このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。
今回は、『グロービスMBAマネジメント・ブック』の「アカウンティング」章から「マネジメント・コントロール」をピックアップしました。管理会計の大きな目的として、戦略を目的通り実行するためにタイムリーに数字を提供するとともに、人々を適切に動機づけるということがあります。組織をどんな指標で評価すると人々が望ましい行動をとるのか、何をKPIとしてPDCAを回すと戦略が正しく実行されるかなど、「見える化」経営の鍵がここにあります。
マネジメント・コントロール
【POINT】
分権化した組織を、全社目標達成に向けて効果的に業務遂行させることがマネジメント・コントロールの役割である。コントロール・プロセスを確実に機能させていくためには、適切な管理責任単位の設定と管理会計の知識、そして人間への深い洞察が必要である。
◆マネジメント・コントロールと管理会計
経営管理には、経営者が主体となって全社的観点から経営戦略を策定するステップと、さまざまな職能分野を担当する現場管理者が行う日常のオペレーション管理の2つのステップがある。マネジメント・コントロールとは、この2つのステップの橋渡しを行い、全体としての組織活動に秩序を与えることである。
企業規模の拡大に伴い、分権化が進み、複数の管理者に権限が委譲されていく。分権化が進めば、各部門が必ずしも企業全体の目標に合致するような動きをするとは限らなくなる。そこで、全社的視点から各組織をコントロールする統合の仕組みが必要になる。このコントロール・プロセスの中の、行動の方向性指示、実績モニタリング、評価といった場面で管理会計システムが有効となる。
◆管理責任単位
財務的な目標数値によって行動の方向性が示されても、目標達成のための手段や権限なしには機能しない。責任もインセンティブも働かないからだ。このような観点から、管理責任単位(業績評価単位)は、主に以下の2つが多用されている。
(1)コスト・センター
販売の権限を持たない工場や管理部門は、コストにのみ責任を負わされることが多い。その部門の責任者は、決められた質の仕事を最小限のコストで遂行することが期待されており、原価管理が強調される。
(2)プロフィット・センター
製品事業部のように、売上げと費用の最適な組み合わせを選択できる事業単位には、利益の責任を負わせることができる。必ずしも製品事業部のみならず、かつての日立製作所のように工場が営業部門や他社に販売する権限を持つことにより、工場が1つのプロフィット・センターになる場合もある。
◆コントロール・プロセス
一般にマネジメント・コントロールのプロセスは以下の4段階から成る。
1.部門別実行計画策定
全社の戦略計画を各部門の実行計画に翻訳し、方向づけするプロセスである。
(1)全社目標を各事業部門の行動目標に落とし込む
(2)行動目標を達成するための行動の範囲と方向性を定める
(3)目標達成に必要な経営資源を見積もる
2.経営資源配分計画策定(プログラミング)
具体的にどのプロジェクト、セクションにどれだけの資源を配分するか決定する。
3.予算編成(バジェッティング)
各種の課題別実行計画を、各管理責任単位の管理者が責任を負えるような形の収益や費用に置き換えるプロセスである。
4.実績分析・業績評価・報告(レポーティング)
実績をプロジェクト別、管理責任単位別に記録集計し、予算との差異を分析することにより、業績評価や行動修正のための資料として活用する。
◆BSC
会社が長期的に戦略を遂行するためのマネジメント・ツールとして注目されているのが、BSC(Balanced Scorecard)である。BSCでは、財務、顧客、内部ビジネスプロセス、学習と成長の4つの視点から、それぞれ戦略と関連性が強い指標を選択する。とくに重要な指標をKPI (Key Performance Indicator)と言う。それらをモニターすることで戦略の達成状況を確認し、さらに各指標の目標値を各部門や個人に与えることによって戦略達成へ向けて組織全体を動かしていく。
マネジメント・コントロールの全体像
図表作成: GLOBIS知見録
次回は、ファイナンスのパートから「投資評価の様々な方法」を紹介します。
(ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)