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菅義偉総理に竹中平蔵氏が聞く!成長戦略の柱は「グリーン」と「デジタル」を両輪とした経済対策

投稿日:2021/01/07更新日:2023/07/18

本記事は、2020年11月23日(月・祝)に開催された「G1経営者会議2020」の基調講演「菅政権が作り出す力強い日本 ~政府が行うこと、民間に期待すること~」の内容を書き起こしたものです。(全2回 後編) 竹中平蔵氏(以下、敬称略):このG1経営者会議に、今年は内閣総理大臣にお越しいただき、大変力強いメッセージをいただきました。この会場には「日本経済を良くしたい」「日本を良くしたい」という思いを持った経営者の方々が集まっておられます。そういうなかで今回のようなメッセージをいただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思います。総理は超ご多忙で大変時間も限られていますので、短い時間ではありますが、いくつか議論をさせていただきたいと思います。

コロナに対し、世界各国は個別の問題を超えて協力すべき

竹中:まず、国内ではどうしてもコロナや国会の問題に議論が集中しますが、私が驚いていますのは、総理が就任以降、このコロナ禍にあって大変積極的に外交をしておられる点です。昨日も、G20リヤド・サミットで日本の国際貢献についてお話をなさっていました。これはワクチンのお話だったと思いますが、その辺についてもぜひ伺いたいと思っています。 菅義偉氏(以下、敬称略):私は官房長官のとき、たとえば日米電話会談はたしか36回開催されましたが、沖縄にいて不在だった1日以外はすべて参加しています。しかし、そんな私でも、日本が世界からこれほど注目され、存在感を発揮していると感じたのは総理大臣になってからでした。私が就任したとき、世界のほとんどの首脳から「お祝いの電話でお話をしたい」との言葉をいただきました。やはり安倍前総理が外交で積み上げてきた成果というものはすごいなと、痛感致しました。 当然ながら、そういうなかで日本が果たすべき役割は極めて大きなものになります。昨日のサミットでも、「世界が互いに協力すべきところは、さまざまな個別の問題を超えて協力すべきである」と申し上げました。ご質問にあったワクチンについても、世界の人々にワクチンが行き渡るよう、日本も率先して応分の体制を整えています。また、ASEAN感染症対策センターについても設立に向け日本が資金を拠出したうえで、「日本の先進的医療制度等を導入していきたい」と。コロナの問題を契機に感染症対策の向上もしっかり進めていこうということを主張しています。サミットでは、そうした政策にも大きな期待をされているとの思いを強くしました。 竹中:衛生、長寿、健康といったものは日本のキラーコンテンツですから、それらを外交にも据えていこう、と。今は、自国のぶんだけワクチンを確保しようという「ワクチンナショナリズム」という言葉もあるそうですね。今はそうした部分も、日本が幅広く貢献して存在感を高めるうえで、大変な重要な機会であると思います。

Googleトップも協力を明言。官民でデジタル人材の交流を

竹中:国内のお話も伺いたいと思います。デジタルとグリーン。以前から皆さんが熱望していたことを、まさに国民目線で「実現をするぞ」と、明確に宣言していただきました。特に2050年のゼロエミッションというのは日本にとっては非常に大きな、歴史的な政策転換であると思います。また、デジタル化も強力に進めていくため、今は平井大臣と河野大臣もご議論してくださっています。一方、そこで出てくる議論として、デジタル化というのは、なんというか、デジタルにきちんとアクセスできる人とできない人とのあいだで新しい格差を生み出す可能性があるわけですね。そうした観点でどのような対策をとっていくかが、実はデジタル化を円滑に進めるための1つの重要なポイントになると考えています。たとえばシンガポールは「デジタルアンバサダー」という制度をつくり、デジタルについて困っている人がいれば助けにいくといった制度をつくったとのお話も聞きます。そうした点について、何かお考えやご指示はありますか? :政府の参与になっていただいている村井純先生も、そこは最もしっかりしなければいけないというご意見をお持ちです。ですから、平井大臣と村井先生には、そうした部分を解決していただくということを、私自身としても確認しています。本会場にいらっしゃる河野大臣はそうしたことを浮き彫りにしていただくという点で、最高の大臣であり、摩擦を起こしながらやってくれますので、大変力強く思っています。 竹中:叩かれながら大臣をやるというのはなかなか良いことだと思いますので、河野大臣にもぜひ頑張っていただきたいと思っております。また、今はデジタル人材の話もよく議論になっていると思います。これはまさに村井純さんが一番心配しておられることだと思いますが、デジタル人材が圧倒的に不足している、と。これは大学が非常に硬直的な人事をしてきたこととも関連します。デジタル人材については、外国から来ていただくということもあるし、おそらく、デジタル庁そのものが企画省庁でなく事業省庁のようになって、いろいろなことをやっていくなかで人材を育てていくような役割も重要になるのかなと思っています。この点についても、何か総理としてのご見解がありましたら伺いたいと思っています。 菅:官民の交流がものすごく大事になると思います。民間の方が役所に来て働くうえで、今はいろいろな壁がありますから、そうしたものを取っ払うことが大切になる、と。また、海外人材についても、たとえば以前GoogleのCEOの方にお会いしたときは、「日本のデジタル人材については、私はいくらでも協力したい」ということを言っていただいています。あるいは日本でも、世界で活躍できるようなデジタル人材をデジタル庁で受け入れる等、さまざまな方法が考えられると思っています。 竹中:会場には民間の方がたくさんいらっしゃいます。官民の協力ということで、民間の出番でもあると思うのですね。そこは一緒に知恵を出し合っていく必要があるのだと思います。それと、アメリカでも新しい大統領が生まれそうな…、気配ですが…、言い方が難しいですね(会場笑)。いずれにせよ日米協力のなかで、特にサイバーセキュリティ等の人材交流が大きなイシューになることも期待しております。

産業界を中心に、グリーン関連では年内に一定の方向性を提示

竹中:そして、グリーンについて。こちらも本当に待ち焦がれていた政策宣言が総理からなされたと思います。総理ご自身もおっしゃいましたが、これは「どのように実現していくか」というロードマップがなかなか描きにくい問題だと思います。技術は重要ですが、テクノロジーというのは、どの専門家も「自分の技術が一番いい」と思っていらっしゃったりして(笑)、なかなか難しい選択にもなるのかな、と。そのあたり、たとえば2050年に向けた中間目標を設ける、あるいはロードマップを描く等、何か総理のなかにアイディアやお考えがありましたら、ぜひ伺いたいと思っています。 菅:まず、梶山大臣には、「産業界を中心としてグリーンに向けた一定の方向を出して欲しい」と。年内にその方向を取りまとめて欲しいという指示を致しました。一方で小泉大臣のほうは、会場には鈴木英敬三重県知事もいらっしゃいますが、これまでも地方自治体との連携のなかで環境問題に取り組んできています。今後についても同様に、2050年のゼロエミッションを見据えて「地方と連携をしながら」という指示を致しました。小泉大臣は国際社会での発信にもずっと取り組んできていますし、そういうこともあって、お二人には留任をしていただいています。そのうえで、今までの国際会議で日本にもいろいろな課題が見つかりましたから、そうしたことにしっかり取り組んでいただこうと思っています。 竹中:菅内閣の大きな特徴は、目標を明確に定め、各大臣に「いつまでにこれをやるように」と、期限を決めたうえでプロセスを定めていく点だと、今のお話でも改めて思いました。ただ、これがメディアでなかなか報道されません。「何人感染者が出た」という話ばかりになるわけですが、今日お話しいただいたようなプロセスを私たちがきちんと見ていくことが今は重要なのかなと思っています。その観点でもう1つ伺いたいと思いますが、総理は11月のはじめに経済対策の指示を出されました。この辺については与党でも今週中ぐらいにいろいろな案がまとまると聞いております。このスケジュール感、あるいは規模感は今明確に申し上げられないと思いますが、何か教えていただけることはありますか? 菅:一番難しい質問ですが、経済対策については私のほうで掲げましたグリーンとデジタルを両輪とした経済対策ということで指示をしています。また、規模については皆さんいろいろおっしゃっていますが、私はまだ一言も申し上げていません(会場笑)。ただ、この状況で日本の経済が底割れするようなことは絶対にあってはならないと思っています。そして、今私たちに求められているのは、雇用をしっかり守ったうえで企業が継続できるような、予算措置を含めた対応策だと思っています。そうした方向を掲げて今は進んでおりますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。 竹中:本当に難しい経済運営を、安倍内閣から菅内閣にかけて、日本は見事にやってきているんですよね。失業率は2.5%から、11月(発表)時点でまだ3.0%になんとか踏みとどまっており、倒産件数も7月以降4カ月連続では前年同月を下回るなどの水準に留まっています。ただ、失業者と同じぐらいの休業者がいて、倒産数に比べて数倍の廃業者もいるということで、今はとにかく止血しているという状態なのだと考えています。そこは非常にうまくやっている一方で、経済状況が大変厳しいことは事実です。だからこそ総理がおっしゃるように、今はコロナ対策と経済対策を両立させるという、大変難しいところに立っておられるのだと思います。特に、メディアには一方的にGoToを批判する人ばかり出てきますが、人が動くことによって経済効果は間違いなくもたらされている一方で、感染症対策をきちんと取れば人が動くことで自動的に感染者が増えるわけでは決してない、と考えています。そういうことを、私たち経済を見ている人間はきちんと理解したうえで、現政権の政策を評価していかなければいけないと思っています。これ、総理は言いにくいことかもしれないので、私が言っておきました(会場笑)。 菅:ただ、国民の命と暮らしを守ることが私どもの責務ですから。今はコロナで国民の皆さんがいろいろな不安を抱えていますので、その不安をできるだけ解消しながら理解をしていただけるよう、1つずつ丁寧に対応していきたいと思っています。

総裁選挙や所信表明で約束したのは、やらなければダメなことばかり

竹中:今、私たちはコロナと戦っていますが、同時に不安とも戦っているということなのだと思います。だからこそ政治のリーダーシップが大変重要であり、その部分を菅総理が見事に果たしてくださっているのだと思います。今日はいろいろなお話をしてくださいましたが、なかでも、「国民が当たり前に思っていることができていない。それを私はやりたいんだ」というお話がありました。地方から出てこられて、そういう思いを持っておられるという点が、私自身も地方出身者として胸に刺さりました。時間が限られておりますので、最後に、これまでのご経験も踏まえ、ぜひ会場の皆さん、そして国民の皆さんに総理の思いを伝えていただければと思います。 菅:私自身は、「約束したことは必ずやる」ということを申し上げたいと思っています。それが万が一できなければ、できない理由をきちんと説明して分かっていただくようにする、と。ただ、総裁選挙や所信表明でお約束したのは、やらなければダメなことばかりですから、しっかりと実現に向けて進めたいと考えています。ある意味で、グリーンとデジタルは「待ったなし」の状況だと思っています。日本には240兆円ほどの現預金があると言われていますが、今はその投資先がなかなかないというのが実態ではないでしょうか。ですから、そこで経済をもう1度動かしたい。そういう意味で、内閣総理大臣として、国民にとって、今だけでなく将来にわたって安心・安全な社会および国をつくっていきたいと思っています。 竹中:ありがとうございました。今はコロナのなかでやらざるを得ない状況に迫られ、大変厳しい状況ではあります。しかし、それは同時に日本を大きく前進させる機会でもあります。そういうときに、菅総理という素晴らしいリーダーが登場されました。ぜひとも健康に気をつけていただいて、この大きな仕事を成し遂げていただきたいと思います。総理、どうもありがとうございました。 菅:皆さん、ありがとうございました(会場拍手)。 執筆:山本 兼司

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