成田に向かうスイスエアの直行便の機内で、17回目となるダボス会議を振り返り、「ダボス会議2025のまとめ」として共有したい。
会議開催前に、不確実性が最も高い2つのこと、つまりトランプとAIが議論の中心になると予測したが、やはりその通りとなった。それらの二大テーマに加えて、感じたことを6つまとめることとする。
1.トランプ
トランプに対しては、驚きよりも安堵感がダボスを支配していた。2017年の第一次トランプ政権の就任式の日が、ダボス会議の最終日のソワレの同日となった。
その当時は、ダボス会議は悲壮感に覆われていた。英国はEUを離脱して、米国にはトランプ政権だ。近代の世界を牽引してきた英米という2つの新旧の覇権国がグローバリズムに逆行する意思決定をしたのだ。ソワレでは音楽は軽快に流れていたが、参加者は泣き出す人が出てくるほどダボスの空気感は暗かった。
8年後の今年は、トランプ大統領の就任式はダボス会議の初日と重なった。トランプ大統領は、就任した初日にWHOやパリ協定から公約通り離脱したが、一番心配された関税は引き上げなかった。
実はトランプは、2020年に現役の米国大統領として初めてダボス会議に参加したことがある。ダボス参加者にも馴染みがあり、また既に一期目の4年の大統領としての経験値があるので、「それほど悪くはならないであろう」という楽観論が今年のダボスでは支配的だった。
但し、国によっては全く反応が違うのだ。米国人は、「米国には悪い施策をとらないだろう」と言う楽観的な反応だが、ヨーロッパや中国、そして隣国のカナダとメキシコは、危機意識が強い。欧州・中国は不安感。隣国のカナダ・メキシコは反発の方が強い。
今年のダボス会議の4日目の1月23日(木)17時よりトランプ大統領がオンラインでスピーチをした。就任後4日目での登壇というのは、かなり異例である。そのダボスでのスピーチではヨーロッパには全く触れず、国内政策についての発言が主だった。僕のメモには、以下の通りキーワードが記載されていた。
- 米国の黄金時代が始まる
- Revolution of common sense
- 前政権が残したマイナスの経済、インフレや財政赤字を改善する
- 移民を止める
- 外国援助を止める
- パリ協定やWHOから離脱する
- エネルギーを増やす
- DOGEを作り、行政を効率化させる。
- 製造業、AIやクリプトを発展させる
- 世界の主要国で最も税率が低い国にする。連邦法人税は15%を目指す。
- ソフトバンクはオラクルやOpen AIと$500billionをスターゲートとして投資。
- サウジは、$600billion投資を決定してくれたが、四捨五入して $1trillion投資をする様にお願いした(場内笑)
- メディアやSNSの検閲をやめる。
- 司法・警察機関の武器化を止める
- 会社も能力主義へと転換する(暗にDEIを否定)
- 性別は、男性と女性のみだ
- ガザの停戦を実現した、ロシア・ウクライナの戦争も止める。
などだ。質問では、規制緩和、EUの非効率についての批判、エネルギー問題、ウクライナの停戦について言及していた。
聴衆の反応は、真っ二つに分かれた。酷い(主に欧州)と楽観的(主に米国)だ。また、面白いと論理がメチャクチャだとか、親しみ易いと品が無いなどだ。
スピーチでは、イーロンマスクについて触れなかったが、ダボス会議の議論では、「トランプとビリオネアとの関係は、プーチンとオリガーチ(ロシアの財閥)との関係と酷似している」。「イーロンが不確定要因だ」という危惧する意見が相次いでいた。
2.AI
AIは、セッションのタイトルになるかならないかは別として、全てのセッションに実質的に組み込まれていた。と言うか、もはや AIは当たり前の存在として扱われていた。昨年のAIの議論とは様変わりの感じがする。よく言われていたのが、「AIは電気と一緒だ。インフラの一部になる」と言うものだ。つまり、電気の様に当たり前に使われる様になると言うことだ。
AIを使いこなせるかに格差が生まれる
一方では、電気、インターネットなどのインフラが無いことによる経済的格差やデジタル・デバイドが発生した。電気やインターネットは全ての関係者に恩恵をもたらすが、AIの場合にはごく一部の会社(主に米国と中国)が支配して、恩恵を受ける対象も限定的となる。AIの恩恵を受ける国・会社・人と、恩恵を受けない側とでは、物凄い大きな格差が生まれてくるであろう。まさに「AIディバイド」が発生することになる。
政治学者のイアン・ブレマーが言及していたのは「バイデン政権で始まりトランプ政権が継承するAI半導体や技術の国ごとの輸出規制は、ソ連崩壊後の最も大きな地政学的なフレームワークになる」つまり、ティア1〜3までカテゴライズされる。AIの技術に優先的にアクセスできる国、敵国、とそれ以外に分かれていく。まさに、AIによる格差が国ごとに生まれるのだ。AIの産業政策とAIを活用した輸出政策を米国がとっているのだ。産業政策は、日本のお家芸だ。今こそ日本が産業政策をAIにも駆使する時であろう。
さらに「安全保障とAI」のセッションでは、「今まで全ての技術は国や軍が先導してきた(原子力、暗号・インターネットなど)。だが、今回のAIはごく少数のビッグテックと呼ばれる民間企業と巨大なスタートアップが保有している。彼らのコントロールが効かなくなると地政学的な不確実性が著しく増してくることになる」。既にイーロンのスターリンクでは、民間企業が戦争の優位性を生み出す源泉になってきている。これがAIになるとさらに民間企業が勝者を生み出すことになるかもしれない。一方では、巨額の資金と技術を必要とするので、他国や他企業ではなかなか実行できないのだ。寡占化されていく要因となっている。
またAIに絡めてエネルギーの議論が活発に行われていた。ダボス史上初めて原子力を主題にするセッションが行われた。COPでは原子力を3倍に増やす必要があるという議論が行われいる。福島原発以降先進国が原発の活用に立ち止まっている間に、中国が原発の技術力も建設・活用に至るまで全てのケイパビリティを高めている。さらに中国は原発ばかりでなく、太陽光、風力、さらにはEVでも先行している。
太陽光パネルや風力の優位性を取り戻すことは難しいかもしれないが、日本は原子力を中心とするエネルギーでは先行していた。日本を含めて先進国が原発やSMR(小型原子炉)や核融合に徹底的に取り組む必要がある。何よりも、日本は早期の原発の完全な再稼働が必要になろう。僕の地元の茨城の東海第二原発も早く再稼働されるべきであろう。立ち止まっている場合ではないのだ。
AIの安全性・リスクは?
一方では、AI規制については、全く議論されなかった。トランプは、AI規制を劇的に緩和する方針を出している。米国抜きでのAI規制の議論は無意味だし、トランプがどういう政策を打ち出すかも不透明なので、議論しても仕方がないという空気感だ。
でも、「AGIの夜明け」というセッションでは、ダボスでは珍しく徹底的な激論が交わされた。具体的には、「AIの安全性」について2つで立場がぶつかり合ったのだ。
- 1)AIのスピードは止めずに進化し続けるべきだ。抑制方法とかは、後で解明すれば良い。
- 2)抑制方法が無いままに進化し続けることのリスクが大き過ぎる。
壇上では4対1で1)の推進論者が多かったが、モデレータが最後に観客の意見を聞いたら、会場はだいたい半々ぐらいだった。
3.気候変動(ESG)や平等(DEI)
ダボスでは、誰もが賛成するテーマが好まれる傾向にある。グローバリゼーション、気候変動の問題や社会の平等を担保する議論がその最たるものだ。いわゆるポリティカルコレクト的な発言だ。途上国の権利を担保せよ、女性の社会進出、地球環境に配慮した政策などだ。
ところが、今回のダボスでは、これらの議論が後退したのだ。理由は簡単で、トランプが反グローバリズムで、パリ協定から離脱して、WOKEと呼ばれる平等を尊重する運動論を否定しているからだ。米国では既にESGやDEIが死語に近い扱いとなっている。アルゼンチンのミレイ大統領もこれらの価値観を真っ向から否定する発言をしていた。
トランプ大統領は、化石燃料を「Drill, baby, drill」と発言して、石炭を「美しい」と表現していた。真偽は定かではないが、昨年まではダボスでの公用車にはEVが目立ったが、今年はそれほど見当たらないらしい。僕自身でも科学的な見地に立たないポリコレ的な発言は行き過ぎていたなと感じていたが、揺り戻しが激しい。特に米国企業の手のひら返し的はスピードの速さには、驚きつつも節操のなさを感じてしまう。
一方では、2024年は記録的暑さで、COPでも議論してきた防衛ラインであった1.5度上昇は既に突破している状態だ。この規制にタガが外れた状態で良いのだろうか?前述の通りAI規制も同様にタガが外れている。それらの規制論についても、世界で最強の超大国である米国の大統領が決めることが全てなので、議論しても仕方がないという無力感が漂っている気配がする。
結局、AIも気候変動も行くとこまで行くしか無いのだろう。G1ランチで議論したが、科学的な進化で一点突破で解決するのが一番良い方法なのかも知れない。昨年のダボスで、オープンAIのサム・アルトマン氏が言っていたが「科学で気候変動を解決するしかない。核融合でエネルギーを生み出し、AIを使って、カーボンキャプチャーするのが良い」。僕は、核融合でエネルギーが無限大に安価に生み出されて、量子コンピューターによって人工光合成などによってCO2をO2などに変換する効率的な方法を発明して、気候変動問題を解決するしか無いのかもしれない。AIも僕は実は慎重派だけど、徹底的に進化させて、サイエンスディスカバリーに活用して、人類や地球の問題を解決する方向に使うことが、最善なのかもしれない。
4.信用の崩壊から憤りへ
昨年9月に僕は世界最大のPR会社であるエデルマンの非常勤取締役に就任したのだ。四半期に1回NYに出張するなどコミットメントは半端ないけど、学びも多い。特にエデルマンが25年間実施してきた信頼度調査は、本当に示唆が大きい。いくつか衝撃的なデータを共有する。
- ①60%の人々がGrievance(憤り)を感じると回答。20%が強く感じて、40%が感じると回答。(社会への不満が蔓延?)
- ②次の世代が今の世代よりも良くなっていると思う若者は、30%程度。日本とフランスは10%しか思っていない。(若者が未来への希望を見出せない?)
- ③2/3の人々は、政治家・メディアなどのリーダーは、嘘をつくと思っている。(リーダーは信じられていない?)。
- ④白人男性の5割は、差別されていると感じている。(行き過ぎたDEIなどの逆差別が白人男性を突き動かし、トランプの躍進につながった?)
- ⑤50%の人々は、社会システム(政治・経済・民主主義・資本主義を含む)が崩壊していると感じている。(従い、虚無感を抱き、国際化やイノベーションに抵抗する)
これは衝撃的である。特に②については、ダボス会議初日のダボスに10回以上参加したメンバーを対象とした「ダボス・サークル」でもシュワブ氏が言及していた。「ダボスに来る若者に質問したら、半分が未来が今より良くならないと思っている。ダボスに来る優秀な若者でもそう考えるならば、僕らリーダーはやるべきことが多くあると感じる」と。
③について、FTのジリアン・テット氏が面白いことを言っていた。「Z世代は、医者よりもAIボットを信じる。また記事の読み方も違う。先ずはタイトルを読んで、それからその記事に対する反応を見て、その記事の信頼性を測っている」と言うのだ。
④も衝撃的だ。白人男性の不満はかなり大きくなっている。「かつては白人の年配男性が権力の中枢にいたが、今や白人の年配男性は虐げられれている」と、僕のハーバードの友人が以前嘆いていた。逆差別からの揺り戻しが起こりつつある。全米の大学のアファーマティブアクションが、米国の最高裁で違憲との判断が下された。トランプは、「人種や性別に関係なく能力主義」での登用を強調している。グリーバンス(憤り)によって突き動かされて、大統領も代わり、ポリコレ的なDEI政策も後退しているのだ。
では、この悲観的な状況に対してどうすれば良いのか?エデルマン社のCEOxは、以下を提唱していた。
1)先ずはコロナの検証が必要だ。十分な説明がなくロックダウンとなり、とてつもない不便さを強いた。その時から科学者や政府に対する信頼度が崩壊し始めた。しっかりと検証して、何が問題だったかを説明することが必要だ。
2)政治家、経済人、社会起業家、メディア、学者が単独でなくマルチ・ステークホルダーで、信頼度の回復に努めなければならない。そのためにも企業は、賃金を上げるなど目に見えるベネフィットを届ける必要があるし、他のリーダーも言葉や観念的なアイディアよりも目に見える何か良いことを届けることが重要だ。
3)ディスインフォーメーションを排除しなければならない。嘘や偽の情報が拡散されると何を信じて良いかの不信感が生まれる。この排除に政策を総動員しなければならない。
4)そして、信頼度が相対的に高いの友人、会社の同僚、家族などの地域の人々に訴えかける必要がある。ダボスにいるリーダーが縦の繋がりでなく、横の繋がりでinclusiveに働きかけて、地道に信頼を得るしかないのである。
5 .経済・経営
ダボス会議のほぼ全ての売上高は経済人の年会費と参加費とで賄われている。年間売上高は700億円を超える巨大企業になっている。従い、経済や経営の話題は常に中心に置かれていることが多い。
経済の話題はAIに加えて、金利や、インフレ、負債の増大の議論となる。経済においても地域格差が広がっている感じがする。米国は楽観的で、欧州は悲観的である。ただし、経済の議論もトランプによる関税がどうなるかによって大きな不確定要因となっている。
経営についても昨年は、ワークスタイルやAIの活用 などが議論されていたが、今はどちらかというと、外的脅威である地政学やトランプなどの政策による要因に関心が集まっている。また企業の社会的責任よりも、いかにして勝つか、成長するかの議論が多かった。
今年感じたのだが、経済人が登壇するセッションが圧倒的に減って、セッションよりもバイラテラル(商談)や、プライベートセッション(見込み客の取り込みや認知度向上)に熱心だった印象がある。個人的には、JPモルガンのジミー・ダイモン氏とかブラックロックのラリー・フィンク氏やマイクロソフトのサティア・ナデラ氏の話を聞きたかったので、残念だった。今回は経営セッションがとても少なかった。
6.グロービスナイト&日本
今年は、久しぶりに「グロービスナイト」を実施した。最後に実施したのはおそらく10年ほど前だと思う。なぜ中断したかというとシンプルに場所が借りられなくなったからだ。ダボスの地価が高騰して、世界の大企業がプロムナードという通りの店舗を占拠して、僕らが主催する場所を確保できなくなったからだ。
今年も開催を模索していたが、1週間前に「空きが出たから確保できるかも」という連絡が来たのだ。即座に条件を詰めて、24時間で開催する意思決定をした。それからが大変だ。準備期間は1週間を切っている。案内状を作成して(添付写真)、膨大な時間を使って参加者一人一人に告知して、ケイタリング会社に発注して、グロービスナイトが突貫工事で実現した。結果は、VIPが多数参加して大成功だった。やはり、ホストとしてダボス会議で集まる場を持って会社名を冠しておもてなしすることは、ブランド的にもネットワーク的にもとても重要だと思う。来年は、Japan Houseの様な場所を作りたいと思う。
今回、参加してひしひしと感じたことは、「日本への好感度が上がった」ということだ。初めてあった方に自己紹介して「日本から来た」と言うと、過半数が「ワオ、日本のこと大好きだ。家族と一緒に行った。子供達も配偶者にとって最高に楽しい思い出になったよ」と嬉しそうに言う答えが返ってくることが増えた。
僕は、2004年からダボス会議に参加して、4年間のブランクを経て2010年から連続して15回(2021のコロナを除き)、合計17回来ている。僕の主観的な定点観測によると、世界が日本を見る目が圧倒的に良くなったと断言できる。僕が、あるプライベートセッションで話をしたことを共有する。
「僕は、2004年から17回ダボスに来ている。その当時のダボスでは日本の存在感はNothingだった。バブル時代のJapan BashingがJapan PassingになってJapan Nothingになったのだ。日本の名前が出る時は、問題の象徴として扱われて、真似をしてはいけない悪例としての紹介ばかりだった。ジャパンセッションにはほとんど参加者は集まらなかった。一方、今はどうかというと、日本はG7や安全保証理事国の中で最も安定した国となり、良い事例として扱われて、高い関心を持ってみられている。
世界を見渡すと、アメリカの社会は分断されトランプが就任した。英国はBREXITだ。ドイツは経済がマイナス成長で閉塞感が漂い、フランスは社会的不安を抱えて、イタリアは極右政権だ。カナダもトルドー首相が退陣表明し、中国は内向きになり経済も停滞し、ロシアは戦争している。日本が世界の主要国の中sで今や最も社会的に安定し、インフレ問題も少なく経済的な健全性も高くて、政治的にも継続性も担保されている。インバウンドも爆増し、都市は清潔で安全で、漫画や音楽、食などの文化も豊かだ」
今や、日本が世界の中で最も安定している「ステイビライザー且つロールモデル」の役割を果たす時となっているのだ。
日本・そして自身の存在感を高めるには
一方では、日本の存在感は高いかというとそうではない。セマフォという非公式のダボスニュースレターがあるのだが、そこには、各国のダボス会議の公式セッションの登壇者数が記載されていた。
- 米国:272
- UK:84
- スイス:58
- 中国:27
- インド:25
- UAE:23
- 南アフリカ:22
- ブラジル:16
日本は、おそらく10名いないと思う。
この数の違いの原因は、教授陣の登壇数だろう。日本の大学からは東大・慶應の学長以外の教授陣はほぼ皆無である。JAXA理事長、エネルギーの寺澤さん、ソニーの北野さん、日立の東原さん、商船三井の橋本さんなどの名前を拝見したが、他は多くはない。またモデレータに至ってはゼロである。通常は、メディアかシンクタンクが担う。彼らは殆どダボス会議に参加できていない。ぜひ日本としても積極的に参加者を増やし、登壇する機会を得るべく働きかける必要があろう。また、英語での登壇なので、G1グローバルの英語カンファレンスでガンガンに議論する訓練をすることが重要だ。
そういう僕自身もここ数年公式のプログラムには登壇できていない。今年はプライベートセッションには登壇したが、それだけでは存在感が上がらない。以前は、事務局に立候補して登壇する機会を探してもらったが、最近はその努力をしていない。反省しなければならない。それよりも、グロービスのブランド価値と僕自身の評判を上げて、みんなが聞きたいスピーカーとしての立場を確立して、請われて登壇することが必要だと思う。
存在感を上げるもう一つの方法は、セッションで発言して、数多くのリーダーと交流して、質が高い少人数の食事会などで徹底的に交流することだ。この点は、僕個人としてはできていたと思う。今年は、エデルマン氏、マッキンゼーのCEO、FTのジュリアン・テット氏、BCGや、マイクロソフト&イアンやマスターカード、インドネシアナイトなど本当に親しいグローバルリーダーと交流することができた。また、ベンチャーキャピタルコミュニティやアラブハウスでの登壇など、それぞれの場で積極的に発言をしてきた。この場では全部を紹介できないが、日本を理解してもらうためには、即座に発言・反論することが重要だと思う。
さて、サムネイルにクラウス・シュワブ氏とのツーショット写真を使わせていただくこととした。僕は、クラウス・シュワブ氏のことが好きだし、心の底から尊敬している。ダボス会議を創設し、55年間継続して、世界で最もパワフルな民間機関となったからだ。おそらく世界を変えるためのプラットフォームとしては、世界最高峰だと思う。
実は、2008年ごろに大連で開催されたサマーダボスでシュワブ氏と少人数で面談する機会が与えられた。その場で僕は意を決して、「中国とインドにあるけど、日本では会議を開催していないので、ぜひ日本でも地域会議を開催してほしい」とお願いした。シュワブ氏は、「WEFとしては、全ての国レベルでは会議はなかなか開催できない。だったら、君が作ったらどう?」と言われたのだ。それが一つのきっかけで、2009年2月にG1サミットが始まったのだ。このダボス会議のマルチステークホールダーのリーダーの集いに触発されて、「日本を良くする」ためにG1を作ったのだ。その意味でもクラウス・シュワブ氏には深く感謝したい。
その後16年以上にもわたって政治、経済、学界、官界、社会起業家、メディア、文化やアスリートなどのG1メンバーが、「100の行動」というビジョンをもとに、リーダーとしての自覚を持ち一生懸命に「日本をよくする」ための提案、行動してきた結果が、昨今の日本の評価が界的に上がってきた要因の一つがと思う。だけど、まだまだやるべきことが多い。可能な限り多くの仲間と共に日本をよくする行動を続けていきたい。
ふと気がつくと、チューリッヒからの直行便がもうそろそろ成田に降り立つ時間だ。ダボス会議に17回参加してきた結果、着実にダボスの見えない階段を一歩一歩上がることができている気がする。あるリサーチによるとグローバルリーダーとして世界で認識されるのはだいたい70歳前後だという。これから数年間、世界でガンガンに存在感を発揮していきたい。
ダボス会議で数多くの刺激をもらったので、また1年間頑張り続けたい。そして1年後にさらに成長して、ダボス会議に参加したいと思う。機内で「ダボス会議のまとめ」を執筆していたら、自ずとやる気満々となり内面から熱いものが湧き上がってきた。
2025年1月24日(金)
成田に向かう機内にて
堀義人
【ダボス会議2025速報】
堀義人のダボス会議2025(1) 今年のダボス、主役は「トランプとAI」
堀義人のダボス会議2025(2)実り多いプライベートセッション
堀義人のダボス会議2025(3)久しぶりのGLOBIS NIGHT開催
堀義人のダボス会議2025(4)トランプ大統領が登場
堀義人のダボス会議2025(5)帰路スイス鉄道でダボス
【ダボス会議2024速報】
堀義人のダボス会議2024(1) 16回目のダボス会議は「信頼の再構築」がテーマ
堀義人のダボス会議2024(2) 「ワンストップショッピング」の場でトップリーダーと会い続け、学び続ける
堀義人のダボス会議2024(3)「日本代表」として日本の良い点を世界に発信する
堀義人のダボス会議2024(4)ダボスにサム・アルトマン登場。AIの未来について3つの場で討議
堀義人のダボス会議2024(5)世界中の友人たちとの再会を楽しんだダボス
堀義人のダボス会議2024(6)総括 3つの戦争・AI・グローバル経済の議論から展望する未来