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「確率思考の戦略論」を実務から読み解く ― 売上が伸びるマーケティングの本質とは?

投稿日:2025/09/09

マーケティングの定石だけでは成果が出ない現実

自社の商品やサービスをできるだけ多くの消費者に手に取ってほしい
マーケターなら誰だってそう考えるはずだ。マーケターだけではなく、売上に少しでもコミットしている方ならそう考えるだろう。
しかし、現実は思うようにいかないことも多い。

モノや情報があふれ、投資対象の比較検討が容易になった現代では、消費者を惹きつけることは簡単ではない。

私はとあるプロダクトの企画・運営を担い、このプロダクトの売上を追っている立場だ。
日々の仕事ではマーケティングの定石を押さえ、考え得る最善の打ち手を講じているつもりだが、思うように結果が出ないこともある。

結局のところ、何が消費者に刺さるかわからない。本書は、そんな悩みを抱えるビジネスパーソンに、ハッとするような気づきを与えてくれるだろう。

森岡毅氏が実務で培ったマーケティングの知見

本書の著者は森岡 毅 氏と今西 聖貴 氏だ。
本書の内容は両者の知見が掛け合わされ構築されているが、特に森岡氏の実務に根ざしたエピソードは強い印象を残す。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」や「西武園ゆうえんち」での同氏の活躍をご存じの方も多いだろう。
同氏がCEOを務める株式会社刀が手がけたテーマパーク「ジャングリア沖縄」のオープンは記憶に新しい。

本書の内容は、同氏のマーケターとしての経験に基づいている。
同氏はマーケティングのために通常では考えつかないような努力をしてきた。
例えば、ネスタリゾート神戸の立て直しに際して、施設周囲の山々の魅力を理解するため、同氏は狩猟免許と銃所持免許を取得して猟師になっている。

本書ではこういった経験から得られた消費者理解の要点が述べられている。このような具体的なエピソードと、そこから得られた独自のノウハウが、伝統的なマーケティングにはない新たな視点をもたらしてくれるだろう。

また、本書では、登場するマーケティングの専門用語が噛み砕いて分かりやすく解説されているため、初学者でもつまずくことはないはずだ。

マーケティングで押さえるべきは「消費者の本能」

本書では次のようなメッセージが強調されている。

「消費者から選ばれたいなら本能に働きかけるマーケティングをせよ」

このメッセージは何を意味するのだろうか?

消費者が商品やサービスを買う理由も、買わない理由も、ひとまず想像するのは難しくないだろう。
消費者にアンケートをとれば、答えはより明らかになる。
しかし、このような情報だけで、我々は消費者の購買行動の根っこにある「本当の理由」を言い当てることができるだろうか。
「本当の理由」は消費者本人でも綺麗に言い表せないことが多い。
しかし、一つ言えるのは、大抵の場合、消費者の購買行動の根っこには、人間が昔から持つ「本能」が影響しているということだ。

ここでいう「本能」とは、私たちが理屈抜きで反応してしまう人間的な欲求や感情のことを指している。
例えば「限定」「希少」といった表現に自然と惹かれる心理や、「楽しそう」「安心できそう」といった直感的な印象に基づく選択が当てはまる。

この「本能」を押さえなければ、思うように消費者を惹きつけることはできないということだ。

豊富なマーケティング事例と消費者理解の徹底分析

本書では、商品やサービスをつくるとき、あるいは売るとき、何をどのように検討すべきかが整理されている。

驚くべきは、事例の豊富さと、それぞれの事例の解像度の高さだ。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」でのアトラクション開発に際し、消費者が「なぜこの体験を選ぶのか」を徹底的に掘り下げたエピソードでは、有力なコンテンツ(マンガ、ゲーム、アニメ、映画など)の熱狂的なファンの心理を知るためにゲームを1,000時間以上プレイした実体験が紹介されている。
私自身もプロダクトを企画するとき、「なぜ顧客はこのサービスを必要とするのか」という問いに向き合うが、もっと突き詰めて考える必要があると痛感させられた。
本書に書かれた理論の活用イメージを持つ際には、こういった事例がきっと助けになるだろう。

また、本書の内容がどれだけ広く応用できるかが気になる方もいるだろう。
本書では、汎用性のある理論やノウハウも多くまとめられている。一部の内容について、著者独自の見解が含まれるため、理論としての正しさには様々な意見があるかもしれない。
仮に共感できない点があったとしても、そういった点に敢えて向き合うことで、マーケティングの正しい思考プロセスについて改めて自問自答する機会を得るだろう。
その結果、これまで気づかなかったマーケティングの可能性に視野を広げられ、最終的にはマーケティングそのものへの理解が深まるはずだ

マーケターとして、あるいは売上に責任を持つ立場として、成果を上げたいと思うなら、きっと本書はその助けになってくれるだろう。迷ったとき、あるいは立ち止まったときの心強い一冊として、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。


確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか

著:森岡 毅, 今西 聖貴 発行日:2025/1/28 価格:3,630円 発行元:ダイヤモンド社

  • 林 諒

    グロービス・コーポレート・エデュケーション 法人スクールユニット シニア・アソシエイト

    大学卒業後、大手不動産会社へ入社し、不動産売買仲介営業に従事。グロービス入社後は、法人向け人材育成サービスの営業を経て、現在は法人向けスクールプロダクトの企画職として、サービス運営・マーケティング・営業推進を担う。戦略・マーケティング領域のファカルティグループに所属。横浜国立大学理工学部卒業、グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA)。

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