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稼働率――固定費型ビジネスは稼働率が命?

投稿日:2020/10/16

今年8月発売の『KPI大全–重要経営指標100の読み方&使い方』から「037 稼働率」を紹介します。

2020年は「コロナの年」として記憶されるでしょう。そしてその影響により、倒産したり、倒産しないまでも大赤字を出してしまった企業が続出しました。多くは、人件費や賃料、減価償却費などの固定費を多く抱えながらも、それが「遊んでしまい」、損益分岐点を超える売上げを上げられなかったというパターンです。固定費の難しさは、そう簡単に減らせないことです。特に正社員の解雇要件の厳しい日本ではその傾向が高まります。

一方で、固定費は企業の核となる費用でもあるため、成長を志す企業の場合、そう簡単に増やすことを止めるわけにもいきません。中長期の競争力を削いだり、せっかくの成長機会を捉えきれない可能性もあるからです。

VUCAの時代と言われて久しいですが、環境変化の可能性を適切に捉えつつ、適度な固定費を持ち、かつそれを好ましいレベルの稼働率(の範囲)で回し続けていくことは、非常に難易度の高いミッションなのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

稼働率

ある経営資源がキャパシティに対してどの程度実働したかを示す数値。設備の場合は設備稼働率といわれる。

KPIの設定例

前年はコンサルタントの稼働率は70%程度だったから、今年の目標は5ポイント改善して75%だ。

数値の取り方/計算式

実際の稼働時間÷フル稼働の場合の稼働時間

主な対象者

事業責任者、生産責任者、営業責任者、オペレーション責任者

概要

稼働率は、社内の経営資源がどの程度有効に活用されているかを示す指標といえます。稼働率が低い状態が続くことは、その分、経営資源が遊ぶことを意味し、通常、企業の収益性を圧迫します。稼働率を上げるか、そもそもその資源を削減してコストの低減ができないかなどを考える必要があります。

KPIの見方

稼働率は、どの状態をフルのキャパシティと考えるかによって数字が変わってきます。設備であれば、無駄のない運転状況を業務時間内続けた場合を100%とすることが多いです。従業員であれば、有体をしっかりとったうえで残業のない状態を100%としたり、企業によっては週に45時間(通常勤務時間37.5時間十残業7.5時間)を100%稼働としたりすることもあります。

稼働率は、高い方が収益性の観点からはいいように思われますが、長期的に考えた場合は100%以下の数字がベストということもあります。例えば時間貸しの駐車場のスペースが100%稼働しているという状態は、「停めようとしても停められない駐車場だ」というイメージを顧客に与えてしまいます。そこでパーク24などのチェーンは「ちょうど良い稼働率」を設定し、ITの力も借りながら駐車場ごとの稼働率の濃淡がなるべく出ないように誘導しているのです。

KPIの使い方

稼働率は先述の事例からもわかるように、あらゆる場面でいろいろな人に用いられるKPIです。それゆえ、目的にあわせ、適切な目標を設定する必要があります。ポイントは先にも記したように「短期のみならず、中長期的にも適切な数値となること」です。もちろん、トラブル対応などで150%の稼働率が必要な場合もあるでしょうが、それはやはり緊急時の話です。基本的には、そうした事態そのものの発生も防ぐ手立てを講じつつ、稼働率を安定させる(稼働率の変動を下げる)ことが望まれます。

よく製造現場では「3ム(無理、無駄、ムラ)」を防げ、などといわれますが、3ムを減らすことは稼働率を安定させることにもつながります。そのためにも、需要把握の精度を高め、それにマッチした資源配分を行う必要があります。またプロセスの的確な設計や管理も必要となってきます。

補足・注意点

事業特性上、稼働率を安定的に保つのが難しい業界もあります。例えばスキー場は年間で見ればどうしても冬型ビジネスになりますし、冬ですら降雪の状況によっては閑散としてしまう日もあるでしょう。そうした場合は、経営資源そのものに柔軟性も持たせ、「遊んでしまう資源」をなるべく持たないようにする工夫も必要です。アルバイトの活用や人材の多能工化などはその典型です。

Column

稼働率が予定より下がることは、特に固定費の比重が高いビジネスを直撃します。その典型はホテルやエアライン、一部の飲食業などです。2020年に起きた新型コロナウイルス禍では、まさにこうした業界が大打撃を受け、倒産に追い込まれる企業も多発しました。これほどの異常事態はそうそう起きませんが、常日頃から稼働率の変動に強いビジネスモデルや体制を作っておくことも必要なのです。

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