感度分析とは
感度分析とは、ビジネスプランや予算を立てる際に、様々な要素(変数・パラメータ)が予想から変動したとき、最終的な利益やキャッシュフローなどにどの程度の影響を与えるかを分析する手法です。
簡単に言えば、「もしも売上が20%下がったら利益はどうなるか」「原材料費が30%上がったらどれくらい影響があるか」といった「もしも」のシナリオを事前に検証することで、計画の安定性や危険度を把握することができる分析方法です。
現代は不確実性の時代と言われており、計画通りに物事が進まない可能性がかつてなく高まっています。そんな中で、変化が起きてから慌てて対策を立てるのではなく、あらかじめ様々なシナリオを想定しておくことで、より適切で迅速な対応が可能になります。
なぜ感度分析が重要なのか - 変化の激しい時代を生き抜くために
①リスクを事前に把握し、的確な対策を立てられる
感度分析を行うことで、どの要素が最も大きな影響を与えるかを事前に知ることができます。例えば、為替変動が他の要素以上に最終利益に極めて大きな影響を与えることが分かった場合、先物取引やオプションなどのデリバティブを活用して為替リスクを回避する対策を講じることができます。
このように、最も影響の大きい要素を特定することで、限られた経営資源を効果的に配分し、優先度の高いリスクに対して集中的に対策を打つことが可能になります。
②計画の柔軟性と改善の方向性が見えてくる
感度分析により、計画やビジネスモデルの安定性や柔軟性を客観的に評価することができます。どの変数に対して結果が敏感に反応するかを知ることで、計画の弱点を発見し、改善すべき方向性を明確にすることができます。
また、実際の結果が予想と異なった場合でも、事前に様々なシナリオを検討していることで、冷静かつ迅速な判断と対応が可能になり、結果としてコストの削減や機会損失の回避につながります。
感度分析の詳しい解説 - 実践的な手法とより進んだアプローチ
①従来の20%変動による基本的な手法
実務で伝統的に行われている感度分析の手法は、ある変数を基準値(現在値や計画値など)から上下に20%ずつ変動させたときに、最終結果にどのような影響が出るかを確認する方法です。
例えば、原油価格が計画値で60ドル/バレルだとすれば、48ドル/バレル(20%減)と72ドル/バレル(20%増)のケースで最終利益がどのように変化するかを分析します。この手法は便法として分かりやすく、多くの企業で採用されている実用的なアプローチです。
しかし、この方法には一定の限界があります。すべての変数について機械的に20%の変動幅を設定することの妥当性に疑問を感じる実務者も多いのが現実です。
②現実的な変動幅を考慮した改良アプローチ
従来の手法への批判を受けて開発されたのが、より現実的な変動幅を考慮したアプローチです。例えば、新規顧客数や顧客平均単価など売上に関連する変数が20%変動することは、市場環境の変化により十分に起こり得ることです。
一方で、自社でコントロールしやすい一人あたり人件費などが計画値から20%も変動することは現実的ではありません。このような違いを考慮せずに一律20%の変動幅を適用することは、分析の精度を下げる要因となります。
③トルネードチャートによる高度な分析
こうした課題を解決するために開発されたのがトルネードチャートです。この手法では、機械的に上下20%の変動幅を取るのではなく、現実に起こりうる可能性を関係者間で十分に議論した上で、個々の変数ごとに適切な変動幅を決定します。
トルネードチャートは、各変数の影響度を棒グラフで視覚的に表現し、最も影響の大きい変数から順番に並べることで、どの要素に最も注意を払うべきかを一目で把握できるようになっています。この手法により、より現実的で実用性の高い感度分析が可能になります。
感度分析を実務で活かす方法 - 具体的な活用シーンと実践のポイント
①新規事業計画での活用シーン
新規事業を立ち上げる際には、市場規模、競合状況、コスト構造など多くの不確実な要素があります。感度分析を活用することで、「市場が予想より小さかった場合」「競合参入により価格競争が激化した場合」「原材料費が大幅に上昇した場合」など、様々なシナリオでの収益性を事前に検証できます。
これにより、事業計画の妥当性を客観的に評価し、リスクの高い要素については事前に対策を検討することができます。また、投資家や社内の意思決定者に対しても、リスクを十分に検討した上での計画であることを説明でき、説得力のあるプレゼンテーションが可能になります。
②実践で成果を出すための重要なポイント
感度分析を効果的に活用するためには、まず分析対象となる変数を適切に選定することが重要です。売上、コスト、市場環境など、事業に大きな影響を与える可能性のある要素を幅広く洗い出し、その中から特に重要度の高いものを選択します。
次に、各変数の変動幅を現実的な範囲で設定することが大切です。過去のデータや業界動向、専門家の意見などを参考に、実際に起こりうる変動幅を慎重に検討します。そして、分析結果を基に具体的なアクションプランを策定し、定期的に見直しを行うことで、変化の激しいビジネス環境において競争優位を維持することができます。
参考ページ
MBA経営辞書「感度分析」|GLOBIS学び放題×知見録