通常、組織における地位が上がるほど発揮すべきリーダーシップの次元も上がる。つまり、課長時代に比べて部長が発揮すべきリーダーシップの質や量もレベルアップを求められるということだ。いつまでも課長気分では、部下はついてきてくれない。
では部長はそれまでとは次元の異なる、どのようなリーダーシップを発揮すればいいのか。戦略遂行者でもある自身の立場を正しく把握したうえで、最低でも以下を実践する必要がある。
- ビジョンを提示する
- 効果的なコミュニケーションを行う
- エンパワメントを行う
- 人々を鼓舞する
- 言動や意思決定で本気度を伝える
- 部下からの信頼を獲得する
今回はこの中から、課長時代まではあまり意識しないことも多い「言動や意思決定で本気度を伝える」と「部下からの信頼を獲得する」について解説する。優れた部長はこうした行動を自然体でとれるものだ。あなたはどうだろうか?
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
◇ ◇ ◇
言動や意思決定で本気度を伝える
人間は往々にして易きに流れる。だからこそ戦略遂行や方針徹底に大きな責任を持つ部長は、言動と意思決定でみずからの本気度を示し、規律ある組織を築く存在でなければならない。具体的には下記のような方法がある。
行動で本気度を示す
最も直接的な方法は、施策について「本気でやる」「真剣に取り組む」と皆の前で宣言することだ。しかし、それだけでは十分に伝わらない。重要なのは、言動や意思決定を通じて本気度を示すことである。
たとえば「1週間に各人1度はナレッジシェアを投稿する」と決めたなら、部長自身も実践し、実行した人をきちんと称賛する。逆に行わなかった人にはやんわりと注意し、時には課長に対して「課長が率先しないと皆がやらない」と公然と指摘することも必要だ。こうした姿勢によって「部長は本気だ」と誰の目にも明らかになる。近年ではコンプライアンス遵守や情報管理の徹底が経営課題として重要性を増しているが、こうしたテーマほど部長が先頭に立って本気度を示し、組織に浸透させることが欠かせない。
意思決定で本気度を示す
たとえば「粗利率が2年連続マイナスの顧客は取引を停止する」と方針を立てたなら、例外を設けず実行することで、皆に強いメッセージを送ることができる。もちろん「例外的措置」が必要な場面もあるが、多用すれば人は最も甘い基準を拠り所にしてしまう。結果的に規律が緩み、たとえば「○○さんのパワハラ的な言動が許されるなら自分も大丈夫だ」といった誤った判断を招きかねない。だからこそ、毅然とした意思決定が求められるのだ。
具体的な施策を打ち出す
具体策を通じて本気度を可視化することもできる。たとえば「営業担当者は顧客との接触時間を最優先にする」という方針のもと、「提案書は新規作成を全体の30%以内に抑え、残りは既存資料を活用する」と決める、といった具合である。メリットとデメリットを十分に検討したうえで実施する必要はあるが、こうした具体策を通じて「やるべきことを徹底する」という意志を示すことができる。
部下からの信頼を獲得する
信頼という資産は部長にとってリーダーシップを発揮する最大の武器となる。信頼はよく「内閣支持率」に例えられる。支持率が高い内閣は、国民に痛みを伴う施策を打つ際にも一定の反発を受けつつ持ちこたえられる。しかし、支持率が低い内閣は、痛みを伴う施策を打つことすらできない。つまり信頼は、平時はもちろん、特に変革や困難な局面においてこそ力を発揮するのである。
では、部長はいかにして信頼を築けばよいのか。
①スキルと実績
信頼の基盤はスキルにある。高い専門性や問題解決力を持ち、難題を乗り越えられる人は自然と信頼される。そしてそれを裏づけるのは実績だ。口先だけでは信頼は得られない。確かな成果を積み重ね、その過程で部下に「成長の実感」や「成功体験」というメリットを与えることが信頼資産を増やす。
②人脈と関係性
もう一つの武器は人脈だ。社内のキーパーソンや外部の識者・経営者とつながっているだけでも信頼は高まる。「一流は一流と付き合う」という言葉の通り、関係性の力そのものが信頼の源泉になる。日頃からみずからのスキルを高めつつ、人脈を広げる努力を惜しまないことが重要だ。
③姿勢と人格
スキルや人脈に加え、日々の姿勢そのものが信頼を生む。
- 目標を貪欲に追求する
- 約束を守る
- 嘘をつかない
- 誠実に接する
- 努力を惜しまない
- マイナス感情を表に出さない
- 困難に挑戦する
- 組織文化を大切にする
こうした一貫した姿勢は時間をかけて信頼を積み重ねる。性格的な要素もあるため一朝一夕には変わらないが、「部長として大きな成果を残したい」という強い意識を持つことで行動は変えられる。
このようにして築いた信頼は、部下にとどまらず、上司や同僚、さらには外部パートナーからも寄せられる。結果として、部長はより大きな影響力を発揮できるようになるのだ。
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