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「創造」ネットベンチャーの経営者に聞く~次なる“創造”を生み出す源泉~

投稿日:2008/07/18更新日:2019/04/09

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あすか会議2008最初のセッションは、「ネットベンチャーの経営者に聞く~次なる“創造”を生み出す源泉~」と題し、「@cosme」「ゴルフダイジェスト・オンライン」「HOME’S」といった著名サイトを立ち上げた起業家が登壇。単一サイトのヒットに留まらず、複数の事業を構造的に捉えながら組成し、中長期的な視野で会社を育んできた取り組みについて語った。(文中敬称略、写真提供:フォトクリエイト)

@cosme―ネットのクチコミデータ活かし、成長

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あすか会議はこれで4回目、私は昨年から参加しているので2回目ですが、参加者の皆さんの熱気に圧倒されています。ITベンチャーへの投資に携わってきた者としては、事業創造から、株式公開、そして次なる展開の創出までを、ステップバイステップで着実に遂げてきたお三方の話を聞けることは大変に貴重な機会と嬉しく思っています。ではまずは自己紹介を兼ね、会社概要や今後の方向性について聞かせてください。

山田:「@cosme」という、化粧品に関するクチコミ情報を集積したサイトを中心に事業展開しています。生活者のクチコミを商品評価データベースとして蓄積し、その内容を化粧品メーカーと生活者の双方にフィードバックするものです。中立的な立場から情報提供をすることで、生活者起点の市場形成に寄与していきたいと考えています。そうした願いから、創業当時より、「化粧品メーカーと生活者をつなぐエージェント」を標榜してきました。

サイト規模は現在、月間で2億ページビュー、ユニークユーザー(訪問者)数が250万人程度です。最近ではモバイルからのアクセスが増えており、パソコンと携帯電話の比率は6対4ぐらいです。「@cosme会員」と呼ぶ登録ユーザーは105万人に達しています。男女比率は99対1と、圧倒的に女性が多いのですが、人数で言えば男性も1万人超が加入してくださっています。平均年齢は28歳、モバイルユーザーだけで集計すると、この平均年齢は5歳程度、下がってきますが、いわゆるF1層が中心の“美的好奇心旺盛なOL層”による、美容・化粧品ポータルサイトになっています。

サービスの基軸となる商品データ登録数は15万件。月間1000~2000件というペースで増加しており、デパート、ドラッグストア、通販など国内で目にする化粧品は、ほぼ網羅しているといってよいと思います。また、これら商品データに紐づくクチコミ件数は600万件に達します。1日に3000件ほどのクチコミが投稿されるのですが、この内容の信頼性がサービスの核となるため、スタッフが24時間体制で内容確認をしています。

インターネット上に化粧品の情報プラットフォームを作りたいという思いで運営しており、それは、サイトを大きくしたいというよりは、生活者の声を業界に還元したいという気持ちに基づいています。従って、私どものデータベースに蓄積されたクチコミ情報は、「Yahoo!BEAUTY」、「MSNビューティスタイル」、「楽天woman」など多くのサイトにも提供しています。より沢山の情報が集まる仕組みを作り、より多くの方に見ていただきたい。競合を作るのではなく、化粧品業界に関わる皆さんと共に成長させていただきたい、という考え方が基盤にあります。

事業としての興りや、今後の展開についても簡単にご説明ください。

山田:アイスタイルの設立は1999年7月。前身は、私自身が化粧品メーカーで商品開発に携わっていた際、個人的に発行していたメールマガジンです。発行回を重ねるに連れて、読者から非常に有益な情報が送られてくるようになり、「この情報を蓄積して発信すれば生活者の役に立つだけではなく、化粧品メーカーにとっても無視できない存在になるだろう」と考えたことがきっかけになりました。

「@cosme」というコミュニティに集まる価値を、私どもでは、大きく三つに分けて捉えています。それが、「(多くの人が集まるという)アクセス数」、「(クチコミや商品の購買履歴といった)データ」、「(コミュニティに集まる人々の)購買力」です。これらを材料に、業界に集まる様々なプレイヤーに向けて各種の事業を構築してきました。

アイスタイルグループは現在、関連会社を含めた5社からなります。生活者からクチコミ情報を集積し、化粧品メーカーに対してマーケティングデータや、店頭の販売支援ツールなどを提供しているのが、アイスタイル。Eコマース(電子商取引)を進めているのが、コスメ・コム。これに対してリアルの店舗を構えるのが、コスメネクストです。さらに、ネットワーク事業やクロスメディアを展開するアイメディアドライブ、女性に特化した広告代理店のフラウディア・コミュニケーションズがあり、この2社は化粧品メーカーに向けてサービス提供をしています。また最近では、美容業界に特化した人材サイト「@cosme career」も開設しました。

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今、最も力を注いでいるのは、リアル店舗の拡大です。1号店の「@cosme store ルミネエスト新宿店」は、月間の来店者数が5万人、売上が4000万~5000万円と、化粧品専門店としては、まずまずの規模となってきました。私たちのチャネルでは販売できない商品であっても、「@cosme」の人気ランキングに上がったものは全て棚に置いて、試用いただけることが特徴の一つです。そうした商品については、「伊勢丹で買えます」、「マツキヨにあります」などと案内を入れ、@cosme storeは、情報ハブとしての価値によって集客できる店舗になることを目指しています。

事業展開の構想については、以下の図をご覧いただくと分かりやすいのではないかと思います。「化粧品」から始まった事業領域を徐々に「美容」、「ライフスタイル」へと広げながら、それと併行し、チャネルを「ネット」から「リアル」、さらには「海外」にも拡大していくイメージです。

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直近の事例としては、「 STYLE Marche」があります。250万人からなる化粧品ユーザーにアンケートなどを取り、ライフスタイル提案型のサービスを提供していこうということで、出版社と提携して雑誌を創刊しました。海外展開としては昨年、上海の会社とコラボレーションして、「 BeauBeau.com」を開設しました。クチコミの集積が進んでいますので、ある商品に対して日本人はAと言っているが、中国人はBと言っているというように、より深いマーケティングデータの構築ができるようになると期待しています。

山田さんとは、1999年のアイスタイル設立時から知己があるのですが、当時から言っていらした構想を、そのまま一つひとつ確実に実現されてきた感じですね。

山田:化粧品業界という、既存市場に参入して行っていますので、ネットベンチャーとしては歩みの遅いほうだと思います。ただ、用いている技術や発想は新しくても、一緒に仕事をさせていただく方々は旧来の価値観や方法論を大切に動かれるわけですから、足並みを揃えることを重視してやってきました。

ゴルフダイジェスト・オンライン―ニッチな分野を徹底的に深堀り

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石坂:ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)は、その名のとおり、ゴルフに関連する領域で事業展開をしている会社です。私は、このとおりの見かけなので、「毎日、ゴルフばかりしているのでしょう」と言われてしまうのですが、これはゴルフ焼けではなくて、地黒です(会場笑)。ただ、趣味はご想像のとおり、ゴルフです。

GDOの設立は2000年。「インターネットを通じてゴルフの変革をリードする」、「気軽にゴルフを楽しめる環境をつくり、ゴルファーの活性化とゴルフ人口の拡大を目指す」ことをミッションに掲げてきました。山田さんのご説明にあった化粧品業界同様、ゴルフも古くからある業界です。アナログな世界観で物事が進むなかに、インターネットに代表される新しい技術や発想を持ち込めば、ゴルフに対する敷居を下げる、何らかの付加価値を創出できるのではないか、と考えました。実際、ここ2~3年で随分と変化が感じ取れるようになってきたと思っています。

私たちのビジネスを1枚にまとめると、以下のようになります。

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事業としては大別すると、一つめが「ゴルフ場予約」、二つめは「ゴルフ用品Eコマース」、つまり小売りですね、それから「ゴルフ総合メディア」、こちらはコンテンツ配信と、それに伴う広告事業ですが、これら三つを柱として立てています。

ただ、図にも示したように、これら三つの事業以外にも、「ゴルフ」というキーワードに関連する、あらゆることに挑戦してきました。ゴルフというニッチな分野に特化した中での総合展開、この分野においては、徹底的に深堀し、多角化するというビジネスモデルです。ベンチャー企業として、何か一つに集中しなければリソースが分散し、結局、どれも上手くいかない、という捉え方もあるとは思いますが、私たちはニッチな市場で戦う以上、幅広くトライアルをしながら展開していかなければ勝ち残れない、そんな課題意識を、8年前から持って、やってきています。図には、それらトライアルの結果として現段階まで生き残った活動を羅列してあります。

たとえば、メディア事業関連で言えば、雑誌とのタイアップやテレビ会社との子会社設立など、メディアミックス、クロスメディアといったことにも取り組んでいます。インターネットを起点に事業を始め、それが今現在でも最大のプラットフォームであり、チャネルではありますが、アイスタイル同様、私どももリアル店舗を出店しています。以前はゴルフ場や練習場に5坪程度の敷地を借りて小さな店舗を運営していましたが、現在は20余店舗の個店を全国に出店し、いわゆるクリック&モルタル戦略に出ています。それ以外にも、例えば10月にはニンテンドーDSに対応した、ゴルフゲームのソフトなども発売する予定です。

「メディア」という言葉の定義は、どんどん変わってきています。私たちは、こういうもの(と、図を示して)全てをメディアと捉え、その価値をいかにして大きくするかを考えてきました。価値を測る指標は幾つかあって、まずはサイトアクセス数。GDOで言えば、月間1.4億ページビュー、ユニークユーザー数で320万人、1人当たりの平均滞在時間が30分といった数字があり、そのうえに、どれだけの(ユーザーによる)活動、商取引があるかが実績として乗ってきます。例えばゴルフ場の予約実績や、Eコマースの売上などが、その構成要素です。ゴルフ場の予約は、いわば口銭商売ですが、250億円近い経済価値を生んでおり、それにEコマースなど合算すると360億円くらいの取引がサイト上で行われています。

図にも示しましたが、全ての事業展開に通ずる基盤として「マーケティング」、「システム」、「制作プロダクション」の存在があり、試行錯誤を繰り返したなりの“ノウハウ”は、この基盤部分にあるのではないかと考えています。まだ具体的な事例には発展していませんが、これらの効率化を進めながら、付加価値を作る仕組みを整えることで、多角化展開が、よりスムーズにいくと思っています。

リアル店舗など、多角化の方向性として山田さんのお話と共通するところが多いですね。ゴルフを切り口に、様々なビジネスに挑戦されてきたわけですが、今後はどのような展開を考えておられるのでしょうか。

石坂:三つあります。一つは、既存オペレーションの深堀り。これまでやってきたことをいかにして効率化、改善・改良していくかという、エンドレスとも言える取り組みです。二つめは、グローバル化。米国のNBAが中国に入っていってバスケットボールが中国で人気スポーツの一つとなったように、ゴルフのグローバル化は避けて通れない。タイガー・ウッズのような選手が中国から次々と出てくる日に備えて、GDOのビジネスモデルもグローバル化していかなければなりません。

三つめは、一つめに上げた「既存オペレーションの深堀り」と、イノベーションの両立です。社内でも日々、議論を重ねているのですが、今あるビジネスを磨き上げていくことと、かたや新たな創造を興すことは全く違う“筋肉”を要します。創業から8年を経た今、これをいかにして実現するかが次なるステップへのカギになると認識しています。

HOME’S―不動産情報から地域の情報へ

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井上:ネクストは、不動産のポータルサイト「 HOME’S」を中核に据えた会社です。最近は地域情報を集積する「 Lococom」にも注力しています。不動産市場は、建築、引越しなど広く捉えると100兆円規模に達すると言われ、これはGDPの2割を占めます。私たちは、その情報ハブとなることを目指しています。

私は、新卒で不動産業界に入ったのですが、「家を買うのって、人間の一生で一番の高い買い物の割には、情報不足で、セールストークにズルズルと押されて意思決定を迫られるものなんだなぁ」ということに衝撃を受けました。そして、「こうした不透明感、不満・不安を取り除きたい」と思った。それが22歳のときです。その後、4年間は業界で研鑽し、1997年、26歳のときにネクストを起業しました。2006年に東証マザーズに上場、現在、従業員数450名ほどの会社となりました。

売上の9割を占める「HOME’S」は、「楽天市場」や「ぐるなび」のように加盟店を増やし、顧客あたりの単価を上げていくという、情報掲載に対して課金するビジネスです。全国約9000店舗におよぶ不動産会社をネットワークし、そこから月平均で5万5000円程度の情報掲載料をいただいています。つまり、月商5億円程度は“座布団”として入ってくる。これをいかに大きくしていくかというストック型のビジネスモデルです。ちなみに約9000店舗というと、コンビニエンスストアで言えばローソンと同程度の規模になります。

サイトアクセス数は、月間2億ページビュー、ユニークユーザー数は500万~600万人。サイト上で取り扱っている物件数は賃貸から中古・新築の売買まで全て合算し、100万件程度です。

2008年3月期の売上高は74.3億円で営業利益が12.5億円。今期は、売上高95億円で営業利益16億円を見込んでいますが、競合他社を一気に引き離す施策を打つために、うち7億円程度は人件費や広告宣伝費などに追加投資をしていこうと考えています。起業から6~7年間は、伸び悩んだのですが、営業手法をプッシュ型からプル型に変更したことで加盟店舗数が増加し、収益が改善。今に至ります。

ビジネスを展開して来た方向性についても、ご紹介いただけますか。

井上:ネクストのバリューチェーンは、以下のように図示できます。

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縦軸には、「不動産を買う」、「借りる」、「家を建てる」、「リフォームする」というように、住まい・暮らしに関するニーズを取っています。一方、横軸には、不動産取引に至る段階を、「情報収集」から「契約」、「決済」など時系列に置いています。このマトリックスに対して、それぞれ合致するサービスを追加してきたわけです。最近では、楽天と協業して家具の販売を始めたり、先ほど少しご紹介したLococomにより、住環境の情報も入手可能にしています。

Lococomについて、もう少し詳しく紹介させてください。これは、個人会員向けのクローズドなSNS(Social Networking Service)と、誰もが見られるオープンな情報共有ページをシームレスにつないだサイトです。

「個人空間」と呼ぶSNSには、開設から1年半ほどを経て、現在35万人の会員がおり、地域ごとの情報交換や交流が行われています。SNSには、家計簿やスケジューラ、アルバムなどの機能も設置してあり、基本的には無償で使えます。従来のSNSは「人」と「趣味・嗜好」という二次元的なつながりで成立していましたが、Lococomは、そこに「地域」という軸を追加し、リアルの空間に密着した生活インフラに育てていきたいと考えています。

「地域空間」、「法人空間」と呼ぶオープンなページは個人・法人が様々な地域情報を自由に発信できるようになっています。「法人空間」は、飲食店、病院、クリーニング店、スーパーなど、様々な業態から書き込みが可能で、基本的には無料。“プレミアムツール”を使う際のみ月額5000円をいただいています。こちらは、Googleなどの検索エンジンに拾われますから、現在ユーザー数120万~130万人程度にまで拡大してきています。

住み替えなどを検討する際、人はその所在地域について詳しく知りたいと考えます。そのとき、既存のメディアで情報収集しようとすると、効率が悪い。しかし、LococomのようなCGM(Computer Generated Media)であれば、大量かつ多彩な内容が自動的に集約されています。

極端な話、LococomをHOME’Sのコンテンツへの誘導装置と考えれば、広告宣伝費の範疇で運営して元が取れてしまうわけです。ただ、そのうえで、プレミアムツールなどを利用する会員からの会費、トラフィック増加に伴う広告収入などにより、確実に収益化していきたいと考えています。

同じようにして、「働く」「学ぶ」「健康・医療」など、生活に密着した領域で人々に不平・不満・不便・不透明感のある業界を、一つひとつ変えていきたい。私の名前は「高い」、「志」と書くのですが、左脳で考えることを大切にしながらも、意思や信念を持って事業創造に臨んでいます。

長期的視野でサステイナブルな会社を創る

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ビジネススクールなどでは「選択と集中」の重要性が、これでもかというほどにすり込まれます。資金や人材など、経営資源の潤沢ではないベンチャー企業において、大手と戦っていくには確かに一点に集中せざるを得ないところがある。お三方の会社は、そうした重みを充分に捉えつつ、「次の一手」、「多角化」に向かうフェーズに立っています。集中と多角化のバランスをどのように取っているのかを、ご紹介いただけますか。

石坂:私は先にも述べたように、設立時からずっと多角化を意識してきました。これは簡単な発想で、ゴルフ業界という狭い市場で一つの事業モデルから始めて、うまくいかなければ、すぐに会社が立ち行かなくなってしまう。そこで会社の体力を見ながらも二、三の収益モデルを最初から同時に立ち上げるという考え方をとりました。

もちろん最初の3~4年は迷いも多々ありました。10人、20人という社員数しかなく、ただでさえ120%稼動くらいなわけですから、そういうリソースの少ないなかで、三つもの事業を本当に興していいのか、と。短期的に見れば答えは「否」だと思いますが、私は長い目で見たときに三つの事業が実現するであろう補完関係を信じて、「時間軸でいうと少しかかるけれど、最初から高い柱を組んでおこう、先々に成果が上がってくるから」と、なるべく焦らないようにしてやってきました。

そういう意味では、一昨年・去年あたりから、ようやく創業時にイメージしていた補完関係、相乗効果が生まれ、利益にはねかえるというところまで来た感じです。結果から見れば、一つがうまくいかないときにその他の事業が支えてくれたようなところがある。やっとそういう局面にきました。ここまで8年の歳月を要したわけですが、目先の条件に翻弄されず、時間軸を見ながら多角化なのか、集中なのかを考えていくことがポイントだろうと思います。

GDOは、傍から見ると、ゴルフというカテゴリーに圧倒的に「集中」されているわけですが、実際には3つの収益の柱があって、うまくバランスを取りながら成立させているということですね。

石坂:その通りです。共通点は「ゴルフ」だけで、「ゴルフ場予約」、「ゴルフ用品Eコマース」、「ゴルフ総合メディア」ともに、全く異なる事業です。「ゴルフ場予約」は、人海戦術のビジネスで、全国4カ所の営業所から営業担当が車で日々、走り回っていますし、Eコマースは流通業ですから、8億~10億円の在庫を管理する物流センターを運営しています。「メディア」も、また違ったノウハウを要します。“たかがゴルフ”だけれど、やっていることの中身はまるで違う。それらをいかにしてマネージするか、課題は多いです。

一方、ネクストは「HOME’S」に集中し、ゼロから収益を上げるところまで持ってきたわけですよね。我慢して、我慢して、黒字が出て初めてLococomを立ち上げた。伸び悩んでいる時期に、「ほかの事業を立ち上げたほうがよいのでは」といった迷いはなかったのですか。

井上:悩みはなかったですね。信念に突き動かされていたので、なるべくコストをかけずに、とは思いましたが、とにかくやれるところまでやる、という感じだった。頭が良い人なら、途中で撤退していたのではないかとは思いますが(笑)。

なにせ、起業から5年を経た2002年3月時点で、月商1500万円しかなかったのです。しかも、HOME’Sからの売上は27%だけ。あとは「システム構築をさせてください」とか、「ホームページを作らせてください」だとか、やれることは何でもやって、日銭稼ぎをしていました。

ただ、これは痛し痒しで、運転資金を稼ぐのに人的リソースを取られると、今度は肝心のHOME’Sの営業が手薄になるというジレンマに陥る。営業担当者がマンション内のインターネット回線の引き回しなんて仕事までしていたので、「なんとか稼いではいるものの、HOME’Sの加盟店は年間200しか増えない」なんて年が続いていました。そこで思い切って営業方針を変更し、社員の評価指標も加盟店の新規獲得件数に絞ったのです。「日銭は経営陣が稼ぐから」として初めて、ようやく成長路線に乗り、利益が顕在化してきたという流れです。

事業は漏斗の口から上がるときは集中して、一点突破させるべきだと思います。ただし、これはお金が回っていることが前提。自転車操業ではなく、運転資金が稼ぎ出されるようになって初めて、次の一手、多角化ということが考えられる立ち位置となるのだろうと思います。

私たちは貧乏ベンチャーだったので、2002年に楽天から2億円の出資を受けるまでは、資本金3000万円とか4000万円とかいう規模で細々とやっていました。借り入れもほとんどせず、手元キャッシュで回していた。だから時間がかかったのですが、これは、たまたまインターネット黎明期から発展期にかかるところだったから許された。もし、起業が5年遅かったら、競合に次々と追い抜かれていたと思います。

既存の業界慣習には尊敬を持って臨む

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アイスタイルは、いかがでしょうか。

山田:領域として「化粧品を深堀りする」というのは、私にとってはある種の信念のようなもので、業界特化については最初から決めていました。ただ、「あなたたちは広告代理店なの? リサーチ会社なの? それともインターネット通販の会社なの?」といったことは、よく聞かれました。私自身は、化粧品業界のマーケット構造の転換に一石を投じたいと思っていましたので、自分たちのビジネスの内容を、より複合的なものと捉えてやってきました。

そういった中で、ビジネスとして最初に軌道に乗ったのが広告およびマーケティングリサーチです。その後、Eコマース、小売店の販売支援などが立ち上がっていきました。最近になって、ようやく収益が複合化し、広告・マーケティングリサーチの売上構成比が5割程度にまで下がりました。

貧乏をしながらも、最初に描いたビジネスモデルは頑なに守ってきました。短期的に考えれば、アクセス数を材料に広告収入を得るのが最も簡単なマネタイズの手法であったとは思いますが、それをしてしまっては、生活者との間に信頼関係を構築できない。サイトを単なる宣伝媒体にしてしまった瞬間、公正中立なクチコミデータを元に、生活者と化粧品メーカーの間を橋渡ししていくというビジョンが達成できなくなってしまうと考えたのです。資金に苦労してもそこだけは譲らず、広告枠の門戸を開いたのは、サイトへの信頼性が充分になったと判断してからでした。

生活者との信頼関係だけではなく、業界との関係構築にも心を砕きました。最初は、「どこの馬の骨とも分からない」という見られ方をしていたと思いますし、実際、商品情報すら提供してもらえない時期が1年あまり続きました。しかし、サイトを支えてくれる生活者の数を強みに徐々に小さな穴が開き、ブランドの戦略的領域にも関わらせていただけるようになっていきました。その基盤のうえで、Eコマースへの突破口が開くというように、段階的に関係を紡いでいったわけです。

会場:“ネットベンチャー”というと新しい響きがするが、実際にはお三方とも古い慣習の残る業界に新たな方法論を持ち込み、取り組んで来られたことが、よく分かりました。ただ、山田さんのお話にもあったように、様々な抵抗もあったのではないかと思います。どのようにして乗り越えてきたか、もう少し詳しくお聞かせください。

山田:うまく乗り越えられたカギの一つは、アイスタイルには代表が2人いたこと。私は化粧品業界の出身、もう1人の代表はコンサルティング業界の出身なのですが、私は業界の内情をよく知っていて、彼は知らない。でも、背景が違うからこそ生まれる発想もあって、うまい形でアクセルとブレーキにして使い分けてやってきました。風穴を開けるスピードが速すぎても、遅すぎても、うまくいかなかったと思うのですが、二つの顔があり、二人が必要に応じて出て行ったことが、結果的には奏功したと考えています。

井上:先人に対する謙虚さを持って臨むことだと思います。可愛がってもらえるキャラクターになれないのであれば、山田さんの言われるように誰か矢表に立てる人を置いたほうがいいでしょうね。それから私たちはポリシーとして、インターネットにやる不動産業界の中抜きをしないことを最初から決めて、それを公言してきました。情報提供を本業に据えるのであって、不動産の実業には打って出ない。すみわけをはっきりとさせて、安心していただくことを大切にしてきました。不動産業界というのは、横のつながりの強いところなので、信頼感を醸成できてからは、むしろ助けていただくことのほうが多いです。

事業拡大に併せて「12人の使徒」を育成

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事業の多角化に応じて、人材の多様化も不可避と思います。求める人材要件は、どのように変遷してきたのでしょうか。また、育成については、どのように取り組んで来られたのでしょうか。

井上:それは、最も難しいところですね。今は、アルバイト社員なども含めて450人を超える組織ですが、わずか4年前は70名ぐらいでした。業績の動きなどから、年に100人とか150人というペースで人員が増加することは計画・予想していたので、4年前の時点で「自分の分身を12人作ろう」と決めました。私自身が450人とフェース・ツー・フェースのコミュニケーションを取ることは不可能だからです。

「12人」というのは、世界最古・最大組織であるキリスト教の十二使徒になぞらえただけですが、4年前から現場に口を出さず、任せ切りにするということをやってきたので、今は既存事業については私がいなくても、きちんと機能するようになっています。ただ、難しいのが新規事業。“産みの苦しみ”に入ると、チームを束ねる難易度が一気に上がります。

新規事業というのは、ぶっちゃけて言えば打率3割で大成功と私などは考えるのですが、取り組んでいる本人たちは100%成功してしかるべき、と思ってやっている。従って、うまくいきそうにない局面で、しっかりとしたマネジメントができなければ、チームメンバーのモチベーションを損ねてしまいます。

モチベーションを殺さないためには、とにかく徹底的にやらせるしかない。というより、日本という国自体が、もっとそういう考え方で動いたほうがいいと強く思っています。トライアンドエラーが人を育てるのだから、もっと失敗を奨励し、受け止めていったほうがいい。「打率3割って凄いじゃん」という国になれば、もっと世の中が活性化していくと思うのです。私自身だって、これまでの経験の中で、いくばくかの失敗はしているし、そこから学んでは、次に生かしてきたわけですから。

いま、社内で「日本一プロジェクト」と呼ぶ取り組みを始めていて、そのゴールは「日本一働きたい」と思ってもらえる会社となることなんです。より多くの方々から、「ネクストで働きたい」と行ってもらえるような組織を、5年かかろうと、10年かかろうと作っていく。「働きたいと思ってもらえる会社って、どんな会社?」という定義から入った、まだヨチヨチ歩きのプロジェクトなのですが、完遂していきます。

GDOでは、どのような組織、人材によって、ゴルフ場予約、Eコマースといった異なる事業を束ねているのでしょうか。

石坂:このテーマを簡潔に語るのは難しいのですが、最近、注目していることを幾つか。

一つは、先ほどお話しした「既存オペレーションの深堀りと、イノベーションの両立」についてです。GDOでは、既存オペレーションについては仕組み化が進み、スムーズな運営がなされるようになってきたのですが、それと引き換えにするようにして、新しいことにチャレンジする気概のようなものが薄まってきたように感じています。オペレーションを洗練させていく繊細さと、新しい事業を創造する、ある種の荒削りさとを、一つの組織の中でいかにして共存させるかということを今の課題と捉え、試行錯誤しています。

二つめは最近、経験したことの共有になりますが、GDOの執行委員会に、とある会社で社長職に就いていた方に入っていただいたのです。理屈ぬきに、これまでの経験や人柄から、組織にすっと溶け込んで、議論の次元を上げてくれている。特に、執行委員会がガラリと変わりましたね。こうした方が入ることによって、私自身のポジションの取り方というか、役割が変化することも体感できています。

最後は、英語。インターネットで、これだけの情報が入ってくる時代に英語が話せない、或いは苦手意識によって、得られる情報量が減ってしまっていることは、本当にもったいないと思うのです。日本人全体として、基本的なコミュニケーションスキルとしての語学力を伸ばしていかなければ、世界から取り残されてしまうと思う。ですから、人材や組織について、いろいろ考えるところはありますし、取り組みもしているのですが、最近は、「とにかく英語を勉強しろ」と、伝えています。

アイスタイルでは、いかがですか。

山田:私たちの会社では、規模がまだ小さなうちは、強い想いを持っていながらも、仕事の内容にうまく能力などが噛み合わず、辞めていってしまう人が少なからずいました。本来は、プロパーの社員を育成し、経営陣に加わってもらいたいと思いながらも、創業当時の無我夢中な時期に、そうした人材育成までは、充分には手がまわらなかった。今は、そこに問題意識をもって取り組んでいます。

経営陣に私以外に女性がいないことも残念に思っています。女性比率が99%というサイトを運営しているにも関わらず、男性の役員が「女性というものは・・・」と左脳で語るだけではなく、女性も登用して、右脳で考える部分も追加していきたい。今の日本では、女性の登用が叫ばれているにも関わらず、優秀な女性が生活環境の変化や子育てなどで一線から退かざるを得ない状況があります。私自身には子供がいないので、本当の意味でのロールモデルにはなりえませんが、折角、女性向けのサービスを提供している会社なのですから、女性が活躍できる会社のあり方を真剣に考えていきたいと思っています。

不調でも経営者が思う以上に社員は食い下がってくれる

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創業時、特にまだ業績が順調ではない時期の組織構築や、モチベーションマネジメントは、どのようにしてきたのですか。

山田:一番に心掛けたのは、自分たちの仕事が何を目的にしたものであるかを、繰り返し言うことです。目の前の仕事が単なるルーチンワークとなってしまわぬよう、誰の役に立とうとしているのかを共有し続けました。これは今でもそうですが、化粧品メーカーや生活者の参加するイベントを開催する際には、意識的に社員を連れ出し、参加された方の喜んでくださる顔を直接、見せるようにしています。仕事の成果を体感してもらうためです。

石坂さんのお話にもありましたが、ベンチャースピリットを維持し続け、社内から活発なアイデアが生まれ続けるようにすることは、とても難しい。いまの業績に安住してしまわないよう、私たちも日々、悩みながら試行錯誤をしています。その一つとして、例えば2~3年前から新規事業提案の場を作ろうとしてきました。最初にご紹介した求人サイト「@cosme career」は、社内のアイデアから生まれたプロジェクトです。

石坂:うまくいっていないときというのは、経営者が思っている以上に、社員のほうが冷静です。業績が伸び悩んだり、クレームなどのトラブルが発生したときに、「皆は大丈夫かな」と見に行くと、意外にケロッとしている。自身の問題として受け止め、対峙してくれる社員が多いです。火をたやさないように思いつく限りのことは、やっています。「今日は誕生日だね」と声をかけたり、「僕の誕生日は昨日です」なんて言われちゃったりもするのですが(会場笑)、そんな小さなことでも、皆がいくらかでもラクになるきっかけになれば、とは思っています。

井上:精神論になってしまいますが、社長の役割というのは、とにかくメンバーを鼓舞することだと思うんです。だから、どんなときにでも、自信に満ち溢れていること。自分から折れていってしまわないように、とは考えています。

社員は、経営者の一挙手一投足を見ています。何か、気持ちのブレを見つけると、それが組織全体を不安にさせてしまう。もちろん、根拠のない自信に溢れているだけではダメで、きちんと理論武装をして、自分に見えている将来像を言語化すること。あとは、そこに至るマイルストーンを、細かく刻んで提示することだと思います。目標に対して、1歩1歩、着実に近づいていっているのだということを、きちんと示すことですね。

ネクストの社内用語に「おもしろつらい」というものがあるのですが、厳しい状況下で下を向いていると悲壮になってくるので、「いやー、今日も、おもしろつらいな」と笑い飛ばす。「こんなに酷い状況を経験できるのって、世の中で俺たちぐらいだよな」なんて言いながら、一緒に前を向くことが大切なのだと思います。

会場:お三方ご自身の情熱が冷めることはないのでしょうか。モチベーションが下がることがあるとしたら、どのようにして再度、火を燃やしているのでしょう。

山田:私はまだ道なかばと考えているので、情熱が薄れることはありません。もちろん人間なので、バイオリズムの波はあります。テンションが低いときには、化粧品のデパートカウンターをまわって、一生活者になって、いろいろと買ってみる。そうすると、仕事目線から、生活者目線に徐々に変わる自分を感じます。そうやって原点に帰る時間、方法論を自分の中に作ることが大事だな、と感じています。

石坂:化粧品は買いやすいですが、井上さんが原点回帰しようと思うと(不動産を買わなければならないので)大変ですね(会場笑)。私は、感情の浮き沈みが激しいタイプで、「うちの会社は快進撃、世界一」と思った翌日に、「もうダメだ」と最悪の気分になったりするほどなのですが、その浮き沈みに耐えることも経営者の要件の一つと考えています。

井上:私自身の気持ちが冷えることはないですね。世のため人のためと信じて、自分自身のやりたいことをやっているので。ただ社員には、心が弱ったときのためにと思い、「酒と星と死」というキーワードを伝えています。「酒」を飲めばストレスは発散して翌日には元気になる。「星」は、客観的な視点から自分を見よう、という意味。何か悩みを抱えていても、星から地球を眺めるようにして地球の中の小さな島国の更に小さな自分の悩みを見つめると、「たいしたことではないな」と思えてくる。「死」は、今、この瞬間に死んでも悔いはない、という生き方をできているか、常に自分に問い続けるということです。

私自身、アップルCEOのスティーブ・ジョブス氏が母校で行った講演の言葉をパソコンのデスクトップにいつも表示しています。「今日が運命最後の日だとしても、今日の予定を行いたいと思えるか。Noが続くようであれば、生き方を変えなければいけない」。そうした真剣さで日々に対峙していれば、情熱がなえるということはないように思います。

世界平和から逆算して事業を想起

ここで、パネリストの皆さん同士、それぞれにご質問があればどうぞ。

石坂:どのようにしてビジネスのアイデア、インスピレーションを得ているのか。差し支えない範囲で、でも全部、隠さず教えてください(笑)。

井上:仮に「フォワード型」と「フィードバック型」があるとすると、私は完全なるフィードバック型です。まずゴールを設定し、そこからやるべきことを逆算していくタイプです。そのゴール設定が高ければ高いほど、無限のアイデアを考えられると思うのですが、私の場合、究極の目標は「世界平和」を築くことなんです。では、何をすれば世界平和を達成できるか、それもビジネスを通じて。そうやって逆算して考えます。

Lococomを作って、医療や教育に何か波及する効果を及ぼしたいと思ったのも、起点は世界平和。人が生まれ、年を重ね、老後にいたるまでに、どんなイベントがあるか、社会インフラとして何を必要とするかを考えていった結果です。そのなかで何に不満があるかを考えると、医療や教育といったキーワードが浮かんできた。それと既存事業のHOME’Sをいかにして連関させるかと考えていったときに、「住まい」と「医療」「教育」という、一見、何のつながりのないものの間に、「地域」というキーワードが想起されたのです。では「地域」をキーワードに、どのようなビジネスを立ち上げ、収益も生めるようにするのか、私はそんな流れで物事を考えています。

石坂:ご自身の頭で考える以外に、積極的にインプットなどもしているのですか。

井上:新聞や雑誌は、よく読みますし、人と会って議論することも大切にしています。まず志を口にしてしまってから、方法論を考え、実現させていくタイプなので、「俺、世界平和に取り組もうと思うんだ」、「それって、どうやるの?」、「いや、まだ考えていないんだけど、何か良い方法あるかな?」といった感じで(会場笑)、議論するわけです。

私にとって議論の場というのは非常に重要で、シャワーを浴びている時などに、この議論の内容と、新聞、雑誌などからインプットされた情報とが、ものすごい勢いでシナプスがつながるようにして統合されていく。

山田:私の場合は、化粧品業界で仕事をしていた際に感じたジレンマがビジネスを発想する起点となりました。生活者の視点が製品に反映されていないなぁと思ったのです。アンケート調査や座談会などは行うのですが、どちらかと言えば既に開発した製品について、“答え合わせ”をする感じ。質問したことに答えを得ても、それがリアルな声であるというふうには感じられませんでした。リアルの店舗を始めたのも、インターネットという仮想空間で得た声が、リアルのものとして商品の流通現場に反映されていく、その成功事例を自分たちで作らなければと考えたことが起点です。

こうした発想にあるのは、私が「趣味人間」であること。経営学を学んだことがあるわけではないですし、ましてや経営の経験があったわけでもない。ただ、一人の生活者として実現したいと思うことを一つひとつ叩き上げながらやってきた。好きな化粧品のことでなければ、こんなふうにはできなかったと思いますし、自分自身の火を絶やさないためにも、常にミーハーで、またストイックであり続けようと考えています。

同じ質問を私も考えていたので、石坂さんからもお答えいただけますか。

石坂:二つあります。一つは、私は不思議と飛行機の中では、ものすごく色々のことを考えられるんです。情報を吸収しやすく、発想が出てきやすい。ですから、こうした移動空間が自分にとってはインプット・アウトプットの場です。

もう一つは、ゴルフとは違う世界にあるものをベンチマークすること。例えば仕事で外出した帰りは銀座や丸の内あたりを、フラフラと散策しますし、今回、この星野リゾートも、このあと見て回ろうと思っています。そうやって意識的に、頭に入ってくるものを切り換えることが大切で、そこから新しいアイデア、インスピレーションを得ようとしています。

井上:私からも一つ、質問させてください。先ほど石坂さんからも少しお話がありましたが、ビジネスのグローバル化を私も強く感じており、ネクストも是非、海外に展開していきたいと考えています。日本人の技術力や感性を広く伝える一助となっていきたいと思うのですが、海外展開するときに何をジャッジの軸にするのか、まずどの国に出て行くかもそうだし、何をもって「Go」なのか「No Go」なのか、そのあたりのお考えを聞かせてください。

山田:化粧品業界において、「日本」というのは特殊な市場なのです。売上高に対するマーケティング費用のボリュームが極端に大きい。だからこそ(生活者の声をマーケティングデータとして提供していくという)私たちのビジネスが成立したのです。また日本人の気質として、人の意見を気にする、ランキングが好き、といったところがあり、そうした点にも合致しました。

従って、日本での勝ちパターンが、海外でも、そのまま上手くいくとは私は考えていません。ただ、アジアは比較的、共通するところが多い。例えば、韓国と日本のネット上におけるコミュニティ組成のあり方は非常に似通っています。それから重要なのは、パートナーの存在ではないでしょうか。私たちが上海に新しいサイトを立ち上げられたのは、信頼に足るパートナーと出会えたからです。

井上:最初からアジアでの展開を考えていたのでしょうか。欧米という選択肢はありましたか。

山田:いくつかお話はいただいていましたが、私たちのようなネット上のコミュニティを中心にしたビジネスは、アジアのほうが、より進めやすいという判断をしました。

石坂:私も、海外展開については高い関心を持っていますが、判断基準を作るのが難しいですね。日本の製品や文化は今、海外で評価を上げてきています。ただ、輸出できる「人」がいない。そうした危機感から、先ほどの英語力強化などを進めています。

日本は何事もスタンダードが高く、海外に出て行くまでもないという論調もあるが、それは内需が高く、国内だけで経済がまわっていてこその話。私は、そこに疑問をいだいているので、どんどん外に出て行かなければならないと考えています。

いざ、やるとなったら覚悟が必要ですね。「ちょっと出てみる」というような感じではなく、私が駐在員第1号になるぐらいの気構えがなければ成功しないと思う。あとは、肌が合う、合わないというのは、あるでしょうね。水や食べ物、そこに住む人の性質など、相性は結構、大きなファクターではないかと考えています。

まだまだ、お聞きしたいことは尽きないのですが、会場の皆さんにメッセージをお願いします。

山田:私自身は、経営の勉強をしてから事業を興したわけではないので、学んでから、或いは学びながら次のステージに進む皆さんが、眩しく思えます。私の話が少しでもお役に立てたのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

先にも申し上げましたが、優秀な女性が多くいながら、経営幹部にまで登る人の少ないことを、本当に残念に思っています。参加された皆さんの中で、私と一緒に走りながら考えたいと思ってくださった方がいらしたら、是非、声をかけていただければと思っています。

石坂:とにかく、実行と実践。先ほどの話に出た、「打率3割」ではないですが、失敗してくじけることもあるかもしれないが、とにかく挑戦すること。そして、もう一つは、自分の意見を持ち、主張すること、発言することを大切にしていただければと思います。頭の良さも、もちろん大切ですが、海外のビジネススクールに学ぶ人たちに感銘を受けるのは、「自分は、こう思う」という確固たる姿勢を持って、きちんと表現するところ。そうした勇気や心構えを持たなければ、日本はどんどん世界から見放されていくと思いますし、私自身、努力します。

井上:次のステップに行くに当たっては、「なぜ、それをやるのか」「なぜ、そこに行きたいのか」を、確信に届くまで磨き上げてもらいたいと思います。「儲かりそうだから」とか、「ブームだから」ということではなくて、その仕事を確信を持って30年後も熱くやり続けている自分をイメージできるかどうか。その覚悟があれば道は開けると思います。それから、私と一緒に世界平和をめざしたい人は是非、秘書に電話をしてください(会場笑)。

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