今年5月発売の『MBA 言語化トレーニング」の「Part1 Lesson1 適切な言葉を選ぶ」の一部を紹介します。
言語化、特に人とコミュニケーションを行う際の言語化で意識したいのは、自分が伝えたいことをしっかり相手に理解してもらえるかどうかです。
その際には、相手の立場に立って、適切な言葉を選択する必要があります。カギは「人によって解釈が変わる言葉を極力使わない」ということです。伝える相手が増えるほどその重要性は増します。
独りよがりになるのではなく、相手の視点に立って正しく理解してもらえる言葉を選びましょう。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、PHP研究所のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
人によって解釈が変わる言葉を使わない
言葉は思考においても重要ですが、人々に物事を伝えるうえでも重要な意味を持ちます。「例のヤツをあれしてくれ」と言われても、何をしたらいいかわかりません。
ビジネスは他者と何かを行うシーンが多いですから、コミュニケーションという側面でも言葉を適切に用いることが非常に重要です。
さて、適切な言葉を選ぶ基本的な枠組みは図のようになります。正確・明瞭とは、人によって解釈が異なる言葉を使用しないことです。たとえば、「適正化」という言葉は何をもって適正と見なすかが曖昧な言葉です。あるいは「公平性の確保」という表現も、人によって解釈が分かれます。「機会の平等」と解釈する人もいれば、「結果の平等」をイメージする人もいるかもしれません。「手続き的公正」(プロセスがフェアで透明であること)と考える人もいるでしょう。そうした認識のブレは避けたいものです。
具体的とは、相手にはっきりとしたイメージを伝えることです。たとえば、自社のオウンドメディア(自社で保有するメディア)の実績を紹介する際、「多くの人々に見られている」では、表現がボヤっとしています。「ユニークユーザー50万人、ページビューは3000万を獲得」と表現したほうが鮮明に伝わります。
この「具体的」というキーワードは本書を通じて繰り返し登場しますので、よく覚えておいてください。
相手に伝わるとは、相手がその分野に対してどれはどの知識を持っているかを慮りながら言葉を選ぶということです。特に、専門用語や業界用語などは注意が必要です。たとえば「サステナビリティ」や「エコシステム」などは、社内では通じても、他のステークホルダーには通じないこともあります。その場に参加している人々の知識レベルを推し量って皆が共通理解を持てる言葉を選びたいものです。
適切な表現をすべく、極力「正確・明瞭」「具体的」「相手に伝わる」の3つの円が重なり合う言葉を選ぶように意識しましょう。
演習問題1
■設定
鈴木さんは、ある会社の営業部に所属しています。鈴木さんはA社を担当していますが、同時に、同営業部ではA社のライバル会社であるB社とも取引をしています。営業部長のあなたは、部下の鈴木さんに、B社に配慮しつつA社との関係を築くよう伝えなければなりません。
次の文章は、それを伝えるものですが、「正確・明瞭」「具体的」「相手に伝わる」の観点から、何かが欠けています。3つのうちどれが欠けているかを意識したうえで、言葉が正確に伝わらない箇所に線を引き、適切な衣現に修正してください。
[NG例]
鈴木さん、お疲れ様です。
鈴木さんが最近A社に食い込んでいるとの話を聞きました.それ自体はセールスパーソンとして素晴らしいことだと思いますが、A社は、我が社の大得意であるB社のライバルでもあります。
そこでお願いですが、この件でB社の虎の尾を踏まないように強く意識してください。また、B社は今後も大得意となる見込みですので、あまり目立ちすぎないようA社とうまく話をしてください。
(OK例はぜひ本書で確認してください)
『思考力を高める 人を動かす MBA 言語化トレーニング』
著:グロービス 執筆:嶋田 毅 発行日:2024/5/22 価格:1,870円 発行元:PHP研究所