G-STARTUP最優秀賞Luup――30年後のインフラを見据えてマイクロモビリティ事業に挑戦

グロービスのアクセラレータープログラム「G-STARTUP」2nd batch Demo Dayで優勝した株式会社Luup代表取締役社長兼CEOの岡井大輝さんと、メンターを務めたGCP(グロービス・キャピタル・パートナーズ)ディレクターの渡邉佑規に、G-STARTUPを振り返っていただきました。起業にかける思いと、G-STARTUPで得たものは何だったのでしょうか。

6回目のピボットで出会ったマイクロモビリティ事業

渡邉:さっそく起業の背景を教えてください。

岡井:根底にあるのは、閉塞感の漂う日本で30年後のインフラとなる事業をつくりたいという思いでした。30年後に日本が困る領域は何かと考えて、Luupの前は介護士版Uberのようなサービスを立ち上げようとしていました。しかし、大きな介護の改変を行うより先に重要なのは、「街づくり」と「物流」の領域のほうだと考えてモビリティ業界にピボット。日本は鉄道網が発達しているので、日本でUberのようなサービスが生まれるとしたら、鉄道の存在を前提としたサービスであることは間違いない。そこで現在のマイクロモビリティ事業にたどり着きました。実はいまの事業にたどり着くまでいろいろと漂流して、マイクロモビリティ事業に辿り着いたのは6回目のピボット時になります。

渡邉:6回も!そんなにしていたのですね。介護からの1回だと思っていました。

岡井:最初の4~5回はあまりに未熟だったから話していませんでした(笑)。ただ、自分の中では、エクイティを入れてからが本当のスタートアップ誕生の瞬間じゃないかと思っています。

渡邉:スタートアップの重要なポイントの一つが、ピボットのタイミングです。事業は、「ここを満たさなかったらやめたほうがいい」と一概に言いにくい。一方で、「歯を食いしばって頑張ることが美徳です」的な日本人感覚もあって、ピボットが遅れることもある。岡井さんの判断基準は何でした?

岡井:事業規模と持続性です。持続性は、自分たちがやらなくてはいけない理由が明確にあるかどうか。息の長い事業になるかどうかは、「この領域が今後必要である」という仮説と、「その領域の中で自分たちが最適なポジショニングを取れる」という仮説の両方が揃わなくてはダメです。たとえば日本に必要な領域でも、「トヨタがやったほうがうまくいく」という話になったら、もう自分たちでやる必要はなくなるわけです。Luup立ち上げまでの5~6回のピボットは、その仮説を検証しにいく作業でした。

3年後に社名が変わっていてもかまわない

渡邉:Luupは“大振り”を狙ってますよね。10人の投資家に聞いたら、おそらく全員が「これ、めちゃお金かかるよね」と言う。岡井さんをはじめLuupのみなさんはスマートで、そんなことは百も承知なはず。それでもやると決めたときに、迷いや葛藤はなかったんですか。

岡井:本当は学生時代の仲間たちと、「それぞれ経験を積んで30歳で起業し直そう」と約束していました。でも、2年くらいで「もういける」と早く集まって起業しました。完全にイキリですよね(笑)。大きな挑戦をしたいのに、自分たちはまだまだ「未熟な子供」だという自覚はあって、そのギャップを埋めるなら、少なくとも大振りはマストだと考えています。

渡邉:一つ聞きたかったのは、採用のことです。御社は採用力が高いですが、どうしてでしょう? 

岡井:Luupを存続させることを目的にしていないからではないでしょうか。僕らのミッションは、「街中を駅前化するインフラをつくる」こと。具体的には日本にマイクロモビリティのインフラをつくることがミッションなので、3年後にLuupという社名がなくなっていてもいい。仮にどこかに身売りしても、50年後に残るインフラをつくれたら僕らは成功です。逆に上場したとしても、日本のためになるインフラをつくれていなければ失敗となります。ですから、将来Uberさんがやったほうが最適ということになれば、うちの社員は7割そちらに転職するかもしれません。いまは僕らが最適なので、人が集まっているということだと思います。

ただ、成功の定義が他のベンチャーと違うので、責任は重たいですよ。途中で辞めるとか、甘えてどこかの会社の傘下になる形のファイナンスをするのは許されない。社員も自分のスキルに圧倒的な自信があって責任感の高い人しか、楽に呼吸ができない会社だと思っています。

G-STARTUPを選んだのは、3カ月間ちょうどいい距離感で議論できるから

渡邉:1年前にG-STARTUPの第2期に応募されました。どのような経緯で?

岡井:知り合いから「GCPが何かやるらしい」と聞いたことがきっかけでした。GCPは将来的に投資していただきたいファンドのひとつ。特段の拘束はないと聞いて、ちょうどいい距離感だと思いました。

あとはプログラムが3カ月と、ある程度の長期間であることも魅力でした。5日間くらい凝縮してガッとやるプログラムもありますが、それなら自分たちで既存投資家に相談するのと変わらないかな、と。

渡邉:当時の課題意識はどこにありました?

岡井:上場から逆算したときの具体的な計画の引き方が甘いという自覚がありました。3年で上場するのか、もうちょっと仕込んで5年で数倍にして上場するのか。そのあたりの精度が甘いので、併走して教えていただきたかった。メンターに渡邉さんを指名させてもらったのも、金融機関のご出身だと聞いたからです。

渡邉:アクセラプログラムにおけるベンチャーキャピタリストの役目は論点の整理だと思っていますが、今回、岡井さんはすでに論点を整理されていて、すごく楽でした(笑)。

岡井:A4で1ページに論点をまとめて、しっかり準備しましたね。やはりそこは、将来的に出資していただく可能性があるので……(笑)

アクセラのコンセプトを見極める

渡邉:LuupはG-STARTUPで最優秀賞を取りました。勝因は何だと思います?

岡井:何もないです(笑)。振り返ってもよくわからない。

渡邉:国内のアクセラプログラムの数は、100はくだらないはずです。その一つ一つにコンセプトがあって、それに合うか合わないかがとても重要です。G-STARTUPのコンセプトは、ユニコーンをつくること。Luupは、しっかり正しくフルスイングしている感じが他のチームよりもあって、それがコンセプトに合っていた気がしますね。

岡井:僕らも事業会社のアクセラにもたくさん出て学びました。「この会社は本当にエクイティのリターンを求めている」というところもあれば、「この会社(が求めているの)はシナジーか」とか、「●●さんが気に入るかどうかやん」みたいなところもあって(笑)。いろんな分岐があるので、それをちゃんと勘繰って寄り添うと、いい結果が出るのかもしれません。

渡邉: G-STARTUPをやってみて、もっとこうしたほうがいいという提言はありますか?

岡井:半分冗談ですが、期間が長いので、「その間に売上やバリュエーションを一番伸ばした会社の勝ち」みたいな決め方があってもいいですよね。結果で勝負しようと思っているイケてる起業家は、「別に人に評価されなくていい」と思ってアクセラに出ないイメージがあります。僕たちは手段を選ばないのでアクセラにも積極的に出ますが、結果で勝負するアクセラならイケてる起業家たちも参加するはず。そこで勝ったら僕らも本物かなと。あとは、それぞれのVCがお気に入りの秘蔵っ子を集めてやるアクセラがあっても面白いと思います。

渡邉:それは面白いですね(笑)最後に、3rd batchへの参加を目指している起業家に、一言だけいただけますか。

岡井:G-STARTUPはまだいろいろなことを模索している時期で、こんなに凄い人たちが短期的なリターン目的ではなく稼働しているのでおそらく赤字なんだと思います。ただ、その赤字は起業家にとっての黒字。ベンチャーにとってのおいしい果実は、過渡期にしかありません。その果実を得られるうちのほうが、参加し甲斐があると思います。なので、早めに出ることをお勧めします(笑)

【関連サイト】
Luup WEBサイト
アクセラレータープログラム「G-STARTUP」第2期、デモデイ(成果発表会)を開催 スタートアップ10社が投資家に対し事業をプレゼン、最優秀賞はLuupに決定|GLOBIS
G-STARTUP 3rd batch 開催記念イベント 2020/02/26. 参加申し込み受付中|Peatix

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