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「教育」 校長先生になろう!~あなたが理想の中学を創り出す

投稿日:2007/08/24更新日:2019/04/09

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「経営不振の学校に校長として再建に入れば、時価100億の土地・建物を含む資産価値をもつ組織の長になれる」。――あすか会議2007「教育」セッションは、斬新かつ大胆な手腕で学校教育改革を推進するパネリストが集結。改革の現場を生々しく語り、地域、企業などとの連環が教育再生に不可欠であることを強く訴えた。

学校間の格差は拡大し続けている

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「教育」のセッションは、「校長先生になろう!」というテーマで進めていきます。実は、私の娘が、本日お越しいただいている漆先生の品女(しなじょ、品川女子学院の略)に通っており、そんな意味からも、とても楽しみにしています。では、まずは自己紹介からお願いします。

漆:はい、確かに先日、星野さんのお嬢さんが「土曜日は父を宜しくお願いします」と言いに来られました(笑)。私のいる品川女子学院は、「28才になったときに、社会で活躍している女性を育てる」ことをコンセプトとした、中高一貫校です。大学入学をゴールとするのではなく、その先の進路を具体的にイメージしてもらう意味から、企業との共同プロジェクトなども熱心に行っています。例えば昨年の成果物は「品女キティちゃん」。これを売って、利益をカンボジアの学校建設に寄付しようというプロジェクトです。また、生徒たちは、元気は良いけれどマナーが今ひとつなので(笑)、茶道や華道などを必修で入れており、今年は小笠原流礼法も体験しました。個人としては、今、トライアスロンに挑戦しています。

小嶋:日能研関東の社長をしています。日能研は中学受験を専門とした学習塾で、北は北海道、南は鹿児島まで展開しており、私は、関東を管轄しています。首都圏の電車中吊り広告で、「四角い頭を丸くする」というタイトルのものを、ご覧になったことのある方は多いのではないかと思うのですが、あれを出稿している会社です。中学校の入試問題を、長い間、掲載してきたのですが、最近、「解答はインターネットで」としたところ、クレームが多数、寄せられるようになってしまいました(笑)。

藤原:今日は(私が書いた)『校長先生になろう!』(日経BP社)の出発記念パーティーにようこそ(笑)。顔見ていただいてお分かりのとおり、ある歌手に似ていると専らの評判で、教育界の吟遊詩人と呼ばれています。その、さだ(まさし)さんとは27歳の時からの長いお付き合いです。ここ小淵沢には縁が深く、私の父の出身地。そして、この近くの川上村の天然記念物となっている川上犬も飼っています。現在は、杉並区立の和田中学校の校長をしており、「よのなか科」と呼ぶ、社会の仕組みを身近な事例から体感させるクラスを始動、他校にも展開しています。実務家の話を聞かせたり、ロールプレイで流通や金融のメカニズムを体験させる「よのなか科」に、当初は、「そんなことをやっていないで、教科書に忠実に学力をつけさせろ」というようなクレームが多く寄せられたのですが、今や和田中(学校)の学力は区内1、2を争うレベルまで向上し、底上げに寄与することも証明できました。

ありがとうございます。では早速、本日のテーマ「校長先生になろう」に移っていきますが、現時点で「将来は、校長先生になるぞ」と思っている方は、どのぐらいいらっしゃいますか?3名ぐらいでしょうか?本セッションが終わる頃には聴講されている方の半数の手が挙がることを数値目標に進めたいと思います(笑)。まずは昨今聞かれる学力低下や、これに伴い議論がされている教育改革について、中学校の現状を中心に聞かせてください。

小嶋:首都圏について言えば、私立校と公立校では圧倒的に私立校が多いのですが、ここで私が問題視しているのは「私立VS公立」という対立軸が完全に出来上がってしまっていることです。学力面というよりは学費の格差が大きく、公立の中高一貫校の学費が(6年間で)115万円であるのに対し、私立は600万円。これだけの差を私立校は何らかの価値で埋めなければなりません。自然と自助努力によりレベルも上がってきます。ところが公立校は、そのドライバーとなるものがない。都内の公立校280校のうち100校は定員割れ、1学年7人しか生徒がいない学校ですら国からの助成金があるため廃校には至りません。教師も年功序列・終身雇用により守られていますから、経営の視点から自身のいる学校を評価することができない。悪循環を止められないのです。

もう一つ私が問題と感じるのは、生徒の親の姿勢です。少子化の影響などもあるのでしょうが、例えば20年ほど前と引き比べると、子供に対して過干渉のきらいがある。その一方で、教育の面倒な部分は全て学校に任せきりで、家庭でやるべき教育・学校でやるべき教育のすみ分けができていません。「カネを払っているのだから、学校が子供の面倒を見ろ」というスタンスの親御さんが多いように感じます。私が思うに、やはり最高の学校というのは家庭なんです。親は家庭での教育をきちんと果たしたうえで、学校教育に何を託すべきかを考えるべきではないでしょうか。「親バカ」は許せるけれど、「バカ親」は許しちゃいけない。(支払い能力はあるのに)給食費を払わないという家庭の多いことがニュースに上ったりしていますが、一番、かわいそうなのは子供です。

学校を教員だけで形成する時代は終わった

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学校も家庭も改革が必要ということですね。では学校のあるべき姿について、漆さんはどのようにお考えでしょうか。また、その姿に近づくため、どのような取り組みをしていらっしゃるか、事例としてお話しいただけますか。

漆:先ほど1学年7人という学校の話が出ましたが、私にとっては笑えない話で、品川女子学院にも1学年の生徒数が5人まで落ち込んだ時期がありました。そこから何とか1学年200人、入試の実倍率3倍というところまで上げてきたわけです。私が思うに私立校のすべきことは2つあり、1つは「卒業生の母校を守る」ということ。そのためには理想の教育論を振りかざすだけでは、やはりダメで、経営のサイエンスを埋め込み、ビジネスとして永続的に成り立たせる必要があります。もう1つは、その一方で、学校が「人を育てる」場所であることをどんなときも忘れたり、諦めてしまってはいけない、ということです。

では、どのような学校を作るか。私たちは先にも述べた、28才になったときに、社会に貢献している女性を育成することを目指し、このゴールから逆算してカリキュラムを組んでいます。例えば、中学1年生のときには地域交流などを通じて、自身が社会の一員であることを認識します。2年次には日本に生まれ育った人としてのアイデンティティを確立します。例えば茶道や華道を身につけさせるのもその一環ですし、着物の着付けなども行っています。夏に「暑い、暑い」と大騒ぎをしている生徒に、おばあちゃん先生が「夏が暑いのは当たり前よ。和服というのは、周りの人があなたを見たとき、涼しげに感じるようにするものなのよ」なんて語りかけると、それ(他人を思いやることの大切さ)が生徒たちの心に響くんですね。そして3年次では、世界や社会に目を向け、世界における日本や、社会に置ける自身の立ち位置を実感します。例えば品女では海外の留学生を常時10人ほど受け入れており、生徒たちは彼女らとの交流を通じて世界の多様性を見つめます。また、先にお話ししたような企業との協業を通じ、「大人の生きがいって何なのか」「働くというのは、社会と関わることなんだ」というようなことを学んでいます。

私たちが見つめているのは、生徒が卒業して28才になったときの姿、社会との関わりであり、大学への進学率という数字を直接的な目標に置くことはしませんでしたが、(将来の生き方を具体的に描く、これらの試みを行った)結果として進学率は劇的に向上しました。前年は40人だった浪人生が、今年は8人。大学進学率は過去最高です。

藤原:「卒業生の母校を守る」というのは良い言葉ですね。先ほど、小嶋さんも言っていらっしゃいましたが、学校教育にマネジメント、経営のサイエンスを埋め込む重要性は(競争激化に伴い)、ますます高まってきています。米国ではNPOや財団なども含め非営利機関の経営に優秀な人材が入り、企業など営利機関から引き抜きが行われるような状況が起きていますが、日本では、まだまだ。企業経営などより、非営利の、しかも「人を育てる」という重い役割を持った学校の経営は、はるかに難しく挑戦しがいがあるのに残念です。

学校のあるべき姿について、私はまず、「学校を教員だけで形成する時代は終わった」と考えています。また、「成熟社会において、教員と親が子供に与えられる影響力は減少する」とも言えます。

多種多様なメディアが、ここまで生活の至るところに浸透した社会では、親や教員の言うことが絶対という理屈は通用しません。例えば「自殺はいけないこと」と、どれだけ親や教員が説いても、テレビは年間3万4000人、交通事故死のゆうに4倍を超える自殺者のニュースを垂れ流します。そして、親も教員も子供の耳に入る情報量をコントロールすることはできない。「自殺はいけない」と教えれば、子供は「だったら、どうして松岡(利勝・農林水産)大臣は自殺したの?」と考える。外的要因によって、親や教員が教えることを子供が素直に受け入れられなくなっている。つまり、これは家庭や学校を変えればどうにかなるという問題ではなく、社会全体の問題として議論しなければならない問題なのです。

教育について語るのであれば、「これは家庭の役割」「それは学校の役割」と機能分化する前に、まず地域社会を健全なコミュニティとして再構築するところから始めるべきです。そして、老人や大学生や様々な大人との関わりを作り出し、コミュニティ全体で子供たちを育成するという発想を持てばいいと、私は考えています。教材は学校や家庭の外に溢れている。そこに目を向けず、手元の教科書だけを細々といじっていても何の意味もないのです。

和田中では、校内に地域本部と呼ぶ組織を置き、そこに地域の大人たちや教師志望の学生が集まれるようにしています。彼らは「どてら(土曜日寺子屋の略)」と呼ぶ自習の会を手伝ってくれており、(休みの日にも関わらず)200人近い子供たちが集まって大学生のお兄さんやお姉さんから勉強を教わっていきます。お兄さん、お姉さんと協力して創作劇を作ったり、インドから帰ってきたばかりというお兄さんから、「向こうでは安心して飲める水が少ない」という話を聞いて、日本の水道局の仕事に関心を持ったり、ということが自発的に起きている。既存の学校の枠組みを超え、地域社会そのものが学校である、という姿が、形成されつつあるのです。

「よのなか科」「どてら」に加え、新しい取り組みとしては、昨年から、1コマ50分だった授業時間を45分に短縮しました。これにより、浮いた時間でコマ数を増やすことができ、週間32コマの授業数を取れるようになりました。50分の授業内容を45分で集中して行う、そうやってテンポを上げることで他校より13%のリズムアップと授業数のアップを実現。2月に実施された杉並区の学力調査でナンバーワンになりました。教育再生会議では授業時間を10%増やせ、などという議論をしているようですが、私から言わせれば、これは愚の骨頂。企業で業績が上がらないからといって、(何の工夫もせずに)「残業時間を増やせ」というようなものです。学校というのは校長の裁量範囲が大きく、アイデア一つで、様々な変革が可能であることを知っていただきたいと思います。

1学年7名から入学希望者60倍への道のり

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漆さんにせよ、藤原さんにせよ、目に見える成果を出されたので、今は新しい取り組みをしやすい環境にあると思います。しかし、落下傘のようにして校長になり、周囲に誰も味方もいない状況で変革を起こしていくことは口で言うほど簡単ではなかったのではないかと推察します。

藤原:その話をするには、まず、漆さんが入る前に、品女がどれほどの状況にあったか、を共有したほうが良いかもしれませんね。

漆:そうですね。私が改革に入った1989年というのは、まさに瀕死の状態でした。偏差値というのは、35以下は「測定不能」となるのですが、品女もその「測定不能」で、偏差値表にすら載せてもらえないような学校だったのです。1991年までは「品川中学校」「品川高等学校」という名称だったのですが、女子校ということすら知らずに、野球の試合の申し込みをしてくる学校もありました。

学校の状況が、それほどまでに酷くなった理由を分析するに、一つは「あまりに正直な学校だったから」ということが挙げられると思います。子供の数が増えた時代に、レベルを維持したい学校は都から依頼された入学を受け入れる生徒数を増やすことに抵抗したのですが、(当時、校長をしていた)祖父は素直に引き受けてしまった。そこが分岐点だったと言っていました。

もう一つは、教員というのは生真面目な人が多いので、環境変化が見えなくなったり、何事も突き詰め過ぎてしまったり、ということがあったように思います。例えば、規律を正そうということで生活指導に力を入れ始めると、髪形一つをとっても、「この3パターンのどれかにしなさい」「前髪は眉毛から○cmまでの長さにしなさい」というところまで、やってしまう。生徒の顔に定規をあてて、規則のとおりになっているかを測るようなことを本気でやっていました。そういうことが、どんどん本質を見失わせ、生徒との距離を作ったのではないかと思います。

そんな状態から背水の陣で改革をはじめ、7年で偏差値は20近く上がり、入学希望者も60倍となったのですが、今、直面しているのは、変革をし続ける難しさ、です。人は成功体験を捨てられない習性がありますし、それなりにうまく行っていると、今ある仕組みを壊してでも新しいことを進めようという勇気が持てなくなるからです。

例えば文化祭でこんなことがありました。それまでのお祭り的要素の濃い文化祭から生徒の日々の活動や学習の発表の場にしようと考え、「ただ模擬店を出すだけでは意味がない」と、ベンチャーキャピタルの協力を得て、個々の店舗が仮想的に起業する形を取り、収益を管理して最後には株主総会まで行うことにしました。ところが、本物のベンチャーキャピタリスト、投資家役の大学生、教員、生徒、という様々な立場の人々が動く中で、利益が出た場合、どのように配当するかということに大きな解釈の違いが起きてしまっていたのです。本当にこんな大切で最も基礎的なことをどうして?と思うのですが、初めての試みの落とし穴にはまり、事前に明らかにしなかったのです。このため、サポートした大人がそれぞれ、ある人は「利益が出たら、君たち(生徒)のものとしていいんだよ」と伝える、ある人は寄付が前提なんだからと残った分を買ってあげるというようなことが起きていたことが、株主総会の前日に発覚したのです。このプログラムそのものが、模擬店参加以外の生徒や教員の様々なサポートで成り立つ形になっていましたので、そのうえに生じた利益を一部の生徒にすべて現金で渡すということはできません。教員、生徒含めて大混乱が起きてしまいました。最終的に、「上限3000円の図書券を生徒に配る」ことにしたのですが、そう伝えると生徒たちは「資本主義を学んだ意味がない」「最初から言ってくれればそのために努力できたけれど、後からではお金が汚いものだと言われているようだ」と怒り、悲しみました。いま反省として思うのは、「(いろいろな意見の)間を取る」というような、中途半端な決断はすべきでなかったということです。私が基準にすべきだったのは、本校の大切にしている「生徒に任せる」という軸であり、利益を全て自分たちのものにするにせよ、寄付するにせよ、自分たちに決めさせれば良かったのです。このときは、本当に申し訳なかったと、生徒に頭を下げました。

そして、運営を生徒に任せるということはリスクも伴うものであることを忘れてはならない、ということも再認識し、今は教員の申し合わせとして「生徒からは自分たちが3分の2やったと見えて、実際は教員がすべてを把握し、3分の2やる」としています。企業とのコラボレーションでも、企業側から「(一緒にやった)製品開発が、とてもうまくいったので、携帯電話上のSNSでプロモーションをやりたい」という提案があり、お受けするか否か迷った上でお断りしたことがあります。そのSNSは出会い系サイトのような使われ方もしているところで、学校としては生徒に与える悪影響を考えないわけにはいかなかったからです。

新しいことをするというのは、思いもよらないリスクを伴う可能性があるということです。学校は、子供たちの命を預かる場所でもありますから、新しいことに挑戦することと安全性のバランスは常に考えなければならず、その意味でも(品女は)新しいステージに来ているように思います。

何か革新的なことをしようとするとき、「やらない理由」を考えるのは、ずっと簡単ですが、やはらい変わり続けなければならない。

小嶋:そうですね。とりわけ、学校と病院は今、一番変革が必要と言われています。学校の常識は世間の非常識。10年に1回あるかも分からないようなマイナス面に気を取られて思い切った打ち手に出ないようなところばかりですから。しかし、結果として多くの生徒を集めているのは、英断ができる学校です。そして、抽象的な理念ではなく、具体的な目標設定をしている学校が強い。目標を明示し、そのために一年次には、これとこれをやるのだ、という手段を、きちんと説明できる学校に人気が集中しています。

それからトップがしっかりとしていること。学校は生き物のようなもので、マネジメント次第で生きもすれば、死ぬこともある。考えてみれば、これらは企業経営と相通ずるところが大きいのですよね。先日、ビジネス誌に「伸びている学校ランキング」というのが掲載されていたのですが、ランキングに出てくるような学校は、今、申し上げたような要素を備えています。例えば、東京都の大学付属校以外の共学校のトップは、渋谷教育学園だったのですが、ここは1996年に共学化したばかりですが、「コギャル校」などと言われていたものが今では東大合格者を23名出すまでになっています。ここは、オーナーが目標設定をして、「子供や保護者のためになることは、どんどんやろう」と、意欲的に改革を進めています。顧客満足を徹底的に追求しているのです。

ただ強調したいのは、マネジメント次第とは言え、ドライに営利のみに突き進めば良いというものではなく、やはり学校は人間を愛する場でなければいけないということです。当社が運営しているのは学習塾ですが、私たちは先生たちに、「教師ではなく、恩師になってください」と言っています。学校も同じではないでしょうか。志がなければ、人の心を動かすことはできませんから。

学びとキャリアの接点が明確になれば学生の姿勢は変わる

キャリアビジョンを見せたり、大学進学率を高めたりと、自分たちを何によって差異化するか、特徴づけるかは、学校によって異なります。その一例として、和田中のよのなか科の授業の様子をビデオで見てみましょう。

藤原:よのなか科には、実務家の方におこしいただき、これまで得た知識や経験を共有いただいています。ただお話しいただくだけではなく、ロールプレイやグループディスカッションを交え、生徒に何らかの実感を与えるのが特徴の一つです。

ビデオでご覧いただくのは、4年前に「付加価値」をテーマにして行った授業の様子です。皆さんには、ビジネスパーソンとして自身が得てきた経験を50分のクラスで中学生相手に伝えるとしたら、どのような方法を取るか、何を話せるか、という棚卸をしながら見ていただきたいと思います。仮に、和田中の3年生に対して、「付加価値」ということが彼らの頭にスッと入る授業をしてみてくださいといわれたら、どんな授業構成にしますか。

-ビデオ上映-

「ゴム」を題材に、価値の発生を考える。1本の0.3円の輪ゴムに始まり、風船であれば10円、バランスボールであれば3000円。自分が社長だったら、どんな製品を発想するかというロールプレイを行う。その日のゲストティーチャーは根本特殊化学株式会社代表取締役社長の根本郁芳氏。同社が開発した非放射性夜光塗料は世界シェア80%を占め、わずか1kgで100万円という価値がついている。

藤原:時計の盤面が光るのは、この会社の夜光塗料によるもので、これにより時計のデザインが変わったとも言われています。杉並区の片隅に立地する会社なのですが、(これだけ世界的に広がっている技術を開発したにも関わらず)ボクが見つけてきて紹介するまでは、学校教育で紹介されたことは一度もなかった。これが教育の「さぼり」ではなくて何なのだろう、と思います。

:品女でも「よのなか科」の授業は3回ほどやっていただきました。それ以外にも、ありとあらゆる手段で社会との接点を設けてきました。ただ、多くの親御さんが気にするのはやはり入口と出口の数字(入学時の偏差値と大学への進学率)なんです。これが必要条件を満たさない限り、いくら「社会とのつながり」とか「28才になったときのキャリア」とか言っても、負け犬の遠吠えになってしまう。そんなわけで苦しみながら、悩みながら、それでも自分たちの考える方向性を信じて6年間、突き進み、ようやく数字も上がってきました。では、一個の人間としてどのような成長を与えられたのか。今年、卒業を迎えた高校3年生が品女で得たものや、将来の夢を語ったビデオがあるので見てください。

-ビデオ上映-

卒業式にアトランダムに選んだ子供たち。「水泳でインターハイに出場、国立大学に現役合格。自分と向き合い、自分自身の弱さを認めることで、精神的な強さを身につけられたと思います」「東京大学の協力を得た理科特別講座で音に関する研究を見たのが印象的でした。将来は研究職につきたいと思っています」「日経新聞と野村證券が行ったストックリーグという仮想的に株式投資をして、その結果を競う企画に参加しました。学校にいると、普通は学校の中のことしか分からない。将来やりたいことを探そうにも接点すらないけれど、ここには考える糸口になる経験が沢山ありました」「将来、企画とか広報の仕事をしたいので、まずは社会学を学ぼうと思います」「ヒトと話すことの大切さを学んだので、そういうことができる看護士を目指します」「本当は医者を目指していたのですが、数学の○○先生と出会い、数学の奥深さを教えてもらったので、今は数学の先生になりたい」・・・。

ありがとうございました。さて、最後にお聞きしたいのですが、「将来は、校長先生になるぞ」と思われた方、挙手をお願いします(20~30名ほどに)。

藤原:増えましたね。今、仮に私立の学校を作ろうとすると少なく見積もっても100億円からのお金がかかります。けれど、既にある学校の校長になれば、時価100億の土地・建物(校庭と校舎など)を含む資産価値をもつ組織の長になれます。校長の裁量範囲は広いですから、花が好きな方なら、校庭にいくらでも花を植えられる(笑)。改革のしがいがあるんです。意欲のある首長を擁した市町村では、民間校長の募集が始まっていますし、皆さんにも是非、学校改革、そして地域改革に参加していただければと思っています。

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