皆さまからすれば、「行政サービスの拡大は、それがどういった内容であっても良いことだ」と、脊髄反射的に感じてしまうと思います。しかし、その裏ではもちろん人件費や税金が使われているわけです。自分たちが納めた税金の使い方として本当に正しいのかどうか。そのような判断を市民の皆さまができない限り、この国の行政を無駄のない、効率的なものにすることはできないと思っています。

今までは国も県も市も、そのような行政の裏側にある税金の使い方をあえて見せないようにしていました。ですから「行政が無駄を作っている」と、皆さまに誤解されてしまうわけです。住民の方々の小さな要望を行政や政治がすべて汲み取ってしまい、事業を作ってしまったからこそ借金だらけの国になってしまったのです。

もう一つ、千葉市の例をご紹介します。千葉では敬老会のたびに70歳以上のお年寄り一人当たり850円を主催団体などに補助していました。それだけで1億円近くが使われていた計算です。もしくは65歳以上の独居老人が銭湯に入る場合、年間で何十回も無料になるという券を配っていました。さらには鍼灸マッサージを受けますと年間24回、800円の割引となる券も配っていました。すべて合わせると3〜4億円の事業です。これ、政治家にとっては大変良いことなのです。65歳以上という投票率の高い世代に広く薄くお金をばらまいているのですから。

どこの市町村もだいたい同じようなことをやっています。そういうところに皆さまのお金が使われてきたのです。お金が無限のようにある時代であれば、それで良かったのかもしれません。しかし今はそういうことを止めていかなければこの国は立て直せません。私はそれらをすべて削減しました。当然、敬老会に行けばお年寄りから「なぜ廃止したんだ」と言われます。我々は懇切丁寧に説明するようにしております。そのことによって少しずつ、しかし多くの人たちが分かってくださいます。千葉市の借金が1兆円を超えており、日本中の自治体を見渡しても最も大きい額の一つであるということの意味について考えていただけるようになります。

そういうことをしていかないとこの国は変わりません。私は市民と一緒に進めていきたいと考えています。市民は「ユーザー」ではありません。皆さまご自身もユーザー感覚がなかなか抜けないことはあるのかもしれません。しかし税金を納めている以上、「ステークホルダー」なのです。ご自身が住む街の「株主」なのです。企業の株主であれば、なんでもかんでも「安くしろ」とは言いませんよね。逆に安くしますと言われたら、「本当にそれで収支が合うのか?」「株主配当をきちんと出せるのか?」と考えると思います。

そのような意識を市民一人ひとりが持たないと、社会は成立しません。「自分たち自身の街であり、お金なのだ」という感覚を持ってもらいたいと思っています。そのために情報を出して、無駄を潰していきたいと考えています。そこで潰したことを分りやすく見える化したうえで、それについて市民の皆さまに「改めて考えてみてください」とお願いしています。

宮城:そのようなビジョンを実現していく段階では壁もありますよね。思った通りにすべてが簡単に進むわけではないですよね。そういった壁を越えていくために両市長はどのような工夫をされていますか?

負債を隠すのは株式会社なら背信行為(吉田)

吉田:情報共有は本当に大事だと思います。今までは行政の裏側を市民の皆さまに意識させてこなかったのです。財政再建一つとってみても、そういった情報を市民の皆さまと積極的に共有するところがスタートになると感じます。基金についても、「土地を売らないできたから貯金がどんどん目減りしているんです」「実際に基金が底をついてしまうと予算すら組めなくなるのです」と、きちんと伝える。そういった説明をしないと、市民の皆さまも最後の納得感を得ることができなくなるように思います。

私は市長になってから財政基本計画というものを作りました。今まで、一つひとつの借金については「いつまでに返さなければいけない」ということがはっきりしていました。しかし3110億円に及ぶ横須賀の借金が、何年後にいくらになるかといったことは誰も知らなかったんです。市民も議員も、市の職員も知らない。そこをしっかり見える化しました。下手をしたら借金が増えるだけでなく貯金も減ってしまい、市民サービスが提供できなくなる可能性すらあることをはっきりとお伝えしていきます。

また、横須賀市では「車座会議」という市民集会のようなものも開催していまして、私もプレゼンテーションしています。「現在はこういう状況ですから、これを改善するために皆さまの力や知恵を貸してください」と発信しています。まずはそういった情報共有から始める必要があると私は思っています。見せるべき人に負債を見せないというのは、株式会社であれば背信行為に当たりますから。

熊谷:全く仰る通りだと思います。まず情報を明らかにするのが基本だと思います。千葉市では予算編成過程を公開しています。財政健全化計画というものを作りましたが、予算を組むに当たり、それぞれの所管が何をしようとしていて、どのような予算要求を行い、それが財政局でどのように査定され、私がどのように査定をしたかを公開していきます。査定で通した理由や削った理由もある程度見えるようにして、市民も予算編成過程にある程度関与できるような形で公開しています。こちらは政令市のなかでも最も高い評価をいただいていると自負しております。

予算編成過程の公開によって、市民がなんとなく感じたもの、感じることのできないもの、あるいは考えることができなかったものを、とにかく表に出していく。そこで考えるきっかけを作っていくという情報共有です。そのようにしてから対話会を行っています。私は一人でも多くのステークホルダーを作りたいと思っています。そうすれば私がいなくなった後も千葉市がおかしな方向に行くことはないと感じていますので。とにかく情報共有が大事であって、逆に言えば他の要素はないというほどだと思います。

宮城:ありがとうございます。自分たちの街を売り込むのも首長の仕事として非常に大切だと思っています。人や企業の誘致に対して大きな責任があるというお話は、セッション前の打ち合わせでも話題になっておりました。そこで両市長にそれぞれ3分前後で両市のPRをしていただきます。会場の皆さまと、「住みたい」、「働きたい」、「自分たちの会社を持って行きたい」と思えるようなお話を共有できればと思います。その後質疑応答の時間としましょう。まずは熊谷市長のほうからお願いします。

「チバスイッチ」という冊子を作り、チバを知ってもらう(熊谷)

熊谷:千葉市へ行ったことがあるという方は本会場にどれくらいいらっしゃいますか? …あ、結構いらっしゃいますね。ありがとうございます。ちなみに幕張が千葉市にあることをご存知なかった方って、いらっしゃいますか? …ああ、やはりいらっしゃいますね。実は幕張メッセも幕張新都心も千葉市なんです。これが意外と知られておりません。千葉市と言われてもなかなかイメージを描けないことがあるようです。

そこで『チバスイッチ ここは笑顔が光るまち。(以下、チバスイッチ)』という冊子を作りました。まずは数字である程度示していこうということで制作したものです。中身を少しご紹介させていただきますと、まず千葉市の住宅敷地価格。これは首都圏で同じ通勤時間にある都市と比較すると最安になります。同じお金で1.2〜1.3倍の広い家に住むことができるのです。

また、6歳未満児童1000人当たりの保育所(園)定員数比較でも政令市で1位ですとか、公立小中学校の校庭が児童一人当たり換算で政令市のなかで最も広いという情報もご紹介しています。校庭が最も広い結果、50m走などを含めた小学生の体力測定でも千葉市が政令市で1位になっております。このほか、中学校の給食実施率も100%。これ、親御さま方にとっては朝のお弁当づくりにかける約20分を減らすことができます。子どもに確かな栄養を摂取させることができますから、そういったことを含めて体力面で明らかな優位が出ていると思います。

さらに人口当たりの市民農園面積も政令市では圧倒的に高い。その意味では首都圏に比較的近いという利便性と、大自然が近くにあるという両面を持っていることが大きな魅力に繋がっています。ですから我々としては、例えば「子どもができた。生涯を暮らす土地で、子どもたちと豊かな自然環境に囲まれて暮らしたい」ということを望んでいらっしゃるような方々に、ぜひ千葉市を選んでいただきたいと思っています。そういったデータが『チバスイッチ』にはたくさん詰まっています。15歳未満人口1万人当たりの小児科医師数が首都圏の大都市で最も多いですとか、救急車現場到着までの時間が首都圏の大都市で一番早いですとか、そういった情報も確かなデータとともにお示ししています。

我々は成田空港に一番近い政令市ですから、アジアを意識した都市戦略と経済戦略を考えております。様々な形で千葉市での企業立地をご案内していますね。例えば千葉市に本社を構えていただいた場合、中小規模の企業に対しても法人市民税を100%、3年間減免するという制度を今年の4月から導入しました。また、国際会議を誘致するにあたっては補助メニューも用意しています。幕張新都心のある都市ですので、アジアレベルで企業が集積するような街づくりを進めていきます。

来年の4月には民間からの人材公募も行います。ご自身の勤めていらっしゃる企業やお知り合いの企業で、本社や支店の移転、あるいは進出などをお考えになっている方がいらっしゃいましたらぜひご検討ください。

宮城:ありがとうございます。では吉田市長。

「基地の街」のイメージを逆手に取る(吉田)

吉田:やはり首長が色々な情報を発信するのは大事だと思います。私も先ほど横須賀という街のイメージを宮城さんに伺ったのですが、宮城さんは「基地の街」と仰っていました。会場の皆さまはいかがですか?[会場多数挙手] あ、やはりほとんどですね。多数決にて可決という感じです。

基地というと「治安が悪い」「街が汚い」「風紀が乱れている」といったイメージをお持ちの方が多いと思います。実際、2006年に日本経済新聞社が「首都圏で住みたくない街」という調査を実施していたのですが、横須賀はそこで8位でした。7位が春日部、6位が茂原、5位が熊谷、4位が川崎、3位が九十九里、2位が厚木、1位が成田という結果です。成田はやはり騒音でしょうか。私が注目したのは8位の横須賀と2位の厚木です。春日部「クレヨンしんちゃん」(笑)、茂原「ちょっと遠い」、熊谷「暑い」、川崎「公害」、等々、いろいろとイメージを持たれているかもしれません。厚木と横須賀が入っているのは、やはり基地があるからだと思います。

しかし、実は厚木市に厚木基地は無いのです。厚木基地は綾瀬市と大和市にまたがっているのです。それなのに厚木基地という名前のせいで住みたくない街のNo.2に入ってしまった。「やはり基地の街というイメージをどうにかしなければいけない」という問題意識を今までも持っていました。これまでの行政はそれを払拭しようとしていたんです。たとえば市の広報誌で使う写真に基地や艦船が映り込まないようにしてみたり。

しかし私は「もうここまで横須賀=基地というイメージが定着しているのだから、それを逆手に取ろう」と考えました。例えば海軍カレー。皆さまもお聞きになったことはあると思います。あえて海軍のカレーを売り出しました。マルハニチロ食品さんや山崎製パンさんが、海軍カレーコロッケですとか横須賀海軍ドライカレーですとか、いろいろなものを作ってくださっています。

今まで隠していた軍港をあえて見せていこうということで軍港クルーズも始めました。熊谷市長にも乗っていただいたことがあります。ネイビーバーガーやチェリーチーズケーキといった料理のレシピを米海軍に提供してもらい、横須賀ならではのブランド戦略も進めています。『横須賀どぶ板通り』という商店街を歩きながら食べていただくような、そんな戦略です。基地の街というイメージをマイナスではなくプラスに変えていきたい。そんな考え方を基にした横須賀のイメージアップに取り組んでいます。

ミシュランのような隠れ調査員が窓口サービス調査(熊谷)

宮城:ありがとうございます。それでは会場の皆さまに振っていきたいと思います。素朴なご質問でも結構ですし、「こんな街にしてくれたら私も住みたい」といったご意見でも結構です。どなたかございましたら。[会場挙手多数]。おっ、これは当てるのも大変ですね(笑)。ではお一人ずつ簡潔にご質問いただければと思います。

会場1:御二方とも市長になられてからちょうど3年ほど経っていたかと思いますが、何年も何十年も官僚ないし助役出身市長のもとで働いていた職員の方々ですとその意識改革はなかなか難しかったのではないでしょうか。「意識改革を行うためにこんなことをして、職員の意識がこのように変化し、それで街として良くなった」といったお話があれば教えてください。

吉田:横須賀では窓口サービスアンケートというものを実施するようにしました。窓口にアンケート用紙を必ず置くんです。レストランなどであれば、食事の量や値段に関するアンケート用紙が置かれているのは普通のことですよね。それでサービス内容やメニューを見直すわけです。しかし、市の職員はそういったことをあまり意識せずに仕事をしていました。アンケート用紙を置くことで、自分たちの課が市民からどのように見られているのか、接遇やサービス内容をどのように見直さなければいけないかが分かる仕組みを導入しました。

熊谷:千葉市の場合、窓口に関してはミシュランのような隠れ調査員を派遣しています。その調査後、結果を踏まえて指導してもらったりしています。また、研修に力を入れています。夜に民間の講師を招き、毎月のように講座を開いています。毎回数十人以上の職員が参加しています。横須賀市職員の方々にもお越しいただいたことがありました。外部の意見に触れてもらいながら、意識改革の流れを作るようにしています。

宮城:意識改革は険しい道だと思うのですが、「いけそうだな」という展望は見えてきていますか? 「次はこういう施策を打たなければ」といった問題意識がありますか?

変革について来ることができない職員も(吉田)

吉田:私が市長になってから部長が定年前に7〜8人、辞めました。私としては辛い出来事でしたが、やはり変革について来ることができていなかった。残念ですが、そういう部分は受け止めるしかないと感じています。特に人事面では「この人が適切なんだ」という人材がいれば、できるだけ年功序列にもこだわらず、抜擢あるいは引っ張り上げるということを考えています。

宮城:熊谷市長はいかがでしょう。

熊谷:辞めていく人はまだいないのですが、千葉市では業務改善というものを大々的に進めています。例えば、「机をこちらからあちらに移動すれば業務がコンマ3秒速く進む」というようなものもあります。そういった細かい部分まで全員でカイゼンしていく「業務改善推進プロジェクト」を今年度から本格的に始めました。これはちょっと終わりというものがない世界です。

宮城:ありがとうございます。では、会場からいかがですか。

会場2:熊谷市長への質問です。私は大阪の会社で鉄道の赤字路線を今後どうしていくかという仕事を担当しています。その現場でよく引き合いに出されるのが千葉都市モノレールです。人口減少によってどの鉄道会社も苦しくなってきていますが、千葉都市モノレールは民間で運営しておられます。千葉市としては「住民の方々の移動」についてどのようにお考えですか。財政再建との折り合いをどのようにつけていくのかも含めて教えてください。

熊谷:交通機関は今後どんどん細っていくと思います。ですから公共交通というものは赤字でも構わないというのが私の認識です。ただし、「赤字でも良いが、赤字金額以上の何をもたらしているのか、それをきちんと証明しなければ駄目だ」と言っています。私は民間から千葉都市モノレールの社長を公募しました。彼が何をやっているかというと、例えば空いた駅舎の活用です。今後は無人駅が増えますから、それをただ閉じるのではなく、地域の様々な団体に活動場所として貸し与えるのです。それによって駅に人が集まるようにしたり、そこを介して地域の繋がりが深くなるような役割を果たしていく。福祉的な観点を含めた議論が今後は求められていくと私は考えています。営業を超えた地域資源に公共交通がなれるのかが問われてくるのではないでしょうか。

宮城:ありがとうございます。では続いていきましょう。

会場3:私は生まれてから30年千葉市に住んでいます(会場笑)。以前の千葉市は大きな団体の意識や意見に左右されがちな自治体だったように感じていました。職員の意識改革も大切だと思いますが、政治に対してどのようなアプローチを取っていらっしゃるのかお聞かせください。

「借り」を作らないで選挙に勝つことが大切(熊谷)

熊谷:私としてはまず、選挙に強くあり続けなければいけないと思っています。どうして官僚出身の市長でうまくいかなかったのかというと、自分自身で選挙をやっていなかったからです。地元の政治団体や政党、あるいは市と関係する団体にすべて選挙戦をやってもらっていたのです。そういったスクラムでしか当選できなかったか、そういった人々に招かれて選挙を戦っていたので、当選後には「借りだらけ」という結果になってしまっていたのだと思います。

最も大きな借りができるのが選挙です。ですからできるだけ借りをつくらずに選挙を戦う。そのためにも、利害関係のない市民がより多くの比重を占める選挙スタイルで戦うことが大切だと思います。私自身、能力云々以前の話として、借りができない選挙を戦ってきたから自由にできている面が大きいのです。諸団体もある種の諦めがつきますから。市民の皆さまも、利害がないから政治に参加しないのではなく、利害がないからこそ政治に参加するととらえるべきなのです。

吉田:地方議会について言えば、首長という立場で市議会をどうこうするのはなかなか難しいと思っています。私も市議会議員時代、首長に「給料を下げろ」と言われたら「なぜ、あなたに言われなきゃいけないんだ」と感じていました。市民と議会の関係に期待したいと思っています。質問者の方は政治家を「送り込んだ」というご認識でしたが、果たしてどれほどの有権者の方々がそういった意識をお持ちなのか。ある事業を「削減しよう」と言うたびに反対する市議会議員がいます。「財政状況を考えたら、やらなければいけない」という認識を持っている議員をどれだけ、市民の皆さまが送り出していただけるのか。そういった有権者と議会との関係が大事になると私は考えています。

宮城:ありがとうございます。では次の方。

会場4:企業で言うところの事業戦略、全体のグランドデザインを描くといった部分については、両市長はどのようなイメージお持ちでしょうか。

市民に喜んでもらうだけでは駄目(熊谷)

熊谷:一番重要なのは、もうユーザーが減っている状態にあるということです。どんな街にするかという味付けはそれぞれあると思いますが、根本的な部分では「ユーザーが減っている状況でもこの街が生き残らなければいけない」という観点があります。

ですからすべての事業判断は、「将来、還ってくるものなのか」「投資効果があるものなのか」という観点で下しています。市民に喜んでもらえる事業なら山ほどありますし、喜んでもらえるのなら無駄ではありません。ただ、喜んでもらうだけでは駄目なのです。それが市全体にとっての利益になるかが重要です。それによって、「外から人が千葉に来てくれる」とか「病気になる人が減って医療費が減る」とか、なんらかの形でトータルに還ってくるように考える必要があります。そうすることで、我々は生き残っていけるのですから。

吉田:本当にその通りだと思います。「何もしなくても持続可能なんだ」と皆が思っているような現在の基礎自治体運営では、いつか破綻をするところが出てきます。本当に重要なのは、「変えていかなければ持続しないぞ」という危機感です。ですからそのような観点を踏まえつつ、生産年齢人口をどのように増やしていくのかをまず第一に考えています。

そのうえで私自身の故郷に対する、三浦半島に対する思い入れもあります。横須賀の魅力である水、緑、命、人づくりというものを市政の柱として選挙で掲げて当選をさせていただきました。どのようにして横須賀という街のイメージを持っていただくかに関しては、しっかりとした考えを持って政策判断の基準にしていきたいと思っています。

宮城:ありがとうございます。次はいかがでしょう。

会場5:国内で企業を誘致し合うのであれば、ある意味でシェアの奪い合いにもなるのかなと思いました。日本全体を良くしたいという思いもお持ちかと思いますが、見解をお聞かせください。

自治体間の切磋琢磨が日本全体を強くする(吉田)

吉田:そこは割り切るしかないと私は思っています。やはり奪い合いなのです。割り切るしかないと思いますし、逆にそのぐらいのことを考える人々が日本全国にいないと国全体としても良くならないと思います。とにかく自治体間の切磋琢磨やソフトパワーの競い合いといったものが必要だと考えています。

熊谷:我々が頑張って良いことをやっていけば日本全体の競争力が上がると思います。私は先ほど「企業誘致についてはアジアを含めた海外の企業も対象にする」と申し上げました。国内の日本企業だけではありません。アジア企業もしくはアジアへ出て行ってしまった日本企業に、国内へ戻ってきていただくためにもやっているつもりです。実際、近く海外の企業を誘致します。そのような施策を積極的に進めていくことで、韓国や台湾や中国に企業を取られないようにしなければいけない。「そういったことを地方ができるのだ」と、地方自治体が声を挙げていかなければ駄目だと私は思います。「国ができないのなら地方自治体が先にやって国を動かしていこう」という気持ちでやっていけば日本全体に寄与できると思っていますし、それが地方分権であると思っています。

宮城:ありがとうございます。では次の方。

会場6:情報共有によって納得感を高めていくことは本当に大切だと思いますが、公開された情報を理解する住民側のリテラシーも重要だと感じます。どれほど情報を公開しても数字が分からなければ成果にも繋がりませんから。住民の方々に「こんな教育をしていこう」とお考えになっていることがありますか?

あらゆるメディアを使って分かりやすく説明する(熊谷)

熊谷:我々としては、まずは対話会などを通して分りやすくご説明しています。また、千葉にはケーブルテレビがあります。ですからそこで『テレビ市長室』という番組を持って、政策を分かりやすくお伝えすべく日々お話しております。今まで市政に興味を持っていなかった若い世代にも興味を持ってもらうためにツイッター、フェイスブック、そしてブログもやっています。特にツイッターの存在が大きいですね。変なご質問もたまには来ますが、「いや、こういうことなんです」と辛抱強く返す。すると、大抵の場合「ああ、分かりました」とご納得してくださいます。

最近盆踊りや地域のイベントへ行ったときに、ご年配の方々から「市政だよりで市長のメッセージを見ています」ですとか「『テレビ市長室』、見ています」といったこともよく言われるようになってきました。昨年あたりからはツイッター上でも随分とお若い、不良少年のようなお兄さんからも(会場笑)声をかけられるようになってきました。

とにかく若い方々が使うものを含めて、あらゆるメディアを使ってきちんと分かりやすく説明していく必要があると思います。で、そこで分からないと言われたらさらに「もう少し分かりやすく説明しよう」と考える。今度は千葉市として「U Stream」での対話会を行います。ぜひそちらにもご参加いただければと思っております。

吉田:情報発信の結果として住民の皆さまがどのようにお感じになるかというと、今まで提供していた福祉サービスなどを下げようという話になると、やはり「下げるな」という意見になることがほとんどです。財政状況をすべて把握した上でのご発言ではなく、ご自身の実生活に基いてお話をしていらっしゃる。その辺はいろいろと手法があるかと思います。熊谷市長が仰った以外であれば、例えば私は朝、駅前に立ってチラシをお配りしたり演説をしたりしています。この活動は…、まあ市長としてというよりも政治家として続けています。「いつか伝わるはずだ。いつか分かってもらえるはずだ」という、いわば宗教に近い信仰心ですね(笑)。「それで本当に伝わっているのですか?」と聞かれたら、私も疑問符をつけることがよくあります。しかし「いつかは必ず分かってくれるはずだ」という思いで活動を続けています。

宮城:そういったことを組織的に伝えていくための体制づくりですとか、あるいは工夫をしていますか?

熊谷:私が市長になってからは広報課と広聴課を一体化させました。意見を聞くことと意見を発することは一元的に扱うべきだと考えていたからです。地域の自治会など関係してくる各部門にもそこへ入ってもらいました。それによって市民自治推進部という部門にした上で、市民とのコンタクトチャネルをすべて集約しています。一元的に戦略を考えることができるようにという組織的な工夫です。

吉田:横須賀市でも組織対応を行なっています。今まで総務部のなかにあった広報課を、政策推進部に移しました。その上で、メディアへのいろいろなリリース案件も広報課を通さなければいけないようにしたりですとか。そういった工夫は皆がそれぞれにやっていると思います。

宮城:考えてみますと、コミュニケーションのスタイルといったものは別に決まった答えがあるわけではありません。会場の皆さまからも何かアイデアがあればぜひ。

会場7:労働人口の減少に関しては、女性が働きやすい街づくりということが大変重要になると思っております。この問題で両市長がお考えになっていることをお聞かせください。

吉田:横須賀の中学校では給食を出していません。その辺は千葉市のほうがアドバンテージを持っていると思うのですが(笑)。もちろん子育て世代の方々にとって働きやすい街づくりというのは大変重要な課題だと思っています。

これはよくある施策かもしれませんが、我々は保育所の定員を増やしています。新しい保育園を作るためにはいろいろとハードルがあります。その一つは財政的負担です。これをなんとか解消するための工夫をしました。現在、横須賀市内には私立と公立を合わせて40の保育園があります。それぞれの園で5人ずつ定員を増やしていく。すると40×5で200人の定員増になります。横須賀市の待機児童数は現在39人ですから、そういう手法で待機児童を減らすこともできると考えています。このほかにも民間の株式会社で運営されている保育園が市内には何施設かあります。人口当たりの待機児童数は神奈川県で最も低い部類に入るのではないかと思っています。

市を上げて“イクメン”を推奨(熊谷)

熊谷:千葉市でも保育所の整備をしておりまして、今年度は待機児童数を劇的に減らすことができました。保育所だけでなく幼稚園でも工夫をしています。現在、幼稚園では夜の7時までという長時間の預かり保育ができるような施策をスタートしています。「幼稚園に預けていたけれども仕事が変わってしまって…」という方、いらっしゃいますよね。「幼稚園には通わせたいけれども、早い時間に帰ってくることができない」という方だっています。千葉市ではそんな方々にも対応できる柔軟な工夫のもと、保育所をフルに入れるだけではない手段も現在では拡充させています。もちろん病気になったときに預けられる保育所も増やしています。

また、市を挙げて“イクメン”を推奨しています。『育男手帳(イクメンハンドブック)』というのも作りまして「旦那さまに渡してください」と。ほかにもさまざまな形で“イクメン”を推進しつつ、次は“育爺(イクジイ)”、“育婆(イクバア)”も推奨しようかと(会場笑)。とにかくさまざまな施策によって、「千葉市で育てるとお母さんが楽ですよ」ということを、データとともに3年後ぐらいには証明したいと思っています。「旦那さんや地域の支えもあるから千葉に引っ越しましょうよ」とお伝えしたいのです。3世代同居支援事業も行っていますし、そういった面で子育てしやすい街という面をPRしようと考えています。

宮城:いろいろなアイデアが出てきそうですね。ちなみに両市長ともお子さまは?

熊谷:1歳が一人います。

吉田:私は7歳と4歳です。

宮城:子育て世代の市長でいらっしゃるからこそ考えることができる施策はあるとは思います。

吉田:ちなみに私立幼稚園の預かり保育や病後児保育は横須賀もやっています(会場笑)。

大型発注は切り詰め、細かい仕事は地元へ(吉田)

会場8:「ハコモノをどうするか」というお話と「民間からの人材登用」というお話に関連した質問です。私はプラント機器メーカーの購買部門におるのですが、売り上げが伸びないなかで利益を出そうと、いろいろと工夫をしております。そういった民間バイヤーを登用して、公共工事の発注に活用するというお考えはありませんか?

吉田:最近では競り下げ方式…、いわゆるリバースオークションを文房具購入で導入してみたりと、発注でも工夫をしている部分はあります。ただ、購買に関して申し上げれば私は少し違う気持ちも持っています。大型案件であれば市外の人たちも大勢入ってきますから、「そのためだけに人を雇うのは少し難しいかな」とは思いつつも、いずれにせよ可能な限り安くという発想を持たなければいけません。

ただし、私としては地元の経済が回らなければいけないと思っています。ただ「安ければ良いだろう」という発想でありません。地元の方々や企業さんに利益を含めた仕事をどれだけ回すことができるかという観点から、入札制度もずいぶんと変えてきました。例えば横須賀のマンション管理組合さんであれば、屋根が雨漏りしたときには東京や横浜の色々な業者さんから見積りを取ると思います。私はその時、町内会単位で考えたいと思っています。もし町内会の屋根瓦が飛んでしまったら、同じ町内にいる屋根工事屋さんに仕事をしてもらったら良いのではないかなと思うのです。「工事屋さんの彼はお祭のときに寄付持ってきてくれるし、災害があったらすぐに駆けつけてくれるし、何より暴利を貪ることがないだろう」と。それによって「皆が皆に還元していくことができるのではないか」という発想の上に立ちたいと私は思っています。もちろん大型のものはできるだけ安く切り詰めることが大事だとも思います。ただ、細かい仕事というのはできるだけ地元の企業にやっていただきたいと考えています。

熊谷:そこはやはり民間と行政という違いもあるように思います。我々が買い叩くと税収に跳ね返ってきかねない側面もあって、なかなか難しいバランスがあります。ただ、現在は我々千葉市でも検討していることがあります。いわゆる公共事業の発注部門というのはある程度一元化されてきていますが、そうではない委託契約は意外と高い金額でも所管に任せられてしまっているんですね。委託系を含めてすべて一元的に取り扱う部隊でやっていくという仕組みづくりを検討しています。あと、1〜2年ぐらいで結論を出して組織改正をしようというのが我々の方針です。

宮城:ありがとうございます。残り7〜8分となってしまいました。ここからはいくつか連続して募っていきましょう。その後、できる範囲でお答えいただきたいと思っております。

会場9:吉田市長の美術館改革や熊谷市長のアジア誘致といったさまざまな改革を進めていくにあたって特に必要とされるのが、スタッフの方々を動かし巻き込んでいく力ではないかなと思っておりました。市長の権限を盾に「やりなさい」と言うだけでは上手くいかないと思いますし、部下の方々には歳上の方も多いと思います。そのようななかでも人々を巻き込み、動かしていく過程での工夫があれば伺いたいと思っております。

会場10:私も市長あるいは首長になりたいと思っております。お伺いしたいのは、国との向き合い方についてです。機関委任事務は現在ではなくなっているのかなとも思いつつ、それでもかなり、国のお仕事は現在でも来ているのではないかなと思います。

会場11:あすか会議には「リーダーになりたい」と願う若い方々や、すでにリーダーとなった若い方々が集まっております。しがらみを作らないために選挙で工夫されたことを教えてください。また、若くして市長になろうとお考えになったときに、「失敗しても後戻りできず、職を失うリスクがある」といったお考えもあったのかなと思うのですが、そういったリスクをどのように考えていましたか。

会場12:私は現在、関西の政令指定都市で、監査に関する専門職として任期付職員となっております公認会計士です。質問というよりは提言です。新規採用した外部人材のサポート役として、組織内部に市長と同じ目線で考えることができる優秀な人材を配置していただくのが成功の秘訣になるのではと考えております。

会場13:数々の改革を目指してこられたなかで失敗した点を教えてください。

宮城:ありがとうございます。たくさんご質問をいただきました。では熊谷市長から。

リスクを心配せず、好きなことをやれば、結果はついてくる(熊谷)

熊谷:まず国との対話についてですが、非常に大事なことが一つあると思っています。現在、地方分権の議論で注目されているのは要求の部分ばかりです。要求をするのであれば自分たちで始末をつける覚悟もなければいけない。責任と覚悟を持っていない限り、本当の意味での地方分権は成り立ちません。今、「地方分権だ」と仰っている方々の半分はそれができていないように感じます。

リスクのお話についてですが、それについて考えていると、結局のところ今の世界でできるものがなくなってしまうと思います。私としては「リスクを心配せず、もう好きなことをやろう。結果はあとで返ってくるものだから」という気持ちです。この世界にいると、本当にそういう感じがします。

それと失敗についてですが、何についても私がしゃべると市の方針ということになります。にも関わらず、固まりきっていないことや公にしてはいけないことを就任当初にぽろっと言ってしまい、職員に迷惑をかけてしまったことがあります。それ以降、情報管理もしくは対外的なお話というものをある程度意識するようになりました。

人々を巻き込む方法ですが…、これについては我々も若いですし、あまり工夫はできていないと思いますね。ですからとにかく「やりたいんだ」という思いをぶつける。そのなかで「こいつは仕方がないな」と年配の方に思っていただくような、そんなやり方が今はすべてだと思います。

宮城:ありがとうございました。では吉田市長。

若手首長のネットワークを作っていきたい(吉田)

吉田:まずスタッフや職員をどのように巻き込むのかというお話ですが、やはりミーティングの数を増やすとか、そのようなレベルです。上から目線でやれと言っても動きませんし、とにかく分かり合えるところまで膝を付き合わせていく。そうでないとなかなか進まないと思います。それができなければ辞めていきますので。

国との関係ですが、特に横須賀は自衛隊や米海軍の基地を抱えています。ですからそちらについては慎重にならざるを得ない部分があります。やはり国と上手く協調するところは協調しなければいけない。当然、はっきりと物を申す必要がある部分もたくさんあります。その意味でも、今後は若手首長同士でネットワークなどを作っていきたいと思っています。

しがらみをつくらない工夫についてですが、私は駅前などでチラシ配りをしたり演説をしたりしてきました。ただその一方で、すべてのしがらみが悪だとは思っていないんです。やはりまだいろいろな方々の意見を聞かなければならない世代です。「しがらみを断ち切る」、あるいは「しがらみがあってもやるんだ」という決断力こそ大事ではないかと思います。しがらみ自体については、あまり悪としてとらえないほうが良いと思います。

職を失うリスクについては「まあ、なんとかなるんじゃないかな」と思っています(笑)。
監査のお話ですが、今はやはりコンプライアンスが強く求められている時代ですから公認会計士さんや弁護士さんが監査に携わるのは非常に重要だと思っています。そういう意味で、いただきましたご提言もぜひ参考にさせていただきたいと感じました。

最後に、失敗したことについて。これはもうたくさんあり過ぎて大変です。最近ですと私がお願いをした局長さんに辞職していただかなければならないようなことがありまして…人事にまつわる失敗はやはり気持ち的にもすごく重くなります。

宮城:ありがとうございます。さて、今日のセッションで皆さまに意識していただきたかったのは、両市長と一緒になって政治に関わっていくというスタンスでした。ある意味で「関わることができないほど遠くの存在」といった感覚でとらえられがちな政治を、今日は身近に感じていただけたような気がしております。「このセッションで出てきた提言よりもさらに良いアイディアを自分は持っている」と感じた方もいらっしゃると思います。リアルに考え、行動していくことを意識していただく契機になっていればと願っております。

それでは最後、両市長にそれぞれ10秒ほど使っていただきまして、会場の皆さまに向けたメッセージをいただきたいと思います。お願い致します。

熊谷:今日はありがとうございます。何かありましたらフェイスブックでもツイッターでもご連絡をいただきたいと思います。ご質問にもお答えしますし、提言提案大募集です。すべての方にお返事します。よろしくお願いします。本日は誠にありがとうございました(会場拍手)。

吉田:横須賀は千葉に負けず大変良いところですので(会場笑)、一度遊びに来てください。そして将来は住まいを構えていただければと思います。よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました(会場拍手)。

宮城:はい。皆さま、本日は誠にありがとうございました(会場拍手)。

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