「ドバイでは、スイカ1個がなんと3万円で売れるのです」「世界の経済人が関心を抱いているのは、1に環境、2に貧困、3に食料・エネルギー問題」「今、お金を持っているのは、資源があって技術のない国。日本の眠っている技術を英語で世界に売り出すのです」――。あすか会議2008「政治」には、ビジネス経験を有する政治家として浅尾慶一郎、田村耕太郎・両参議院議員が登壇。政治とビジネスの垣を越え、日本に活力をもたらす羅針盤を提示した。(文中敬称略、写真提供:フォトクリエイト)
ビジネス経験を有する稀な政治家として
まず、会場の皆さんに質問ですが、国会でビジネス出身の議員の割合はどの程度だと思われますか。――答えは、衆・参議院とも1割強です。つまり、本日は、政治家の中では数少ないビジネスに精通された方をパネリストにお招きしたわけです。ではまず、田村先生、自己紹介と共に、特に政務官時代どんな仕事をなさっていたのかを教えてください。
田村:早稲田大学、慶応大学大学院で学んだ後、山一證券に入社しました。デューク大学ロースクール、イェール大学大学院へ留学・帰国の後に会社を辞め、大阪日々新聞社の社長となりました。2002年に鳥取選挙区から初当選を果たし、2006年には政務官として、安倍政権の目玉であった「再チャレンジ」、私の専門分野である「金融」、そして「経済財政」の分野で活動しました。金融分野では、総合取引所の設立や銀行と証券の相互乗入れを推進する「金融商品取引法」の立案に向けた活動や、内閣府と金融庁において「日本版政府系ファンド(SWFソブリンウェルスファンド)」設立に向けた活動もしました。
「経済財政」の中核は「経済財政諮問会議」ですが、安全保障・外交・社会保障・経済・金融の諸問題を扱う、全省庁に関わる政府の基本方針を定める機関ですので、政策が決まっていく課程での主要閣僚と民間議員との侃々諤々(かんかんがくがく)の論議に参加していました。その議論の中で学べたことは、政策決定のプロセスやどう政策を実行していくのかという点とともに、政治の泥臭い部分で、例えば政治家はどのようにすると外されるのか、どこまでなら戦っていいのか、といったことが実は勉強になりました。小泉・安倍政権というのは、官邸機能を強化して内閣府の総合調整・統率力を高めるところに力点を置いていましたので、安倍内閣下の諮問機関、特に末期のそれは様々なことができて、とても面白かったですね。現政権では経済財政と金融は切り離されてしまったのですが、それは私のせいだと思っています(笑)。
浅尾先生は先日マレーシアでの東アジア経済フォーラムに招待されたそうですが、経済フォーラムに政治家が呼ばれるのは珍しいと思いますが、どんな話をされましたか。自己紹介とともにお願いします。
浅尾:私は日本興業銀行入行後、スタンフォード大学でMBA(経営学修士号)を取得し、帰国後、参議院議員となりました。民主党のネクストキャビネット(次の内閣)の大臣を務めていますが、世界中から各界のトップが集う「ダボス会議」を主催する世界経済フォーラム(WEF)から、世界の若手リーダーとして2005年に「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出いただいています。
「自分たちはこうする」と言える国に
以後、世界各地で開催されるWEFの会議に、私はなるべく行くようにしていますが、そこで私たちが期待されていることは「日本がいかに元気を出すか」ということです。例えば、今回私が参加したパネルディスカッションは安全保障問題に関わるものでしたが、米国が東アジアにおける安全保障上の影響力を減らしていくだろう中で、どう対応していくか、というお題に対する答えとして、米国が減らすことを前提とした上で、「減らさないで」というだけでなく、「日本が何をするか」ということを期待しています。つまり、日本が日本なりにどういった答えを出すかが問われています。日本から他国に「これをしてほしい」はたくさん言えるのでしょうが、諸外国から求められているのは、外の変数がどうであろうと日本がどうするか、目的の実現のためどうすべきか、という答えを出すことです。その意味では、日本の冨を増やすために、田村さんの唱える政府系ファンドの構想は大切だと思っています。
世界から日本を見たとき、外交や軍事もありますが、依然、経済面で果たす力は大きい。経済政策やビジネスをどう盛り上げるかということに特に力を入れておられるお二人からみて、日本の政治家は本当にビジネスの要諦が分かっていると思われますか。
浅尾:政治家と官僚を含めた政治の世界では、ともすればビジネスマインドより、役所や政治家のそれぞれの論理に縛られてしまう場面があることは否めません。役所ならば組織の面子、政治家ならば個々の面子や選挙区の利害といったものが、ビジネスの合理的な判断を超えることがありますね。本来の目的を定め、その達成のために取るべき道筋を選択するのが正しいことだと思いますが、往々にしてそれができない場面があります。役所のそれまで積み上げてきた論理を変えることは役所のメンツを潰すことですし、あんまり生意気なことを言っていると動きづらいといったこともありますから。
政治家はビジネスの振興という理念を持って進めていらっしゃると思いますが、実際の政策決定課程では違う論理が働くということがあるのでしょうか。
田村:確かにビジネスの振興とは逆の方向に動く時もあります。例えば、今自民党では、“鎖国論”のような発想が出ることがあり、私は心配しています。消費者金融の金利規制問題と絡んで消費者庁をつくろうという話が出ていますが、官庁に権限を与え過ぎるとビジネスの足を引っ張りかねないと懸念しています。また、空港会社への外資規制問題やTCIがJパワーへの出資を増やそうとした際の党内の議論では、「外国人には一切株をもってもらわなくてよい」とか、中国の餃子問題のときには「中国からの輸入を一切とめてしまえ」などという意見も出て、「米とサツマイモで暮らせというのか」とびっくりしたものです(会場笑)。与党内での議論において、「ビジネスの世界でオープン、グローバルに競争を『させて』、そこで頑張っている人には成果を『与える』」という話をしていたところ、たまたま来日していた中国人がこれを聞いて、そのコントロールぶりに「共産主義的だ」と言ったという話もあります(会場笑)。
政策決定過程において、自分たちの政策に反対しそうな政治家の都合のよくない日に会議を開くなんてことを聞いたことがありますが、ウソはつかないが、本当のことは言わない、といういわゆる不作為はあると思います。政府系ファンドの議論では、邪魔はしないけれど協力しないといったスタンスもみられました。
利害や業界の枠を超えた意見の収集が課題
政治家は官僚と意見を戦わせて政策決定する課程で、対抗策としても民間の声を聞くことが大切だと思いますが、お二人はどのようにビジネス界の声を集めていますか。
浅尾:昔からの知り合いとの話や勉強会への参加などから情報を得るようにしていますが、特に、ビジネスと一口に言っても、オーナー経営者や実務を担うサラリーマンなど、様々な方と情報交換することを大事にしています。実は、官僚もビジネス界の人との情報交換はしていますが、どの省庁も自分の監督下にある業界関係の声しかきかないので、普通の人の意見が入らないのが、一番の問題点ではないでしょうか。いろんな人といろんなレベルでフラットに意見交換していくことが必要だと思います。
話が少し横にそれますが、政治は「ゲームの理論」みたいなところがあるので、ある政党が何か方向を打ち出すと、別の党はその反対に進んでいきます。民主党は、構造改革の土俵を小泉さんにとられてしまったために、違う政策を取ろうとしたのですが、今度は自民党が同じ方向に来てしまいました。今は与野党揃ってアンチ構造改革となっていますが、これでは有権者に同じような選択肢しか提示されないことになります。自分がどうしたいかという発想を持っている人に対して選択肢を与えることが今政治で求められていると思います。
選択肢が提示できないのは、ビジネス出身の人が与党や政府に少ないことも原因でしょうか。
田村:ビジネスの声を聞かせるという意味では、大企業の代弁の保護主義的な声は入っている。例えば三角合併を許すかどうかという問題の際は、製造業が強烈に反対しました。結果、彼らが出てきた意見は、「サービス業は入れてもよい」というもの。ビジネス界の意見は曲がった、というか危うい形で入っており、その意見を自民党が体現しようとしているのは問題です。大企業だけでなく、中小企業や消費者の声を届けるのが私たちの仕事だと考えています。
消費者の声を政治家に届けるのは実際にはハードルが高いように感じますが、我々ビジネスパーソンが声を届けたいという時にはどんな方法がありますか。
浅尾:内容次第ですね。交通違反を揉み消して、とかは無理ですが(会場笑)。これが出来ると雇用にプラスになるとか、日本の経済成長に役立つとか、そういう内容ならいつでもウェルカムです。もう少し言えば、思い付きではなく、現状の法律と照らしたとき、この条文がネックになっている、といった具体的な話だと取り組みやすいです。ビジネスパーソンとして状況分析をしっかりした上で提言いただけると、スピードアップに繋がります。
やみくもにお願いするのではなく、質問書を持参する位は必要ということですね。田村さんの場合は、若手のビジネスパーソンの声を聞く機会はありますか。
田村:私は、党・政府で金融問題の仕事をしています。金融庁は「摘発型」の行政といわれていますが、行政とはアクセルとブレーキの調整が大切なので、今はアクセルの時期だとお願いしてきています。その際に一番欠けていたのが、金融庁と民間企業とのコミュニケーションでした。護送船団方式の時代のやりかたを踏襲しており、官僚は「ドアはオープンにしていますから、いつでも入ってもらえますよ」と言っていますが、果たして本当にいつでも入ってきているのでしょうか。
例えば、SEC(米国証券取引委員会)では、金融機関に机も持っていて、毎日一緒に話したり食事をしたり、日本流に考えるとグレーゾーンにも見えますが、自ら情報を得ようとしています。私は、「ドア開けて待ってるという態度もいいけど、出かけて行きましょうよ」と言っていて、そうしたコミュニケーションの場の設営をしています。金融機関の幹部、中堅、若手と分けて、金融庁とのコミュニケーションが取れる場を作ることで相互不信を解く枠組みづくりをしており、今後もコツコツ続けていこうと思っています。
あと私はいろいろな会社に行くのが好きなので、よく訪問します。社長室とか、社内のレイアウトとか、家具の使い方、かかっている絵なども見るのが好きで、そうした観察をしながら皆さんの意見を聞いています。浅尾先生が言われたように、レポートなり提言書をきちんとまとめてくれれば確かに有り難いですね。
中央頼みに限界、地方の経済的自立を目指して
地方と東京の格差についてはよく問題視されますが、お二人はどう考えていらっしゃいますか。政治では何ができるのでしょうか。
田村:答えになるか分かりませんが、私は今や地方自治体が国からお金をもらう時代ではなくなってきたと思っています。少しでも増やそうと政府系ファンドに取り組んでいるくらいですから、もはや国にお金なんてありません。要は、地方の自助努力が大切なのです。私が選挙区の鳥取で一所懸命やっていることの一つに、鳥取の梨やスイカをドバイで売る、という活動があります。ドバイでは、スイカ1個がなんと3万円で売れるのです。鳥取産の果物を、あちらの王族に進呈しました。そしたら、テレビで紹介してくれ、皆が買ったというわけです。これは、原油高によって潤っている国にモノを売ろうという発想です。ドバイでは、“ミスユニバース・ラクダ版”をやっているのですが、一等になったラクダの飼い主には賞金として、なんと10億円(1000万ドル)が払われるのです。とんでもない金銭感覚です。そこからどうお金をもってくるかが私の仕事です(笑)。
水が貴重品であるあの地では果物で水分を摂っているのですが、普通は糖度11のところ、鳥取のスイカは今年は14度と、日本新記録、世界でいちばん甘いスイカが作れました。こう見ていきますと、日本の農業には大きなチャンスがあります。ソニーやトヨタになれるということです。中国やインドでも売れますが、富裕層がいて関税が掛からないフリーポートでいちばん近い国がドバイということなのです。果物を買うだけでなく、「一緒に、砂漠で農業やりたい」という申し出もありました。そのノウハウをいちばん持っているのが鳥取砂丘での経験がある鳥取県です。果物などの栽培技術、生鮮食料品を氷温で保存する技術、建物や街の緑化技術なども、パッケージしてドバイに売ろうと思っています。彼らは鳥取の技術を欲しがっているのです。日本全国でも、地方の大学や企業が持っている技術を売っていけるはずです。環境、農業などで世界が欲しがるものがたくさんあります、宝の山なのです。これまでは、貧しい国に対して支援の形で提供していたものを、今度は裕福な国に売ることで、経済価値をもちます。
日本の眠っている技術を英語で世界に売り出すのです。世界を見渡すと、技術を持っていない国が、今、おカネをもっています。私は「鳥取は中央に売り込む時代ではなく、世界、なかでも中東とか東南アジアとかに売り込む時代が来つつある」と言っています。それだけで、今の格差がなくなるとは思いませんが、やれることをやっていこうよ、と言っているのです。ドバイは、野菜などインド・パキスタンから輸入していますが、危ない農薬が問題になっているようで「スイカが3万円でもいい。農薬で病気になって医療費がかかることを考えれば、安いもの」とまで言っています(会場笑)。
ドバイやアブダビで日本人学校を作ろうという話もあります。ハーバードが初めて4年制の分校を作りますし、オックスフォードも。あちらでカネを出すから日本の学校を作ろうということなのですが、これに文句をいっているのは、実は文部科学省です。「日本の教育が劣化する」と。数学の勉強に強い「公文を入れよう」とすると、これをまた文部科学省が反対する。私は日本のコンテンツを海外に広めたいと考えていますので、献金とかがなくても(笑)自前でがんばります。
浅尾:世界の経済人が今関心を持っているのは、1に環境、2に貧困、3に食料・エネルギー問題です。今一番おカネが回っているところは資源国ですから、そこが持っていないものを持っていくのは有効でしょう。その意味で、私も日本の農業に可能性があると思っています。
農業に関しては、私は農地法をそろそろ改正するべき時期に来ていると思います。農地を誰もが買えるようにすべきです。人口が減るなかで、農業人口も減り続けていますが、優れた技術を持つ農業者が、空いた農地を借りてでも付加価値が高い農産物を生産し、国内外へ出していく、そんな動きを後押ししたいと考えています。
地方の経済的自立という話ですが、特に地方の役人などにまだまだみられる、国に依存して中央からカネを貰ってくるという意識はどうすれば変わるのでしょうか。
浅尾:一例を挙げましょう。葉山町(神奈川県)の町長は、あまり霞ヶ関に行かないそうです。一般的に、町長さんたちは、10日は町、県庁所在地で10日、東京で10日を過ごすらしいのですが、地方の町長の方が赤坂のお店に詳しいそうです(会場笑)。赤坂は、陳情のカネでもっているという話さえあります。それは、店には悪いですが、冷静に考えると無駄じゃありませんか。地方で財源を集められるようにした上で、独立したほうがいいと思います。財源が東京に偏っているという問題があるので、最初は財源調整が必要でしょうから、消費税か所得税か、地域偏在性のない財源を地方に渡していく必要があるでしょう。
あわせて、地方の県庁職員は地方にいけばいくほど民間企業より給与が高い点も問題です。自治体で財源がない場合も国家公務員の給与水準までは地方交付税で賄えるためです。いま民間の賃金は沖縄県が一番安いのですが、沖縄県庁の役人は民間の倍の給与をもらっています。よって、一番優秀だといわれる人を県が採用できる、それを国が支える仕組みになっているのです。沖縄県が優れた人を採りたいのなら、県の人の税金で覚悟をもって高い給料を払えばいいのです。今のように、黙っていたら国から給与が来るようなシステムでは、優秀な人がどうしても中央寄りになってしまうのではないでしょうか。
国も企業も“経営者”が悪ければダメになる
「志」をもつという意味ではビジネスも政治も同じところはあるのでしょうが、議員に立候補を決意したきっかけは何でしたか。
浅尾:昔から政治に関心はありましたが、きっかけがなかなかありませんでした。留学から帰った際に、ベンチャーを立ち上げるか、政治家になるか悩みました。遊びに行く途中ガソリンスタンドで給油と洗車をしているときに新聞を読んだ際、当時の新進党(その後合併して民主党に)が候補者を募集しており、そのとき思いついたのです。悩みましたが、ある友人が「やってだめなら、そのあとの仕事はどうにでもなる」と言ってくれました。自分でもそう思えたので飛び込みました。
田村:私もアメリカに居る時に思いつきました。政治家は、縁者・家族のなかに一人もいないので、好きも嫌いもなかったです。バブル世代ですし、ビジネスのほうが面白いと思っており、政治なんて放っておいても経済はうまくいくと考えていました。ところが、留学した際に、日本の住専問題などがクローズアップされており、外から日本を見て、日本を会社に例えるなら経営者(政治)がまずいと思ったのです。(政治家を)入れ替えなきゃいけないと。海外で坂本龍馬とか読んでいるとヤバイですよ。「おれも、龍馬のように」と思ってしまいますから。私がいた山一証券は良い会社で、帰国したその日に「帰ってきたんでやめます」と言いました。理由は?と聞かれましたので「政治家になります」。これでは、どうしようもない。ライバルや外資系に行くのなら(留学費用を)払ってもらう、となるのでしょうが、国に帰って国を良くするというのであれば、これは病気みたいなものと思ったのでしょうか、頑張れよと言って辞めさせてくれました。
お二人とも本日の参加者の多くと同じくMBAの課程で学ばれた経験をお持ちですが、MBAのスキルは政治の世界でどのくらい使えるのでしょうか。
浅尾:スキルそのものより、MBAとかビジネススクールで身につける分析能力、現状把握して課題を発見する能力が大切です。習った会計知識が役立つかというと、直接的には役に立ちません。いちばん役に立つのは、問題点はどこか、解決策の選択肢は何かという考え方。目的を決めたら、それに向かってどう進んでいくかというアプローチが役に立つのです。
田村さんは政治家として官僚と渡り合っていく際に、経営者としての手法を使った、ということはありますか
田村:可愛げ、とでも言いましょうか。MBAに行きますと、(エリートとして)キレキレになってしまいますよね。官僚もキレキレですので、キレキレのひとがキレキレを見ると対抗心が湧く。そういう人でも、私みたいなのを見ると、「あいつは、まぁいいか」となる。上からも下からも敵を作らないことが大事です。同じことを言っていても、言う人によって捉えられ方が違うというところがあります。ビシッと決まった人が厳しいことを言うと、格好いいかもしれないし、そういうスタイルが大事なときもありますが、私がこんな派手な格好をしているのは、まぁ、好きだからやっているのですけれど(笑い)、これによって賢く見えないことが得しているようです。
MBAとかロースクールで一番身に着いたのは、追い込みの態度です。会社経営でも、政治でも、体力が要りますし、ネゴシエーションやプレゼンテーションのスキルは身につけたほうがいいと思います。また、堀さん(グロービス代表)の志向する「授業を英語でやる」ことは素晴らしいと思います。どんな仕事でも英語は話せるほうがいい。政治家で国内で偉そうにしている人が、外国人が来て英語で話されると急にチワワみたいになっちゃう人がいます(笑い)。日本国内で縮小するパイを奪い合うのもいいが、世界には成長セクターがあるのです。そういうところで、日本の企業が戦えるようになればいい。
経営者でMBAもお持ちの田村さんが、ビジネスでなく政治の世界でやりたいことは何でしょうか。ステップアップしたいとか、社会に貢献したいということですか?
田村:カネの面だけでいえば、ビジネスの方が割がいいかもしれません。ビジネスをやっていると痛感しますが、いまは政治家や官僚が税や予算の配分を決めていますが、日本がここまで困ってくると、そこに無関心ではいられなくなります。経済の舵取りを行う人がヘンなことをやったら、一発で企業の業績は変わってしまうのです。その意味で、皆さんにも政治へのさまざまな関与の仕方を考えて欲しいと思います。
シンガポールでは、政治家が優秀で給与が世界一高い。一番いい業界と合わせているからだそうです。ただ彼らは3~4期やって辞めます。政治家の仕事がハードであることと、3~4期もやると民間などから引く手あまたになるためです。私もそれに刺激を受けていまして、たとえ落選して今の仕事を取り上げられても食べていけるように、バリューアップはしておこうと思っています。例えば政府系ファンドの設計という仕事は、金融・財政・政治・年金の側面をトータルとして分かっていないとやっていけない。マーケットに強い人は政治や財政が分かってないし、官僚は財政は分かっているが、マーケットがわかっていない。政治家は政治のことは分かっていると思うが、財政・マーケットが分かってない。このように各分野の境界線で自分のユニークなポジションを作っていけるこの仕事は、独自のポジションを作れるという意味で大変魅力があります。
私が金融問題に力を入れているのは、一つには、政治家をクビになっても必要とされる人間になれるということ、そしてもう一つは、人口減少の中で日本の活力を上げるには金融しかないと思っているためです。政治家として、大きな可能性のあることに携わることができ、本当に有難く思っています。
浅尾:私は「誰もが自己実現、挑戦できる社会を作っていきたい」という思いは最初から変わっていません。今、私が挑戦したいのは、変わっていると思われるかもしれませんけど、「人工光合成」プロジェクトです。植物が太陽エネルギーを使って光合成しているメカニズム(CO2を吸収し酸素を放出する)を解明して、植物の光合成の100倍の効率で人工的に行うことができれば、地球温暖化問題は解決できる上、ブドウ糖からアルコールを生成してエネルギーを生み、エネルギー産出国となってエネルギー問題まで解決できる。今後どのくらいの科学者とカネを注ぎ込むと開発できるか、研究を始めています。光合成の前工程では、水を酸素と水素に分解するのですが、この水素を使う燃料電池ができれば、ガソリンを買わなくても自動車は走ります。実現できたら大変壮大な話で、相当面白いと思うのです。アポロ計画の真似をして宇宙計画をやるよりも、日本の技術で世界に先駆けてできることはないか、そういうことを考えたいのです。