テーマと出演者
テーマ:「日本の外国人労働者:コロナ禍での現状共有の上、今後どう受け入れるべきかを議論しよう」。
発言のポイント
・移民・外国人労働者の受入は、日本のダイバーシティ&インクルージョンにとって重要な意味を持つ。
1)コロナ禍で外国人労働者の環境はどう変化したか?
・日本に住んでいる外国人は277万人。内、外国人労働者は172万人(昨年10月時点)。ブルーワーカーには3種類あり、技能実習生が40万人、留学生を含みアルバイトをしている人が37万人、これに定住的な人(総数54万人のうちの一部)が加わる。35万人は中長期在留の高度人材。これに定住的な人の一部を加えたものが、ホワイトカラーであるが、ブルー(カラー)ワーカーが過半を占めると考えられる。
・コロナ禍で技能実習生やアルバイトが解雇されていて、技能実習生は仕組み上簡単に転職ができないので仕事も家も無くなって路頭に迷っている人が出てきている。技能実習生は工場勤務などが多く、サービス業はアルバイトの留学生が多い。
・外国人ブルーワーカーというのが雇用の調整弁になっているということ、外国人労働者の基本的人権を担保するための制度がまだ整っていないということの2つが浮き彫りになった。
・専門職で働いていた外国人もコロナが流行った時に一部帰国したが、その後入国ができず戻れなかったということがあった。オファーを出して採用が決まっていた人たちも入国できなくなったが、前職は辞めてしまっている、というケースがあり、正社員で今は入れられないが彼らの労働力をどうしよう、という問題も起こっている。
・ホワイトカラーや現場労働者の人たちが総じて入国できず、それを待っていた雇用主も困った。海外から人材を受け入れるマッチングビジネスも窮地に陥っている。
・これまでは外国人ホワイトカラーと日本人の枠で人事制度が分かれていたけれど、統合される可能性、リモートワークの普及で母国にいるままリモートで働くという可能性が生まれた。
【補足】2009年に50万人を超えて、2016年には初めて100万人を突破、2019年10月時点の総数は165万8,804人(前年比13.6%増)と過去最多を更新。
日本人労働者の平均年齢:44.0歳
外国人労働者の平均年齢:35.5歳
男女の構成比は男性が49.3%、女性が50.7%
中国・ベトナム(40万人ずつ)でほぼ半数(49.6%)、フィリピン、ブラジル、ネパール、韓国、インドネシア
外国人労働者が従事する産業別:
「製造業」が29.1%、「サービス業」が16.1%、「卸売業・小売業」が12.8%
一方で、現時点ではその数は少ないものの、今後外国人労働者の活躍が期待されている産業は「医療・福祉」「建設業」「農業・林業」
2)日本に外国人労働者や帰化人を増やす政策は必要か?
・これまでの「技能実習生」は自分の国に無い技能を日本に学びに来るという研修生だった。2019年4月から「特定技能外国人」という枠組みが出来て、小規模事業者の人手不足が深刻になっているのでそこの労働不足を補うためにやる、という初めて労働者としての外国人を受け入れる制度ができた。
・「移民」という言葉は多義的で、国連によれば1年以上をそう呼ぶ。日本語としてimmigrant=移民が適切かについて注意する必要がある。
・外国人労働者は日本と彼らの母国の架け橋人材として貴重な存在。成長市場で人口ボーナスもある国々から来ている。
【補足】
●1980年代後半~90年代前半
経済社会国際化の進展に伴う外国人労働者の増加
●1990年
・「改正出入国管理法」施行
・技術研修生の位置づけが「留学生」から「研修」に変更
●1993年
「技能実習制度」創設
●2012年
「高度人材ポイント制」運用開始
●2013年に制度見直し
●2015年に在留資格「高度専門職」を導入
●2017年
・「高度人材ポイント制」認定要件および優遇措置のさらなる見直し
・「日本版高度外国人材グリーンカード」導入
●2019年
新在留資格「特定技能1号」および「特定技能2号」の創設
「高度専門職1号・2号」、「技術・人文知識・国際業務」など、原則として高度な専門的・技術的分野に限られていた。あるいは、技能実習生。人材確保が困難な状況にある産業分野において、在留資格「特定技能1号・2号」を創設し、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人雇用が可能となった。
3)今後日本政府はどういう政策をとるくべきか?
・技能実習制度を廃止し、新しい特定技能外国人の制度を中心にしていく。
・日本語教育は非常に重要であり、統合政策の中でしっかり教育する仕組みを確立する。
・今は法務省が入国管理政策と社会統合政策の両方をやっているが、内閣府の中に「外国人庁」というような社会統合政策を引き受けていく組織を作っていく。
・人種差別禁止法を制定すべき。多言語で教育できるような教育制度を整えたり、行政サービスの多言語化も必要。
・外国人特別委員会を作り、入管だけに任せずに国会でウォッチすべき。
・DXにより、外国人についてもデータやエビデンスベースで政策判断をし、トレーサビリティをアプリなどで担保して、災害時にプッシュ型の情報提供を行い、帰国後も日本とのチャネル維持につなげるべき。
・入管はマクリーン裁判以来の裁量行政ゆえにパンクしかけている。業務改革とDXで効率化を図ることが、今後の大量受入の前提となる。
・世界から技術者を取り込んでいくのが重要だが、国境を越えて人が動くのが難しくなっている。二重課税など税制の問題があるので、各地に住みながら日本企業でリモートで働けるようになると良い。
・日本はこれからどのように外国人を受け入れていくかについてのビジョンが欠けており、それを考える必要がある。
ディスカッションに参加してくださった皆様