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正常性バイアスとは?「大変なことは起きない」と思い込む危険な心理の罠

投稿日:2025/09/04更新日:2025/11/28タイマーのアイコン 読了時間 6分

正常性バイアスとは、異常事態でも「大丈夫だろう」と捉えてしまう心理傾向のこと。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

正常性バイアスとは

正常性バイアスとは、「異常事態なんてそうそう起きない」「今回も大丈夫だろう」と考えてしまう思考パターンのことです。

日常性バイアスや正常への偏向とも呼ばれるこの現象は、私たちが普段から無意識に働かせている心理メカニズムです。人間ドックで異常値が出ても「きっと検査ミスだろう」と考えたり、火災警報が鳴っても「どうせ誤作動だろう」と判断したりするのが典型例です。

この心理的な働きは、一見すると問題があるように思えますが、実は心の平静を保つための重要な機能も果たしています。しかし、過度に働きすぎると、本当に重要な危険信号を見逃してしまう危険性もはらんでいるのです。

なぜ正常性バイアスが重要なのか - 現代社会で見過ごせない理由

正常性バイアスを理解することは、現代のビジネスパーソンにとって非常に重要です。なぜなら、このバイアスが適切に機能しないと、個人の健康から組織の存続まで、様々なレベルで深刻な影響を及ぼす可能性があるからです。

①メンタルヘルス維持という重要な役割

正常性バイアスは、私たちの精神的な健康を守る重要な役割を果たしています。もし毎日のちょっとした異変や変化に対して、いちいち深刻に心配していたら、私たちの心は疲弊してしまいます。

たとえば、体調の些細な変化や、職場での小さな出来事に対して常に最悪のケースを想定していたら、不安で日常生活を送ることができません。正常性バイアスは、心配性になりすぎることを防ぎ、精神的な安定を保つという大切な機能があるのです。

②しかし過度になると危険な落とし穴に

一方で、正常性バイアスが強く働きすぎると、本当に重要な警告サインを見逃してしまう危険性があります。特に経営者やマネジャーなど、多くの人に影響を与える立場の人にとっては、この思い込みが組織全体の危機を招く可能性もあるのです。

大切な顧客の離反や優秀な従業員の退職といった「異常な出来事」を「よくあることだろう」と軽視してしまうと、本来であれば早期に対処できたはずの問題が深刻化してしまうケースが少なくありません。

正常性バイアスの詳しい解説 - 心理メカニズムと現れ方

正常性バイアスがどのように私たちの思考に影響を与え、日常生活やビジネスの場面でどのような形で現れるのかを詳しく見ていきましょう。

①心理的メカニズム - なぜ私たちは「大丈夫」と思ってしまうのか

正常性バイアスが生まれる背景には、複数の心理的な働きがあります。最も大きな要因は、心を平静に保とうとする人間の本能的な傾向です。

私たちの脳は、ストレスや不安を避けるように設計されています。そのため、異常な状況に直面したとき、それを「正常の範囲内」として解釈し直すことで、心理的な負担を軽減しようとするのです。これは生存戦略として非常に合理的な反応といえます。

また、過去の経験も正常性バイアスを強化します。「前回の検査でも異常値が出たけれど結局問題なかった」「いつもの警報は誤作動だった」といった経験が重なると、今回も同様に問題ないだろうという期待が生まれるのです。

②バイアスが強化される条件 - 「オオカミ少年」効果

正常性バイアスは、特定の条件下でより強く働く傾向があります。最も代表的なのが、警告が実際の危険につながらなかった経験が続いた場合です。

これは童話の「オオカミ少年」の状況と似ています。火災警報装置が誤作動を繰り返していると、本当の火事の際にも「また誤作動だろう」と考えてしまいます。システムの警告メッセージを無視するようになったり、上司からの注意を軽く流してしまったりするのも、同様のメカニズムです。

このような状況では、私たちの判断力が鈍り、本当に重要な危険信号を見逃しやすくなってしまいます。

③個人差と環境要因の影響

正常性バイアスの強さには個人差があります。いわゆる「心配性」の人は、このバイアスが比較的弱く、小さな変化にも敏感に反応します。一方で、楽観的な性格の人は、バイアスが強く働く傾向があります。

また、組織文化や環境もバイアスの強さに影響を与えます。「問題を指摘すると煙たがられる」「悪いニュースを報告しにくい」といった組織では、正常性バイアスがより強く働きやすくなります。逆に、オープンなコミュニケーションが奨励される環境では、適切なバランスを保ちやすくなるでしょう。

正常性バイアスを実務で活かす方法 - バランスの取れた判断力を身につける

正常性バイアスを完全に排除することは不可能ですし、必要でもありません。重要なのは、このバイアスの存在を認識し、適切にコントロールしながら賢明な判断を下すことです。

①健康管理での実践的アプローチ

個人の健康管理では、定期的な検診結果に対して冷静な判断を心がけることが大切です。異常値が出た場合、「前回も大丈夫だったから」という理由で放置するのではなく、医師の指示に従って適切な再検査を受けることが重要です。

ただし、過度に心配になりすぎる必要もありません。正常性バイアスをある程度働かせることで、日常生活でのストレスを軽減しながら、本当に必要な場面では適切な行動を取るというバランス感覚が求められます。

専門家の意見を積極的に求めることも有効です。自分だけの判断に頼らず、客観的な視点からのアドバイスを得ることで、バイアスの影響を最小限に抑えることができます。

②ビジネス場面での危機管理と予防策

経営者やマネジャーの立場では、より戦略的なアプローチが必要です。顧客の離反や従業員の退職、売上の減少などの「異常な出来事」に対して、複数のシナリオを想定した対応策を準備しておくことが重要です。

たとえば、重要な顧客からのクレームや契約更新の遅れがあった場合、「よくあることだろう」と軽視するのではなく、その背景にある真の原因を探ることが大切です。早期に適切な対応を取ることで、より大きな問題への発展を防げる可能性があります。

組織レベルでは、定期的な情報共有の仕組みを作ることも効果的です。各部署からの小さな異変や気づきを集約し、全体的な視点から判断する体制を整えることで、個人の正常性バイアスに頼らない意思決定が可能になります。

また、外部の専門家や コンサルタントからの客観的な視点を定期的に取り入れることで、内部では気づきにくい問題や リスクを早期に発見することができるでしょう。

参考ページ

そうそう大変なことは起きない? -正常性バイアス

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    編集部

    ビジネスパーソンの役に立つコンテンツをお届けすべく、取材、インタビュー、撮影、編集などを日々行っています。

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