テーマと出演者
テーマ:「LGBTQの現状と未来〜ダイバシティを受け入れインクルードする社会に向けて」。
発言のポイント
1)LGBTQの現状(どれだけの方々がいるのか?)
LGBTQの割合は全国で約5%。5%という数字は最も名字の多い佐藤さん、鈴木さん、田中さん、高橋さんの総数と同等くらい身近に多くいる。しかし、それだけいるのに身近に感じられない「目に見えずらいマイノリティ」という現状がある。
学校の現場では、LGBTQ当事者の6割がいじめを経験している。また、9割が先生に相談できない状況にあり、自殺率も6倍以上。職場でのカミングアウトの割合も1割程度。2018年の調査では、職場環境で差別的な言動があると答えた人は半数にのぼり、職場での不公平を理由に退職する人はLGBTQ以外の人の2倍という現状。
OECD 35カ国中でLGBTQに関する法整備のランキングで日本は34位。同性間の法的保障(パートナーシップや同性婚)が国で認められていないのはG7で日本だけ。日本は世界から取り残されている現状。
2)LGBTQを取り巻く課題
法整備の課題として3つある。一つは「平等法」の整備。LGBTQ版の雇用機会均等法の整備が必要。現在、差別に関する禁止法があるのは世界で80カ国。日本でも作ろうとしていて現在約10万人分の署名が集まっている。もう一つは「同性婚に関する法律」の整備。現在、世界では約30カ国で認められていて、日本は渋谷区、世田谷区など約80の自治体でスタートしている。最後の一つが「性同一性障害特例法」の改正。2004年から日本でスタートし5つの条件を満たすと戸籍の性別を変えられる。しかし、条件の中に、手術をしないと認められないという項目があり、この点を改正すべき。
政府内でもLGBTQに関して「性的指向・性自認に関する特命委員会」を作り、法整備を進めているが、党内の保守派などからの反対もあり、なかなか進まない現状。また、法整備しても、この法律をどの役所が所管するかが大きな課題。こうした背景には「無理解・無関心」がある。
また2019年2月に全国5カ所の裁判所で「同性婚」に関する訴訟が始まっている。裁判で危惧しているのは、国民感情がまだ熟していないという理由から時期尚早と国会に押し戻される可能性があること。「これは今すぐに必要なこと」ということを裁判所、国会の人たちに実感してもらう必要がある。今年3月17日には最初の判決が出る予定だが、そこで同性婚が認められないと、オリンピックの森発言と同じくらい世界中からバッシングされる可能性がある。
3)どういう政策が必要なのか?
2019年に、都道府県で初めて茨城県が「同性パートナーシップ証明制度」を導入。当初は議会の中で反対もあったが、実際に始めてみると不協和音は全く出てこず、今では制度があって当たり前の雰囲気になってきている。まず、何らかのアクションをすることが大切。
同性婚に関しては「伝統的家族」という言葉がいろいろな足かせになって、LGBTQの人たちを排除してしまっている現状があるので、この点をしっかり当事者の話を聞きながら改善していく必要がある。また同性婚の訴訟については、国会議員や裁判長などに対して「同性婚はいつかできればいいという問題ではなく、今すぐ解決すべき問題」ということを記した手紙を、全国の当事者や支援者たちから送ることで、しっかりと現状を伝えていくことが大切。
また、企業でも、競争戦略として多様性を受け入れることが中長期的な成長に重要なことだという認識を今後、スタートアップ企業を中心に伝えていくべき。また、教育現場や家庭でも、これらの現状・課題をしっかりと教えていくことが大切になる。
LGBTQの活動が反政府的のアクティビストの活動のようにならないように、時間をかけてコミュニケーションをし、多くの人の共感を得ながら、地道な理性的な活動をしていくことが今後さらに重要になってくる。
ディスカッションに参加してくださった皆様