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論点を把握する(15)〜絞り込む〜

投稿日:2011/05/27更新日:2019/08/15

前回まで、議論の仕込みにおける「論点の洗い出し」を丁寧に見てきました。ファシリテーターが事前に考え得る論点を洗い出し、「議論すべき論点は何か?」を具体的に認識できていればいるほど、議論の場における予想量が広がり、様々な発言の受け止めや方向付けが容易になります。但し実際の議論では、こうして「広げて」洗い出した論点全てを議論するわけではありません。むしろここから大胆に「絞り込み」を行ない、重点的に議論すべき論点を把握していきます。では、洗い出した多くの論点を、どのように分類し、絞り込んでいけばよいのでしょうか?

論点の絞り込みは参加者の想定から

ここまで、論点を洗い出す上では、「合意に至るためには、そもそもどのような論点について議論する必要があるか?」という視点で考えてきました。いわば、原型としての議論の流れを想定し、必要なステップを全て論点として押さえてきたわけです。しかし実際の議論では、洗い出した全ての論点が議論されるわけではなく、またその必要もありません。

たとえば、実際の議論の場では、結論を導く上で必要な論点であっても、議論の参加者が全て事前に了解しているものは議論の必要がありません。また、そのことについて議論した結果がどうであろうと、最終的な結論にあまり影響を与えない論点の議論に時間を使うことは無駄です。このように、一旦洗い出した原型としての論点群に対し、参加者の認識や意見の状況を踏まえ、議論すべき論点を絞り込んでいく必要があります。

もう少し具体的に考えてみましょう。

■「議論すべき論点」と「議論すべきでない論点」

まず、原点に戻ると、議論の目的は、その議論の場における「到達点」に至ることです。とすると、論点の分類における最初のポイントは、「その論点についての議論は、到達点に至る上で、合意を形成する(結論を出す)必要のあるものかどうか?」となります。

その論点について議論することが合意形成上、必要ないのであれば、それは【議論すべきでない論点】です。参加者が個人的興味や、合意形成とは異なる意図や目的を(意識的に、もしくは無意識に)持っている場合に、こうした論点が出てくる可能性があります。たとえば、仕組みとしての改善策を考えるために、これまでの失敗や問題点を洗い出しているような場面で、「誰が悪いのか?」などの論点に拘ってしまう場合などです。

こうした「議論すべきでない論点」が、実際の議論の場で出てきた際には、「どのようにその論点の議論を早めにストップし、本来議論すべき論点に話を戻すか?」を考えていくことになります。

■「議論する必要はないが、確認する論点」と「置いておく論点」

「その論点について議論することが、到達点に至る上で合意を形成する(結論を出す)必要がある」場合であっても、それらの論点が全て議論されるわけではありません。たとえば、その論点について意見の相違が全くない場合、議論に時間を使う必要はありません。但し、その「論点」は全く触れなくてもよいのでしょうか?議論の中でこうした論点に触れないと、参加者は「どうも考えるべき論点を押さえずに話が進んでいる」「自分はその論点についてAという意見を持っているが、それは皆の合意が取れているのだろうか?」などと不安や不自然さを感じてしまいます。

そこで重要となる捉え方が【議論する必要はないが、確認する論点】という捉え方です。つまり、その論点自体は提示し、また結論を示して「この点に関してはAという認識で宜しいですね」と参加者の確認を取っておくのです。

「確認する論点」には、実はもう一つのパターンがあります。それは、「合意を形成する上でその論点を議論する必要があり、かつ意見の対立もあるのだが、その場にいる参加者が持っている情報や意見の準備状態では結論が出せない」場合です。

つまり「それは大事な点だが、今決めろと言われても無理だ」という論点です。こうした論点の議論は、そこに時間を使っても結論が出ないですし、無理に結論を出そうとすると、かえって参加者の反発を生むことになります。こうした論点は、「この論点は重要ですが、【今、ここでは】結論が出せないので、次回までに各自準備をしたうえで再度議論しましょう」という形で「置いておく」べきものです。

「議論すべき論点」「議論すべきでない論点」に比べると、この「確認する論点」は見落としがちですが、実はファシリテーターにとっては、とても重要な捉え方です。こうした捉え方をしておくことで、議論の現場での対応に幅ができるためです。

「議論すべき論点」は「確認する論点」と合わせて広く構えておく

ファシリテーターが議論をリードする際に陥りがちなのは、「議論すべき」に含める論点を狭く取りすぎ、結果自分が描く議論の道筋に柔軟性がなく参加者から出てくる様々な論点を「議論すべきでない論点」と認識しがちなことです。そうなると、いろいろ出る意見に対して、「それはここでは議論しないで」「それよりもこちらを議論したいのですが・・」「それも議論できるとよいのですが、時間がありませんので・・」といった対応が多くなり、参加者が反発を覚える。もしくはファシリテーターが自分の結論を押しつけようとしていると感じて議論に参加する意欲をなくしてしまうといった結果になりがちです。

これはそもそも仕込みでの論点の広げ方が不十分なためにその場で適切な対応ができないこともありますが、「確認すべき論点」という捉え方を知らないために、「議論する/しない」の二者択一で対応を考えてしまう。そして自分が議論の主導権を取ろうとするあまりに、多くの論点を「議論すべきでない論点」と捉え、それにどう対応するかばかりを考えてしまうところに原因があります。

むしろ「議論すべき論点」は、若干広すぎるくらいに広く捉えておく。そして議論の中でそれが「確認すべき論点」だとわかったら、さっと確認をして次の論点に移る。一方で、「確認する論点」だと思っていたところに、意見の対立が生じる可能性もありますが、その際は「議論すべき論点」に素早く切り替え、議論を進めていけばよいのです。こうした対応をするためにも、「この論点は必ず意見の対立がありそうだ」「この論点はおそらく意見の対立は無さそうだが、念のため確認をしておく必要がある」といった具合に、論点に対する仮説を立てておくとよいでしょう。

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