繰り返される不祥事:ニデックの事例が示す「真面目な組織」の死角
3月3日、ニデック(旧日本電産)株式会社は一連の不適切会計に関する第三者委員会の調査報告書を公表した。
報告書によれば、長年にわたり国内外の拠点で複数の会計不正が行われていた。
不正の原因として、過度な業績へのプレッシャーと長らく代表を務めてきた創業者の絶対性を挙げている。
ニデックで発生した不正は、個性的な経営者が率いてきたユニークな企業であるがゆえに起こった稀有な事象なのだろうか?
東芝の会計不正(2015年)、神戸製鋼所(2017年)・三菱電機(2021年)の品質データ偽装、ダイハツ工業(2022年)・日野自動車(2023年)の認証不正、ビッグモーターの保険金不正請求(2023年)。
振り返れば、会計不正以外にも日本を代表する企業で様々な不正が発生している。ニデックのような会社ばかりではない。
これらの不祥事に共通するのは、悪意を持って不正を行おうとしたものではないことである。
むしろ、業績目標を達成しようとする責任感が強いがゆえに起こってしまった不正だとも言える。
強いリーダーシップの下、高い目標の実現にこだわることで優れた業績を達成した企業の事例は枚挙にいとまがない。必ずしも悪いことではないのだ。
かつてのニデックもそうやって成長してきた企業である。では、優れた業績を達成して企業と不正を起こしてしまった企業の分水嶺となったものは何だったのだろうか?
不祥事は個人の倫理観ではなく「組織の力学」から生まれる
不正が発生する構造を鮮やかに描き出し、その疑問を解き明かしてくれるのが本書だ。
著者は、企業不祥事は個人の倫理観の欠如が引き起こすのではなく、組織の力学や構造的な問題だと説く。
本書は企業不祥事を3つの類型に整理し、不祥事が生まれるメカニズムを構造的に解き明かしている。
- 会社の事業計画や投資意思決定から発生したケース
- 経営者の意思決定から発生したケース
- 時代の変化と自社のあり方との不適応から発生したケース
上述した企業の事例は1のケースに該当する。
ニデックのような、真面目で一生懸命な人々であっても、過度な期待と逃げ場のない環境に置かれれば、心理的に追い詰められてしまう。
その結果、会社を守るための内向きの正義が、法律や倫理といった社会の正義を駆逐してしまうのである。
この構図は、どの企業にも潜む普遍的なリスクと言えるだろう。
戦略なき「現場任せ」が、善意の社員を合理的に不正へ誘導する
本書が指摘する「不正の構造」は、どれも耳の痛いものばかりだ。
- 経営幹部が立てた事業計画の失敗の影響が、最も脆弱性の高い現場で顕在化し不正に直結する。
- 引き返せない敗着の一手は、不正が発生するずっと前に起こっている。
- 競争力に欠ける領域で、戦える設備も組織能力も持たず、戦略なきまま現場任せを続けた結果、現場は倫理なき行動に走らざるを得なくなる。
- インセンティブ制度や評価のルールの設計を誤ると、普通の人でも合理的に不正に誘導される。
能力なき組織は不正に手を出す。これが著者が導き出した不正の構造である。
高い目標と強力なリーダーシップがあったとしても、それを実現する組織能力が欠如すれば、不正を招くのである。
みなさんの会社にも当てはまるものはないだろうか?ぜひ、本書を読んで確認してみて欲しい。
『企業不祥事の真相―「普通の人」を悪者に仕立てる歪んだ構造』
著:坪谷邦生、秋山紘樹 発行日:2025/11/21 価格:3080円 発行元:ディスカヴァー・トゥエンティワン

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